SHARE:

コラム:体重管理の重要性、病気との関係および管理に必要なこと

今後、日本社会において体重管理は、個人の健康問題にとどまらず、医療費抑制や社会保障制度の持続性に直結する重要課題となる。
ウェストを測る女性(Getty Images)
1.日本の現状(2025年12月時点)

日本は世界的に見て平均寿命が極めて長い国であり、2025年12月時点においても男性81歳前後、女性87歳前後という高水準を維持している。一方で、健康寿命と平均寿命の差は依然として大きく、日常生活に制限を抱えながら生きる期間が長期化していることが社会的課題となっている。厚生労働省や国立研究開発法人医療系研究機関の報告によると、要介護状態に至る主要因として、脳血管疾患、心疾患、糖尿病、運動器疾患などの生活習慣病が大きな割合を占めている。

これらの生活習慣病の多くは、食生活、運動習慣、身体活動量、睡眠、ストレスと密接に関連しており、その中核に位置づけられるのが体重管理である。日本では肥満率は欧米諸国と比べると低いものの、男性を中心に内臓脂肪型肥満が増加していること、また若年女性や高齢者において低体重(やせ)が増加していることが指摘されている。このように、日本社会では「肥満」と「やせ」という二極化が進行しており、体重管理の重要性は年齢・性別を問わず極めて高い。

2.健康を維持し生活習慣病を予防する上で極めて重要な体重管理

体重管理は、健康を維持し生活習慣病を予防する上で極めて重要な基盤的要素である。体重は単なる体格の指標ではなく、体脂肪量、筋肉量、骨量、水分量といった身体構成要素の総合的結果であり、栄養状態や身体活動量、内分泌機能、代謝状態を反映する。

多数の疫学研究により、体重が適正範囲に維持されている人ほど、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患などの発症リスクが低いことが明らかにされている。日本人を対象とした大規模コホート研究でも、BMIが極端に高い、あるいは低い集団では、全死亡率や疾病罹患率が上昇するU字型の関係が確認されている。

3.体重管理の重要性と栄養状態・健康状態を示す重要な指標

体重管理の重要性は、体重が栄養状態や健康状態を示す重要な指標である点にある。体重やBMI(Body Mass Index)は、身長と体重から算出される簡便な指標であり、個人や集団の健康リスク評価に広く用いられている。

日本肥満学会や世界保健機関(WHO)の基準に基づき、日本ではBMI18.5未満を低体重(やせ)、18.5以上25未満を普通体重、25以上を肥満と定義している。さらに、日本人ではBMI22が最も病気になりにくい「標準体重」とされており、これは多数の疫学データから導き出された経験的知見である。

4.適正体重を維持する意義:筋力・免疫力・ホルモンバランス・生活機能

適正体重を維持することは、筋力や免疫力の維持、ホルモンバランスの安定、さらには生活機能の維持に直結する。筋肉量は基礎代謝を支える主要因であり、体重が適正であっても筋肉量が不足すれば、代謝低下や転倒リスクの増加につながる。特に高齢者では、低体重と筋肉量低下が重なることでサルコペニアやフレイルを招きやすい。

また、脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、レプチンやアディポネクチンなどの生理活性物質を分泌する内分泌器官である。体脂肪が過剰あるいは不足すると、ホルモンバランスが乱れ、免疫機能低下や炎症反応の亢進を引き起こす可能性がある。結果として、感染症への抵抗力低下や慢性疾患の進行につながる。

5.病気との関係:適正範囲を超えた体重がもたらす健康リスク

体重が適正範囲を超えると、様々な健康リスクが顕在化する。特に肥満(BMI25以上)は、生活習慣病の主要な原因として位置づけられている。

5-1.肥満と生活習慣病

肥満、特に内臓脂肪型の肥満は、インスリン抵抗性を高め、2型糖尿病の発症リスクを著しく増加させる。また、高血圧、脂質異常症を併発しやすく、これらが重なることでメタボリックシンドロームが形成される。メタボリックシンドロームは動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中といった致死的疾患を引き起こすリスクを高める。

さらに、肥満は大腸がん、乳がん、肝がんなど複数のがんの発症リスク上昇とも関連していることが、国内外の学術論文で報告されている。

5-2.低体重(やせ)の問題

一方、低体重(BMI18.5未満)も深刻な健康問題を引き起こす。若い女性では、過度なやせ志向により骨量減少や月経異常が生じやすく、将来的な骨粗鬆症や低出生体重児出産のリスクが指摘されている。

高齢者においては、低体重が筋力低下を招き、虚弱(フレイル)の主要な原因となる。フレイルは要介護状態への移行リスクを高め、健康寿命を短縮させる重要な要因である。

6.体重管理に必要なこと

体重管理を適切に行うためには、複数の要素を総合的に実践する必要がある。

6-1.定期的な体重測定

定期的な体重測定は、体重変動を早期に把握し、生活習慣の見直しにつなげるための基本である。専門家は、毎日または週数回の測定を推奨しており、数値の変化を客観的に捉えることが重要である。

6-2.エネルギー消費を増やす工夫

エネルギー消費を増やすためには、日常生活の中で身体活動量を高めることが有効である。通勤時の歩行、階段利用、家事活動なども重要な運動要素である。

6-3.筋力を維持・向上させる

筋力を維持・向上させることは、基礎代謝を高め、体重管理を容易にする。レジスタンス運動や自重トレーニングを継続的に行うことが推奨される。

6-4.バランスの取れた食事と適度な運動

バランスの取れた食事は、体重管理の根幹である。エネルギー量だけでなく、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを適切に摂取する必要がある。また、継続できる適度な運動を習慣化することが重要である。

6-5.専門家への相談と適切な指導

医師、管理栄養士、保健師、運動指導士など専門家への相談は、個々の状態に応じた安全かつ効果的な体重管理を可能にする。専門機関の指導を受けることは、長期的成功に不可欠である。

7.今後の展望

今後、日本社会において体重管理は、個人の健康問題にとどまらず、医療費抑制や社会保障制度の持続性に直結する重要課題となる。ICTやウェアラブルデバイス、ビッグデータを活用した個別化健康支援の進展により、より精度の高い体重管理が可能になると期待される。

学術的知見と実践を融合させ、社会全体で体重管理の重要性を共有することが、健康寿命延伸の鍵である。


参考文献(References)

1.厚生労働省
 令和5年 国民健康・栄養調査報告.厚生労働省,東京,2024.

2.厚生労働省.
 健康日本21(第二次)最終評価報告書.厚生労働省,東京,2024.

3.厚生労働省.
 日本人の食事摂取基準(2025年版).第一出版,東京,2024.

4.世界保健機関(World Health Organization).
 Obesity and overweight: Fact sheet.WHO,Geneva,2024.

5.World Health Organization.
 Global status report on noncommunicable diseases 2023.WHO,Geneva,2023.

6.日本肥満学会.
 肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版,東京,2022.

7.日本肥満学会.
 肥満症治療に関するステートメント.日本肥満学会誌,28(4),2023.

8.Matsuzawa Y, Funahashi T, Nakamura T.
 The concept of metabolic syndrome: contribution of visceral fat accumulation and its molecular mechanism.
 Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, 18(8):629–639, 2011.

9.Kadowaki T, Yamauchi T.
 Adiponectin and adiponectin receptors.
 Endocrine Reviews, 26(3):439–451, 2005.

10.Prospective Studies Collaboration.
 Body-mass index and cause-specific mortality in 900,000 adults: collaborative analyses of 57 prospective studies.
 The Lancet, 373(9669):1083–1096, 2009.

11.Muramoto A, Matsushita Y, et al.
 Association between body mass index and mortality in Japanese population.
 Journal of Epidemiology, 24(6):444–452, 2014.

12.WHO Expert Consultation.
 Appropriate body-mass index for Asian populations and its implications for policy and intervention strategies.
 The Lancet, 363(9403):157–163, 2004.

13.Nakamura K, et al.
 Optimal BMI for the lowest mortality in Japanese populations.
 Obesity Research & Clinical Practice, 8(3):e234–e242, 2014.

14.Cederholm T, et al.
 ESPEN guidelines on nutrition in geriatrics.
 Clinical Nutrition, 38(1):10–47, 2019.

15.Fried LP, et al.
 Frailty in older adults: evidence for a phenotype.
 Journal of Gerontology: Medical Sciences, 56(3):M146–M156, 2001.

16.Ross R, et al.
 Importance of assessing cardiorespiratory fitness in clinical practice.
 Circulation, 134(24):e653–e699, 2016.

17.Hall KD, et al.
 Energy balance and its components: implications for body weight regulation.
 The American Journal of Clinical Nutrition, 95(4):989–994, 2012.

18.Harvard T.H. Chan School of Public Health.
 Healthy Weight: The Science Behind Weight Loss and Weight Maintenance.Harvard University Press,Boston,2022.

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします