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コラム:2026年の原油市場、ボラティリティの高い一年に

2026年の原油市場は、供給過剰懸念により価格が軟調に推移する見込みが有力である。
油田とマーケットのイメージ(Getty Images)
現状(2026年1月時点)

2026年初頭の原油市場は、世界的な需給バランスが緩んだ状態で推移し、原油価格は軟調に推移している。年初のブレント原油価格は60ドル台前半で推移し、WTI(米国産標準原油)も同等の水準となっている。これは世界的な供給過剰懸念が強まっている影響を反映した動きであり、投資家心理にも下押し圧力がかかっている。

多くの金融機関や調査機関は、2025年の需給緩和がそのまま2026年前半まで続くとの見方を示し、在庫水準の増加や原油市場の余剰感が価格に織り込まれている。これらの傾向は市場参加者のセンチメントにも大きく影響している。


2026年の原油市場(総論)

2026年の原油市場は、総じて供給過剰懸念を背景に価格が軟調に推移する可能性が高い。これは主要国・地域での原油増産と、需要の伸びがそれに追いつかないとの見通しに基づく判断である。複数の国際機関や市場アナリストは、2026年は需給が緩和され、在庫が積み上がるとの予想を共有している。

原油市場の基本ファンダメンタルズは供給サイドの増強と、需要サイドの成長鈍化とのせめぎ合いになっている。この構造は、OPECプラス政策、非OPEC生産国の増産、そして世界経済の成長ペース等、多岐にわたる要因の影響を受けている。


供給過剰が懸念され価格は軟調に推移する見方が有力

国際エネルギー機関(IEA)は、2026年の石油市場について大幅な供給過剰となる可能性を報告している。IEAの月報は、2026年には1日あたり最大約409万バレルの供給過剰が発生すると予測しており、市場にかなりの余剰感が生じるとの見方を示した。

米国エネルギー情報局(EIA)の短期エネルギー見通し(Short-Term Energy Outlook: STEO)でも、世界の原油在庫は引き続き積み上がると予想され、供給が需要を上回る状況が続くとされる。EIAは2026年を通じて在庫増加が価格に下押し圧力をかけるとの見方を示し、ブレント価格は平均で55ドル前後まで低下する可能性があるとしている。


市場の主な見方と要因

1.供給過剰懸念

供給過剰懸念の主因は以下の通りである。

非OPECプラス国の生産増加

米国、ブラジル、カナダ、ガイアナ等、非OPECプラス国の原油生産量が引き続き拡大している。EIAの予測では、これらの国々が2025年から2026年にかけて世界の石油生産成長の中心となる。

OPECプラスの供給方針

OPECプラスは価格サポートのために生産調整を続けているものの、高水準の在庫が価格下押し要因となっている。最新のOPECプラスの計画では、2026年の第1四半期まで増産を一時停止する方針が出されており、これが価格の急落をある程度抑制している側面もある。


2.EIAは2026年の世界石油生産量を日量1.07億バレルと予想

ユーザー指定の条件に「EIAが2026年の世界生産量を日量1.07億バレルと予想」とあるが、最新のEIA STEOでは世界生産量について詳細なバランス予測が発表されている。EIAの見通しでは、生産は需要を上回り在庫を積み上げる構図になっており、平均生産量は高水準を維持するとされる(具体的数値は各種レポートで近似値が示されているが、世界全体で約1億バレル/日超の水準を想定している)。


需要動向

米国経済の緩やかな回復がコンセンサス

景気面では米国経済の緩やかな回復がコンセンサスである。FRBや主要エコノミストは、米国の景気が緩やかに成長すると見ており、これが原油需要の底支えになるとの見方を示している。ただし、この需要増加は供給増加ほどの勢いを持たない可能性が高い。

需要は供給増加に追いつかず

世界の原油需要は非OECD諸国を中心に増加する見込みである。OPECの需給報告では、2026年の世界石油需要は前年比で増加する予測が出されているが、その伸びは供給の伸びを下回る可能性があると指摘されている。


OPECプラスの動向

2026年初頭の増産見送り(1-3月)が価格を下支え

OPECプラスは、2026年1-3月に増産を見送る方針を維持している。これは市場の供給過剰懸念を抑えるための協調姿勢であり、価格の急落を一定程度防いでいる。

増産再開が市場予想を超えれば価格は大きく下落する可能性も

しかし、今後OPECプラスが予想を上回る増産を再開する場合、市場は再び供給過剰感を強め、原油価格が急落するリスクがある。特に需要成長が鈍化した局面で大幅な供給増加が起これば、市場需給の緩みが一段と進行する可能性が高い。


地政学的リスクと価格変動

米国(トランプ政権)の動向が不確実性を高める

米国政治の不確実性、特にトランプ政権のエネルギー政策は市場に影響を与えている。トランプ政権は化石燃料重視の政策を掲げており、規制緩和や掘削促進を行っている。ただし、これらの政策が実際の供給量拡大にどの程度寄与するかは不確実性が高い。

ベネズエラ情勢など地政学的リスクは上方圧力要因に

ベネズエラの政治的不安定化や経済制裁は、同国の原油生産に影響を与えうる要因として注視されている。これにより供給が予想以上に減少する場合、価格に上方圧力がかかる可能性がある。また、中東・アフリカ地域の紛争や制裁も同様のリスク要因となる。

ロシアの原油供給途絶懸念も(ウクライナ戦争)

ロシアとウクライナの紛争は、エネルギー供給に関するリスクを内包している。ロシアに対する制裁強化が原油輸出に影響を与える場合、市場の供給不安が高まり、価格急騰要因となる可能性がある。ただし、現時点ではこれが即座に世界的な供給危機につながる可能性は限定的との見方もある。


価格予測レンジ

2026年のWTI原油価格の予測レンジについては、需要・供給双方の不確実性を反映して広い幅が想定される。専門機関や市場アナリストの見立てでは、2026年を通じたWTIの年間平均価格レンジは1バレル当たり35~90ドル程度、ブレント原油では40~94ドル程度という幅広いレンジが想定されている。このような大きなレンジは、地政学リスクや需要減速、供給政策の変化といった不確実性の高さを反映している。


ボラティリティ(変動性)の高い一年に

2026年は、原油市場においてボラティリティが高い年になる可能性がある。供給サイドではOPECプラスの政策変更、非OPEC国の生産動向、政治リスクが価格に大きく影響する。需要サイドでは世界経済成長の鈍化や、自動車の電動化など構造的な需要変化が価格変動リスク要因となる。これらの複雑な要因が絡み合い、原油価格は上下に大きく振れる年になる可能性が高い。


今後の展望

2026年の原油市場の中長期的な展望は以下の通り整理できる。

  1. 需給の緩和傾向は継続
    在庫増加が供給側の増加を反映し、需給は緩和傾向が続く。

  2. 価格は軟調基調だが地政学リスクで上振れ余地あり
    基本は供給過剰と価格下落圧力だが、一部地域の供給不安が価格を支える可能性もある。

  3. エネルギー構造転換が需給需給の長期トレンドに影響
    EV普及や再生可能エネルギーの拡大が石油需要の構造転換を進める可能性がある。

  4. OPECプラスおよび非OPEC国の政策は依然重要
    供給調整の政策変化が市場の均衡に与える影響は依然大きく、市場参加者はこれらの動向を注視する必要がある。


まとめ

2026年の原油市場は、供給過剰懸念により価格が軟調に推移する見込みが有力である。供給は非OPECプラス国を中心に拡大し、OPECプラスも一時的な増産抑制に留まっている。世界経済の緩やかな成長により需要は増加するものの、供給増加に追いつかず、在庫積み上がりが価格下押し要因となる。地政学的リスクは価格上振れ要因として存在し、特にベネズエラ情勢やロシアの供給動向は注視が必要である。WTI価格は広いレンジでの変動が予想され、ボラティリティの高い年となる可能性が高い。また、長期的なエネルギー構造の変化も市場の不確実性を高める要因となっている。


参考・引用リスト

  1. 国际エネルギー機関(IEA)月報による2026年需給予測(供給過剰)

  2. 米エネルギー情報局(EIA)Short-Term Energy Outlook 2026年予測(在庫増・価格予測)

  3. EIA原油生産動向とWTI価格見通し(2026)

  4. 三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる2026年原油市場分析(供給超過)

  5. 東洋経済オンライン原油価格予想レンジ分析

  6. EBC原油価格動向とボラティリティ予想

  7. OPECプラスの供給方針と価格反応

  8. 原油市場価格下落傾向ニュース(2026年初頭)


以下は、2026年の原油市場の不確定要素を細分化して整理し、そして 2026年1月3日に発生した「米国によるベネズエラへの軍事攻撃とマドゥロ大統領の拘束・連行」が原油市場に与える影響についてまとめた分析である。専門機関・報道・国際情勢の現況を反映させながら整理する


2026年の原油市場の不確定要素(細分化整理)

原油市場の動向には多種多様な不確定要素が存在し、それらが価格・需給バランス・投資行動・国際政治を通じて価格変動や需給予想に影響する。この不確定要素をカテゴリー別に整理する。


Ⅰ.需給サイドの不確定要素

1.供給量変動要因:非OPECプラスの生産動向

米国のシェール生産やブラジル、ガイアナ、カナダなどの生産成長が引き続き世界市場の供給増加を牽引し得るが、掘削コスト・設備投資回収・資本コストの変動が生産量に影響する可能性がある(投資サイクル・採算性の不確定性)。
また、非OPECプラス国では政策変更や環境規制などが生産計画に影響を与える不確実性も存在する。

OPECプラスの生産政策の不確定性

OPECプラスは2026年前半に増産見送りを決定して価格を下支えしているが、今後の会合での方針変更や各国の生産履行状況が予断を許さない。増産再開時期や規模が市場予想を超えれば、供給過剰感が一段と強まり価格下押し圧力が高まる可能性がある。

原油在庫の動向

世界石油在庫は2026年にかけて積み上がるとの分析がインターナショナル・エネルギー・エージェンシー(IEA)やゴールドマンサックス(Goldman Sachs)によって示されているが、在庫の蓄積速度は需要動向や物流のボトルネック次第で変化し得る。高在庫が価格下落圧力を維持する一方、突発的な需要増によって在庫が思いのほか減少する展開も不確定要素である。


2.需要側の不確定要素

世界経済成長の変動

石油需要はGDP成長と密接に関係し、経済成長の鈍化やリセッションは需要予想に大きく影響する。特に中国やインドなど新興国の成長鈍化は、輸送燃料や工業用途での石油需要に下方圧力を与える可能性がある。IEAの分析では2026年以降、GDP成長と石油需要の相関性が弱まるとの見方もあるが、中期的な予測には不確実性が残る。

エネルギー構造転換の加速

EV(電気自動車)の普及、再生可能エネルギーへのシフト、エネルギー効率化の進展が中長期的な原油需要に影響する可能性があり、これらの進展速度が予測と異なる場合、結論的な需給バランスに変化が生じ得る。


Ⅱ.マクロ経済・金融政策関連の不確実性

1.米国の金融政策・政治要因

2026年の米国では中間選挙が予定されており、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利や金融環境の変化、財政政策が原油需要に影響する可能性が高い。FRB議長交代の可能性や利下げ・利上げの動向がマクロ需給環境と需給バランスに影響する。

また、トランプ政権下でのエネルギー政策や通商政策の変更が企業投資・原油需要・消費者の支出行動に影響を与える不確実性がある。


Ⅲ.地政学的リスクと国際関係の不確実性

1.中東・北アフリカの不安定化

中東や北アフリカ地域での政治的緊張、紛争、制裁の強化が原油供給に影響する可能性がある。これらの地域は依然として世界最大級の原油輸出地域であり、突発的な供給ショックが価格を急騰させるリスクが存在する。

2.ロシア・ウクライナ戦争の余波

ロシアが原油供給の大口供給国であることから、国際制裁や戦争の進展が供給量や輸出ルートに影響を与える可能性がある。戦争の激化や制裁強化が供給に影響した場合、価格に上方圧力が生じる不確実性がある。

3.米国・ベネズエラ問題(軍事行動・支配権変化)

2026年1月3日に米国がベネズエラに対する軍事攻撃を実施し、同国のマドゥロ大統領を拘束・連行したことは、地政学リスクとして非常に大きい出来事である。以下詳細に影響をまとめる。


米国によるベネズエラへの軍事攻撃と原油市場への影響

2026年1月3日に米国が実施したベネズエラへの軍事攻撃は、複数の報道・資料で確認された通り、首都カラカスを中心とした攻撃とマドゥロ大統領の拘束・連行が行われた。米国政府は攻撃の正当性を「麻薬取引とテロとの戦い」としたが、国際社会では多くの論争を引き起こしている。


1.ベネズエラの原油供給への直接的影響

① 既存の生産量の限定的影響

ベネズエラは過去に世界最大級の埋蔵量を保有していたものの、長年の経済・政治危機と米国の制裁により生産能力は大幅に低下し、世界全体の原油供給では1%未満のシェアにとどまると推定されている。したがって、直近の原油価格に対する供給ショックとしての影響は限定的であるとの見方が強い。国際的な原油市場は供給過剰で推移しており、ベネズエラ単独の供給減少が価格を大きく押し上げるインパクトは弱いとされる。

② 生産インフラの状態と将来開発

ベネズエラの原油インフラは老朽化・投資不足で脆弱であり、これを米国主導で大規模に修復・再稼働できるかは極めて不透明である。米国企業が参入したとしても、生産回復には多額の投資と長期間を要するため、2026年の実質的な供給増にはつながりにくいとの見方も多い


2.原油市場心理と価格への短期的影響

① 投資家心理とエネルギーセクターの反応

軍事攻撃直後、株式市場ではエネルギー関連株が上昇し、投資家のリスクオン心理が一時的に強まった局面も観測された。これは将来的に米国の介入によってベネズエラの石油資源が開放されるとの期待感が一部に存在するためである。

しかし、原油そのものの現物価格は大きな上昇には至っていないとの報道もあり、供給過剰の基調が依然として市場を支配していることを示している。

② 市場の反応は“地政学リスクが価格を押し上げる期待”と“供給過剰が押し下げる圧力”のせめぎ合い

ベネズエラ問題は地政学的なリスクプレミアムを価格に与える可能性があるが、現状では他の大供給国(サウジアラビア、ロシア、米国)の供給が依然強く、リスク要因が価格を大きく押し上げるまでには至っていないとの評価が多い。


3.地政学的影響の波及

① 国際法・国際秩序への影響と市場不安

国際社会の反応として、国連や複数の国が米国の軍事行動を国際法違反として批判しており、これが中東・その他産油国との緊張を高める可能性が指摘されている。こうした地政学的不確実性は原油市場におけるリスクプレミアムを押し上げる要因となるが、その程度と持続性は依然不透明である。

② ロシア・中国等の大国の反応

国際的にはロシアや中国が強く反対しており、これが米露関係や米中関係に新たな摩擦を生む可能性がある。こうした緊張の高まりは、原油輸出ルート(例えば黒海周辺)や制裁環境に影響を与える可能性があり、間接的な供給リスクとして価格変動要素になる可能性がある。


4.中長期的視点とシナリオ分析

① ベネズエラの石油復活シナリオ

最も強気のシナリオとして、米国がベネズエラの政治的安定化とインフラ再建を実現し、生産・輸出を大幅に増加させるケースが想定される。この場合、原油供給はさらに増加し、供給過剰傾向が長期化して価格下落圧力が強まる可能性がある。

② 内戦・政情不安の長期化シナリオ

一方、米国の介入が地域の反発や武装衝突を引き起こし、内戦状態に陥るシナリオもある。この場合、油田の運転・輸出が停止するリスクが増大し、価格に上方圧力がかかる不確定要素になる。


まとめ

2026年の原油市場は、多面的な不確定要素が重層的に存在する年である。需給面では非OPECプラス国の供給量、OPECプラスの政策、在庫状況、世界経済成長率などの見通しの変動要素がある。マクロ経済では金融政策や政治の変化が原油需要に影響し、地政学的には中東・ロシア関連の緊張、そして今回の米国によるベネズエラへの軍事攻撃とマドゥロ拘束問題が新たな不確実性として市場に影響を与えている。

ベネズエラ攻撃は、現状では世界的な供給過剰と足下の需給バランスを大きく変える直接のショックを与えていないものの、地政学的リスクプレミアムとして価格に反映される可能性があり、中長期的な政治・治安・生産インフラ回復の方向性によっては価格への影響が増幅する可能性がある

こうした不確定要素が同時並行的に作用する状況では、2026年の原油市場は価格変動リスクが高く、投資家や企業・政策担当者は多様なシナリオを想定したリスク管理と情報収集が必須となる。

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