コラム：イラン核合意再開に向けた交渉停滞、関係国の協力不可欠

イラン核合意（JCPOA）の再開に向けた交渉は25年9月現在、複数の要因により停滞している。その背景には、過去の歴史的経緯、国際社会の制裁、イラン国内の政治状況、地域の安全保障環境などが複雑に絡み合っている。

1. イラン核合意の概要とその重要性

2015年に締結されたイラン核合意はイランが核兵器開発を制限する代わりに、国際社会による経済制裁の解除を約束する内容であった。合意の主な目的は、中東地域の安定化と核拡散の防止であり、イランにとっては経済的な利益を享受する手段でもあった。しかし、2021年に米国が一方的に合意から離脱したことにより、合意は事実上機能不全に陥った。

2. 2025年6月の「イラン・イスラエル戦争」の影響

2025年6月、イスラエルによるイランの核施設への攻撃が発端となり、両国間で大規模な軍事衝突が勃発した。この戦争は、イラン国内での核開発活動の再開を加速させ、国際社会の懸念を一層深める結果となった。

特にイランのエネルギー関連施設への攻撃や、それに対する報復措置により、原油供給の途絶の可能性が高まり、ブレント原油価格は一時的に7%上昇し、74ドルを超えた。専門家の中には、ホルムズ海峡が完全に封鎖された場合には、原油価格が100ドルを超える可能性を指摘する声もある。

3. 国際社会の対応と制裁の再発動

国連安全保障理事会はイランの核開発活動の再開を受けて、対イラン制裁の再発動を検討している。2025年8月末には、過去の国連安全保障理事会による対イラン制裁をすべて復活させる手続きが始まった。イランは、制裁が復活すれば、国際原子力機関（IAEA）との協力を停止する意向を示している。

4. イラン国内の政治的要因

イラン国内では保守派と改革派の対立が続いており、核合意再建に対する姿勢も分かれている。保守派は制裁解除を最優先とし、核開発の継続を主張する一方、改革派は国際社会との協調を重視し、合意再建を支持している。このような政治的対立が交渉の進展を妨げる要因となっている。

5. 地域の安全保障環境と軍事的緊張

イラン・イスラエル戦争の影響で、中東地域の安全保障環境は一層厳しくなった。イランは核開発活動を再開し、ミサイル技術の向上を図っている。これに対し、イスラエルは自国の安全保障を理由に、軍事的な対応を強化している。このような軍事的緊張が、核合意再建の障害となっている。

6. 経済的影響と国民の不満

制裁の影響で、イラン経済は深刻な状況にある。インフレ率は急上昇し、失業率も高止まりしている。国民の生活は困窮し、不満が高まっている。政府は、核開発を国民の誇りと位置づけ、経済的困難を乗り越える手段として強調しているが、国民の不満を抑えるには限界がある。

7. 核合意再建に向けた展望

核合意再建にはイランと国際社会の双方の譲歩が必要である。イランは核開発の制限と引き換えに、制裁解除と経済支援を求めている。国際社会は、イランの核開発活動の透明性を確保し、再発防止策を講じることを求めている。今後の交渉では、これらの課題をどのように解決するかが鍵となる。

8. 結論

イラン核合意の再開に向けた交渉の停滞は国際社会の制裁、イラン国内の政治状況、地域の安全保障環境など、複数の要因が複雑に絡み合っている。特に2025年6月の「イラン・イスラエル戦争」は、核合意再建に大きな影響を与えた。今後の交渉では、双方の信頼醸成と具体的な譲歩が求められる。

イラン核合意の再開に向けた交渉は、国際政治、地域安全保障、経済など、複雑な要素が絡み合う課題である。その進展には、関係国の協力と柔軟な対応が不可欠であり、引き続き注視する必要がある。