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コラム:プリン体だけじゃない?尿酸値を下げる方法

尿酸値を下げるための対策は プリン体制限だけではなく、総合的な生活習慣の改善を志向する必要がある。
乾杯!(Getty Images)

高尿酸血症およびこれに起因する痛風(Gout)は、世界的に増加傾向にある慢性代謝性疾患であり、生活習慣病との関連性が深い。最近の疫学データでは、先進国だけでなくアジア・日本でも成人の10〜20%近くが高尿酸血症の基準値を超える事例を示すとされる傾向が報告されてきている。これは食生活の欧米化、肥満率の上昇、アルコール消費増加、糖類摂取量の増加など生活環境の変化が複合的に寄与している。加えて、高尿酸血症が単なる痛風のリスクだけでなく、 心血管疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、糖尿病との関連が認識されている。したがって単に「プリン体を控える」だけではなく、総合的な生活習慣改善が尿酸値管理において重要視されている現状である。


尿酸とは

尿酸(Uric acid)は、体内で核酸やプリン体が代謝された結果生じる最終産物であり、血中では「血清尿酸値(serum urate, SUA)」として測定される。一般に成人男性で約3.4〜7.2 mg/dL、女性で2.4〜6.1 mg/dL程度が正常範囲とされる。尿酸は主に腎臓で濾過され、尿中に排泄される。尿酸値が高い状態を 高尿酸血症(hyperuricemia) と呼ぶ。高尿酸血症は尿酸の産生が過剰である場合と、尿酸排泄が低下している場合に分けられる。後者が全体の約90%を占めるという報告もあり、加齢・腎機能低下・薬剤の影響などが関与する。高尿酸状態が続くと尿酸が結晶化し関節や軟組織に沈着し、痛風発作(激しい関節痛=acute gouty arthritis)を引き起こすリスクがある。さらに尿酸結晶は腎臓に沈着して腎障害や尿路結石の形成にも関与する。


プリン体とは

プリン体(purines)は生体内の核酸成分として必須であるが、食品にも含まれる栄養素である。体内への取り込み後、プリン体は最終的に尿酸へと代謝されるため、 食品由来プリン体摂取が尿酸値に影響を与える。ただし、食事由来のプリン体は尿酸値全体に対して影響する割合は必ずしも大きくないとする見解もあり、 体内での尿酸生成と排泄機構が尿酸値決定には重要な役割を持つ とする研究も存在する。

代表的な高プリン体食品は動物内臓(レバーや腎臓)、魚卵、濃厚な肉汁・煮汁などであり、摂取を制限することが高尿酸値管理の基本戦略の一つとなっている。


尿酸値が上がるとどうなる?

尿酸値が慢性的に高い状態が続くと、以下のような健康影響が生じる可能性がある。

  1. 痛風発作:尿酸が結晶化し関節内に沈着することで、急性の強い炎症と疼痛を誘発する。特に足の親指付け根に発症しやすい。

  2. 関節破壊・変形:痛風発作の繰り返しにより関節構造が損なわれる場合がある。

  3. 腎機能障害・尿路結石:尿酸結晶の生成が腎臓に沈着し、慢性腎臓病や尿路結石を引き起こすリスクが高まる。

  4. 心血管疾患リスク上昇:高尿酸値は独立した心血管リスク因子として報告されることがあり、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中との関連が指摘されている。

このため、専門家ガイドラインでは高尿酸血症への対応として単なる数値管理ではなく、関連する生活因子の修正を推奨している。


尿酸値を下げるためには(総論)

尿酸値の管理には、 薬物療法と非薬物療法(ライフスタイル改善)を組み合わせるアプローチ が最も効果的とされる。特に高尿酸血症が初期の段階や、まだ痛風などの合併症が生じていない場合は生活習慣の修正が中心となる。国際的な臨床ガイドラインでも、低プリン食、体重管理、アルコール制限、果糖摂取制限、適度な運動、水分摂取などが推奨されている。


水分を十分に摂り尿量を増やす

十分な水分摂取は尿酸排泄を促進するための基本中の基本である。水分摂取不足は尿酸の腎排泄を低下させ、尿中での結晶形成リスクも増やす。一般的に1.5〜2.0リットル/日程度の水分摂取が勧められており、これによって尿量が増え、尿酸を効率的に体外へ排泄できる。糖分を含む清涼飲料などは水分補給として不適切であり、むしろ尿酸値を上昇させる可能性がある。


アルコールの摂取を控える

アルコールは尿酸値を上昇させる強力な因子であり、 ビールに限らず全ての酒類でその傾向が認められる。アルコールは肝臓で代謝される際に尿酸生成を促進し、同時に腎からの排泄を阻害することが示されている。結果として血中尿酸が高値となる。専門家ガイドラインでは、特に痛風リスクがある場合はアルコール摂取の制限が強く推奨されている。


アルコールは種類を問わず体内で分解される際に尿酸の生成を促し腎臓からの排泄を妨げる

生化学的にはアルコールはアセトアルデヒドなどの代謝物を生成し、これらが尿酸代謝に影響を与えると考えられている。また、アルコール摂取に伴う脱水や酸性化も尿酸の溶解性を下げ、結晶化を促進する。このため、尿酸値管理ではアルコール飲酒の頻度だけでなく量も重要であり、多くのガイドラインで適量以下の飲酒あるいは断酒が推奨されている。


「プリン体ゼロ」の酒類でもアルコール自体に尿酸値を上げる作用がある

近年「プリン体ゼロ」や低プリン体を謳うアルコール飲料が市販されているが、これらはプリン体の寄与を低減するものの、 アルコール成分自体が尿酸代謝に与える影響は変わらない。したがって、尿酸値管理の観点ではプリン体含有量の違いに関わらず、全ての酒類の摂取を控えることがより重要である。


果糖(フルクトース)の過剰摂取を避ける

果糖(フルクトース)は肝臓での代謝過程で尿酸生成を促すことが疫学研究で示されている。特に 高果糖コーンシロップを使用した清涼飲料 の常飲は高尿酸血症と関連性が高いという報告があり、甘味飲料の摂取制限が推奨されている。


砂糖や果糖ブドウ糖液糖を含む清涼飲料水や甘いお菓子は体内で尿酸の生成を急増させる

砂糖、果糖ブドウ糖液糖は共に体内で肝代謝を受ける際に尿酸合成を促進するとされ、清涼飲料水やキャンディ・菓子類の大量摂取は尿酸値上昇に寄与する可能性がある。したがって甘味食品・飲料の摂取制限は尿酸値管理の重要な戦略の一つである。


乳製品や野菜を積極的に摂る

低脂肪の乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)や野菜・海藻類の積極的な摂取は尿酸値を低下させる可能性があるとする複数の研究・疫学データが存在する。乳製品の摂取は尿酸の排泄を促進する作用が推定され、野菜・海藻類は尿をアルカリ化し尿酸溶解性を改善することで排泄を助けると考えられる。


乳製品の効果

低脂肪乳製品に含まれるカゼインやオロト酸などの成分は、尿酸の腎臓排泄を促進し、炎症反応を抑える可能性が指摘されている。また疫学研究では乳製品を多く摂取する人々で高尿酸血症や痛風リスクが低いという報告もある。


野菜・海藻の効果

野菜・海藻類を中心とした食事(例:DASH食や地中海食)はカリウム・マグネシウム・抗酸化物質が豊富であり、尿のpHをアルカリ側へ移行させる効果があるとされる。アルカリ尿は尿酸溶解性を高め、尿酸結晶形成リスクを低下させる。


適度な有酸素運動

有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)は体重管理、インスリン感受性改善、循環器健康の向上に寄与する。これらの効果は間接的に尿酸値を低下させる可能性があることが報告されている。強度の高い無酸素運動や急激な体重減少は一時的に尿酸を増加させる可能性があるため、持続可能で中等度の運動が推奨される。


ウォーキングなどの軽い有酸素運動を継続

週150分程度のウォーキングなどの軽い有酸素運動は、肥満解消や代謝機能改善に寄与し、尿酸値管理にも好影響をもたらす。継続性が重要であり、急激な負荷や過負荷は避けるべきである。


肥満の解消

肥満は高尿酸血症の主要リスク因子である。体重減少は尿酸値を低下させ、さらに心血管系・代謝系全般の改善にも寄与する。一方で極端な急激な減量はケトーシスを誘発し尿酸の再吸収を促進する可能性があるため、 緩徐な体重減少が推奨される。


今後の展望

高尿酸血症および痛風管理では、生活習慣改善は依然として重要な戦略であり、 これらの介入は単独でなく総合的に行うことが効果的である。今後の研究課題としては、各種食事パターン(例:地中海食、DASH食)や特定食品成分(ビタミンC、コーヒー、機能性食品など)の尿酸代謝への影響を明確化し、個々人に最適化した食事指導アルゴリズムの確立が期待される。また遺伝的背景や腸内微生物叢の尿酸代謝への影響についての研究も進展している。


まとめ

尿酸値を下げるための対策は プリン体制限だけではなく、総合的な生活習慣の改善を志向する必要がある。具体的には以下のポイントが重要である:

  • 十分な水分を摂取し尿量を増やすこと

  • アルコールの摂取を控えること(種類に関わらず)

  • 果糖・糖類の過剰摂取を避けること

  • 低脂肪乳製品・野菜・海藻中心の食生活

  • 適度な有酸素運動を継続

  • 緩やかな体重管理と肥満解消

これらの生活習慣の見直しは尿酸値そのものの改善に寄与するだけでなく、 循環器疾患・代謝異常などの全身的健康リスクの低減にもつながる ものであり、長期的な健康維持という観点からも重要である。


参考・引用リスト

  1. Nutritional recommendations for gout: systematic review (SM Nielsen et al.), 2018.

  2. Hyperuricemia and related diseases: dietary interventions (L Du et al.), 2024.

  3. Nonpharmacological management of gout and hyperuricemia (M Kakutani-Hatayama et al.), 2015.

  4. Diet and lifestyle modifications for managing gout (NICE guidance), 2022.

  5. Fructose intake and risk of gout (J Jamnik et al.), 2016.

  6. 高尿酸血症関連の一般的な生活習慣記事(eonet 健康など)。

  7. 生活習慣改善と尿酸管理に関する日本の指導例。


追記:特定のサプリメントによる尿酸値低下への介入

尿酸値管理において、サプリメントは薬物療法の代替ではないが、生活習慣改善を補完する補助的手段として一定の科学的検討が行われてきた。以下に、比較的エビデンスが蓄積されている成分を中心に解説する。

ビタミンC

ビタミンCは尿酸値低下作用を有する可能性が示されている代表的な栄養素である。複数の介入研究およびメタアナリシスにおいて、1日500~1000mg程度のビタミンC摂取が血清尿酸値を軽度ながら有意に低下させることが報告されている。作用機序としては、腎尿細管での尿酸再吸収を抑制し、尿中排泄を促進することが考えられている。

ただし、その効果量は比較的小さく、高尿酸血症や痛風患者において単独で治療目標を達成できるほどではない。腎結石の既往がある場合や過剰摂取には注意が必要であり、医師の指導下での使用が望ましい。

乳酸菌・プロバイオティクス

近年、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が尿酸代謝に関与する可能性が注目されている。一部の乳酸菌(Lactobacillus属、Bifidobacterium属など)は、腸管内で尿酸やプリン体を分解・利用する能力を有するとされ、動物実験や小規模臨床研究で尿酸低下効果が報告されている。

しかし、ヒトにおける大規模臨床試験はまだ限定的であり、菌株依存性が高い。現時点では「尿酸値を確実に下げる治療」としてではなく、腸内環境改善を通じた補助的手段と位置づけるのが妥当である。

ポリフェノール(コーヒー、緑茶抽出物など)

疫学研究では、コーヒー摂取量が多い人ほど尿酸値や痛風リスクが低い傾向が報告されている。この効果はカフェインではなく、クロロゲン酸などのポリフェノールによるキサンチンオキシダーゼ活性抑制が関与している可能性が示唆されている。

一方で、サプリメントとしてのポリフェノール摂取が明確に尿酸値を低下させるかについては、エビデンスは限定的であり、食品由来での摂取が基本とされる。

その他のサプリメント

クエン酸、マグネシウム、DHA・EPAなども尿酸代謝への影響が検討されているが、現時点では一貫した結論には至っていない。特にクエン酸は尿のアルカリ化により尿酸結石予防に寄与する可能性があるが、血清尿酸値自体を下げる効果は限定的である。


薬物介入(薬物療法)の位置づけ

尿酸値が一定以上で持続する場合、あるいは痛風発作や合併症を伴う場合には、薬物療法が標準治療となる。薬物療法は大きく以下の2系統に分類される。

尿酸生成抑制薬:キサンチンオキシダーゼ阻害薬

アロプリノールおよびフェブキソスタットは、尿酸生成に関与する酵素キサンチンオキシダーゼを阻害することで尿酸値を低下させる。これらは世界的に最も広く使用されている薬剤であり、尿酸生成過剰型・排泄低下型の双方に有効である。

フェブキソスタットは腎機能障害患者でも使用しやすい一方、心血管リスクとの関連が議論されており、患者背景に応じた選択が求められる。

尿酸排泄促進薬:尿酸トランスポーター阻害薬

ベンズブロマロンなどは、腎尿細管での尿酸再吸収を抑制し尿中排泄を増加させる。排泄低下型高尿酸血症に特に有効であるが、肝障害リスクや尿路結石のリスクがあるため、十分な水分摂取と定期的なモニタリングが必須である。

治療開始時の注意点

薬物療法開始初期には、尿酸値が急激に変動することで痛風発作を誘発することがある。そのため、低用量から開始し、必要に応じてコルヒチンやNSAIDsによる発作予防を併用することが推奨される。


個別の臨床指導とパーソナライズドアプローチ

近年の高尿酸血症管理では、「尿酸値のみ」を目標とするのではなく、患者個々の病態・生活背景・合併症を考慮した個別化医療が重視されている。

尿酸値の治療目標

一般的に、痛風患者では血清尿酸値6.0 mg/dL未満、重症例では5.0 mg/dL未満が推奨される。一方、無症候性高尿酸血症では、必ずしも全例で薬物治療を行うわけではない。腎機能、心血管リスク、年齢、家族歴などを総合的に評価する必要がある。

生活指導の個別最適化

食事指導においても、一律の「プリン体制限」ではなく、アルコール摂取量、清涼飲料水の習慣、肥満の有無、運動習慣などを評価し、最も影響の大きい因子から介入することが現実的である。

定期的フォローアップの重要性

尿酸値管理は短期的介入ではなく、長期的な継続管理が必要な慢性疾患対応である。定期的な血液検査、腎機能評価、生活習慣の再評価を通じて、治療方針を柔軟に調整することが重要である。


追記のまとめ

特定のサプリメントは尿酸値管理において補助的役割を果たす可能性があるが、過信は禁物であり、基本は生活習慣改善と必要に応じた薬物療法である。薬物介入は高い有効性を持つ一方、副作用や発作誘発のリスクがあるため、専門医の管理下で行う必要がある。

今後は、遺伝情報、腸内細菌叢、生活習慣データを統合したパーソナライズド尿酸管理が発展すると考えられ、より精密で副作用の少ない介入が期待される。


参考・引用リスト(追記分)

  • Stamp LK et al. Vitamin C supplementation and serum urate. Arthritis Rheum.

  • Khanna D et al. 2020 ACR Guideline for the Management of Gout.

  • Dalbeth N et al. Gout and hyperuricaemia: current concepts. Lancet.

  • Nakayama A et al. Gut microbiota and uric acid metabolism.

  • 日本痛風・尿酸核酸学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン

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