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コラム:2026年の日本経済、内需主導の景気構造続く

2026年の日本経済は緩やかな景気成長と物価安定、金利正常化への移行という三つの軸を中心に動くと考えられる。
日本、東京都(Getty Images)

2026年1月時点における日本経済は、長引く物価上昇と賃金上昇の均衡点を探りながら、緩やかな景気拡大局面を維持している状況である。2022年以降の消費者物価の持続的な上昇は、コロナ禍後の需要回復と世界的な供給制約の影響が複合したものだが、その後もインフレ率は2%前後で推移しつつ、高い水準での安定が図られている。2025年末から日銀は段階的な利上げを実行し、金融政策の正常化へ向けた動きを見せているが、物価上昇率との兼ね合いにより、政策対応は依然として慎重である。このような背景のもと、企業収益は概ね堅調、労働市場は逼迫感が強く、賃上げ圧力が高まっている。これらの動きは2026年の景気・金融・財政動向を規定する主要な要素となっている。


2026年の日本経済(総論)

2026年の日本経済は、コロナ後の需要回復の遅れとグローバルリスクの増大という複合的な外部環境のもとで、緩やかな成長維持を軸とする内需主導の景気構造が続くと見込まれる。また、金融政策は長年の超低金利からの脱却過程を進める方向であり、「金利のある世界」への適応が進む一年となる。政策面では、高市政権(自民・維新)による積極的財政運営の推進が景気下支えとして重要な役割を果たす見込みである。


緩やかな景気拡大を維持

多くのエコノミスト予測によると、2026年の日本は緩やかな景気拡大局面を維持すると見られる。内需では個人消費が持ち直しつつあり、設備投資も人手不足の解消に向けた自動化・デジタル化投資が進展することで底堅い動きを示す。特にAI・デジタル技術の本格的な導入が企業生産性向上に寄与し、景気の下支え要因となる可能性がある。

一方で、外需は米国・中国の経済動向や関税政策の影響を大きく受ける。米国主導の関税政策によって日本の輸出競争力への圧力がかかるリスクも指摘されているが、世界経済全体の緩やかな回復基調は下支え要因となる。欧米ではインフレ抑制後の政策調整が進む見込みであり、日本企業の海外ビジネス環境にとってはプラスとマイナスが交錯する状況となる。


本格的な「金利のある世界」への適応

2026年は、日本銀行を中心に本格的な利上げ局面への移行が予想されている。2025年末時点で政策金利は0.5%程度まで引き上げられ、2026年にかけてさらに段階的な利上げが進む見込みである。市場では2026年末までに政策金利が1.25%〜1.5%程度へと引き上げられる可能性が想定されている。これは日銀の金融正常化の明確な歩みであり、「金利のある世界」への経済適応を意味する。

金利上昇は企業・家計にとってコスト増要因であるが、同時に金融収益改善や投資判断の活性化にも寄与する可能性がある。特に長期金利の上昇は国債市場や不動産市場に影響を与えるため、慎重な政策運営と市場調整が重要になる。


マクロ経済の概要

日本経済の2026年マクロ環境は以下の要素で整理できる。

  1. GDP成長: 緩やかな拡大が見込まれ、官民の需要が底堅く推移する。

  2. 物価動向: コアインフレ率は2%前後で安定化を目指しつつ推移する。

  3. 金融政策: 利上げを段階的に進め、金融正常化を進行。

  4. 労働市場: 人手不足が継続し、賃金上昇圧力が持続。

  5. 財政: 積極財政による景気下支えが行われる中、債務残高管理が課題となる。


GDP成長率見通し

2026年の実質GDP成長率については、内閣府および複数の経済研究機関の予測が参考になる。日銀や大手シンクタンクの見通しによると、実質GDPは0.5〜1.0%前後の成長率で推移する可能性が高い。特に内需の持ち直しが成長の主因であり、企業投資や消費支出の回復が寄与要因になると見られている。インフレ率が比較的落ち着く中で実質成長率が持ち直す局面となることが期待される。


株価

株式市場については、2025年に日経平均株価が史上最高値を更新したという指標が出ており、企業収益改善への期待が反映されている。2026年も、緩やかな成長継続と金融正常化期待が株価を支える基調となる可能性がある。ただし、世界経済リスク・米国金利動向・地政学的リスク等の外部ショックは株価のボラティリティを高める要因であり、注意が必要である。


賃金と物価:実質賃金の定着、長らく続いた物価高による実質賃金の目減り解消か

2026年の春闘では、5%〜6%以上の賃上げ率が予想されている。これは深刻な人手不足を背景にした労働市場の逼迫感と企業収益改善が賃金圧力を高めているためである。大手労組のみならず中堅企業でも賃金引き上げを重視する動きが見られる。これにより、物価上昇と賃金上昇のバランスが改善し、名目賃金上昇が実質賃金改善へとつながる局面が出現しつつある。

インフレ率が2026年前半にはやや低下し、2%前後で推移するとみられる中、賃金上昇幅がそれを上回る場合、実質賃金が初めて持続的にプラスに転じる可能性が指摘されている。これは長年にわたりデフレ的圧力に悩まされた日本経済にとって重要な転換点となる。


個人消費

個人消費は2026年も日本経済の主要な成長エンジンである。実質賃金の改善が進むことで消費者マインドが底堅さを取り戻し、耐久消費財からサービス消費まで幅広い分野で支出の改善が期待される。また、観光需要の回復やイベント需要が消費を下支えする。

一方で、消費者心理は依然として物価水準の高さや金利上昇への警戒感を抱いているため、消費の力強さには限界があるという指摘もある点には留意が必要である。


春闘・高い賃上げ率(5%〜6%以上)の継続

2026年春闘では、労使交渉において連続した高い賃上げ率が見込まれている。これは、労働市場の逼迫に加えて、中小企業にも賃上げが波及し始めている証左である。賃金上昇は消費の拡大につながると同時に、企業のコスト構造にも影響を及ぼすが、全体としては好循環を形成する可能性が高い


金融政策:利上げの進展、政策金利は1.25%〜1.5%程度まで段階的に引き上げられると想定

2026年は日銀の政策金利正常化の進展が注目される年である。段階的な利上げにより、政策金利は1.25%〜1.5%程度へ引き上げられる可能性が市場で想定されている。これは長期にわたる超低金利政策からの転換であり、金融機関の収益改善と共に、金利を織り込んだ投資・消費行動が顕著になる。


金利上昇の影響

金利上昇は、住宅ローン等の借入コスト増加をもたらす一方で、預貯金の利子改善や金融機関の収益性改善に寄与する。また、為替市場では金利差と経済のファンダメンタルズを反映した円の動きが注目される。利上げ期待に伴い、一時的に円高圧力が観測される場面がある一方、国際金利動向との兼ね合いで円相対的な弱さが継続する可能性も指摘されている。

長期金利

長期金利は政策金利に先んじて上昇する傾向があり、国債市場での調整が進む。これにより、年金・保険等の長期資金運用に影響が出るため、市場と政策当局の綿密な協調が必要となる。


労働市場と社会的課題

日本の労働市場は依然として深刻な人手不足状況にある。少子高齢化に伴う労働力供給の制約は構造的課題となっており、企業は外国人労働者の導入や定年延長、AI・自動化技術による労働生産性の向上に取り組んでいる。この中で、AI活用は単なる効率化にとどまらず、企業競争力強化や新産業創出の鍵となる。AIによる業務自動化・需要予測・サービス提供の高度化は、労働市場の変革を促進する。

同時に、働き方改革や社会保障制度改革など社会的課題への対応が求められる。高齢者雇用の拡大や若年層の就業支援、非正規・フリーランスへの支援策が政策課題として浮上する。


主なリスク要因

海外情勢は日本経済にとって最大級のリスク要因の一つである。米国の関税政策や貿易摩擦は輸出企業の収益に直接的な影響を与える可能性がある。また、中国経済の減速や地政学的リスク(台湾・朝鮮半島情勢など)は日本の経済環境に不確実性をもたらす。

米国の関税政策

米国が日本製品への関税を強化する動きは、輸出競争力低下の要因となる可能性がある。専門家の分析では、米国の関税政策の影響評価を注視する必要があると指摘されている。

その他地政学的リスク

地域的な緊張やサプライチェーンの混乱は、世界経済の成長見通しに影響を及ぼす。特に半導体・エネルギー関連の供給網への影響は、製造業にとって重大な不確実性となる。


財政、高市政権(自民・維新)の方針

高市政権は積極財政・成長戦略を掲げ、需要拡大と企業投資促進を重視する政策を打ち出している。財政政策は、公共投資の拡大や減税策、成長産業への投資支援を通じて内需刺激を図る方針である。特に企業の設備投資やAI・デジタル化への支援は、成長持続の重要な柱となる。

同時に、政府債務の管理と社会保障費の持続可能性という長期的課題への対応も構造的に求められる。


今後の展望

2026年の日本経済は緩やかな景気成長と物価安定、金利正常化への移行という三つの軸を中心に動くと考えられる。実質賃金の持続的な改善と金融政策の段階的な調整は、経済全体の健全な成長につながる可能性がある。他方で、海外経済リスクや地政学的な不確実性、労働市場の構造的課題は依然として大きなテーマであり、政策対応の柔軟性と持続可能性が問われる。


まとめ

総括すると、2026年の日本経済は以下のような特徴を持つ――

  1. 景気は緩やかに拡大する見込みである。

  2. 政策金利は段階的に引き上げられ、「金利のある世界」へ適応が進む。

  3. 実質賃金の改善が期待され、物価上昇とのバランスが重要となる

  4. 個人消費は持ち直すが、外部環境リスクに注意が必要である

  5. 労働市場は逼迫感が強く、AI活用と社会保障改革が重要

  6. 財政政策は成長戦略を重視しつつ、債務管理も継続して課題となる

これらの点を総合し、2026年の日本経済は内需主導の安定成長局面を目指し、政策と市場が相互に調整しながら歩む段階にあると結論付けられる。


参考・引用リスト

  • Diamondオンライン:2026年の景気予測とインフレ・賃上げ・金利分析(2026年1月)

  • Invesco グローバル経済見通し(2026年)

  • Reuters/日銀政策・予測(2025年)

  • Fidelity 投信:2026年日本株見通しレポート(2025年12月)

  • Dai-ichi Life Research Institute:日本経済見通し(2025–2026)

  • JRI 月次経済見通しレポート:物価・金利動向分析(2025)

  • BoJ 経済・物価展望報告(2025)

  • Deloitte Insights:インフレ傾向と経済分析(2025)


以下では、日本経済における主なリスク要因として重要性を増している
①本格的な利上げ局面への移行
②米中を軸とした外需の不透明感
③深刻化する供給制約
の三点について、マクロ経済的観点から体系的に詳述する。


本格的な利上げ局面への移行がもたらすリスク

2026年に向けた日本経済の最大の構造変化の一つが、本格的な利上げ局面への移行である。日本銀行は長年にわたり超低金利政策および量的・質的金融緩和を継続してきたが、物価上昇率の定着と賃金上昇の広がりを背景に、金融政策の正常化を段階的に進めている。この過程自体は、金融政策の持続可能性を回復させる上で不可欠である一方、経済全体に複合的なリスクを内包している。

第一に、家計部門への影響である。住宅ローンを中心とした変動金利型の負債を抱える家計にとって、金利上昇は可処分所得の減少要因となる。実質賃金が改善しつつあるとはいえ、その上昇幅が金利負担増を十分に吸収できない場合、消費マインドの冷え込みを招く可能性がある。特に中間層以下の家計では、消費の抑制が顕在化しやすく、個人消費の回復にブレーキがかかるリスクが存在する。

第二に、企業部門への影響である。利上げは資金調達コストの上昇を通じて、設備投資や研究開発投資を抑制する要因となる。日本企業は過去数十年にわたり低金利環境に適応した経営を行ってきたため、金利上昇に対する耐性は必ずしも十分とは言えない。特に中小企業では、収益基盤が脆弱な企業ほど借入金利上昇の影響を受けやすく、倒産リスクの増大や雇用調整につながる可能性がある。

第三に、財政面でのリスクも無視できない。日本は世界でも突出した政府債務残高を抱えており、長期金利の上昇は国債利払い費の増加を通じて財政制約を強める。現時点では平均償還年限の長期化により影響は限定的とされているが、金利上昇が持続的なトレンドとなった場合、中長期的には財政運営の柔軟性が低下する可能性がある。この点は、積極財政を志向する政権運営にとって重要な制約条件となる。


米中を軸とした外需の不透明感

日本経済にとって、外需の動向は依然として重要な成長要因である。特に米国と中国という二大経済圏の景気動向および通商政策は、日本の輸出・企業収益・為替市場に直接的な影響を及ぼす。2026年に向けて、この外需環境には高い不透明感が存在する。

まず、米国経済の動向である。米国ではインフレ抑制後の高金利環境が続いており、景気減速や企業投資の鈍化が懸念されている。さらに、米国の通商政策は国内産業保護を重視する傾向を強めており、日本企業にとっては関税強化や非関税障壁のリスクが高まっている。特に自動車、半導体、機械といった日本の基幹輸出産業は、政策変更の影響を受けやすい。

次に、中国経済の構造的減速である。不動産市場の調整や人口減少、過剰債務問題を背景に、中国経済はかつての高成長路線から脱却しつつある。この減速は、日本の輸出需要のみならず、アジア全体のサプライチェーンにも影響を及ぼす。中国向け輸出の減少や現地生産拠点の不確実性は、日本企業の中長期的な成長戦略に再考を迫る要因となる。

さらに、米中対立の長期化は、日本経済にとって二重のリスクをもたらす。技術分野や安全保障分野での分断が進むことで、サプライチェーンの再編が必要となり、企業のコスト負担が増大する可能性がある。一方で、地政学的に中立的な立場を維持することが難しくなり、日本は経済安全保障と経済効率性の間で難しい選択を迫られる。


深刻化する供給制約

第三のリスク要因は、深刻化する供給制約である。これは短期的な景気循環の問題ではなく、日本経済の構造的制約として長期的な影響を及ぼす。

最も顕著なのは、労働力不足である。少子高齢化の進行により、生産年齢人口は減少を続けており、多くの産業で人手不足が慢性化している。建設、運輸、医療・介護、サービス業を中心に、需要が存在しても供給が追いつかない状況が発生している。この結果、経済全体の潜在成長率が押し下げられ、インフレ圧力が高まりやすくなる。

次に、エネルギー・原材料供給の制約である。日本はエネルギー資源を海外に大きく依存しており、国際情勢の変化はコスト構造に直結する。エネルギー価格の変動は企業収益と家計負担の双方に影響を及ぼし、インフレの不安定化要因となる。また、半導体や重要鉱物といった戦略物資の供給制約も、製造業の生産計画に影響を与えている。

さらに、インフラ・制度面での供給制約も見逃せない。老朽化したインフラの更新遅れ、物流網の制約、規制や制度の硬直性は、経済活動の円滑な拡大を妨げる要因となる。これらは短期的な景気刺激策では解消しにくく、構造改革や中長期的な投資が不可欠である。


総合評価

以上の三つのリスク要因は、それぞれ独立して存在するだけでなく、相互に連関しながら日本経済に影響を及ぼす。利上げによる需要抑制、外需の不透明感による輸出減速、供給制約による成長制限が同時に進行した場合、日本経済は想定以上に成長力を失う可能性がある。

一方で、これらのリスクを適切に管理し、金融政策・財政政策・成長戦略を有機的に組み合わせることができれば、日本経済は「安定したインフレと賃金上昇を伴う緩やかな成長」という新たな均衡点に近づく可能性もある。2026年は、その成否を左右する極めて重要な転換期に位置づけられる。

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