コラム:米国と日本の株高、各市場の固有の強みとリスク
米国株高はイノベーション主導・収益性・金融政策が中心であり、日本株高は脱デフレとガバナンス改革、政策期待が主要な要因である。
.jpg)
現状(2026年2月時点)
2026年初頭の株式市場は、米国・日本ともなお高値圏で推移している。米国の主要株価指数であるS&P500は2025年に二桁の上昇を達成し、2026年も高値更新のシナリオが継続すると予想される観測が多い。日本株も日経平均が歴史的高値更新を見せており、政治・経済の両面から株高を後押しする材料が存在する状況である。
米国株高は主に企業収益性、金融政策の見直し、ハイテクセクターの牽引が大きく寄与している。一方、日本株高は脱デフレ、コーポレートガバナンス改革、政策期待、世界的なリスクオンの資金循環が背景として挙げられている。両者相関が強い局面も見られるが、構造要因には明確な差異が存在する。
米国と日本の株式市場
米国株式市場
米国株式市場は世界最大の株式市場であり、S&P500、NASDAQ総合、ダウ平均が主要株価動向の指標である。テクノロジー企業の比重が高く、市場全体のパフォーマンスはハイテク株主導の傾向が強い。2025年はトランプ政権下の関税政策等の不確実性にもかかわらず、S&P500は堅調な企業業績と政策期待から上昇した。
日本株式市場
日本株式市場は日経平均株価とTOPIXを中心とした構成であり、近年の株高は国内政策やガバナンス改革、海外投資資金の流入を反映している。特にガバナンス改革や名目経済の改善期待が市場評価を高めている。
米国株高の構造的要因:イノベーションと利下げ期待
AI・ハイテク主導の成長
米国株高の顕著な要因はAI(人工知能)とハイテク産業の成長である。これらセクターは市場全体の収益成長を牽引し、PER(株価収益率)拡大や投資家資金の流入を促している。複数の運用機関レポートは、AI関連投資と技術革新が市場期待値を押し上げる構造的要素として位置付けている。
ハイテク・グロース株は、ユーザー基盤の拡大とプラットフォーム経済のスケールメリットを背景に利益率を引き上げることができるため、中・長期投資家にとって魅力的な収益性を提供している。特に米国企業のEPS(一株当たり利益)は複数年にわたり二桁成長が予想され、これが相対的な株高要因になっている。
金融政策の転換
FRB(米連邦準備制度理事会)は2024~25年にかけて利下げを実施し、実質金利の低下を通じて企業活動や設備投資を後押ししてきた。利下げ環境は株式市場にとって一般にプラス要因であり、特に成長株への資金流入を促進する。市場では2026年も金融政策の柔軟性が株高を支えるとの見方がある。
収益性の高さ
米国企業は合わせて収益性の高さと強固なキャッシュフローを示している。これらの企業は増配・自社株買いなど株主還元を強化し、その結果として投資家評価が高まり株価が上昇する好循環が形成されている。
日本株高の構造的要因:脱デフレとガバナンス改革
脱デフレと名目成長
日本は長年のデフレ圧力からの脱却が進んでおり、名目経済成長率の改善が期待されている。政策金利が低い中でも消費者物価指数や企業収益が底堅く推移することで、名目成長への期待が株価に反映される。また、インフレ持続や実質賃金の改善に伴い、企業利益の増加が見込まれる局面となっている。
コーポレートガバナンスの向上
日本企業はコーポレートガバナンス改革を進め、PBR(株価純資産倍率)の上昇余地を縮小させる努力が続いている。海外投資家からの評価が改善し、経営効率化や自己資本利益率(ROE)の向上が進むことで、日本株の評価水準が引き上げられている。
政策期待
日本政府は成長戦略としてAI推進や財政支出拡大を掲げており、これら政策期待が株式市場にポジティブに作用している。政策アジェンダには技術投資促進や規制緩和が含まれ、日本企業の競争力強化につながるとの見方が強い。
日米の相関と差異
日米株式市場はグローバルな資金循環の影響を受けて相関関係が高い。米国株高局面では日本株にも資金が流れ、日本株指数が上昇する相関がしばしば観測される。リスクオン局面では世界の株価が同時に上昇する傾向があり、両市場の動きは一致する場合が多い。
構造的差異
一方で、米国株はハイテク・グロース銘柄の比重が高く、市場の収益ドライバーが成長セクター中心であるのに対し、日本株は伝統的セクターや製造業・内需関連の影響が大きい。また、米国は金融政策によるリスク選好の変動が強いが、日本は政策期待・ガバナンス改革が相対的に株価評価の重要な要素となっている。
リスク要因と検証
金利差の影響
日米間の金利差は為替と資金循環に大きく影響する。米国が利下げを続ける一方で日本が低金利を維持する状況は円安を促進し、これが輸出企業の収益改善につながる。しかし、金利差拡大は為替変動のリスク増大要因でもある。
地政学・貿易政策
米国の関税政策や地政学リスクは株価に短期的な影響を与え得る。トランプ政権下の関税政策は不確実性を高める一方、交渉進展によるリスク緩和も市場に織り込まれている。
バリュエーションと実体経済
高水準のPERや株価バリュエーションは将来的な調整リスクを内包する。投資家は株価が実体経済や企業業績と乖離しないかを評価する必要がある。
今後の展望
米国市場
米国市場はAI・ハイテク中心の成長が継続するとの予想が多いが、金融政策の変更や新興市場との競争激化が中長期のリスクとなる可能性がある。また、PER水準の高さは調整圧力として機能し得る。
日本市場
日本市場はガバナンス改革と名目成長期待により、中長期的な上昇余地があるとの見方がある。ただし、為替変動や外部環境の影響を受けやすい面は注意を要する。
まとめ
本稿では、米国と日本の株高を構造的に分析した。米国株高はイノベーション主導・収益性・金融政策が中心であり、日本株高は脱デフレとガバナンス改革、政策期待が主要な要因である。両市場は相関関係を持つ一方で、セクター構成や評価ドライバーに本質的な差異が存在する。今後は金利差、為替リスク、地政学的要因に留意しつつ、各市場の固有の強みとリスクを評価することが求められる。
参考・引用リスト
野村證券:「2026年の米国株見通し S&P500は高値更新を継続、年末7,200ポイントを予想」 – 野村ウェルスタイル記事
マネックス証券:「2026年米国株市場の見通し、S&P500は7,700ポイントへ」 – マネクリ記事
State Street:「2026年の株式市場見通し」 – 市場分析レポート
IG証券・石川順一アナリストの市場動向記事
DWS:「The Nikkei has scaled new heights」 – 市場動向分析
McKinsey:「Closing Japan’s valuation gap by changing corporate traditions」 – ガバナンス改革評価
2026年2月8日の衆議院選挙が日本の株式市場に与える影響
選挙結果と市場反応
2026年2月8日に実施された衆議院議員総選挙では、自民党が単独で衆議院定数の3分の2を超える316議席を獲得する歴史的な政権安定を達成した。この結果を受け、東京株式市場の主要指標である日経平均株価は史上最高値圏に上昇し、2月9日の取引では一時5万7000円台を超える水準となった。この株価上昇は、選挙結果を好感した国内外の投資家による買いが主因であり、選挙を契機とするポジティブなリスクオン・センチメントがマーケットに波及したとみられる。
安定政権と投資家期待
自民党の圧勝は、政策運営の安定性と政策の継続性を市場関係者に強く印象づけた。与党が衆議院で3分の2以上を占めることにより、法案成立が容易となり、積極財政・成長戦略の推進力が高まるとの期待が強まった。この点は、高市政権が掲げる経済アジェンダが実行段階に入りやすいと判断されたためであり、株式市場のリスク許容度を引き上げた。
短期的なボラティリティ
選挙結果そのものが織り込まれる過程において、選挙前後の短期的な株価ボラティリティの増大が観測された。特に選挙直前は期待と不透明性が入り混じり、日経平均株価は大幅な値動きを伴った。選挙後も、経済政策の具体的内容や市場受け入れが明確になるまでの調整局面が続く可能性が指摘されている。特に財政拡張政策が市場期待を超える規模となる場合、債券市場や金利動向への影響が株式評価に影響を与えるリスクとして意識される。
高市トレードの現状
「高市トレード」とは、高市早苗首相の政策アジェンダに対する期待を背景に、特定セクターや日本株全体に対する買いポジションを取る戦略を指す市場用語である。これは、政権が成長戦略・財政出動・規制緩和などを強化するとの見方から、株式市場へ積極的な資金流入が起きるシナリオを織り込んだポジションである。
選挙後の展開
衆議院選挙での与党圧勝を受けて、「高市トレード」は再燃しつつある。選挙後の株式市場では、高市政権の政策継続性が確認されたことにより、投資家が選好する銘柄群(たとえば防衛関連、インフラ・建設、輸出関連等)や主要指数全体への買いが優勢となった。短期的には、日経平均の上昇と連動したセクター物色が活発化し、史上高値更新の動きが観測された。
政策テーマ株とリスク評価
高市トレードにおける特徴は、政策テーマ株の選好が強い点である。投資家は、政府による規制緩和やインセンティブ政策が特定産業にもたらす利益を先取りする形でポジション形成を行う。ただし、市場関係者の一部では、政策実行の財源やインフレ・金利への潜在的な影響をリスクとして警戒する意見も存在する。特に、過度な財政拡張や長期金利上昇が相場全体の重しとなる可能性が指摘されている。
新NISA(少額投資非課税制度)による国内マネーの動き
新NISAは、2024年から大幅拡充・恒久化された少額投資非課税制度であり、株式及び投資信託の譲渡益・配当金が非課税となる積立投資制度である。「成長投資枠」と「つみたて投資枠」を組み合わせる新たな構造を持ち、日本の個人投資家による市場参加を促す政策の中心的制度となっている。
個人投資家の参与と投資行動
新NISAの制度導入後、個人投資家による株式市場への参加意欲が顕著に高まっているとの調査結果が報告されている。QUICK資産運用研究所による調査では、新NISA利用者の約87%が運用益を得ており、成功体験が個人投資家の投資行動を強化している。これは、従来の貯蓄中心の資産運用から株式・投信中心へのシフトを促進する要因として機能している。
新NISAによる資金フロー
国内マネーの動きを評価するうえで重要なのは、新NISAが株式市場への安定的な資金流入基盤を構築している点である。2024年時点のデータでは、新NISAによる買付額が大きく、日本株における買い付け割合が高いことが示されており、制度が国内株式市場の下支え要因として働いている。個人投資家の長期投資傾向の強さは、売却を抑制する効果もあり、需給バランスの安定化に寄与しているとの分析がある。
円安・海外投資との関係
一方で、新NISA利用者の投資行動は国内株だけでなく海外株式にも一定程度向かう傾向が観察されているため、資金が国内外で分散化されている点には留意が必要である。新NISAを利用する際、米国株などの成長市場への投資も活発であり、この点が為替・円安トレンドへの影響として解釈されることがある。
追記まとめ
2026年2月8日の衆議院選挙は、日本の株式市場に短期的なポジティブ・ショックをもたらし、政策安定性への期待を背景に株高を演出した。高市トレードは選挙結果により強化される局面にあり、政権アジェンダへの期待が株式需要を刺激している。同時に、新NISA制度は個人投資家の参加を長期的に促進し、国内マネーの株式市場への循環を制度面から下支えしている。ただし、政策の実行内容や金利・為替動向が中長期的な投資環境に与える影響は引き続き注視する必要がある。
参考・引用
- Market response to Japan election and Takaichi trade — Japan Forward: “Nikkei Tops 57,000 as Election Result Fuels ‘Takaichi Trade’”, (2026)
- Election impact on Nikkei, historic high — Tokyo報道新聞 (2026/2/10)
- Post-election market characterization — 株探 (2026/2/9)
- 新NISAと国内投資の影響分析 — 三井住友トラストAM コラム
- New NISA user survey — QUICK Asset Management Research Center (2026)
- 新NISA制度と政策背景解説 — 大和ネクスト銀行 コラム
選挙における政策公約比較
2026年2月8日の衆議院選挙に際して主要政党が掲げた公約のうち、経済・財政政策に直結し市場インパクトが大きい項目を比較整理する。
自由民主党(与党)
自民党は、景気・物価高対策を中心に掲げ、積極的な財政出動や税制措置を打ち出した。公約では、食料品等の消費税(物品税率8%)を一時的に停止する措置(2年間)など景気刺激的な税制優遇策が示されている。経済成長戦略としては、規制緩和による企業活動の活性化、デジタル化・インフラ投資促進が挙げられており、これらは成長期待の高いセクターへの資金流入を促す可能性がある。市場ではこれにより株価が上昇し、政策継続への期待が高まった。
日本維新の会(連立与党)
維新は財政効率化や行政改革、景気対策・年金・社会保障政策を掲げている。特に規制緩和・市場競争促進を重視するスタンスが特徴であり、企業収益性改善と市場魅力度の向上が期待される。ただし、財政支出規模については自民党と一部方向性が異なる面もある。
野党各党の経済政策
野党では、消費税率引き下げや給付金配布などのポピュリズム的な政策を掲げる政党もあり、税負担軽減策が競合したが、与党勝利により改革実行力という観点で市場評価が高まった。一方、野党案は築くべき財源への具体策が不透明であるとの指摘が市場内に存在したことも関連している。
新NISAによる投資信託銘柄別フロー(具体的数値)
新NISA(少額投資非課税制度)の導入後、投資信託市場における資金流入額は顕著に拡大している。この制度は個人の株式・投信への参加を促進し、株式市場に対する安定資金の供給源となっている。
主要投信の資金流入動向
2026年1月の資金流入額速報(推計値)によれば、新NISAの成長投資枠を利用した投資信託が大幅に資金を集めている。トップ銘柄は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」で5,890億円超の流入額を記録し、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」も2,947億円超に達している。また、日本株投信である「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」も457億円超の流入を示し、国内株式への資金流れが一定程度増加している。
このように、米国株・全世界型投信が引き続き強い資金流入を維持している一方、日本株型投信への投資も新NISAを通じて着実に増加している。これらの資金フローは国内外株式市場の需給バランスにプラス要因として寄与し、株式リスクプレミアムの低下と株価上昇を支えていると考えられる。
セクター別動向の分析
株式市場のパフォーマンスはセクターごとの収益環境やテーマ需要によって大きく異なる。日米株高局面における代表的セクター(半導体、金融、その他)の動向を整理する。
半導体セクター
半導体株はグローバルなAI・データセンター需要の高まりを背景に注目されている。2025年夏頃には、半導体関連企業の決算懸念から一時的に株価調整がみられたものの、情報・通信分野を中心にその後の上昇が観測されている。
長期的には、半導体市場の設備投資(WFE)が拡大し、AI向けチップ需要が牽引役になるとの予測がある。また、世界的な設備投資需要は売上高の増加と将来成長への期待を高める方向にあるとされる。
金融セクター
金融株はマクロ経済環境(利回り・金利差・貸出動向)への感応度が高い。2025年~2026年にかけては金利動向が流動的であり、預金流出・貸倒リスクの懸念が金融株に波及することが指摘されているが、金利上昇局面では銀行の利ザヤ改善が期待されるとの分析もある。
加えて、コーポレートガバナンスやデジタル化による効率化が進む中、金融セクターは中・長期的な収益向上のポテンシャルを有しているとの評価もある。
防衛・インフラ・素材
衆議院選挙後のリスク志向改善に伴い、防衛関連のセクター株やインフラ投資関連株が注目されるようになった。これは、政策的な需要増加や国防予算の強化期待が背景にあり、国内景気刺激策と関連企業の収益性向上に寄与している可能性がある。
また、DX・環境関連のテーマ株や、データセンター需要の高まりを受けた素材企業・電力インフラ関連なども、成長セクターとして市場の関心を集めている。
最後に
総括すると、選挙政策、公約内容、新NISAによる資金流入、そしてセクターごとの需要変化は複合的に株高要因として機能している。与党の経済政策の安定性確保は市場心理を改善し、株価上昇の背景になっている。また、新NISAを通じて国内個人投資家が株式・投信市場に積極的資金を投入する環境が構築されている。
さらに、半導体等の成長セクターと金融・インフラ等の景気循環セクターに資金が分散していることは、市場全体のリスク分散とリスク選好の拡大に繋がっている。これら複数ファクターの連動が、2026年2月時点の日米株高の背景を形成している。
参考・引用
“Japanese shares hit record high as Sanae Takaichi wins landslide election victory,” The Guardian (2026)
“Sanae Takaichi’s LDP wins supermajority in Japan election,” Financial Times (2026)
マネックス証券レポート:衆議院選挙と市場の動向
2026年衆院選 給付金・税制・経済政策の公約比較
NISA成長投資枠対象ファンド資金流入速報(2026年1月)
2025年12月投信資金流入額速報
2025年1月新NISA影響の資金流入増加
日本株式市場デイリーレポート(半導体領域)
日本株は下落、半導体関連の決算懸念(2025)
今後上がる株|セクター分析(DX・半導体成長)
米国株高環境下のセクター感応度(金融)
