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コラム:2026年の日韓関係、「実利」重視の連携

2026年時点の日韓関係は、歴史的課題を背景に抱えつつも、シャトル外交の定着、安全保障・経済協力の深化、社会課題対応の連携強化という構造的な協調関係が進展している。
日本の高市総理と韓国のイ・ジェミョン大統領(Getty Images/AFP通信)

2026年1月における日韓関係は、戦後の歴史問題を巡る緊張を背景にしつつも、首脳・閣僚レベルでの「シャトル外交」の定着、安全保障協力、経済関係の深化が進んでいる局面である。韓国のイ・ジェミョン大統領は2026年1月13〜14日に奈良県で高市首相と首脳会談を予定しており、これは両国の意思疎通と協力強化を図る重要な外交イベントである。双方は「未来志向で安定的な関係」の構築を掲げているが、地域情勢の変化(特に対中関係の不安定化)や歴史問題が引き続き微妙な影を落としている。

日韓両国政府は戦略環境の変化に対応するため、安全保障・経済安全保障・社会課題の協力を重視しており、これらはシャトル外交を通じて具体化している。2026年初頭の首脳会談は、昨年8月の李大統領来日に続くもので、互いの国を頻繁に行き来する首脳外交の慣行化が進んでいる。これを通じて信頼醸成と実務協議の深化が図られている。


「シャトル外交」の定着と安全保障・経済面での実務協力の深化

「シャトル外交」とは、首脳が相手国を定期的に訪問して対話を重ねる慣行であり、日韓両国で積極的に実施されている。2025年10月の首脳会談では高市首相が韓国を訪問し、両首脳は未来志向の発展を確認した際にシャトル外交の活用を強調している。

2026年1月の奈良会談もこの枠組みを踏襲したものであり、相互訪問を通じた意思疎通の機会が着実に増えている。外務・防衛当局の対話再開や閣僚レベル協議の活性化も含めて、日韓間の実務協力が深化していることが確認できる。

安全保障協力

安全保障面では、北朝鮮の核・ミサイル脅威への対応および地域の戦略的不確実性を背景に、情報共有・共同演習などの実務協力が重要性を増している。こうした協力は、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)にも象徴されるように、両国が共通の安全保障利益を有していることを示す。情報共有・防衛協議の実務的進展は、日米韓三国協力の枠組みと併せて地域安定に寄与している。

経済協力

経済面では、半導体・AIをはじめとする先端技術分野で協力の必要性が強調されている。日本政府は「先端科学技術協力」を官民ともに強化しており、産業界・学術界の連携が進行している。こうした協力は、経済安全保障の強化と両国の競争力向上に資するもので、共有する戦略的利害に基づく。


高市首相とイ・ジェミョン大統領の関係

高市早苗首相と李大統領は、2025年10月以降、複数回の接触を重ねている。両リーダーは個別の信頼醸成を重視し、対話を通じて政策協調に努めていると評価できる。特に安全保障・経済安全保障分野での実務協議再開や、社会課題対応協力への共通理解が進んでいる点は、両首脳の外交的方向性を反映している。

ただし、両国首脳の関係は政治的・歴史的背景に敏感であり、国内世論や歴史認識問題を巡る異なる立場にも配慮しながら外交が進められている。


主な動向

2025年から2026年にかけての日韓関係の主な動向は以下の通りである:

  1. シャトル外交の定着:首脳相互訪問を中心とした定期的対話が継続。

  2. 安全保障実務協力の深化:北朝鮮リスクを背景に情報共有・軍事協力が継続。

  3. 経済安全保障分野の連携:先端技術協力、経済安全保障対話が活性化。

  4. 日米韓三国協力の強化:地域の戦略環境を背景に三国協調が進む。

  5. 対中関係の複雑化:韓国・中国、日本・中国の関係変動の中でバランス外交が続く。


首脳間の信頼醸成と「奈良会談(2026年1月13日)」

2026年1月13日に奈良で開催される日韓首脳会談は、両国関係の新たなマイルストーンと見なされる。首脳会談は単なる儀礼的行事ではなく、日韓間の多層的な協力関係を深化させるための実務的議論の場として位置付けられている。両首脳は地域の安全保障、対北朝鮮対策、経済・社会課題を幅広く議論し、今後の協力方針を具体化する見通しである。

奈良という歴史的都市を会談地とすることは、文化的・象徴的意味合いも持ち、両国の歴史的関係を踏まえつつ未来志向の協力関係を強調する政治的メッセージとして受け止められている。


シャトル外交の継続

シャトル外交は定期的な首脳往来だけでなく、閣僚・実務レベルの往復協議も含めて体系化されつつある。外務・防衛当局による協議の再開は、両国の信頼醸成に寄与し、硬直化した外交関係からの脱却に貢献している。

シャトル外交は、過去の日韓関係改善期に用いられた実績を踏まえて設計されているが、今回の動きは歴史問題の影響を受けつつも、経済・安全保障重視の実利外交として進化している。


戦略的連携

戦略面では、北東アジアの安全保障環境が緊迫化する中で、日韓双方が地域安定と抑止力強化に関心を共有している。特に北朝鮮の核・ミサイル開発、サイバー・宇宙領域の安全保障リスクが顕在化する中で、日米韓三国協力は重要な外交・安全保障の柱となっている。日本と韓国は、米国との連携を通じて地域における戦略的プレゼンスを維持・強化しようとしている。


トランプ政権との連携

2025〜26年にかけて、トランプ政権の下での米国の外交・安全保障政策が日韓関係に影響を与えている。米国は日韓を重要な同盟国と位置付けつつ、地域におけるプレゼンスを維持するための戦略的調整を行っている。

日韓両国はトランプ政権と協調しながら、北朝鮮対応、対中国抑止、経済安全保障の強化策について協議を進めている。三国協力枠組みは、韓国大統領と米国大統領間の対話、そして日韓首脳間の協議を通じて成果を上げている。


不安定な対中関係

対中関係は日韓双方にとって重要かつ不安定な要素である。中国と韓国は2026年初頭に首脳会談を行い、関係改善の意向が示された一方で、日本と中国は台湾海峡情勢を巡って緊張が続いている。

日韓両国は中国との経済関係を維持しつつ、戦略的自立性と安全保障上の懸念のバランスを取る必要に迫られている。中国が日本に対する輸出規制措置を講じるなど、地域の政治経済環境は依然として流動的である。


経済・サプライチェーン協力

経済分野では、グローバルなサプライチェーンの強靭化とリスク分散が主要課題として浮上している。日韓は互いに高度な製造能力と技術力を有し、先端分野での協力は両国の競争力向上と相互利益に資する。

特に半導体、量子技術、人工知能などの分野での協力は、米国を含む三国連携の枠組みで進められており、国際競争の激化に対応するための共通戦略として位置付けられている。


「実利」重視の連携

日韓関係は歴史問題を完全に解消したわけではないが、実利重視の外交が現実的な協力の推進力となっている。安全保障・経済・社会課題などの共通利害を基盤として、両国は協調の足場を構築している。


重要物資の供給網

アジア太平洋地域での供給網強靭化は、経済安全保障の観点で日韓両国が協力すべき重要分野である。戦略物資、レアアースなどのサプライチェーン安定化は、地域の経済安全保障リスクを低減し、両国の産業基盤を強化する。


共通課題の解決(少子高齢化、一極集中、自然災害など)

日韓両国は共通の社会課題にも直面している。少子高齢化、都市一極集中の進行、自然災害への対応などは、両国社会の持続可能性を脅かす問題であり、政策協調の余地がある。

2025年の日韓首脳共同声明では、社会・経済面の課題解決に向けた協力の枠組み構築が確認されており、両国政府は専門家・実務者レベルで知見共有を進める方針を示している。


安全保障と対北朝鮮対応

北朝鮮の核・ミサイル開発は地域の安全保障上の重大な脅威であり、日韓は協調した対応策の必要性を強く認識している。情報共有、共同訓練、軍事的抑止力の強化は、三国協力を通じて進められている。


日米韓の枠組み

日米韓三国協力は、北東アジアにおける安全保障構造の中心的枠組みとなっている。三国は戦略的認識を共有し、共同抑止力、サイバー・宇宙分野の協力など多岐にわたる課題で協調している。


防衛実務の進展

日韓間では防衛実務協議が再開され、安全保障・軍事交流の強化が進んでいる。これは信頼醸成措置として重要であり、北朝鮮の脅威や地域の戦略的課題に対処するための基盤となっている。


文化交流

文化交流は日韓関係改善の重要な側面であり、民間レベルの交流促進が日韓の相互理解を深める役割を果たしている。スポーツ、アート、教育交流は、両国国民間の交流を活性化させ、相互理解の基盤を形成している。

2026年には、日中韓文化交流年といった枠組みを通じて、地域文化交流の促進が進む可能性がある。


残された課題

歴史認識問題、特に植民地支配・戦時労働者問題、そして竹島(韓国名:独島)を巡る領土問題は、依然として日韓関係の最も根深い障壁となっている。これらの問題は政治・社会レベルで感情的対立を引き起こし、外交協議を困難にしてきた歴史がある。

2026年現在、首脳外交の進展と実利協力の拡大は評価できるが、歴史認識と領有権問題の解決は長期的な視点と世論の理解形成を必要としている。


今後の展望

日韓関係は、戦略環境の不確実性が増す中で新たな段階に入っている。安全保障・経済協力・社会課題という実務的課題を共有することで、両国は関係深化の道を歩んでいる。ただし、歴史認識や領土問題の感情的側面は依然として両国関係に影を落としており、これを乗り越えるための外交的努力が不可欠である。

2026年以降、日韓関係は「実利と戦略を重視する連携」として安定的・持続的な発展が期待されるが、歴史問題の扱い方、地域戦略環境の変化(特に米中関係)によって、その走行性は大きく左右されるであろう。


まとめ

2026年時点の日韓関係は、歴史的課題を背景に抱えつつも、シャトル外交の定着、安全保障・経済協力の深化、社会課題対応の連携強化という構造的な協調関係が進展している。日米韓三国協力の強化や経済安全保障の連携も顕著であり、両国は現実的な関与を通じて信頼を醸成している。

しかし、歴史認識や領土問題といった根深い課題は依然として残存しており、それらへの対応が今後の日韓関係の質を大きく左右すると考えられる。


参考・引用リスト

  • 日本政府「Strengthening Collaboration Between Japan and the Republic of Korea in Advanced Science and Technology」より。

  • テレビ朝日「高市総理『シャトル外交を活用』…」より。

  • 日本政府「Japan - ROK Summit Meeting (Summary)」より。

  • TV朝日報道/ANN・共同通信報道「日韓首脳会談奈良で開催」より。

  • Nippon.com:「The US-Japan-ROK Trilateral…」等関連分析。
  • Reuters, AP, Mainichi など日韓首脳会談・地域戦略関連ニュース。


追記:日本と韓国の対立の歴史

前近代から近代への転換

日本と朝鮮半島の関係は、近代以前においては必ずしも一方的な対立史ではなかった。古代には仏教・儒教・技術・文化の交流が活発であり、日本の律令制度や文字文化は朝鮮半島を経由して伝来した側面が強い。一方で、豊臣秀吉による文禄・慶長の役(1592〜1598年)は、朝鮮社会に深い被害と記憶を残し、後世の対日観の基層の一部となった。

この時代の特徴は、国家間関係が現在の主権国家体系とは異なり、文化交流と軍事衝突が並存していた点にある。歴史認識問題の原型は、近代以前から「被害の記憶」として蓄積されていた。


日本の植民地支配と対立の決定的形成

日韓対立の核心は、1910年の日韓併合に始まる日本の植民地支配にある。日本は朝鮮半島を統治する過程で近代的制度やインフラを導入したが、その一方で政治的自由の制限、文化・言語の抑圧、経済的搾取、人的動員を行った。

韓国側の歴史認識では、これらは一貫して「不法・強制的支配」と位置付けられており、独立運動弾圧、徴用労働、慰安婦問題などが強い被害意識として記憶されている。日本側では、戦後の平和主義体制の中で反省と謝罪が繰り返されてきた一方、国内世論には評価の分裂が存在し、これが両国の認識ギャップを固定化させてきた。


戦後処理と日韓基本条約

第二次世界大戦後、日本と韓国は1950年代から国交正常化交渉を進め、1965年に日韓基本条約および請求権協定を締結した。日本は経済協力資金を提供し、韓国は請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」とする立場を取った。

しかし、当時の韓国は軍事政権下にあり、個人の被害者の声が十分に反映されたとは言い難かった。その結果、条約の法的効力と道義的責任を巡る認識の差が後年再燃する構造が形成された。


冷戦後の民主化と歴史問題の再浮上

1987年の韓国民主化以降、市民社会と司法が活性化し、慰安婦問題や徴用工問題が国内外で注目されるようになった。1990年代には日本政府も河野談話、村山談話などを通じて反省とお詫びを表明したが、政権交代や発言の揺らぎが「謝罪の信頼性」を弱めたとの認識が韓国側には残った。

冷戦終結後、共通の外敵であった北朝鮮・共産圏の脅威が相対化されたことも、歴史問題が前面化する要因となった。


和解への努力とその限界

1998年の日韓共同宣言(小渕恵三首相・金大中大統領)は、過去への反省と未来志向を明確に打ち出し、文化交流解禁や経済・人的交流の拡大をもたらした。この時期は「日韓和解の黄金期」と評価されることが多い。

2010年代以降も、首脳間の合意や共同声明が複数回出されたが、政権交代によって継続性が断たれやすく、制度化が不十分であった点が限界として指摘されている。


市民レベルの交流とその成果

観光、留学、ポップカルチャーを通じた交流は、相互理解の裾野を広げてきた。特に若年層では相手国への関心と親近感が高まる傾向が見られ、対立一色ではない関係性が形成されつつある。

しかし、政治的対立が激化すると、これらの交流は容易に影響を受け、感情的ナショナリズムが再燃する脆弱性も併せ持つ。


安定的な関係維持のために必要なこと

日韓関係において重要なのは、歴史問題を「完全解決」することよりも、対立を管理し、他分野に波及させない制度設計である。歴史認識は容易に一致しないという現実を前提に、専門家委員会の常設化、共同研究、教育対話の継続が必要である。

感情的対立を抑制するため、政治指導者は国内向け発言と外交メッセージを慎重に使い分ける責任を負う。


法と外交の役割分担

徴用工訴訟などに見られるように、司法判断が外交問題化する構造は、両国関係を不安定化させる。今後は、司法の独立を尊重しつつも、外交当局が補完的解決策を制度的に準備する必要がある。

国家間合意と個人の尊厳をどう両立させるかという課題は、国際法と人権法の観点からも慎重な検討が求められる。


安全保障・経済協力の不可逆化

北朝鮮、中国、グローバル経済の不確実性といった構造要因は、日韓協力を必要不可欠なものにしている。安全保障協力、サプライチェーン連携、先端技術協力を制度化・多層化することで、一時的な政治対立でも関係全体が崩れない耐性を高めることが重要である。


世論とメディアの役割

日韓対立は世論とメディアの影響を強く受ける。刺激的な報道や政治利用は短期的には支持を得やすいが、長期的には不信を固定化させる。学術的知見に基づく冷静な議論、相手国の立場を理解する報道姿勢が、安定的関係の基盤となる。


共通課題を軸とした未来志向

少子高齢化、気候変動、災害対応、地方衰退など、日韓が直面する課題は極めて類似している。これらを「共同で解決すべき問題」と位置付けることで、過去に縛られすぎない協力関係が形成される。


総括

日本と韓国の対立の歴史は、植民地支配という重い過去に根差し、戦後処理の不完全さと冷戦後の環境変化によって複雑化してきた。一方で、和解への努力も繰り返され、一定の成果を上げてきたことも事実である。

2026年以降の安定的日韓関係には、歴史問題を直視しつつも、対立を管理し、実利協力と制度化を積み重ねる現実主義的姿勢が不可欠である。和解は一度で完成するものではなく、継続的努力によってのみ維持されるプロセスであると言える。

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