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コラム:アメリカ建国250年、第2次トランプ政権の対中政策

第2次トランプ政権の対中政策は、経済・通商、技術・安全保障、外交・地政学など多層的な戦略から構成される。
2025年10月19日/エアフォースワンの機内、記者団の取材に応じるトランプ大統領(AP通信)
現状(2026年2月時点)

2026年2月時点における米中関係は、戦略的競争の強化と経済・安全保障上の相互依存の緊張が同時に進行する複雑な状況にある。米国は第2次トランプ政権(2025年1月〜)の政策下で、中国との経済的結びつきを弱め、国家安全保障と経済競争力を高めることを目指して一連の措置を講じている。一方で中国側は反発と報復措置を取り、双方の間で緊張が継続している。2026年初頭には主要鉱物の供給網を再構築する戦略的イニシアティブが打ち出されたが、同時に米中首脳間の公式な対話も継続されているなど、多層的な関係が展開されている。これらの政策や動向は、国際経済、同盟国関係、技術競争を含む幅広い分野に影響を与えている。


第2次トランプ政権(2025年1月〜)の対中政策(総論)

第2次トランプ政権の対中政策は、前期政権で形成された「戦略的競争」路線を継承しつつ、より強硬な経済・通商措置、技術・安全保障分野での制限、外交・地政学的な競争戦略を重視する特徴を持つ。政権は「アメリカ第一主義」に基づき、米国の経済的繁栄と国家安全保障を対中競争の中心に据えている。この総論的な枠組みは、関税の引き上げ、デカップリング政策、技術規制、同盟国との連携を通じた供給網再構築など、多岐にわたる政策手段を統合するものである。

対中政策の基本的な方向性としては、①経済的に中国に依存する構造の是正、②国家安全保障上の脅威とされる技術移転の抑制、③同盟国や友好国との競争的優位性の強化、④中国の軍事的・地政学的影響力の拡大への対抗、が掲げられる。これらは単一の政策ではなく、経済・通商、技術・安全保障、外交・地政学の各分野で複合的に展開されている。


主な政策の柱

トランプ政権の対中政策は大きく次の柱に分けられる。

  1. 経済・通商政策:高関税、最恵国待遇の撤回、中国製品への輸入制限。

  2. 技術・安全保障政策:戦略的デカップリング、AI・半導体規制、中国系アプリ規制とデータ保護。

  3. 外交・地政学政策:二国間交渉重視、台湾問題への戦略、ウクライナ・北朝鮮等との連動。

  4. 国内政治・規制強化:中国資本の制限、投資規制、国家安全保障の統合的運用。

以下、これらの柱ごとに具体的内容と背景を整理する。


経済・通商:さらなる関税障壁

第2次トランプ政権は発足直後から中国製品への一律関税引き上げを実行し、米国の輸入に対する関税障壁を強化した。2025年2月1日には国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、中国からの輸入品に追加関税を課す大統領令が発出され、これが発効した。さらに追加関税率は段階的に引き上げられ、高関税障壁を構築することが通商政策の中心となった。これは「貿易赤字是正」と米国内生産の競争力向上を目的とする長期的な戦略でもある。

同時に中国側も報復措置として対米輸入への関税を引き上げ、貿易摩擦が相互的に激化した。この動きは両国の輸出入に大きな影響を与え、市場の不確実性を高めた。特に米中間の累積関税率が極めて高い水準に達したことは、世界経済にもショックを与えたと指摘されている。

こうした関税政策は、単なる貿易赤字の是正だけでなく、中国依存度の是正というマクロ経済的視点と、米国内産業保護・再活性化というナショナリズム的戦略が複合したものである。この政策は米国の製造業基盤や雇用維持を目指すと同時に、中国側への価格競争力低下を狙う意図でもある。


目的

経済・通商上の関税強化政策の目的は複合的である。第一に、中国からの安価な輸入製品への依存を減らし、米国内生産者の競争力を高めること、第二に、貿易赤字の縮減を図ること、第三に中国の国家主導型産業政策とみられる「不公正な取引慣行」を是正することが挙げられる。これらは、米国内の雇用維持や産業基盤強化と国家安全保障の結びつきを強調する政策論理に基づく。

また高関税は交渉カードとしても機能し、関税の引き下げや市場アクセスの改善を条件とした交渉の先行条件として用いられることもある。つまり、関税措置自体が対中交渉における圧力手段として活用されている。


最恵国待遇の撤回

第2次トランプ政権は中国に付与されていた最恵国待遇を撤回する方針を明示している。これは中国製品に対して最低関税率を課すことを可能とし、米国と中国の通商関係の根本的な再定義を促すものである。最恵国待遇撤回は、過去のWTO体制下での公平貿易原則から逸脱する可能性があるが、トランプ政権は「国家安全保障上の必要性」や「貿易不均衡是正」の観点からその正当性を主張している。

この措置は、中国経済の規模や影響力を踏まえれば米国の対中競争戦略の中心的要素であり、WTO体制内での対中措置の法的・政治的な議論を引き起こしている。


技術・安全保障:戦略的デカップリング

トランプ政権の対中政策には、経済的デカップリングの推進が含まれる。これは米中間の技術的・供給網的な結びつきを戦略的に減少させることを指す。特に先端技術分野においては、中国が米国の技術移転や軍事転用につながる能力を獲得することを防ぐべく、輸出管理や技術協力の制限を強化する動きが目立つ。

経済安全保障政策の一環として、トランプ政権は「Pax Silica」などの多国間技術サプライチェーン強化イニシアティブにも関与し、同盟国との協調によって技術的依存関係を再構築する方向性を強調している。これらの政策は、AI、半導体、先端素材といった戦略的に重要な分野における競争力維持を目的としている。

この戦略的デカップリングは、米国の国家安全保障の観点から中国製技術や設備が米国内インフラに浸透することを制限する狙いがある。


AI・半導体規制

AIや半導体を含む先端技術は、米中競争の中心領域である。AIの統治や半導体供給網の確保は、安全保障と経済競争力の両方にとって重要なテーマであり、米国は中国への技術移転を制限するための輸出管理措置や投資規制を強化している。

特に半導体関連では、第1次トランプ政権時からの規制が引き継がれ、エヌビディア等の先端チップの輸出制限や、中国企業への特定技術の供与制限が展開された。これらの措置は米国主導の技術供給網形成を促進するものであり、世界的な先端技術市場における支配的地位を維持する狙いがある。

ただし、技術規制が米国内外の企業活動に与える影響や、中国の反制措置とのバランスについては専門家の間でも議論が分かれている。


TikTok・データ保護

対中技術戦略には、データ保護と中国系アプリに対する規制も含まれる。TikTokを運営するByteDance社に対し米国は売却命令や停止要求を行う動きがあり、トランプ政権は大統領令による執行猶予措置を講じるなどの対応を取った。これは国家安全保障上、個人データが中国政府に利用されるリスクを懸念する立場に基づくものである。

TikTok問題は象徴的に扱われ、データ保護政策が米中競争における一つの戦線として認識される契機となったと評価されている。


外交・地政学:二国間交渉の重視

トランプ政権は多国間協議よりも二国間交渉を重視する傾向があり、同盟国との個別交渉を通じて対中戦略を構築している。これは、交渉の柔軟性を高め、米国の利益を最大化する戦略と位置付けられる。

同時に米中首脳間の対話も継続されており、2026年初頭には両首脳が電話で話したことが報じられ、関係改善の余地を保つ動きも見られる。


台湾問題

台湾は米中関係における地政学的焦点の一つである。トランプ政権は台湾に対する軍事支援や防衛体制強化を支持する立場を示しつつ、直接的な軍事介入の可能性については曖昧な態度を維持しているという分析もある。これは「戦略的あいまいさ」を維持することで、衝突のエスカレートを防ぎつつ抑止力を強化するバランスを狙った政策と解釈される。

台湾問題は軍事的緊張と同時に地域の安全保障協力の深化を促す要因ともなっており、日米同盟や他の地域同盟との連携強化が進む契機となっている。


ウクライナ・北朝鮮との連動

米国の対中戦略は、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の核・ミサイル開発といった他地域の安全保障問題と連動し、包括的な競争戦略として位置付けられる。トランプ政権はこれらの複数戦線に対する政策を同時に遂行し、同盟国との協調による抑止力を強化する構図を追求している。

例えば、台湾海峡とウクライナ戦線、朝鮮半島における軍事的緊張は、米国の戦略資源配分に影響を与え、対中政策が単一テーマではなく複合的な安全保障戦略の一部であることを示している。


国内政治との連動

トランプ政権の対中政策は国内政治との強い連動がある。米国内では中国を国家安全保障上の主要な競争相手とみなす超党派的合意が形成されつつあり、対中制限強化への支持が一定程度存在する一方で、関税や技術規制の影響をめぐる批判も存在する。

また、中国資本に対する制限や投資規制強化は、安全保障と経済競争力の観点から支持される一方で、グローバルビジネス環境への影響や企業活動の制約をめぐる議論も国内で生じている。


中国資本の制限

トランプ政権は中国資本による米国企業やインフラへの投資を制限し、重要セクターでの影響力拡大を阻止する規制を強化している。これは外国投資委員会(CFIUS)による審査強化や特定企業の事業制限などを含み、米国の国家安全保障と経済競争力保護を狙うものである。


今後の展望

2026年以降の展望として、第2次トランプ政権の対中政策は引き続き高度な競争戦略を展開しつつ、状況に応じた柔軟な交渉戦術を模索する可能性が高い。批評家は高関税や制限政策が世界経済やサプライチェーンに与える負の影響を指摘する一方、支持者は米国の競争力向上に向けた必要な措置と評価している。

同盟国との供給網構築イニシアティブ、特に鉱物・素材供給の多国間協調は中国依存を弱める戦略的措置として進展しているが、長期的な影響や実効性については引き続き検証が必要である。また台湾問題や地域安全保障課題は、米中関係のバランスを左右する重要な要素として政策形成に影響を与え続ける可能性がある。


まとめ

第2次トランプ政権の対中政策は、経済・通商、技術・安全保障、外交・地政学など多層的な戦略から構成される。高関税や最恵国待遇の撤回、戦略的デカップリング、AI・半導体規制、データ保護政策、二国間交渉の重視、台湾・他地域安全保障課題、国内政治との連動などが主要な内容である。これらの政策は米国の国家安全保障と競争力強化を狙うものであり、米中関係の今後に大きな影響を与えるだろう。


参考・引用リスト

  1. Reuters: US proposes critical minerals trade bloc aimed at countering China (2026)

  2. Reuters: Trump launches $12 billion minerals stockpile to counter China (2026)

  3. Wash. Post: Trump-Xi call positive amid tensions (2026)

  4. Reuters: Trump unveils strategy to prevent China conflict over Taiwan (2025)

  5. Reuters: US and Australia sign critical minerals agreement (2025)

  6. WaPo: Trump softens stance on China amid trade talks (2025)

  7. ジェトロ:トランプ政権の対中政策(2025)

  8. RIETI:二期目トランプ政権の対中政策展望

  9. RIETI英語版:Outlook for China Policy (2025)

  10. 地経学研究所:トランプ政権トラッカー関連概要

追記:第2次トランプ政権と台湾の関係

1.台湾政策の位置づけ

第2次トランプ政権における台湾政策は、対中競争戦略の中核的要素として位置づけられている。台湾は単なる地域問題ではなく、米国のインド太平洋戦略、半導体を中心とする先端技術供給網、民主主義対権威主義という価値対立の象徴的存在として扱われている。この点において、台湾政策は経済・技術・安全保障を横断する戦略的要石である。

トランプ政権は公式には「一つの中国」政策を維持すると表明しているが、実際の政策運用においては台湾との関係強化を積極的に進めている。この「公式言説と実践の乖離」こそが、トランプ政権の台湾政策の特徴である。

2.戦略的あいまいさの再解釈

第2次トランプ政権は、従来の「戦略的あいまいさ」を形式的には維持しつつ、その実質を変容させている。すなわち、台湾防衛に対する明確な安全保障条約を結ばない一方で、武器売却、軍事訓練、情報共有、準同盟的な政治的支持を通じて、台湾の防衛能力を事実上強化している。

専門家の間では、これは「戦略的あいまいさの硬化」あるいは「条件付き明確化」と呼ばれる。中国に対しては軍事行動のコストを認識させ、台湾に対しては過度な独立志向を抑制するという、二重抑止の構造を意図した政策である。

3.半導体と台湾の戦略的価値

台湾の地政学的重要性は、TSMCを中心とする半導体産業によって飛躍的に高まっている。第2次トランプ政権は、半導体を「国家安全保障資産」と明確に位置づけ、台湾との技術協力と同時に、米国内への生産拠点移転も推進している。

これは台湾の戦略的価値を高める一方で、「台湾有事=世界経済危機」という構図をより明確にし、中国に対する抑止効果を狙うものである。ただし同時に、台湾が米中競争の最前線に置かれることで、リスクも増大している。


米中関係の今後:対立か管理か

1.構造的競争としての米中関係

第2次トランプ政権下の米中関係は、個別政策の集合体ではなく、「構造的競争」として理解する必要がある。経済規模、技術革新能力、軍事力、国際制度への影響力という複数の次元において、米中は長期的な覇権競争に突入している。

この構造は、政権交代によって容易に変化するものではなく、米国内では超党派的な対中警戒論が定着している点が重要である。トランプ政権はその中でも特に「取引」と「圧力」を重視する現実主義的アプローチを採用している。

2.全面対立の回避と競争管理

一方で、第2次トランプ政権は全面的な米中衝突を望んでいるわけではない。むしろ、軍事衝突や完全な経済断絶が米国自身にとっても甚大なコストを伴うことを認識している。そのため、首脳間対話や限定的な協力分野(気候変動、金融安定など)を維持する姿勢も見られる。

この点について、多くの国際政治学者は「競争の管理(managed competition)」という概念を用いて分析している。すなわち、対立を前提としつつも、エスカレーションを抑制するためのルールやコミュニケーションを維持する関係である。

3.経済デカップリングの限界

トランプ政権は「デカップリング」を強調するが、実際には全面的な経済分離は困難である。米中経済は依然として深く結びついており、特に金融市場、消費財、グローバル企業活動において相互依存は残存している。

そのため現実には、「全面デカップリング」ではなく、「選択的・戦略的デカップリング」、すなわち安全保障に直結する分野に限定した分離が進行していると評価できる。この限定性こそが、今後の米中関係の安定性を左右する要因となる。


G2(米中)時代は到来するのか

1.G2論の背景

G2(Group of Two)とは、米国と中国が世界秩序を主導する二大国体制を指す概念であり、2000年代後半に提起された。中国の経済成長と国際的影響力の拡大を背景に、米中が協調して世界問題を管理するという発想である。

しかし第2次トランプ政権の対中政策は、このG2構想とは根本的に異なる方向性を示している。

2.トランプ政権とG2否定論

トランプ政権は、中国を「共に秩序を管理するパートナー」とは見なしていない。むしろ、既存の国際秩序を自国に有利な形で再編しようとする競争相手と位置づけている。この認識の下では、米中が対等な「共同支配者」となるG2体制は想定されない。

加えて、米国は同盟国ネットワークを重視し、中国を孤立させる方向で戦略を構築している。G2は本質的に多国間主義を弱体化させる構想であり、米国の同盟国からも警戒されている。

3.事実上の「G2的現実」

もっとも、G2が制度的に成立しないとしても、現実の国際政治において米中が圧倒的な影響力を持つ「事実上のG2的状況」は存在している。気候変動、国際金融、技術標準、軍事的安定といった分野では、米中の動向が世界全体を左右する。

この意味で、G2は「望まれざる現実」として部分的に成立しているが、それは協調的なG2ではなく、競争的G2である。


追記まとめ

第2次トランプ政権下において、台湾は米中競争の戦略的要衝として位置づけられ、実質的な関係強化が進められている。米中関係は構造的競争の段階に入り、全面対立を回避しつつ競争を管理する局面にある。G2時代については、協調的な二大国体制は否定される一方で、競争的な二極構造が事実上進行している。

したがって、第2次トランプ政権の対中・対台湾政策は、「覇権移行の管理」と「衝突回避を伴う競争激化」という二重の論理によって貫かれていると結論づけられる。


国際関係理論別の再整理

― 現実主義・制度主義・構成主義から見た第2次トランプ政権の対中政策 ―

1.現実主義(Realism)からの分析

現実主義の立場から見れば、第2次トランプ政権の対中政策は極めて一貫した「覇権維持戦略」として理解できる。国際システムは無政府状態にあり、国家は生存と相対的パワーの最大化を最優先に行動するという前提に立てば、中国の台頭は米国にとって不可避の脅威である。

この観点から、
・高関税と最恵国待遇撤回
・先端技術の輸出規制
・台湾への軍事的・政治的関与
・中国資本・投資への制限

はいずれも、中国の国力伸長を抑制し、米国の相対的優位を維持するための合理的行動と位置づけられる。

特に台湾政策は、現実主義的には「抑止の最前線」である。台湾を失えば第一列島線が崩れ、米国の西太平洋における軍事的影響力が著しく低下する。トランプ政権が台湾を明確に同盟国化しない一方で、実質的支援を拡大するのは、戦争リスクを抑えつつ抑止力を最大化する合理的選択である。

総じて現実主義は、第2次トランプ政権の対中政策を「感情的」「破壊的」とは見なさず、むしろ覇権国が衰退を回避するための典型的対応と評価する。


2.制度主義(Institutionalism)からの分析

制度主義の視点では、トランプ政権の対中政策はより評価が分かれる。制度主義は、国際制度やルール、相互依存が国家行動を制約し、協調を可能にすると考える。

第2次トランプ政権は、WTO体制や多国間枠組みよりも、二国間交渉と一方的措置を重視する傾向が強い。この点は、制度主義的には国際秩序の不安定化要因とみなされる。最恵国待遇の撤回や関税の一方的引き上げは、ルールに基づく貿易体制を弱体化させるからである。

一方で、制度主義的観点からも、完全な制度否定ではない点が重要である。
・金融市場の安定
・気候変動
・核拡散防止

といった分野では、米中間の制度的対話や協調は維持されている。これは、トランプ政権が制度を「価値として」ではなく、「手段として」選択的に利用していることを示している。

したがって制度主義から見た第2次トランプ政権は、「制度の破壊者」ではなく、「制度の選別的利用者」と評価する方が適切である。


3.構成主義(Constructivism)からの分析

構成主義は、国家の行動を物質的利益だけでなく、アイデンティティ、規範、言説によって説明する。この視点から見ると、第2次トランプ政権の対中政策は「物語の構築」という側面を強く持つ。

トランプ政権は、中国を単なる競争相手ではなく、
・不公正な国家
・自由主義秩序への挑戦者
・米国労働者の敵

として描写してきた。この言説は、国内政治と密接に結びつき、対中強硬政策への支持を正当化する役割を果たしている。

台湾もまた、「民主主義の防波堤」「自由世界の象徴」として語られ、その象徴性が政策選択を方向づけている。構成主義的に見れば、台湾問題は単なる地政学ではなく、米国自身のアイデンティティ確認の場でもある。

この点で、第2次トランプ政権の対中政策は、パワー政治であると同時に、意味と価値をめぐる闘争でもある。


日本の安全保障に与える影響

1.日本の戦略環境の変化

第2次トランプ政権の対中政策は、日本の安全保障環境を根本的に変化させている。最大の影響は、台湾海峡の緊張が日本の安全保障と不可分になった点である。

台湾有事は、
・在日米軍基地の使用
・南西諸島の防衛
・シーレーンの安全

に直結し、日本が「当事者にならざるを得ない」状況を生み出す。米国が台湾関与を強めるほど、日本もまた戦略的選択を迫られる。


2.日米同盟の深化と自律性のジレンマ

トランプ政権の対中強硬路線は、日米同盟の軍事的役割拡大を促している。共同訓練、装備の相互運用性、防衛計画の統合は進展している。

一方で、日本にとっての課題は「同盟深化」と「戦略的自律性」のバランスである。米中対立が激化するほど、日本は米国側に引き寄せられるが、中国は最大の貿易相手国でもある。この二重性は、日本外交の構造的制約である。


3.日本の選択肢

日本にとって現実的な選択肢は以下に集約される。
・日米同盟を基軸としつつ、過度なエスカレーションを抑制
・台湾海峡の安定を外交的に重視
・経済安全保障における中国依存の段階的縮小

日本は米中対立の「前線国家」であると同時に、「緩衝国家」としての役割も担わざるを得ない。


米中は互いに必要とし合っている

1.対立と相互依存の同時進行

第2次トランプ政権下においても、米中は完全に切り離されていない。むしろ、戦略的競争が激化するほど、相互依存の重要性が逆説的に浮き彫りになっている。

米国にとって中国は、
・巨大市場
・製造能力の集積地
・金融・債務関係の相手

であり、中国にとって米国は、
・技術・金融の中枢
・ドル基軸体制の中心
・最大級の消費市場

である。


2.「敵対的相互依存」という現実

現在の米中関係は、「友好的相互依存」でも「完全対立」でもない。「敵対的相互依存」と呼ぶべき段階にある。互いに不信と警戒を抱きながらも、全面断絶は自国の損失になるため回避する関係である。

この構造がある限り、米中は衝突を避ける最低限の協調を維持せざるを得ない。


3.整理

第2次トランプ政権の対中政策は、
・現実主義的には覇権維持戦略
・制度主義的には選別的制度利用
・構成主義的には価値と物語の再構築

として理解できる。

日本はこの構造の中で、同盟と自律の間で難しい舵取りを迫られる。一方、米中は激しく対立しながらも、互いを完全には排除できない関係にある。

したがって、今後の国際秩序は「新冷戦」でも「G2協調」でもなく、競争と依存が併存する不安定な均衡状態として展開していく可能性が高いと結論づけられる。

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