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コラム:次世代太陽光の現状、克服すべき課題も

次世代太陽光は「高効率化」「用途の多様化」「軽量化・柔軟性」によって従来のシリコン中心のPV市場を補完あるいは部分的に置換する可能性を持つ。
ソーラーパネル(Getty Images)

世界の太陽光発電(PV)は近年も大幅に拡大しており、2023〜2024年にかけて年間の導入量は依然高い水準を維持している。IEAやPVPSの報告では、2024年時点で稼働中のPV容量は1.6TW超、PVが世界の電力需要に占める割合は8%強に達していると報告されており、今後も新規導入の主役が太陽光であると予測されている。従来のシリコン系パネルが市場の大部分を占める一方で、効率・コスト・用途拡大を狙う「次世代太陽電池」の研究開発と実証が世界的に加速している。

太陽光発電とは(基礎)

太陽光発電は太陽光エネルギーを半導体素子で直接電気に変換する技術で、太陽電池セルを複数接続してモジュール・パネルを形成し、これを架台や建物に設置して発電する。主流は結晶シリコン系(単結晶・多結晶)で、長寿命(20〜30年)と安定性が特徴であるが、製造の高温工程や重量、光吸収帯域の限界などの制約がある。次世代技術は薄膜化、軽量化、柔軟性、低温プロセスや高効率化(単セル効率を向上)などを通じて用途拡大とコスト競争力の向上を狙う。

主な次世代太陽電池(一覧)

主要な次世代太陽電池は以下のとおりで、研究・実証・一部量産化が同時並行で進んでいる。

  • ペロブスカイト太陽電池(単接合・タンデム)

  • タンデム型太陽電池(ペロブスカイト/シリコンなどの異種接合)

  • 有機薄膜太陽電池(OPV)

  • 量子ドット太陽電池(QD)

  • 色素増感太陽電池(DSSC)

  • その他(CZTS、CdTeやCIGSの派生、透明・半透明技術、建材統合型BIPVなど)

ペロブスカイト太陽電池(特徴、開発・実用化の動向)

特徴

ペロブスカイト太陽電池は、ハライド鉱物構造に類似する有機/無機ハイブリッド(一般にABX₃型)を光吸収層とする薄膜型太陽電池で、製造が比較的低温・低コストで済み、薄膜で高吸収係数を持つため非常に薄く作れる点が特徴である。研究開始から短期間で変換効率が急速に向上し、研究セル(ラボスケール)では20%台半ばの効率が報告されている。NRELや研究レビューのまとめでは、単セルの最高研究効率は20%台後半に到達していると記録されている。

開発・実用化の動向

世界と日本で産学官の投資・実証が活発である。日本のNEDOや政府は次世代型太陽電池の基盤技術開発と実用化支援を進めており、製造プロセスや封止技術、耐久性評価、フィールド実証に重点を置いている。日本政府は次世代型太陽電池戦略を打ち出し、2040年を見据えたコスト目標や実装方針を示しており、グリーンイノベーション基金等での支援も進む。海外ではオックスフォードPVなどがペロブスカイト/シリコンタンデムによる高効率化で商業化を目指しており、企業による量産ライン構築や実証プロジェクトも増えている。

技術課題(特に実用化へ向けて)

耐久性(環境・光・熱・水分による劣化)と長期信頼性、鉛など有害元素の含有(鉛代替材料の探索)、大型化・モジュール化時の歩留まり、封止・封止材の性能、リサイクル・廃棄処理等が主要課題である。現状では耐久性はシリコンに比べ短く、研究機関は10年程度から15年以上へ延ばす目標を掲げているが、実フィールドでの長期データが鍵となる。

タンデム型太陽電池(特徴、開発・実用化の動向)

特徴

タンデム型は複数の異なる吸収帯ギャップを持つセルを重ねることで太陽光のスペクトルをより効率的に利用する方式で、上部に高エネルギー光を吸収する薄膜(例:ペロブスカイト)、下部に低エネルギー光を吸収するシリコンを置く設計が典型的である。これにより理論上の限界効率を単一接合より大きく上回ることが可能で、実験室レベルおよびセルレベルで非常に高い変換効率が得られている。

開発・実用化の動向

ペロブスカイト/シリコンタンデムは商業的に最も実用化が近い次世代路線とされている。企業(OxFord PVや複数の大手・スタートアップ)が2025〜2027年頃を目途に大規模生産を視野に入れたライン拡張を計画しているとの報道や公表があり、2端子・4端子方式の双方で実用化トラックが走っている。研究レベルでは、プロセスのスケールアップ(大面積セルへの効率維持)と耐久性向上が焦点となっている。

有機薄膜太陽電池(特徴、開発・実用化の動向)

特徴

有機薄膜(OPV)は軽量でフレキシブル、半透明や着色・印刷適性が高く、建材一体型やウェアラブル、窓やモバイル用途に向く。製造は溶液プロセスでロール・トゥ・ロール印刷が可能なため低コスト化の潜在性があるが、バルクヘテロ接合の材料設計や電荷輸送の効率化がカギで、変換効率は近年の材料進化で改善しているが、実効効率はペロブスカイトや結晶シリコンに比べ低い場合が多い。

開発・実用化の動向

中国などでOPVの量産化準備や事業化が報じられており、用途を限定したニッチな市場(屋根の一部、BIPV、携帯充電、IoTデバイス電源)にまず投入する動きがある。耐久性と光電変換効率の両立、及び大量生産時の歩留まりが課題である。金融的支援や企業の投資も増加している。

量子ドット太陽電池(特徴、開発・実用化の動向)

特徴

量子ドット(QD)はナノサイズの半導体粒子で、サイズにより吸収スペクトルを制御できるため太陽光の選択的利用やホットキャリア抽出などの先端的太陽電池概念に使える。溶液プロセスでの製造が可能でフレキシブル化や色調制御が容易な利点がある。

開発・実用化の動向

研究段階で材料設計や表面処理、毒性(例:カドミウム含有)と安定性が課題となる。セル効率自体は急速に伸びているカテゴリもあるが、モジュール化・長期安定化が実用化に向けての主要課題である。研究は大学や企業で継続的に進んでいる。

色素増感太陽電池(特徴、開発・実用化の動向)

特徴

色素増感(DSSC)は光吸収色素が光を吸収して電子を注入する構造で、弱光下や室内光下での発電に強みがあるため、屋内IoTデバイスや低照度条件での利用が期待されている。製造が比較的単純であり、透明化や着色のしやすさも利点である。

開発・実用化の動向

近年は色素や電解質の安定化、固体電解質化(液体電解質は揮発・漏洩が課題)に向けた研究が進む。用途はBIPVのアクセントや室内電源などニッチ用途が中心で、研究拠点は欧州(EPFL等)や日本を含むアジア圏にも分布している。

その他(材料・応用の多様化)

CZTS(銅・亜鉛・スズ・硫化物)などの地球資源に優しい材料、透明電極や光学設計の改良、半透明BIPV、建材(窓・カーテン・壁材)一体型技術、車載向け軽量モジュール、フレキシブル発電体など実用途に合わせた派生技術が並行して進展している。

全体的な動向(産業化・規模拡大・コスト)

シリコン主導の市場は依然として巨大であるが、ペロブスカイトやタンデムによる効率向上で同一面積あたりの発電量増と設置面積の有効活用が可能になる点が注目される。政府や公的機関は高効率技術の研究支援と実証投資を拡大しており、日本でも次世代太陽電池に対するロードマップや支援策が整備されつつある。IEAなどの国際機関は太陽光が今後数年で再エネ拡大の主役を担うと見ている。

中国の動向

中国は既存のシリコン系パネルの大規模生産で世界シェアを牽引してきたが、次世代分野でも積極的に投資・量産体制を整えつつあり、ペロブスカイト系のスタートアップや生産ライン投資の報道が相次ぐ。大量生産能力の優位性やサプライチェーン統合により、短期的にはコスト面での競争力を維持する見込みであり、国際市場での価格競争や過剰供給リスクも指摘されている。

国際社会の潮流(政策・市場)

欧州や英国、米国、日本、韓国などが次世代PVの研究・実証プロジェクトに資金を投入している。欧州ではBIPVや分散型発電の政策支援、英国や日本では高付加価値化・産業育成を狙う投資が見られる。国際組織や市場レポートは、2030年代にかけて既存シリコンと新技術のハイブリッド的普及が進み、土地制約のある国や都市型展開でペロブスカイト等が強みを発揮すると指摘している。

太陽光発電の問題点(次世代含む)
  1. 耐久性・信頼性:特にペロブスカイトや有機系は長期劣化の問題が残る。現行のシリコンは25年程度の実績があるのに対し、次世代は現状で10年程度の耐久性に留まり、長期信頼性が課題である。

  2. 環境・安全性:鉛やカドミウム等有害物質の使用、製造時の溶媒・廃液管理、廃棄時のリサイクル手法が課題である。

  3. スケールアップの課題:ラボ効率を大面積モジュールに維持すること、歩留まり管理、封止(パッケージング)技術、量産設備投資の最適化が必要である。

  4. サプライチェーン・国際競争:セル・モジュールの供給は既存で中国主体が強く、技術・価格面での競争が激しい。

  5. 制度面・規格:新材料・新構造に対応した電気的・安全的規格、性能評価方法、保証制度の整備が遅れると導入が鈍る。

改善点(技術的・制度的)

  • 耐久性向上の研究(封止材料、界面設計、安定化添加剤、低揮発性電解質等)を加速すること。NEDOや大学、企業の協働によるフィールドデータ収集と標準化が重要である。

  • 有害物質代替とリサイクル基盤の構築。鉛代替材料や鉛の封じ込め技術、回収リサイクルの仕組み作りを早急に進める。

  • 大面積・量産プロセスの確立。ロール・トゥ・ロールや塗布プロセス、乾燥・焼成工程の最適化と歩留まり改善が鍵となる。

  • 認証・保証制度の整備。モジュール寿命・劣化率の評価基準、性能保証の枠組みを法的・業界標準として定める。

  • 産業政策と国際連携。国内産業保護とともに、材料・装置の国際分業や輸出市場を見据えた戦略が必要である。

今後の展望(短中長期)

  • 短期(〜2027):ペロブスカイト/シリコンタンデムの事業化トライアルと小〜中規模の量産ライン立ち上げが進む見込みで、商業モジュールやBIPV用途での実証が拡大する。ラボ効率の向上とともに、一部企業が限定用途での商用化を始める。

  • 中期(2028〜2035):耐久性改善や封止技術の進展で信頼性が向上すれば、都市型や建物一体化用途での採用が本格化する。タンデムモジュールの普及により、同一面積あたりの発電量が向上し、土地制約のある地域で高い競争力を持つ。製造コストの低下とリサイクル基盤整備が進めば、既存市場に対する浸透が加速する。

  • 長期(2035〜2040以降):高効率・長寿命化が実現すれば、ペロブスカイトを中核に据えた多様なPVエコシステムが成立しうる。政府のロードマップが示すように、2040年に向けて再生可能エネルギー比率を高める過程で次世代PVは重要な役割を果たす可能性が高い。

総合的評価

次世代太陽光は「高効率化」「用途の多様化」「軽量化・柔軟性」によって従来のシリコン中心のPV市場を補完あるいは部分的に置換する可能性を持つ。ただし、実装に当たっては耐久性・環境安全・量産化の三点が克服すべき主課題である。政策的には、研究開発支援と同時に実証事業、評価基準の標準化、リサイクルインフラ整備、国際的なサプライチェーン戦略の双方を並行して進めることが重要である。産業界は材料科学・プロセス工学・封止技術・信頼性評価を統合し、官民協働でフィールドデータを早期に蓄積する必要がある。国際的には、技術競争と同時に標準化・安全基準の議論に積極的に参加し、健全な市場形成を目指すべきである。政府や研究機関、企業が協調して課題解決へ取り組めば、次世代太陽電池は都市・建物・輸送機器などの分野で新たな発電の選択肢となり、脱炭素とエネルギー安全保障に貢献する展望がある。


主要出典

  • IEA / PVPS「Trends in Photovoltaic Applications 2024」などの市場統計。

  • 経済産業省・資源エネルギー庁などの次世代太陽電池に関する政策資料(次世代型太陽電池戦略の報告等)。

  • NEDO「次世代型太陽電池の開発」及び関連事業ページ。

  • NREL(Best Research-Cell Efficiency Chart)による研究セル効率の記録。

  • 英国フィナンシャルタイムズ等による産業動向・企業投資報道。


1. 各次世代太陽電池の詳細

1-1. ペロブスカイト太陽電池

概要・特徴

  • 材料:一般にハライド系(ABX₃)構造の有機/無機ハイブリッド。高吸収係数で薄膜(数百nm)でも光を捕らえられる。溶液プロセスでの製膜が可能。

  • 長所:短期間で研究効率が急上昇、低温工程で製造可能、柔軟性や半透明化がしやすい。

  • 短所:光・熱・水分による劣化が課題、鉛含有が環境面で懸念、モジュール化時の封止が重要。

研究・効率動向(数値)

  • NRELのデータによると研究室レベルの単接合ペロブスカイトは20%台から成長し、タンデム(ペロブスカイト/シリコン)では30%台の報告がある。Longiや他社のペロブスカイトタンデム研究では34%近傍のセル効率(小面積デバイス)報告が出ている(研究レベル・検証あり)。

開発・実用化動向(産業界・公的支援)

  • 企業:Oxford PV、Saule Technologies、Energy Materials社系スタートアップ、長江三角地域や中国の複数スタートアップが開発・パイロット体制を構築している。Oxford PVは商用モジュール供給やトライアルを進めている。

  • 政策:日本のNEDOは「次世代太陽電池開発」プログラムを通じてスケールアップ・封止・コスト目標のR&Dを支援している(2030年までに競争力を持たせる目標等)。

技術課題と取り組み

  • 耐久化:封止材の開発、界面安定化、イオン拡散抑制の研究。

  • 環境対策:鉛封じ込め(封止強化)や鉛代替(鉛フリー材料)探索、回収リサイクルルートの設計。

  • 大面積化:塗布・ロールトゥロール工程、均一膜形成、スケール特有の欠陥管理。研究機関と企業で大面積モジュールの試作・試験が進む。


1-2. タンデム型太陽電池(特にペロブスカイト/シリコン)

概要・特徴

  • 複数のバンドギャップを持つセルを積層して光スペクトルを分担吸収することで単接合の理論限界を超えることを目指す。上部に高バンドギャップ(例:ペロブスカイト)、下部に低バンドギャップ(例:シリコン)を配置するのが主流。

  • 期待:面積あたり発電量の上昇、都市部や屋根上での効率利得。

実用化動向と商用化トラック

  • Oxford PVなどはタンデムモジュールのパイロット生産ラインを運用しており、2024〜2025年にかけて「25%近いモジュール効率」を謳う製品を公表している。企業はまずはシリコンの既存ラインに上層を追加するハイブリッドな導入が現実的だと位置づけている。

  • 大手シリコンメーカー(例:LONGi、Qcells/ハンファ系など)もタンデム・上層材料の研究や提携に動いており、商用大面積セルの効率記録や実証が相次いでいる。Qcellsは大面積セルで高効率を達成したと報じられているが、長期信頼性の実績が鍵となる。

技術チャレンジ

  • 電気的接続(2端子/4端子)、熱管理、界面劣化、プロセス統合。スケールアップでの歩留まり維持とコスト最適化が重要課題である。


1-3. 有機薄膜太陽電池(OPV)

特徴と強み

  • フレキシブル、軽量、色や透過性の調整が可能、ロールtoロール印刷での低コスト生産の潜在性がある。低照度や曲面用途、ウェアラブルやBIPVの装飾的用途に適する。

開発・市場動向

  • 変換効率は近年材料進展で改善しているが、耐久性が課題である。用途はIoTセンサーやモバイル充電、建材統合のニッチ市場で先に普及する見込み。中国を中心に量産ライン構築の動きがある。


1-4. 量子ドット太陽電池(QD)

概要・特徴

  • QDはサイズで光吸収波長を制御できるためスペクトル設計の自由度が高い。理論的にはホットキャリアや多励起子生成(MEG)など高効率化手法と組み合わせ可能。溶液プロセスでフレキシブル化が可能だが、安定性と毒性(カドミウム等)の課題がある。

進展と課題

  • 研究は活発だが、商用化は材料安定性・封止・毒性対策が解決されるまで限定的である。研究室レベルの効率は伸びているが、モジュール化の実績が乏しい。


1-5. 色素増感太陽電池(DSSC)

特徴と応用分野

  • 構造的には光吸収色素+電解質+電極で構成され、弱光下での効率が良いことから屋内照明やオフグリッド小電力機器に向く。半透明化が容易で建材統合(窓、ファサード)に適する。

進展

  • 電解質の固体化や色素の長期安定化が研究課題。ニッチ用途中心に製品化・実証が進んでいる。


1-6. その他(CIGS/CdTe/CZTS、透明・BIPV等)
  • CIGSやCdTeは既に商用実績があり、資源や環境面での評価を含めた改良が続く。CZTSは地球上に豊富な元素を用いることを狙うが効率向上が鍵。BIPV(建材一体型PV)、透明PV、窓型PVなどは都市・建築用途での応用が拡大している。


2. 主要プレイヤー一覧(企業・研究機関)(抜粋)

(下表は代表例。各社の事業フェーズは「研究/パイロット/商用初期/量産」等で記載)

技術分野主要企業・機関(代表)フェーズ(概略)
ペロブスカイト / タンデムOxford PV(英)、Saule Technologies(波蘭系/米系動向あり)、Oxford PV×Trina(ライセンス)パイロット〜初期商用。パネル供給・ライセンシングあり。
大手シリコン+タンデムLONGi(中)、Hanwha Qcells(韓)大手が実証・記録更新。
OPV(有機)Heliatek(独)、SolarWindow系企業、中国の複数スタートアップニッチ用途での実証・一部量産化トライアル
QDQD専業スタートアップ、大学発ベンチャー(米欧)研究開発〜プロトタイプ
DSSCG24 Power系(小型機器)、研究機関(EPFL等)屋内・ニッチ用途中心
公的研究機関NREL(米)、Fraunhofer ISE(独)、NEDO(日本)、大学(Stanford, EPFL等)研究と標準化、測定基準提供。

(注)上表は主要プレイヤーの一部抜粋であり、実際は多数のスタートアップや企業が並行して活動している。


3. 国内外の実証プロジェクト事例一覧(抜粋・注記付き)

以下は代表的な公表プロジェクト・事例。実装規模・公開データは各社発表や公的資料に基づく。

場所・主体技術事例概要(目的・規模)出典
Oxford PV(ドイツ・Brandenburg)ペロブスカイト/シリコンタンデムメガワット級パイロットライン稼働、商用モジュールの市場投入トライアル。Oxford PV発表
日本(NEDO支援プロジェクト)ペロブスカイト次世代研究スケールアップ、封止・製造プロセス、コスト目標設定(14円/kWh目標等)。NEDO
中国(複数)シリコン+上層材料、OPV等大規模生産投資・スタートアップの量産準備、モジュール量産でのコスト競争力強化。報道
韓国・ハンファ/Qcellsハイブリッドセル大面積セルで高効率化の商用記録を更新、量産適合性の検証。報道
大学・研究機関(各国)QD、OPV、DSSC等の実証室内発電、建材統合、小型機器運用のフィールドテスト。各研究報告

(注)上表は公表情報をもとにした抜粋であり、企業秘密や非公開の大型案件は含まれない。プロジェクトの進捗・達成値は発表時点の公表値に基づくため、最新の進展は個別のプレスリリースや報告を確認する必要がある。


4. 耐久性・劣化データ比較表(公表データの整理と解釈)

次世代各技術の「公表される典型的な耐久性・保証・劣化特性」をまとめる。注意:多くの次世代技術ではラボ/パイロット段階のデータが多く、長期フィールドデータ(10年以上)は限定的である。以下は公開データの典型値と課題の整理で、厳密な保証年数はメーカー・製品ごとに大きく異なる。

技術ラボ/モジュール段階の公表耐久性(代表)コメント
結晶シリコン(基準)25年保証・劣化率年約0.5〜0.8%(業界標準の目安)長期フィールドデータが豊富、実運用信頼性が高い。
ペロブスカイト(研究〜パイロット)ラボでの急速加速試験で数千時間程度の安定化報告、企業はモジュールで数千〜数万時間(短期)を公表。商用長期データは限定的。封止技術で大きく変わる。鉛封じ込み・水分拡散対策が鍵。
タンデム(ペロブスカイト/Si)セル効率は高いが、モジュール長期劣化の実績は限定。企業は屋外試験を進める段階。シリコンの信頼性とペロブスカイトの耐久性の接続が重要。
OPV(有機)ラボでの光安定性改善は進むが、屋外数年で劣化するケースが多い。製品は用途限定で保証年数も短め。用途を限定したニッチで実用化を図る戦略が主流。
QDラボ段階の効率改善はあるが、長期環境安定性や毒性対策が課題。モジュールレベルの長期データはほぼ存在しない。
DSSC室内用途での有利性はあるが、屋外の長期耐久は電解質の問題で課題。固体電解質化で改善が期待される。

解釈上の注意点

  1. 多くの「耐久性」評価は加速試験(高温・湿度・光ストレス)をベースにしており、実運用での挙動を完全に再現するわけではない。

  2. 「セル効率が高い=長期的に有利」ではない。長期の年間平均発電量(LCOEに直結)は初期効率 × 劣化率 × 実運用条件で決まるため、耐久性改善が最重要となる。


5. 技術・産業化上のボトルネックと改善ポイント(技術・政策・サプライチェーン)

主なボトルネック

  1. 耐久性と封止技術:環境ストレスに対するペロブスカイトや有機系の劣化抑制が最優先。

  2. 有害物質(鉛・カドミウム等):使用制限と回収ルートの整備が必要。

  3. スケールアップ(大面積):ラボ→モジュールへの効率維持、歩留まりの確保。

  4. 検定・保証・規格:新材料に対応する国際規格と保証スキームの欠如。

  5. サプライチェーンの地政学的リスク:材料・装置の主要供給地の集中がリスク。

改善・対策案(技術的・政策的)

  • 封止材・界面設計の標準化と共同評価プログラムを公的資金で支援する。NEDO等が既に取り組みを支援している。

  • 鉛含有材料に対しては「封じ込み基準」や「リサイクル義務」を導入し、鉛回収インセンティブを設計する。

  • 産学官での長期フィールド試験(気候帯別・用途別)を義務化し、データベースを共有する。

  • 早期段階で規格(IEC等)に沿った評価手法を作成し、認証制度を整備する。

  • 国際連携でサプライチェーンの多地域化と重要素材の代替開発を促進する。

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