コラム:衆議院選2026、非正規雇用問題
非正規雇用問題は、日本の労働市場における長年の構造的課題として存在し、賃金格差、雇用不安、社会的排除のリスクを内包している。
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現状(2026年2月時点)
2026年2月8日投開票の第51回衆議院議員総選挙が日本で実施される(公示1月27日)。この選挙は、経済政策、社会保障、労働政策が主要な争点の一つとして浮上している。とりわけ、少子高齢化と労働力不足の深刻化、その中での非正規雇用の扱いは労働市場の構造的課題として注目されている。
日本の労働市場では、バブル崩壊後の構造変化により非正規雇用の割合が増加し、男女や年齢階層によって格差が顕著な状態が長年続いてきた。総務省や厚生労働省の統計に基づくと、非正規雇用者は全労働者の大きな割合を占めており、特に若年層、中高年層、女性の雇用構造の中で重要な位置を占めている。こうした動きは近年の労働力不足や人口減少とも関連し、政策的対応が必要な状況である。
非正規雇用問題とは
非正規雇用とは、一般に正規の直接雇用でなく、契約期間、労働時間、待遇面で正規雇用と相違がある雇用形態を指す。具体例としては、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などが含まれる。これらの労働者は、賃金水準の低さ、昇進・昇給機会の少なさ、社会保険の適用差等の不利益が生じやすいという特徴が指摘されている。
非正規雇用の問題は単なる雇用契約形態の多様性を超え、所得格差、生活の不安定性、将来の年金・社会保障への影響、子育て・住宅形成への制約など社会全体のリスクとして拡大している。労働市場の「二極化」とも呼ばれるこの構造は、正規・非正規間で長期的な格差の固定化を生む要因とされる。
統計的状況
厚生労働省の統計では、非正規雇用者の賃金は正規雇用者の賃金よりも低く、勤続年数が長くなるほどその差が拡大する傾向がある。また同一労働同一賃金の施行後も、扱いが改善した面はあるが依然として格差が残るという指標が存在する。
2026年2月8日投開票の衆議院選挙
2026年2月8日投票・同日開票の衆議院選挙は、自民・維新連立政権の信を問う選挙として、公示から12日間の戦いとなる。また立憲民主党と公明党を中心とした中道改革連合、国民民主党、共産党、れいわ新選組、参政党などの政党が候補者を擁立し、労働政策を含む多岐にわたる政策論争が展開される。
主な論点と各党の動向
労働政策においては、同一労働同一賃金、最低賃金引き上げ、雇用安定策、社会保険適用拡大といったテーマが争点となっている。政党ごとのスタンスは労働政策アンケートなどから一定の傾向が読み取れる。
労働処遇の格差是正(同一労働同一賃金)
日本では2020年4月より「同一労働同一賃金」が制度として導入され、正規・非正規の待遇差を合理性のないものは認めないという原則が労働契約法・パートタイム・有期雇用労働法で規定された。これにより、賞与や退職金制度等での待遇差の是正が進んでいるが、実務上の課題や格差は残っていると指摘されている。
ガイドライン見直し
2025年以降、厚労省は同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案を公示し、最高裁判例等を踏まえた待遇の取扱い等についての原則や具体例を補強する動きを見せている。これに対して日本労働弁護団など労働者側からは、現行見直しが不十分でありさらなる待遇格差是正が必要との点が提起されている。
現状の課題
格差と二極化
非正規雇用問題は単なる雇用形態の分布だけではなく、生活の不安定性、賃金格差、キャリア形成の阻害要因として構造化されている点が課題である。非正規労働者は将来の年金受給額や住宅取得など中長期的な人生設計において不利益を抱える可能性が高い。
若年・中高年層の問題
「雇用氷河期世代」など中高年層の中には、非正規雇用で長期にわたり安定した雇用に至らない人々が存在し、生活保障と労働市場統合の両面で課題が指摘されている。政府はこの世代に対する支援プログラムを実施しており、訓練・再就職支援など労働市場への統合を図る政策パッケージを推進している。
政策の方向性
賃上げと最低賃金
賃上げは労働者全体の所得向上に直結する政策課題であり、春闘を中心に労働組合や経済界が働きかけを強めている。最低賃金については地域・産業ごとに設定され、2025年度には平均時給実質値が過去最高水準に達する見込みであり、これが非正規雇用者の賃金底上げにつながるとの分析がある。
賃上げ要求
日本労働組合総連合会(連合)などは、2026春闘において総合的な賃上げを求める方針を示しており、特に非正規雇用者については実質賃金の引上げを重視している。
最低賃金
最低賃金は地域別に異なるが、近年は政府・労働界・経営側の調整を経て引き上げが継続しており、これが非正規雇用者の基本的な賃金底上げに寄与するとされる。ただし、引き上げ幅や企業への影響などについては意見が分かれる。
社会保障と雇用安定
雇用の安定策としては、正社員への転換促進、キャリアアップ支援、公共職業訓練の強化などが政策メニューとして想定されている。これらは非正規労働者の職業能力向上と労働市場での再活躍を促すことが期待される。
社会保険の適用拡大
非正規労働者の社会保険への加入促進(健康保険、厚生年金等)は、将来的な生活保障の観点から重要視される。日本ではパートタイム労働者の一定条件下で社会保険適用が進められているが、依然として免除制度や加入要件の違いが不利益を生む要因とされる。
各党の主なスタンス
以下は2026年衆議院選における主要政党の非正規雇用・労働政策の傾向である(政党アンケート等による)。
自民党
自民党は基本的に市場原理と経済成長戦略を重視しつつ、雇用安定やスキルアップ支援を掲げる。非正規雇用については同一労働同一賃金の原則遵守を前提としつつ、企業負担や柔軟な雇用形態活用を重視する方向性がみられる。
中道改革連合(立憲+公明)
立憲民主党は非正規雇用の解消や最低賃金大幅引き上げを含む労働基本法の制定を主張するなど、労働者保護重視の政策を提起しているとの情報がある。
公明党は消費者・生活者視点を重視し、社会的包摂政策、教育支援等を通じた労働市場統合策を提案する可能性がある。
国民民主党
中道政策を掲げつつ、現実的な経済成長と労働市場改革をバランスさせる立場をとる。
参政党
労働政策については国民優先を標榜するが、詳細な公約は党ごとの政策文書による吟味が必要である。
共産党・れいわ新選組
共産党は非正規雇用の待遇改善、最低賃金引き上げ、雇用の安定化を強く訴える立場であり、れいわ新選組も労働者保護を重視する姿勢が強い。
今後の展望
今後の労働政策は、労働力不足という構造的課題の中で、非正規雇用者の待遇改善と雇用安定化を如何に実現するかがキーポイントとなる。また人口減少・高齢化に伴い労働参加率を維持・向上させるため、女性や高齢者、外国人労働者の活用と社会保障政策との整合性が検討される必要がある。
まとめ
非正規雇用問題は、日本の労働市場における長年の構造的課題として存在し、賃金格差、雇用不安、社会的排除のリスクを内包している。2026年衆議院選挙では、労働政策が有権者の関心事項となり、各政党の非正規雇用に対する立場や政策が選択の重要な判断材料となっている。具体的には同一労働同一賃金の運用見直し、最低賃金引上げ、雇用安定化策などが主要論点であり、今後の政策動向は日本社会の労働環境および経済構造に大きな影響を与える可能性が高い。
参考・引用リスト
第51回衆議院議員総選挙概要(公示・投開票日)について(nippon.com)
日本労働弁護団「労働政策に関する政党アンケート」2026年1月28日
Reuters・日本企業の労働力不足報告(2025)
Reuters・春闘における賃上げ動向(2025)
厚生労働省:「パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の施行状況等」2025年12月23日版
厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン見直し案」
日本労働弁護団「同一労働同一賃金ガイドライン見直し案に対する意見書」
内閣府「非正規雇用の現状と課題」関連統計(2010年代以降)
JILPT Research Report No.230:非正規労働者の状況(2024)
