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コラム:歯周病、放置しないで、万病のもと

歯周病は成人に非常に多い病気であり、放置すると歯の喪失や咀嚼障害を招くだけでなく、慢性炎症を介して糖尿病や心血管疾患、誤嚥性肺炎、妊産婦アウトカム、認知症など多くの全身疾患と関連する可能性がある。
虫歯のイメージ(Getty Images)
日本の現状(2025年11月時点)

日本における歯周病は国民の口腔健康において最も大きな課題の一つである。厚生労働省の「令和4年 歯科疾患実態調査」によると、15歳以上における歯周病の有病割合は約48%に達しているなど、成人の多くが歯周疾患の何らかの影響下にあると推定されている。高齢化とともに歯を多く残す(8020運動の進展)は見られるが、歯周組織の健康維持が不十分だと咀嚼機能や生活の質に直結する問題が増える。歯科医療側でも、近年は口腔バイオフィルムと全身疾患の関連、管理の重要性を示す臨床ガイドラインの改訂が行われ、予防・治療・継続管理の体系化が進んでいる。

歯周病とは

歯周病は歯の周囲の組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨など)が慢性的に炎症を起こす感染性疾患であり、主因は口腔内プラーク(細菌のバイオフィルム)である。初期は歯肉炎(出血や腫脹など軽度の炎症)として始まり、放置すると歯周ポケットの形成、歯槽骨の吸収、そして最終的に歯の支持喪失(歯の動揺や脱落)へと進行する。歯周病は局所的な炎症と破壊を引き起こす一方で、慢性的な全身性の炎症反応を誘発しうる点が特に問題である。

局所的な危険性(口の中)

歯の喪失

  • 歯周病は成人における歯を失う主たる原因であり、進行した歯周炎は歯を支える骨(歯槽骨)を溶かすため、保存不可能になった歯の抜歯を招く。歯を失うと咀嚼効率が低下し、食べ物の選択が偏ることで栄養状態にも悪影響が及ぶ。歯科臨床でも早期介入が歯を残すために重要とされ、定期的な評価・治療が推奨されている。

咀嚼機能の低下

  • 歯の喪失や痛み、歯の動揺があると満足な咀嚼ができなくなる。咀嚼機能の低下は消化吸収や食事内容の変化を通じて全身の健康(栄養摂取、体力、体重管理)に影響する。高齢者では観察力や運動機能とも関連して転倒リスクや社会活動の低下を招きうる。

口臭の発生

  • 歯周病部位は嫌気性細菌の温床となり、揮発性硫黄化合物などを発生して口臭(口腔臭)の原因となる。口臭は社会的・心理的な影響も大きく、生活の質の低下を招く。

顎の骨の吸収

  • 歯周病の進行により歯槽骨は吸収され、顎の骨形態そのものが変化する。骨吸収が進むとインプラント治療の難易度が上がったり、義歯の適合が悪化したりするなど、その後の補綴治療にも不利になりうる。
全身への深刻な危険性(全身疾患との関連)

近年の疫学や分子レベルの研究から、歯周病が単に「口だけの病気」ではなく、全身の健康に影響を及ぼす可能性が多数示されている。慢性炎症や細菌/細菌成分の血行性流入を介して糖代謝、心血管系、呼吸器系、中枢神経系、妊産婦のアウトカムなどに関連するという報告がある。以下に代表的な関連領域を挙げる。

糖尿病の悪化(相互関係)

  • 糖尿病と歯周病は双方向の関係にあることが臨床・疫学研究で示されている。糖尿病患者は歯周病の罹患率・重症度が高く、逆に重度の歯周炎を有することが血糖コントロールを悪化させる(HbA1c上昇)。慢性炎症がインスリン抵抗性を促進したり、炎症性サイトカインの増加が代謝に悪影響を与えたりすると考えられている。したがって、糖尿病管理には口腔内の炎症コントロールが不可欠であり、歯周治療は血糖管理改善に寄与する可能性がある。これは臨床ガイドラインや専門家の総説でも強調されている。

心血管疾患・脳血管疾患(動脈硬化)

  • 歯周病と心血管疾患(冠動脈疾患など)や脳血管疾患(脳梗塞など)との関連が多くの研究で示されている。慢性の口腔内感染やそれに伴う低レベルの全身性炎症(CRPやサイトカイン上昇)が動脈硬化を促進するメカニズムの一つとして提唱されている。日本および国際的な研究レビューでも、歯周病が心血管系イベントのリスク因子である蓋然性が示唆されているが、因果関係の強さや介入によるリスク減少の程度は研究ごとに異なるため慎重な解釈が必要である。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

  • 特に高齢者において、口腔内の歯周病病原菌やプラーク中の細菌が誤嚥により気道に入ることで誤嚥性肺炎を引き起こす。口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に有効であるという報告があり、在宅や施設での口腔ケアの重要性が指摘されている。

認知症

  • 歯周病と認知機能低下やアルツハイマー病との関連を示す疫学的研究が増えている。慢性炎症や口腔内病原体の中枢神経系への影響が仮説として提唱され、観察研究では歯周炎がアルツハイマー病リスクを高める可能性が示唆されているが、現時点では完全な因果関係は未確定であり更なる研究が必要である。

早産・低出生体重児

  • 妊婦の歯周病と早産・低出生体重児のリスクに関する報告やメタ解析は多数存在する。いくつかの研究は歯周病を有する妊婦で早産や低出生体重児の発生率が有意に高いことを示しているが、地域差や研究設計の差異もあり、治療介入が妊娠アウトカムをどの程度改善するかについては一貫性に欠ける点もある。妊娠期における口腔ケアは周産期の健康維持の観点から重要視されている。

その他:サイレント・ディジーズ(静かなる病気)・万病のもと

  • 歯周病は初期に自覚症状が乏しいことが多く、「痛みが出た頃には進行している」ことがあるため「静かなる病気(サイレント・ディジーズ)」と呼ばれることがある。慢性的な炎症が全身に微妙に影響を与えることで、多様な慢性疾患のリスクを底上げする「万病のもと」としての側面が危惧されている。
歯周病の対策(概論)

歯周病対策は「予防(セルフケア)」「早期発見・専門的治療」「継続管理(メンテナンス)」の三本柱である。プラークを日々コントロールすること、定期的に歯科でプロフェッショナルケアを受けること、生活習慣を整えることが基本戦略である。日本の歯周病ガイドラインは、診断・治療・維持管理のフローを示し、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)や必要に応じた歯周外科治療、メンテナンスの重要性を強調している。

自宅でのセルフケア(毎日)

歯周病予防の最前線は毎日のセルフケアである。以下に具体的な項目を挙げる。

正しい歯磨き(ブラッシング)

  • 正しいブラッシングは歯周病予防の基礎である。ポイントは毛先を歯面と歯肉溝に密着させ、力を入れすぎず小刻みに動かすこと、そして時間をかけて全顎を丁寧に磨くことである。歯ブラシの種類(硬さやヘッドサイズ)は個人差があるため、歯科医・歯科衛生士の指導を受け自分に合うものを選ぶことが望ましい。歯磨きは朝晩だけでなく、食後に行う習慣が理想的である。

歯間清掃

  • 歯ブラシだけでは歯間(隣接面)や歯周ポケットのプラークを十分に除去できない。デンタルフロスや歯間ブラシの適切な使用が重要であり、特に歯間ブラシは歯間がやや広くなっている成人や高齢者に効果的である。個々の歯間形態に合わせた選択と使い方が重要で、誤った使用は歯肉を傷つける原因になるため、歯科での指導を受けるとよい。

補助的アイテム

  • 洗口剤(抗菌成分含有)、舌クリーナー、電動歯ブラシ(適切に使えばプラーク除去効率が上がる)、口腔内保湿剤などが補助的に有効である。だが、補助剤はあくまで補助であり、基本は機械的プラーク除去である。

歯ブラシの交換

  • 毛先が開いた歯ブラシは清掃効率が落ちるため、一般的には1〜3か月を目安に交換することが推奨される。頻繁に磨く人や毛先が早く広がる人は早めに交換する。
歯科医院でのプロフェッショナルケア(定期的に)

家庭でのケアに加え、歯科医院での定期的な専門的ケアが歯周病管理には不可欠である。

定期的な歯科検診

  • 定期的な検診により歯周病の早期発見やリスク因子の評価(喫煙、糖尿病、ブラッシング習慣など)が可能になる。定期検診は症状が出てから受診するよりも長期的な歯の保存に有利である。

専門的なクリーニング(PMTC)

  • PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)は、歯科衛生士が行う機械的な歯面清掃であり、着色除去やバイオフィルムの除去、再付着予防に役立つ。定期的なPMTCはプラークの再形成を抑えるのに有効である。

歯石除去(スケーリング・ルートプレーニング:SRP)

  • スケーリングやルートプレーニングは歯周基本治療の中核であり、歯肉縁下の歯石や病的セメント質を除去して炎症源を取り除く。SRPは多くの臨床ガイドラインで初期の標準治療として位置づけられている。

歯周外科治療

  • SRPで改善が得られない重度の歯周病では歯周外科処置(フラップ手術や骨造成など)により病的ポケットの改善、歯槽骨の再生を図ることがある。歯科医師は患者の全身状態や生活背景を踏まえ最適な治療計画を立てる。
生活習慣の改善

歯周病対策は口腔衛生だけでなく生活習慣の改善とセットで行うことで効果が高まる。

禁煙

  • 喫煙は歯周病の重大なリスク因子であり、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の進行や治療反応性が悪い。禁煙は歯周治療の成功率を高めるため極めて重要である。

バランスの取れた食事

  • 十分な栄養(特にビタミンC、カルシウム、タンパク質など)を摂ることは歯肉や歯槽骨の健康維持に重要である。過度な糖分摂取はプラークの増殖を助長するため注意が必要である。

ストレス管理と十分な睡眠

  • ストレスや睡眠不足は免疫機能を低下させ慢性炎症を助長するため、歯周病の悪化要因になり得る。規則正しい生活リズムや適切な休息が望ましい。

糖尿病の管理

  • 前述のとおり糖尿病は歯周病と密接に関連するため、血糖コントロールを適切に行うことが歯周病管理にも繋がる。医科と歯科の連携が重要である。
その他のセルフケアのポイント

ガムも有効(「キシリトール100%」が最適)

  • 食後にキシリトール含有ガムを咀嚼することで唾液分泌が増え、酸の中和や再石灰化促進、ミュータンス菌の活動抑制などが期待できる。市販のガムには様々な配合があるため、キシリトール100%(糖アルコールで虫歯の原因にならない)が推奨されるケースもあるが、ガムは歯磨きの代替ではなく補助である点に注意する。

唾液分泌の促進・自浄作用・抗菌作用・再石灰化

  • 唾液は口腔の自浄作用、唾液中の緩衝能、カルシウム・リンによる再石灰化、抗菌物質による防御など多面的に歯を保護する。十分な水分、咀嚼刺激(硬めの食材やガム)、口腔内の乾燥対策は有益である。

咀嚼による効果・歯ぐきのマッサージ・脳への刺激

  • よく噛むことは唾液分泌を促し、顎筋や歯周組織に適度な刺激を与える。咀嚼は消化や栄養吸収を助けるだけでなく、脳への感覚刺激として認知機能にも良い影響を与える可能性が示唆されている。
専門家データとエビデンス(要点の整理)
  1. 有病率・国の調査:厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査」は国民の口腔保健状態を示す重要な基礎資料であり、歯周病の高い罹患率と定期検診の受診状況が報告されている。

  2. ガイドライン:日本歯周病学会などによる「歯周治療のガイドライン2022」は診断・治療・維持管理の標準的手順を示し、SRPや継続的メンテナンスの有効性を支持している。

  3. SRP等の基本治療:日本の専門家文書や臨床ガイドラインがSRP(スケーリング・ルートプレーニング)を歯周基本治療として位置づけ、その効果と継続的ケアの必要性を示している。

  4. 全身疾患との関連:歯周病と心血管疾患、脳血管疾患、糖尿病、誤嚥性肺炎、妊産婦アウトカムなどとの関連を示す疫学・レビュー研究が複数あり、特に慢性炎症を介した影響が注目されている。

実践的な行動指針(短期〜長期)
  • 毎日の基本は適切なブラッシング+歯間清掃(フロス/歯間ブラシ)を欠かさないこと。

  • 生活習慣面では禁煙、栄養バランス、十分な睡眠、ストレス管理を行うこと。

  • 糖尿病など全身疾患がある場合は医科と連携し血糖管理を厳格に行うこと。

  • 6か月〜1年に1回程度ではなく、個々のリスクに応じて歯科での定期チェック・スケーリングやPMTCを受けること。重度例では歯周外科やより頻繁なメンテナンスが必要になる。

今後の展望

口腔と全身の連関に関する研究は進展しており、分子レベルでのメカニズム解明や、口腔内微生物叢(マイクロバイオーム)と全身炎症の相互作用、個別化医療(リスクプロファイルに基づく予防戦略)などが今後の発展領域である。口腔ケアを単なる「口の清潔習慣」から「全身の健康を支える医療的ケア」へと位置づける動きが強まっている。将来的には医科・歯科のより密接な連携による慢性疾患管理や、高齢社会に向けた包括的な口腔ケア政策が重要になる。

まとめ
  1. 歯周病は成人に非常に多い病気であり、放置すると歯の喪失や咀嚼障害を招くだけでなく、慢性炎症を介して糖尿病や心血管疾患、誤嚥性肺炎、妊産婦アウトカム、認知症など多くの全身疾患と関連する可能性がある。

  2. 毎日の正しいブラッシングと歯間清掃、補助的アイテムの活用、そして定期的な歯科での専門クリーニング(PMTC)や必要な歯周治療(SRP、外科的治療)を組み合わせることが最も有効な対策である。

  3. 禁煙、適切な栄養、十分な睡眠、ストレス管理、そして糖尿病などの全身疾患管理が歯周病予防に直結するため、生活習慣の改善が重要である。

  4. 口腔の健康管理は単に「口の中だけ」の問題ではなく、全身の健康維持の基盤であり、個人の日常行動と医療機関での継続的ケアの両輪で支える必要がある。


① 糖尿病と歯周病の関連メカニズム

歯周病と糖尿病は「双方向性の関係」にあることが、世界的に確立された医学的知見である。特に、日本糖尿病学会・日本歯周病学会の合同声明(2016 ほか)を含むガイドライン類は、この相互関係を明記している。

■ 糖尿病が歯周病を悪化させるメカニズム

1. 高血糖による免疫機能低下

高血糖状態が続くと、白血球(特に好中球)の機能が低下し、細菌に対する貪食能が弱くなる。その結果、歯周ポケット内の細菌増殖が抑えられにくくなり、炎症が長期化しやすい。

2. 血管障害(微小血管障害)

糖尿病は細い血管を障害し、歯肉や歯槽骨への酸素・栄養供給が低下する。これは治癒力の低下を意味し、歯周炎の進行を加速させる。

3. AGEs(終末糖化産物)の蓄積

高血糖状態が続くと蛋白質と糖が結合し、AGEsが蓄積する。AGEsは歯周組織の炎症性細胞に作用し、TNF-α、IL-1β、IL-6 などの炎症性サイトカインを過剰に発生させる。
慢性炎症がより強く、より長く続く。

4. コラーゲン代謝の異常

AGEsの蓄積はコラーゲン繊維の架橋を増やし、組織の脆弱化を招く。歯周組織の支持力が落ちるため、歯槽骨吸収が進行しやすい。


■ 歯周病が糖尿病を悪化させるメカニズム

1. 慢性炎症によるインスリン抵抗性の亢進

歯周病炎症により、IL-6やTNF-αが血中に流れ込み、肝臓・筋肉でのインスリン作用を阻害する。
インスリン抵抗性が上昇 → 血糖コントロール悪化

2. 肝臓での糖新生の増加

炎症性サイトカインは肝臓で糖をつくる働きを促進し、空腹時血糖が上がりやすくなる。

3. 歯周治療が HbA1cを改善するというエビデンス

数多くのメタ解析で「歯周治療後にHbA1cが平均0.3〜0.6%低下」という結果が示されている。
※0.3〜0.6%は薬剤1剤追加に匹敵する改善量である。


② 妊娠中の口腔ケア方法

妊娠期はホルモン変動(エストロゲン・プロゲステロンの増加)により歯肉が炎症を起こしやすく、妊娠性歯肉炎が高頻度で発生する。さらに、妊娠中の歯周病は早産・低出生体重児のリスクと関連するという報告が複数ある。

■ 妊娠初期(〜12週)

  • つわりがあるため歯磨きが難しくなる時期

  • 無理せず、できる範囲のケアが重要

  • 歯ブラシのヘッドを小さくしたり、香りの弱い歯磨き剤を使用

  • 食後すぐ磨けない場合は水やうがい薬で洗口だけでもよい

※X線撮影は原則避ける(緊急時は鉛防護下で可)

■ 妊娠中期(13〜27週)=歯科治療の最適時期

  • 安定期で、スケーリング・歯周治療(SRP)も問題ない

  • 歯科医院でのチェック・クリーニングを積極的に実施

  • 歯肉の腫脹・出血があれば早期対応する

■ 妊娠後期(28週〜出産)

  • 大きな体勢変換がしにくい時期

  • 仰臥位低血圧症候群に注意(左側臥位が望ましい)

  • 長時間治療は避け、メンテナンス中心でよい

■ 妊娠中に避けるべきもの

  • 強い刺激の歯磨き剤

  • 過度なアルコール系洗口剤

  • 不必要な歯科X線

  • 全身麻酔や長時間の外科手術(緊急時を除く)


③ 具体的なブラッシング手技(専門的ガイドライン準拠)

歯周病予防の基本は「適切な機械的プラーク除去」であり、日本歯周病学会・日本歯科衛生士会の推奨に沿った代表的なブラッシング法を示す。

《1》 スクラビング法(最も一般的で効果が高い)

  1. 歯ブラシの毛先を歯面に直角に当てる

  2. 力は150〜200g程度(毛先が広がらない軽圧)

  3. 1〜2mm幅で小刻みに横振動

  4. 1歯につき10〜20回の細かいストローク

  5. 歯肉と歯面の境目(歯肉縁)を重点的に

メリット:誰でも行いやすく、プラーク除去効率が高い。


《2》 バス法(歯周病予防で最も推奨される)

  1. 毛先を歯軸に対して45°で歯肉溝(歯周ポケットの入口)へ

  2. そのまま微振動させ、毛先を溝内へ入れ込むイメージ

  3. 歯間部に毛先が届くため歯周炎の改善に有効

注意:強すぎると歯肉退縮を起こすことがある。


《3》 ローリング法(高齢者・子ども向け)

  1. 歯肉側から歯の先端へ向けてクルッとローリング

  2. 歯肉を傷つけにくい

  3. 握力の弱い人でもやりやすい


歯間ケア(必須)

● デンタルフロス

  • 歯と歯の接触点下のプラーク除去に最も有効

  • 歯磨きだけでは6〜7割しか落ちないが、フロス併用で9割以上に向上

● 歯間ブラシ

  • 歯間が広い場合

  • サイズを適切に選ばないと歯肉を傷つけるため、歯科で相談するとよい


補助的手段

  • 電動歯ブラシ(正しく使えば効率が高い)

  • 抗菌洗口液(クロルヘキシジンなど。ただし長期連用は要注意)

  • 舌クリーナー

  • フッ化物配合剤(再石灰化促進)


④ 年齢別のメンテナンス間隔

メンテナンス(定期検診・クリーニング)は「一律ではなく、年齢・歯周病リスクに応じて」設定するのが国際的基準である。

■ 子ども(0〜12歳)

  • 目安:3〜6か月おき

  • 目的:虫歯予防、仕上げ磨き指導、歯並びチェック

  • 萌出期はプラークが付きやすく、歯肉炎にも注意

■ 思春期(13〜18歳)

  • 目安:3〜4か月おき

  • ホルモン変動で歯肉炎が増えやすい

  • スポーツ飲料・間食習慣のチェックも重要

■ 若年成人(19〜39歳)

  • 目安:3〜6か月おき

  • 歯周病の初発が増える時期

  • 喫煙・ストレスなど生活習慣の影響が強くなる

  • フロス使用習慣を確立する良い時期

■ 中年(40〜64歳)

  • 目安:3〜4か月おき(歯周病リスク中〜高)

  • 歯周ポケットの定期測定、SRPの再評価

  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症などとの関連も考慮

  • 喫煙歴がある場合は特に短い間隔が望ましい

■ 高齢者(65歳〜)

  • 目安:1〜3か月おき

  • 誤嚥性肺炎予防の観点から「口腔清掃の質」が極めて重要

  • 義歯調整や乾燥(ドライマウス)対策がセット

  • 介助が必要な場合は家族・施設での口腔ケア指導を強化


まとめ
  • 糖尿病と歯周病は強く結びついており、互いを悪化させる「双方向性」の慢性炎症疾患

  • 妊娠中はホルモン変化で歯肉炎が悪化しやすく、安定期での歯科管理が重要

  • ブラッシングはスクラビング法・バス法が基本で、歯間清掃(フロス・歯間ブラシ)は必須

  • メンテナンス間隔は年齢とリスクにより3か月〜6か月(高齢者は1〜3か月)が標準

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