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コラム:イラン攻撃に踏み切ったトランプ政権「最大の賭け」

2026年2月28日の米国・イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃は、外交的解決策の不在と核交渉の決裂を背景に発生した複合的な危機である。
トランプ米大統領(左)とイランの最高指導者ハメネイ師(Getty Images)
現状(2026年3月1日)

トランプ米政権とイスラエル政府は2026年2月28日、イランに対する大規模軍事攻撃を共同で開始したと発表した。攻撃は主に空爆、ミサイル攻撃によるもので、テヘラン、イスファハン、タブリーズ、その他複数都市の軍事・政府関連施設を標的としているとみられる。攻撃開始直後、イラン側はミサイル・ドローンによる報復を開始した。
米国・イスラエル両政府はこれを「差し迫った脅威を排除する必要がある」と説明しているが、同時にイラン国内外で広範な混乱と報復・衝突が続いている。国際社会は緊急の安全保障理事会を開くなど対応を迫られている。

米国は今回の作戦を「Operation Epic Fury」、イスラエルは「Operation Lion’s Roar」と名付けており、目標には核・ミサイル能力の制圧、革命防衛隊・軍事インフラの破壊、そしてイラン政権への圧力が含まれている。


米・イスラエルによる大規模軍事攻撃(2026年2月28日)

2026年2月28日、米国とイスラエルの共同軍事攻撃は前例のない規模でイラン全土に軍事的打撃を与える形で開始された。米国は空母打撃群、巡航ミサイル、空軍戦闘機を動員し、イスラエルは自国空軍を含む数百機の戦闘機を用いて攻撃に参加したと報じられている。

攻撃の規模は、前年(2025年6月)の核施設攻撃をはるかに超えるものであり、従来の限定攻撃から全面戦争に移行したことを示唆していると分析される。攻撃目標には軍事インフラのみならず、政府関連施設や革命機構の中心も含まれているとされるが、正確な範囲は不明確である。

イラン側は即座に反撃し、米軍基地やイスラエル周辺へのミサイル攻撃を行っていると報じられており、地域全体が戦闘状態に入っている。


「不毛な戦争を終わらせる(End Forever Wars)」という公約

トランプ大統領は2024年の大統領選挙や政権発足後の外交政策で、「End Forever Wars(不毛な戦争を終わらせる)」という公約を掲げていた。これは長期的な対外紛争からの撤退と米軍の過度な介入を避けるという主張として支持者に訴求してきた。
ただし、これに関する公約達成度は政権内外で議論の的となっている。複数の報道は、今回の軍事攻撃がその公約と明確に矛盾する行動であると指摘している。

当初、トランプ政権は他国との軍事介入を避ける立場を強調していたが、イランに対する今回の攻撃はその方針を大きく逸脱したものと評価する専門家も多い。


攻撃に至る経緯と背景

核交渉の決裂

2026年2月26日、スイス・ジュネーブで行われた米・イラン間の核交渉は合意に至らず決裂したと報じられている。交渉は複数回にわたり進められたが、最終的に譲歩点が見いだせず、米国側は不満を表明したとされる。

2025年の前段階

2025年6月にも米国・イスラエルはイランの核関連施設に軍事攻撃を行い、核施設破壊と軍事インフラの制圧を試みた。しかしその後もイランの核開発・ミサイル開発は継続しており、再度の衝突が避けられない状況となっていた。

イラン国内の不安定化

イラン国内では経済状況の悪化や政治的不満を背景に、2025年末から2026年初頭にかけて大規模な抗議が発生し、治安当局との衝突が続いた。この不安定さが外交交渉に影響を与えたと分析されている。


外交の決裂(2025年以降)

2025年以降、米・イラン関係は核交渉の進展と停滞を繰り返しながらも、最終的な妥結には至らなかった。米国はイランの核・ミサイル開発の停止を強く求め、イランは核権利と主権を主張して交渉を継続した。両国の立場の隔たりは埋まらず、外交的解決策は失敗に終わったと報道されている。


「成功体験」の連鎖

トランプ政権は過去に限定的な軍事行動を通じて政治目的を達成した経験があると自認しており、それが今回の決断に影響した可能性がある。とりわけ2025年の核施設攻撃が一定の成果を上げたとの認識が、より大規模な軍事行動への自信につながった可能性が指摘される。しかし、その成功体験の有効性が広範な地域戦争に適用可能かどうかは不透明である。


イスラエルとの同調

イスラエル政府、特にネタニヤフ首相は長年にわたりイランの核・ミサイル能力を最大の安全保障リスクと見做してきた。今回の共同作戦はイスラエルの政策目標と米国の軍事行動が一致した結果であり、地域の安全保障上の結びつきが強化された結果と評価される。


作戦の主要目的

米・イスラエル双方が掲げた主要目的は以下である:

  1. 核・ミサイル能力の制圧
    イランの核兵器開発と長距離ミサイル能力を物理的に破壊することが主要目的とされている。

  2. 革命防衛隊・軍事インフラの削弱
    革命防衛隊(IRGC)、ミサイル発射施設、軍事拠点への打撃が含まれる。

  3. イラン政権の弱体化・体制転覆の誘発
    トランプ大統領はイラン国民に体制転覆を促す呼びかけを行い、米国の介入が政権の崩壊につながる可能性を示唆している。これは明確な外交的・軍事的目標である。


核・ミサイル能力の物理的破壊

攻撃は核関連施設、ミサイル基地、レーダーや防空システムへの打撃を重視したとされる。目標はイランの核・ミサイル能力の機能停止であり、これが地域安全保障のリスクを減らすとの論理で正当化されている。


体制転覆(レジーム・チェンジ)の誘発

トランプ大統領はSNSへのメッセージでイラン市民に政治変革を呼びかけ、「自由」を掲げて体制転覆を誘発する狙いを示した。これは単なる軍事目標を超えた政治的介入の試みとして評価される。


軍事力の「完全排除」

米国・イスラエル側は、イランの軍事力を「完全に排除する」ことを最終的なゴールとしているとの認識を示しているが、現段階でその実効性と完遂性は疑問視されている。


外交政策における最大の賭けとされる要因

今回の攻撃は、トランプ政権の外交政策上最大の賭けとされる。これは主に以下の要因による:

  1. 外交公約との矛盾
    「End Forever Wars」という公約と真逆の大規模戦争への突入は、政権内部および支持層からの批判を招いている。

  2. 地域全面戦争のリスク
    イランの報復、ホルムズ海峡封鎖・米軍基地への攻撃など、地域全体への戦争拡大の懸念が存在する。

  3. 国際法と国際社会の批判
    国連安保理や多国間機関は即時の衝突停止を求めており、米国・イスラエルの行動は国際法違反とされる可能性も指摘されている。


出口戦略の不在

現時点で明確な出口戦略は提示されていない。トランプ政権は戦闘の局面を有利に推移させることを目標としているが、戦後の政治秩序・安定回復策は公にはされていない。これはイラク戦争後の混乱と類似するとの指摘がある。


「占領しない」方針?

公式声明では、地上軍による全面占領は行わないとの方針を示唆しているが、これは将来の展開次第で変更される可能性があり、実質的には制圧と支配の差が見えにくい状態にある。


報復の連鎖

イランは米軍基地や周辺国の軍事施設に報復攻撃を実施していると報じられており、攻撃と報復の連鎖が戦線を拡大させている。これは戦争の長期化リスクを高める。


ホルムズ海峡封鎖

専門家は、イランがホルムズ海峡を封鎖し、エネルギー輸送を遮断する可能性を指摘している。この戦略は世界経済への影響を与える可能性が高く、日本を含む世界経済に大きな波及リスクを持つ。


米軍基地への報復

イランの攻撃は米軍基地にも向けられており、米国の地域軍事プレゼンスに対する挑戦となっている。複数の中東基地への攻撃は、米軍人の安全と作戦遂行能力に直接影響を及ぼす可能性がある。


米軍リソースの枯渇

長期、広範な戦闘が続けば、米軍の人的・物的リソースの消耗や兵力の再配置が不可避となる。これは米国の他地域への安全保障能力にも影響する。


検証ポイント

今回の軍事行動についての評価・検証ポイントは以下である:

  1. 外交公約との整合性

  2. 国際法上の正当性(国連憲章との整合性)

  3. 攻撃目標の達成と軍事的効果

  4. 戦争の長期化と戦略的コスト

  5. 地域安全保障環境への影響


イラン国内の反応

イラン国内では政府支持者と反体制派の双方が異なる反応を示している可能性があり、報復攻撃や抗議活動が続く中で政府の統治能力に影響を与えている。


国際社会での孤立

国連安全保障理事会を含む多国間機関は衝突の即時停止を求めており、米国・イスラエルの行動は一部で孤立を招いている。加盟国間の分裂も観測されている。


米国内の世論

米国内では外交公約と矛盾した軍事行動に対して批判が上がっていると報道されており、与野党問わず議論が高まっている。


最高指導者ハメネイ師死亡か

現時点で最高指導者ハメネイ師の安否は未確定である。攻撃対象とされた報道はあるが、安全な場所に移されたとの情報もあり、確定的な情報は存在しない。


今後の展望

2026年3月以降、戦闘は継続する可能性が高い。外交的解決策はほぼ見えず、地域全体の緊張が高まる状況が続く。国際社会の介入や和平プロセスが模索されるが、現段階では主要プレイヤー間の隔たりが深く、短期的な平和回復は困難な情勢である。


まとめ

2026年2月28日の米国・イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃は、外交的解決策の不在と核交渉の決裂を背景に発生した複合的な危機である。攻撃の目標は核・ミサイル能力の制圧とイラン政権の弱体化だが、その過程は外交公約との矛盾、戦争の長期化、国際法上の懸念など数多くの課題を内包している。今後の展開は地域情勢と国際社会の対応次第であり、短期的な終結は見通せない。


参考・引用リスト(時系列)

  • 〔米イスラエル攻撃・報復情勢〕各社報道(ガーディアン、ロイター、FT、APなど複数)

  • 共同攻撃の詳細(TV朝日、FNN、Nikkansports、TBS等)

  • トランプ政権の外交公約と評価(FT、Australian、Washington Post、Daily Telegraph等)

  • 公約との矛盾と世論(Vanity Fair、専門社説)

  • 公約実現と対立意見(Houston Chronicle, The Wire)


追記:力による平和の究極的実践

「力による平和(Peace through strength)」とは、軍事力の優位を背景に脅威を排除し、結果的に安定をもたらすという考え方である。米国の歴代政権、とりわけ冷戦期や湾岸戦争期にはこの論理がしばしば外交政策の中心に置かれてきた。2026年の米・イスラエルによるイラン攻撃は、この観点からは「脅威の根本的除去」を意図した行動であると理解できる。実際、米国政府はイランの核・ミサイル能力を地域・国際安定に対する重大リスクと位置付け、軍事手段によってその能力を削減・除去しようとしている。
しかし、究極の「力による平和」は理想的概念であり、実際に機能するかどうかは別問題である。軍事行動は短期的に一定の軍事的成功や威嚇効果を生む可能性を持つが、同時に地域の不安定化や報復の連鎖、難民流出、社会インフラ破壊といった重大な負の副作用を伴うリスクが高い。特に中東のように複雑な政治勢力と歴史的恨みが絡む地域では、単純な軍事的打撃が「平和」につながる保証はない。実際、イラン攻撃は反発を強め、イラン国内だけでなく中東全域の緊張を高めている。こうした状況で「力」によって平和を構築することは、実践としては極めて稀で困難な挑戦である。


米国を中東の泥沼に引き戻す致命的な誤算

2020年代に入り、米国世論や一部の政治指導部は中東からの戦略的撤退を志向していたが、2026年のイラン攻撃はこれに逆行した行動である。この決断には以下の致命的な誤算が含まれる可能性がある:

  1. 短期戦の前提が誤っている
    米国は限定的・短期的な軍事行動で決着すると想定していた可能性があるが、イランの強い反発、報復攻撃、地域の反米感情などがこれを困難にし、結果として長期的な関与を強いられる可能性が高い。

  2. 報復の連鎖の過小評価
    イラン側は米軍基地やアメリカの同盟国に対して報復しており、地域全体が戦闘状態に入るリスクがある。このような「小さな始まりが大規模戦争へ発展する連鎖」は、過去の中東戦争でも繰り返されてきた誤算である。

  3. 外交戦略の欠如
    攻撃後の交渉・和平プロセスの明確な戦略が見えず、結果として外交の主導権を失う懸念がある。このような戦術優先の判断は、中東政策における長年の致命的な誤算と重なる可能性がある。

こうした誤算が累積することで、米国は再び中東の「泥沼」に引き戻される可能性がある。これは、史上の湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争に共通した構図と一部重なる。


原油価格への影響と日本経済への波及

中東情勢は、世界のエネルギー市場に対して直接的なリスクをもたらす。特に原油市場は、地政学的リスクを敏感に価格に反映させるため、今回の軍事行動は既に以下の影響を与えている:

  • 原油価格の上昇
    イラン攻撃と中東リスクの高まりを受けて、世界の原油価格は上昇圧力を受けているとの報道がある。ブレント原油価格は2026年2月時点で約72ドル台からリスクプレミアムの反映により高値圏で推移しているほか、原油供給不安が深刻化すれば80ドル超やさらに高騰する可能性が指摘されている。特にホルムズ海峡を封鎖した場合、価格上昇圧力は強まるとの分析がある。

  • 日本経済への影響
    日本は中東の原油供給に大きく依存しており、原油価格の上昇は国内のエネルギーコストや物価全体に波及する可能性が高い。ホルムズ海峡封鎖のような輸送ルートの寸断が起きた場合、日本の燃料価格や電力・物流コストは上昇し、消費者物価指数や企業収益に影響が生じるリスクがある。特に輸入物価の上昇は、消費者物価全体を押し上げ、企業の利益率を圧迫しうる。

  • 世界経済へのリスク
    原油価格上昇は世界的なインフレ圧力を高める。主要経済圏での金利政策や購買力に影響を与える可能性があり、特に新興国経済の成長率が鈍化するリスクがある。原油価格は世界産出量の供給懸念が強まると一時的な高騰を示す傾向があるが、サプライチェーンが実損した場合には構造的な高値圏に移行する可能性がある。

  • 短期的市場動向
    投資家のリスク回避姿勢により、株式市場は不安定化し、資本が一時的にドルや金など安全資産に流れる可能性がある。これは株価の下落圧力を強める要因となる。

これらの要素が組み合わさることで、世界経済、日本経済ともに原油価格上昇の波及効果を受ける可能性がある。


中国・ロシアがこの混乱をどう利用しようとしているか

中国

中国は長年にわたり中東での戦略的影響力を拡大してきた。イランは中国の主要な原油供給国であり、中国は対イラン経済・貿易協力を強化してきた。今回の軍事行動は、以下のような中国の戦略への影響をもたらす可能性がある:

  1. 原油輸入契約の再交渉と安定確保
    中東の供給不安が深まると、中国は長期契約を結んでいる石油供給国との関係強化や備蓄増強を進める可能性がある。安定供給確保は中国経済の成長にとって重要であるため、外交的影響力を活用するだろう。

  2. 米国への外交的圧力
    中国は今回の軍事行動を一方的な武力行使として批判する立場を取る可能性がある。国際社会における米国の孤立を促し、国連等の場で中東和平構築の主導権を狙う可能性がある。

  3. 代替供給ルート・経済連携の強化
    米国主導の供給リスクを回避するため、ユーラシア内陸ルートやアフリカ産油国との連携強化を進める戦略も考えられる。

速報段階では中国の公式な政策反応は限定的だが、長期的な戦略としてはエネルギー安全保障と米国との対立を背景に行動する可能性がある。

ロシア

ロシアは米・イスラエルの軍事行動に対して強く非難する声明を出している。ロシアはこれを「一方的な武力行使であり地域の安定を損なう」と批判し、イランとの関係を強調しつつ国連など国際機関での調停を表明している。

ロシアの戦略的意図は複合的であるが、主な方向性は以下の通りである:

  1. 中東における影響力の強化
    ロシアはイランとの軍事・経済関係を深めており、今回の危機を通じて中東における外交的プレゼンスを高める機会として活用する可能性がある。

  2. 米国との対立点の強調
    ロシアは国際社会で米国の行動を批判し、米国主導の秩序に対する挑戦を通じて自国の立場を強化しようとしている。

  3. エネルギー市場での立場強化
    原油・天然ガス市場において、欧州などを含むエネルギー供給の多様化を求める声が増す可能性があり、ロシアは代替供給源として重視される可能性がある。


追記まとめ

今回の軍事行動は、単なる軍事衝突を超えた多層的な地政学リスクを内包している。軍事力に基づく「力による平和」の試みは、短期的な軍事的成果を生む可能性がある一方で、長期的政治安定や外交目標との整合性には重大な疑問が残る。加えて、原油価格の上昇リスクはエネルギー依存経済、とりわけ日本のような輸入依存国に大きな波及効果をもたらす。また、中国・ロシアはそれぞれ今回の混乱を自国の戦略的利益に変換しようとしている節が見られる。これらの要素を総合すると、今回の軍事行動は米国外交戦略の致命的な誤算を露呈しかねず、中東だけでなく世界経済・安全保障に長期的な影響を与える可能性が極めて高い。


参照(追記分)

 
  • OPECプラスが増産拡大検討との報道 

  • 原油価格反応・市場予測(Barclaysなど) 

  • 原油供給懸念・S&P Global Energy事実整理 

  • 原油市場・日本への波及分析記事 

  • 経済影響・原油価格推移と見通し 

  • ロシア外務省声明(強い非難) 

  • 中東リスク・金・株価影響分析 

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