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コラム:アメリカ建国250年、第2次トランプ政権の防衛戦略

第2次トランプ政権の防衛戦略は、米国の安全保障パラダイムに大きな変化をもたらしている。
2026年2月5日/米ワシントンDCホワイトハウス、トランプ大統領(AP通信)
現状(2026年2月時点)

2026年2月の時点で、米国は第2次トランプ政権(2025年1月20日就任)が外交・安全保障政策の中心に据えた「国家安全保障戦略(2025年版)」および「国家防衛戦略(2026年版)」に基づく新たな戦略パラダイムの下、防衛戦略の再構築を進めている。これら文書は従来の米国の戦略理念から大幅な変化を示し、米国の海外での役割、同盟関係、対中・対ロ対応などに再定義を迫るものとなっている。専門家の分析では、米国の戦略的優先順位や負担分担の在り方について大きな転換点が生じていると評価されている一方で、西側同盟への影響や国際秩序への影響を巡って懸念も強い。


第2次トランプ政権(2025年1月発足)の防衛戦略

第2次トランプ政権は就任直後から一連の安全保障政策を打ち出し、2017–2021年期の戦略理念を発展/変容させた独自の戦略文書として「国家安全保障戦略2025(NSS2025)」を発表した。これは「米国第一」「力による平和」等の理念を引き継ぎつつ、従来のグローバル・リーダーシップ中心戦略から重心の再配置を図る内容となっている。具体的には、国家安全保障戦略と国家防衛戦略(NDS)を結合させ、重点領域と同盟の役割を再定義する点が特徴となる。

NSS2025では、冷戦終結後の戦略が「誤り」であったと批判し、米国の負担とリスクを軽減するための戦略再構築を目指すと明記されている。これは「価値観や歴史的絆に縛られない、米国の利益を第一にする戦略」とされ、従来の「同盟国を守る」役割から「同盟国の主体的な防衛責任の強化」へと方向性がシフトしている。


防衛戦略の主な柱

第2次トランプ政権の防衛戦略の主要な柱は以下の通りである。

  1. 米国本土及び西半球の優先的防衛

  2. 同盟国への「公平な負担」要求

  3. NATO等同盟への圧力と再定義

  4. 対中戦略の焦点化と戦略転換

  5. ウクライナ支援の再編

  6. 統合抑止と先端技術への投資強化

  7. 非介入主義的要素の導入
    これらの柱はNSS2025およびNDS2026文書全体を通じて一貫した戦略目標として掲げられている。


「力による平和」の再定義

トランプ政権は、安全保障戦略の基礎理念として「力による平和(Peace through Strength)」を強調する。これは単に軍事力の増強を意味するのではなく、米国が圧倒的な能力と威嚇力を示すことにより対立や戦争の発生を未然に防ぐという考え方である。この理念は、第1期政権の政策とも共通するが、第2期ではより積極的な軍事姿勢と組み合わせて世界各地でのパワー・プロジェクション(力の投射)を追求する点で特徴的である。

戦略文書では、米国が単独で紛争を解決するのではなく、同盟国・パートナー国の負担分担を必須条件として軍事的選択肢を維持・適用する姿勢が明記されている。これは、単独行動というよりも「主体的な力の示威を通じた集団的抑止」を重視するアプローチであり、いわゆる伝統的な集団安全保障からの逸脱と見る向きもある。


国防予算の増額

トランプ政権は、防衛力基盤の強化を掲げ、国防予算の大幅増額を推進している。報道によると、2026会計年度では約1兆119億ドル規模の要求が行われたとされ、前年から13%超の増額となっている。この増額は主に対中国・対ロシア抑止力の強化と国内産業基盤の再活性化を目的としているとされる。

この予算増額は、先端技術開発やミサイル防衛等の大型プロジェクトへの資金投入と並んで、米国防産業基盤(DIB: Defense Industrial Base)の強化を目的としている。専門家は、この増額が米国の軍事技術競争力を維持するための重要な基盤であると評価すると同時に、防衛支出の増大が財政負担の増加と国際社会での軍事優先主義を強めるリスクを孕むと指摘する。


核戦力の近代化

トランプ政権は核戦力及び関連抑止能力の近代化を重視している。2026年2月5日に米露間で核軍縮条約(新START)が失効した後、トランプ大統領は新たな包括的核合意の追求を表明したものの、従来の延長には否定的立場を取った。これは核戦力の近代化と検証体制の刷新を重視する兆候とされる。

核戦力近代化は、米国が従来の核態勢を維持しつつ、先端技術を用いた核抑止力の強化、そしてサイバー・AI・宇宙分野での統合抑止能力との融合を追求する意図が読み取れる。これには宇宙・ミサイル防衛技術の増強も含まれる。


同盟国への「公平な負担」要求

トランプ政権の防衛戦略の中心には、同盟国に対する「公平な負担(burden-sharing)」要求がある。NSS2025では、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対して従来のGDP比2%防衛費基準から5%への引き上げを求める新たな基準が提示された。これは米国が同盟国の防衛主体性を強化し、米国の軍事負担を軽減する目的とされる。

同盟国への負担要求は、単なる費用拠出の増加に留まらず、防衛能力や戦略的責任の分担を同盟国自身に求めるものである。この点については、「共通の価値観」ではなく「取引的関係」を強調するとの批判もあるが、トランプ政権はこれを同盟強化のための現実主義的アプローチと位置付けている。


NATO諸国への圧力

NATOに対する戦略的圧力は、単に負担増を要求するだけにとどまらない。米国はNATO内での役割分担と責任の再構築を促進し、欧州諸国に対してロシア脅威対応の主体的実行を求めている。NDS2026では、「米国はNATO諸国の防衛を支援するが、その主体は各国自身である」という文言が明記され、米国の前線戦力投入の減少と欧州の独立防衛能力の強化が求められている。

この戦略はウクライナ支援の縮小にも影響を与えており、米国はウクライナに対する支援を直接行うよりも、欧州主要国が中心となって支援することを促す姿勢を示している。これによりNATO内の分断が生じる可能性について、専門家は警鐘を鳴らしている。


日韓との関係

トランプ政権は日韓を含むインド太平洋地域の同盟国にも防衛主体性を強く要求している。NDS文書では、韓国・日本に対しても防衛支出の増額と地域の安定に対するリーダーシップを求める記述があるとされる。特に北朝鮮の脅威に関しては、韓国自身が主体的に抑止力を強化することが強調され、米軍の役割は後方支援に位置付けられる傾向が示されている。

日本に対しても同様のプレッシャーがあり、防衛費の増加と地域防衛能力の自主的強化が期待される。これは日本の中で安全保障政策見直しを促す要因となっているが、地域的安定への影響評価は多様である。


対中・対ロシア戦略の変化

第2次トランプ政権の防衛戦略では、対中国戦略と対ロシア戦略の位置付けに変化が見られる。NDS2026では対中国戦略は比較的抑制的な表現となっており、「対立ではなく抑止を通じた関係の安定化」が強調されている。中国に対する強硬姿勢は維持しながらも、経済的相互依存や戦略的コミュニケーションの確立を重視する姿勢が窺える。

対ロシア戦略では、NDSはロシアを「管理可能な脅威」と表現し、欧州の主体的な対応を促す形に重点が置かれている。米国は依然として核・宇宙・サイバー能力における競争を重視し、ロシアと高官レベルで軍事対話を再開する動きもあるが、戦略的優先度は従来より低く位置付けられる傾向にある。


中国への集中(ピボット)

第2次トランプ政権は、中国を最重要戦略的競争相手と位置付ける一方で、過度な軍事的対立を避けるために抑止と協調のバランスを図る方針を明確にしている。NDS2026では、中国の軍事的台頭と経済的影響力を認識したうえで、「第一列島線」周辺における拒否・抑止戦力の強化を掲げるとともに、同盟国の防衛能力強化を促進する戦略が示されている。

この「ピボット(戦略的転換)」は、インド太平洋地域における集団的抑止体制の構築と、同時に経済・技術面での競争優位性確保を狙うものであり、半導体供給網やAI・量子技術開発など防衛戦略と経済政策の融合が進行している。


ウクライナ支援の転換

ウクライナへの支援政策はトランプ政権発足以前と比較して大きく見直されている。NDS2026では、ウクライナ支援は「欧州の主体的責任」とされ、米国は限定的な役割にとどまる姿勢が鮮明である。これは欧州主要国に対する防衛負担要求と整合的であり、米国はウクライナ支援を通じた欧州の防衛能力強化を求める構造となっている。


統合抑止と先端技術

トランプ政権は統合抑止(核、通常、宇宙、サイバー、情報戦を組み合わせた戦略的抑止)を推進すると同時に、AI・自律型兵器・宇宙戦力等の先端技術の軍事利用を加速している。これは防衛産業基盤の強化と密接に関連しており、国防予算増額の大きな一部を先端戦力の開発に振り向ける方針である。


AIと自律型兵器

AIと自律型兵器システムは、第2次トランプ政権の戦略的焦点として強調される分野である。AIの軍事活用は統合抑止の強化のみならず、指揮統制やサイバー戦、情報収集など多岐にわたる。これに伴い、自律型兵器の倫理的・法的規制の議論も活発化している。専門家は、自律システムの信頼性やリスク管理の必要性を指摘している。


非介入主義の側面

一見するとトランプ政権は軍事的強硬姿勢を強調するが、その一方で非介入主義的な側面も存在する。すなわち、米国が海外での長期的な地上戦や大規模展開に関与するよりも、同盟国主体の防衛責任を重視し、米国軍は選択的・重点的な介入に留める戦略である。これはベトナム以来の介入主義への批判として位置付けられるが、同盟国間の安保体制を弱体化させる懸念もある。


今後の展望

第2次トランプ政権の防衛戦略は、米国の安全保障パラダイムに大きな変化をもたらしている。今後の展望としては以下の点が重要となる。

  • 同盟関係の再編と新たな負担分担の実現

  • 核軍縮条約後の戦略的安定体制の構築

  • インド太平洋地域における集団的抑止体制の深化

  • AI・宇宙・サイバー技術の軍事統合と国際規範形成

  • 国際秩序に対する米国の役割と責任の再定義

専門家の分析では、第2次トランプ政権の戦略文書が国内の政治的論争と国際社会との摩擦を生みやすいと指摘されており、米欧関係や東アジアにおける安保ダイナミクスに大きな影響を及ぼす可能性があるとされる。


まとめ

第2次トランプ政権(2025年1月発足)の防衛戦略は、米国の安全保障理念と実務に対して歴史的な再定義をもたらしている。主要な特徴は「米国本土優先」「同盟国への公平な負担要求」「核戦力・先端技術の重点化」「非介入主義的側面の併存」にある。特に同盟関係に対する圧力は従来の価値基盤に基づく連帯から、実利的な負担と能力重視へとシフトしている。この傾向は国際秩序や地域安全保障にも影響を与え、今後の同盟戦略の進展と国際競争における米国のリーダーシップに注目が集まる。


参考・引用リスト

  1. “The US National Defense Strategy signaling shift to Western Hemisphere”, German Marshall Fund analysis.

  2. “Pentagon downplays China threat…”, Al Jazeera.

  3. “Experts react to Trump National Security Strategy”, Atlantic Council.

  4. National Security Strategy of the United States of America (2025), The White House official PDF.
  5. National Defense Strategy 2026 summary reporting.
  6. 新垣拓「第 2 次トランプ政権の国家安全保障戦略」、防衛研究所コメンタリー。
  7. 各種論説・解説記事(note等)による負担分担・NATO戦略分析。
  8. AI・自律兵器関連研究(arXiv論文)。

核戦力の近代化が世界の安全保障に与える影響

核戦力近代化の定義と背景

核戦力の近代化とは、単なる核弾頭数の増減を意味するものではなく、運搬手段(ICBM、SLBM、戦略爆撃機)、指揮統制通信(NC3)、精度、即応性、サイバー耐性、宇宙領域との統合などを含む包括的な能力更新を指す。冷戦後、米露間では核軍縮条約により弾頭数削減が進められてきたが、その一方で質的近代化は継続されてきた。

第2次トランプ政権期における核近代化は、新START失効後の「無制限時代」への備えという側面を持ち、数量管理よりも能力優位と抑止信頼性を重視する方向性を示している。これは米国のみならず、ロシア、中国、さらにはインド、パキスタン、北朝鮮にも連鎖的影響を与えている。


抑止安定性への影響

核戦力近代化は一見すると抑止力を強化し、戦争を防止するように見える。しかし、現代の核近代化は以下の点で抑止の不安定化をもたらす可能性がある。

第一に、高精度化と低出力核の導入である。精密誘導能力の向上により、「限定核使用」や「先制的無力化」が理論上可能になると、相手国は危機時に「使われる前に使う」インセンティブを持つ。これは古典的な相互確証破壊(MAD)の安定性を損なう。

第二に、指揮統制システムの脆弱性である。AI、サイバー、宇宙領域が核戦力と統合されることで、誤作動、誤認、サイバー攻撃によるエスカレーションの危険性が増大する。核抑止が人間の判断からアルゴリズムへ部分的に移行することは、危機管理の不確実性を拡大する。

第三に、軍縮枠組みの崩壊である。条約による透明性と検証が失われることで、相互不信が拡大し、最悪想定に基づく軍拡競争が再燃する可能性が高まる。


地域安全保障への波及

核戦力近代化は大国間の問題にとどまらず、地域レベルの安全保障にも深刻な影響を与える。東アジアでは中国の核能力拡大が日本や韓国の拡大抑止への信頼を揺るがし、欧州ではロシアの戦術核ドクトリンがNATO諸国の核共有議論を再燃させている。

結果として、核近代化は「核の傘」に依存する同盟国に対し、核武装論や抑止自立論を刺激する副作用を持つ。これは核不拡散体制(NPT)の構造的弱体化につながる。


米中ロの核戦略比較

米国の核戦略

米国の核戦略は伝統的に「抑止専用(deterrence-only)」を標榜してきたが、実際には同盟抑止とエスカレーション管理を含む柔軟な運用を前提としている。第2次トランプ政権下では以下の特徴が顕著である。

  • 核戦力の信頼性・即応性の重視

  • 核と通常戦力、宇宙、サイバーの統合抑止

  • 同盟国防衛を条件付きとする取引的抑止

米国は公式には「先制不使用」を宣言しておらず、核の役割を狭めるよりも「使える抑止力」を維持する方向性を取っている。


ロシアの核戦略

ロシアの核戦略は、通常戦力における相対的劣位を補完するための「核依存型戦略」として特徴付けられる。いわゆる「エスカレートして抑止する(escalate to de-escalate)」という概念は、限定的核使用によって紛争を有利に終結させることを想定している。

ロシアは戦術核の役割を重視し、核兵器を国家存立だけでなく、地域紛争レベルでも使用可能な選択肢として位置付けている点で、米国よりも核の敷居が低いと評価される。


中国の核戦略

中国の核戦略は、長らく「最小限抑止」と「先制不使用」を原則としてきた。しかし近年は核戦力の量的・質的拡大が進み、戦略の曖昧化が指摘されている。

中国の特徴は以下に集約される。

  • 相対的に小規模だが生存性を重視した核戦力

  • 第二撃能力の強化(地下施設、移動式ICBM、SLBM)

  • 核戦略の透明性の低さ

中国は米露のような相互核抑止関係を公式には認めておらず、戦略的曖昧性を抑止力の一部として活用している。


三極比較の構造的特徴

米中ロの核戦略を比較すると、以下の構造が浮かび上がる。

観点米国ロシア中国
基本目的同盟抑止・戦略安定劣勢補完・威嚇生存性確保
核使用の敷居高(公式)
透明性比較的高
軍縮への姿勢条件付き戦略的利用消極的

この三極構造は、冷戦期の米ソ二極抑止とは異なり、誤認・誤算の可能性を増大させる。


世界最強の軍事力とその弊害

「世界最強の軍事力」という概念

「世界最強の軍事力」とは、単に兵力や予算、兵器性能の総和ではなく、抑止力、投射力、持続力、同盟ネットワークを含む複合的概念である。米国は依然としてこの意味で世界最強の軍事力を保持している。

しかし、第2次トランプ政権の防衛戦略は、この優位を「公共財」として提供することに否定的であり、軍事力を国家取引の交渉カードとして用いる傾向を強めている。


弊害① 安全保障の取引化

軍事力が取引対象となると、同盟は価値や信頼ではなくコスト計算に基づくものとなる。これは短期的には米国の負担軽減につながるが、長期的には抑止の信頼性を損ない、危機時の結束を弱める。


弊害② 軍拡競争の誘発

最強の軍事力が近代化を進めれば、他国もそれに追随する。核・ミサイル・AI兵器の競争は安全保障ジレンマを深化させ、結果として全体の安全水準を低下させる可能性がある。


弊害③ 非軍事的安全保障の軽視

軍事力偏重は、経済安全保障、気候変動、感染症、情報空間の安定といった非軍事的脅威への対応を相対的に弱める。現代の安全保障は総合的であり、軍事力のみでは解決できない。


まとめ

核戦力の近代化は、短期的には抑止力を強化するが、中長期的には抑止不安定化、軍拡競争、核不拡散体制の弱体化を招く両義的性質を持つ。米中ロの核戦略はそれぞれ異なる合理性を持ちながらも、相互作用の中で不確実性を増大させている。

第2次トランプ政権下における「世界最強の軍事力」は、秩序維持装置というよりも交渉手段として再定義されつつあり、そのこと自体が国際安全保障の構造を不安定化させる要因となっている。今後の課題は、核近代化と戦略競争を管理しつつ、いかに新たな安定メカニズムと規範を構築できるかにある。


非介入主義の意義

非介入主義とは

非介入主義(non-interventionism)とは、国家が他国の内政・軍事紛争に積極的に介入しない外交安全保障政策を指す。一見すると「孤立主義」と混同されるが、非介入主義は外交関与や経済協力を伴いつつ、武力を用いた対外介入を最小化するという立場である。第2次トランプ政権の防衛戦略においては、従来の「世界各地の紛争への積極的介入」から、「米国の直接関与を限定し、同盟国の主体的責任を重視する」方向へのシフトという意味で、この非介入主義的傾向が示されている。

意義と理論的意義

非介入主義の主要な意義は以下の3点で整理できる。

① 国家資源の集中化
武力介入は人的・財政的コストを大きく消耗する。非介入主義は、有限な資源を国内防衛や優先地区に集中させ、過度な軍事展開の負担軽減を図る。これは国家安全保障の効率性を高め、同時に国民合意を得やすい戦略を生む。

② 外交手段の多様化
非介入主義は武力ではなく、経済制裁、外交交渉、国際機関の枠組みといった非軍事的ツールの活用を重視する傾向がある。これにより、国家間の対立を軍事衝突にエスカレートさせるリスクを低減すると同時に、国際秩序の枠組みに基づく解決策を追求する。

③ 同盟関係の再評価
介入を抑えることで、同盟国の主体的な防衛能力の強化が求められる。これは一見すると同盟関係の弱体化と誤解されがちであるが、長期的には同盟国の自立と責任分担という観点から安全保障の構造転換を誘発する。

第2次トランプ政権における位置付け

第2次トランプ政権の防衛戦略は、従来の「全面的な集団安全保障」から「選択的関与・非介入主義的傾向」へと傾いている。このシフトは、武力介入を抑え、同盟国自身の防衛主体性を高めるという意図に基づいている。しかし、非介入主義が過度に進むと、米国のリーダーシップ低下や同盟信頼性の喪失、安全保障の空白を生みやすいという批判も存在する。


日本の安全保障環境と戦略的インパクト

台湾海峡情勢

台湾は東アジアの戦略的要衝であり、その安定は地域安全保障に直結する。近年、中国の軍事的圧力が増大している中、米国と同盟国の抑止力が焦点となっている。中国が台湾統一の軍事的選択肢を明確にすると、台湾海峡は地域大規模衝突の可能性が高いホットスポットとなる。

非介入主義的傾向が強まると、米国の直接介入が限定的になる可能性があり、その結果として日本は自国防衛のために独自の抑止力を高める必要性が増す。これは自衛隊の装備や戦略の見直し、米軍との連携強化、地域の防衛体制の再構築を促すことになる。

朝鮮半島情勢

北朝鮮は弾道ミサイル・核開発を継続しており、日本にとって最も近接する重大な安全保障脅威となっている。近年、北朝鮮は多様な弾道ミサイルや極超音速兵器の技術向上を進めており、その動向は日本の防衛政策に直接的な影響を与えている。

第2次トランプ政権の防衛戦略は同盟国の主体性を重視するため、米国の軍事的関与が限定される可能性がある。その結果として日本は、弾道ミサイル防衛(BMD)能力の向上、共同訓練や情報共有の強化、自衛隊の能力及び指揮統制の見直しを迫られることになる。


次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム(Golden Dome)」の現状

構想と目的

「ゴールデンドーム」は米国が構想している次世代ミサイル防衛システムであり、宇宙空間を含む多層的な防衛網の構築を目指すものである。名称は、イスラエルの短距離ミサイル防衛システム「アイアンドーム」に由来するが、規模や領域ははるかに大規模である。宇宙配備型センサーや迎撃装置を統合し、弾道ミサイル、極超音速兵器、巡航ミサイル、宇宙からの脅威への対応を意図するものである。これにより米国本土及び同盟国の防衛能力を強化することが試みられている。

現状(2026年初頭)

2025年5月、トランプ大統領は「ゴールデンドーム構想」を正式に発表し、約1,750億ドル規模のプロジェクトとして取り組む意向を示した。完成予定は任期中の3年以内とされ、2028年頃の初期運用開始が視野に入っている。構想では、宇宙配備型センサーや迎撃装置、既存の地上ベース防衛システムなど複数の防衛レイヤーが連携することが計画されている。

米国防総省は長距離レーダー等の試験に成功しており、これらはゴールデンドームの中核技術の一部として組み込まれる可能性があると報じられている。

戦略的含意

「ゴールデンドーム」は単なる防衛システムというより、アメリカの戦略的優位性の象徴的表現として位置付けられている。宇宙空間を利用したミサイル防衛は、米国が他国の核・ミサイル戦力の脅威を抑止しようとする最先端の試みであり、戦略的抑止のパラダイムを変える可能性を持つ。一方で、以下の点が議論されている。

① 技術・戦術的課題
宇宙配備型センサーや「キル・ヴィークル」を含む大規模な衛星システムは技術的に未検証の部分が多く、実用化には時間がかかる可能性がある。

② 戦略安定性への影響
ゴールデンドームが実用化すると、米国のミサイル防衛能力が飛躍的に向上する可能性があるが、同時に中国・ロシアなどの戦略的安定性を損なうとの懸念も生じている。北朝鮮やロシアはこの計画が軍拡競争を誘発する可能性を指摘している。

③ 予算負担と機会費用
巨額の開発費用は国家予算に大きな負担をかけるだけでなく、他の安全保障分野や社会保障への機会費用を生む可能性がある。


最後に

非介入主義は米国の戦略的選択肢として、介入コストの削減や外交手段の多様化という意義を持つ一方、同盟信頼性の低下や地域的安全保障空白を生むリスクをはらむ。日本にとっては、台湾海峡や朝鮮半島の緊張が高まる中で、より自立した抑止力と日米協力の深化が不可欠となっている。

「ゴールデンドーム」は、技術的・戦略的に極めて野心的なプロジェクトであり、米国の防衛戦略の象徴であるが、その実現性や国際的影響には多くの不確実性が残る。


参考・引用リスト(追記分)

  1. 米国トランプ大統領が次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」発表, テレビ朝日報道.

  2. 米ゴールデンドーム構想の危うい未来, 朝日新聞.

  3. 米ミサイル防衛「ゴールデンドーム」, 大紀元エポックタイムズ.

  4. 米、長距離レーダーの試験に成功 「ゴールデンドーム」関連, ニューズウィーク日本版.

  5. North Korea says US space shield is 'nuclear war scenario', Reuters.

  6. North Korea criticizes US ‘Golden Dome’, Washington Post.

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