SHARE:

コラム:目指せ血液サラサラ、総合的アプローチが不可欠

血液をサラサラな状態で維持するためには、単一の対策ではなく、食生活、生活習慣、運動の各要素を統合した総合的アプローチが不可欠である。
サラダを作る女性(Getty Images)

現代社会では、高齢化と生活習慣の欧米化が進行している。日本における動脈硬化性疾患、脳血管障害、虚血性心疾患の罹患率は依然として高く、これらの多くが血液の粘性(ドロドロ状態)に関係すると考えられている。厚生労働省「国民健康・栄養調査」では、生活習慣病予防のための栄養バランスや運動習慣の重要性が繰り返し指摘されている。また、血液粘度低下の臨床的意義については多数の疫学研究・臨床報告が存在する(例えば、Brill et al., 2010; Toth, 2010)。血液がサラサラであることは血流がスムーズであり、全身の組織・臓器への酸素・栄養供給効率が高いという意味を持つ。

血液をサラサラな状態(血流がスムーズな状態)に保つためには、3つの側面からアプローチ

血液の流れを改善しサラサラに保つためには、以下の3つの主要な側面からアプローチする必要がある。

  1. 食生活の改善

  2. 生活習慣の改善

  3. 運動・身体活動

これらの側面は相互に関連し、単独だけで血液粘性を改善することは難しい。総合的な介入が最も効果的である。


食生活の改善

食生活は血液の性状に直接的な影響を与える。特に脂質、糖質、塩分、抗酸化物質、不飽和脂肪酸のバランスが重要であり、これらの摂取は血液粘度に影響するという報告が多い。

水分補給

成人が1日に必要とされる水分摂取量は一般に1.5〜2.5Lとされている(日本人の食事摂取基準, 2020)。適切な水分補給は血液の粘度を低下させ、血液が流れやすい状態を維持するうえで基本となる。脱水状態は血液濃縮を進め、粘度を上昇させるため注意が必要である。

EPA・DHA(オメガ-3脂肪酸)

魚油に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)は、血液の流動性を改善し、炎症性サイトカインを低下させる働きがある。これらはアメリカ心臓協会(AHA)や欧州心臓病学会(ESC)でも心血管疾患予防の一環として推奨されている。不飽和脂肪酸は血小板凝集抑制、トリグリセリド低下作用を持つとされる(Harris et al., 2008)。

抗酸化成分

ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質は、酸化ストレスの軽減を通じて血管内皮機能を保護する。野菜・果物・ナッツ・緑茶・カカオ製品などに含まれるこれらの物質は、慢性炎症やLDL酸化を抑制し、動脈硬化進展の抑止に寄与するとの疫学データが存在する。

納豆(ナットウキナーゼ)

納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」は、フィブリン分解活性を有し、血栓形成の予防に寄与する可能性が報告されている(Fujita et al., 1995)。ただし、ワルファリンなど抗凝固薬使用者は出血リスク増大の可能性があるため医師への相談が必要である。

食物繊維

水溶性食物繊維(オーツ麦、海藻、ベリー類など)は、コレステロール低下作用を持つ。LDLコレステロールの低下は動脈硬化リスクの低下に直結しており、結果として血流改善につながる。


生活習慣の改善

食生活とともに日常の生活習慣も血液の性状や血管機能に強く影響する。

減塩

高血圧は血管内皮への負担を増加させ、結果として動脈硬化性変化を促進する。高血圧予防のために塩分摂取を1日6g未満に抑えることが日本高血圧学会で推奨されている。

節酒・禁煙

過度の飲酒は高血圧、高トリグリセリド血症を促進し、血液性状を悪化させる。喫煙は血管内皮傷害を誘発し、血液の糖化や凝集性の亢進をもたらす。禁煙・節酒は血液と血管の健康に不可欠である。

睡眠

慢性的な睡眠不足は、ストレスホルモンの増加、インスリン抵抗性の増大、炎症性マーカーの上昇を通じて血管機能低下を引き起こす可能性がある。1日7〜8時間の良質な睡眠が推奨される。


運動・身体活動

身体活動は血液循環と代謝機能を高める。

適度な運動

適度な強度の運動(例:ウォーキング、ジョギング、サイクリング)は、HDLコレステロール増加、LDLコレステロール低下、血流改善に寄与することが示されている。週に150分程度の有酸素運動が一般的な目安である。

有酸素運動

有酸素運動は心拍数を適度に高め、末梢血管への血流を増加させる。心肺機能の向上によって血液循環全般が改善される。

ストレッチ

筋肉の柔軟性を保つことは血流改善に寄与するだけでなく、運動前後の準備・回復にも有効である。血管周囲筋肉の緊張が解消されることで、局所的な血流改善が期待できる。


血液がドロドロになるとどうなる?

血液がドロドロ(高粘度)になると全身の血流が滞りやすくなる。この状態は放置すると様々な健康リスクを引き起こす。

主なリスクや症状

自覚症状の出現

軽度の血液粘性の上昇でも、以下のような症状が現れることがある。

  • 慢性的な疲労感・倦怠感:末梢組織への酸素供給不足が慢性疲労の原因となる可能性がある。

  • 肩こり・腰痛:血流不良による乳酸蓄積や筋緊張の増加が関連する。

  • 冷え・むくみ:末梢循環低下が体温調節機能を阻害する。

  • 頭痛・めまい:脳への血流不全が影響する可能性がある。

  • 肌トラブル:血行不良による栄養供給不足が肌の新陳代謝に影響する。

生活習慣病の進行

血液粘度上昇は高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病を促進し、さらに血管障害を加速する悪循環を生む。

高血圧

高血圧は血管壁に機械的ストレスを与え、血管内皮の損傷を促す。これらは動脈硬化進展と関連が深い。

動脈硬化

高粘度血液は血管内皮への剪断応力を変化させ、プラーク形成を促す可能性がある。結果として動脈硬化が進行し、血流低下や臓器虚血のリスクが増加する。

重篤な病気のリスク

動脈硬化進展は 脳梗塞心筋梗塞腎障害 など重篤な病態を引き起こす。これらは世界保健機関(WHO)でも主要な死亡原因として位置付けられている。


目指せ血液サラサラ:今後の展望

血液サラサラな状態の維持は、単に「血液が流れやすい」だけではなく、生活の質(QoL)向上と長寿の実現に直結する。将来的には以下のようなアプローチが期待される。

  • パーソナル栄養療法:遺伝情報や生活習慣データに基づく個別最適化食事指導

  • デジタルヘルスの活用:血流測定デバイスや継続的なモニタリングによる介入効果の実時間評価

  • AIベースの予測モデル:血液性状変化の予測とリスク管理の効率化

これらは既に研究段階であり、将来的な臨床応用や一般化が進むと期待される。


まとめ

血液をサラサラな状態で維持するためには、単一の対策ではなく、食生活、生活習慣、運動の各要素を統合した総合的アプローチが不可欠である。具体的には以下が重要である:

  • 水分補給、抗酸化物質・EPA・DHA摂取、食物繊維の十分な摂取

  • 減塩・節酒・禁煙、良質な睡眠

  • 適度な有酸素運動と日常的な身体活動

これらは科学的根拠に基づいた予防医学の基本である。血液サラサラ状態の維持は、生活習慣病予防のみならず、身体機能全般の向上に寄与する。


参考・引用リスト

  1. Harris WS, et al. Omega-3 fatty acids and cardiovascular disease: new recommendations from the American Heart Association. Circulation. 2008.

  2. Fujita M, et al. Nattokinase accelerates fibrinolysis in vitro. Biological & Pharmaceutical Bulletin. 1995.

  3. Brill A, et al. Blood viscosity and cardiovascular disease: clinical applications. Thrombosis and Haemostasis. 2010.

  4. Toth PP. Blood viscosity: an independent risk factor for cardiovascular disease? Vascular Health and Risk Management. 2010.

  5. 厚生労働省「国民健康・栄養調査」結果報告(最新版).

  6. 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」.


以下に、前稿の内容を踏まえた実践編として、「具体的な1週間メニュー」「運動プログラム例」「血液検査項目の解説」を体系的にまとめる。実生活に落とし込みやすいよう、科学的根拠と現実的な継続性の両立を重視する。


血液サラサラを実現するための実践的アプローチ

具体的な1週間メニュー(血液サラサラ食事モデル)

基本設計思想

本メニューは以下の原則に基づいて設計する。

  • EPA・DHAを十分に含む魚介類を週3〜4回以上

  • 抗酸化成分(ポリフェノール、ビタミン類)を毎食に分散

  • 水溶性食物繊維を中心に1日20g以上

  • 塩分6g未満/日を目標

  • 精製糖質・飽和脂肪酸を控えめにする

月曜日

朝食
・玄米ご飯
・納豆(付属のタレは半量)
・ほうれん草と豆腐の味噌汁
・緑茶

→ ナットウキナーゼ、食物繊維、抗酸化カテキンを同時摂取する構成

昼食
・サバの塩焼き(減塩)
・ひじきと大豆の煮物
・雑穀米

→ EPA・DHAとミネラル補給

夕食
・鶏むね肉の蒸し料理
・ブロッコリーとトマトのサラダ(オリーブオイル)
・わかめスープ


火曜日

朝食
・オートミール+無糖ヨーグルト+ブルーベリー
・ブラックコーヒー

→ 水溶性食物繊維+ポリフェノール

昼食
・サーモンのグリル
・アボカドサラダ
・全粒粉パン

夕食
・豆腐ハンバーグ
・キャベツの蒸し野菜
・味噌汁


水曜日

朝食
・全粒粉トースト
・オリーブオイル+トマト
・ゆで卵

昼食
・イワシの梅煮
・玄米
・小松菜のお浸し

夕食
・豚ヒレ肉の生姜焼き(少量)
・きのこ炒め
・味噌汁


木曜日

朝食
・納豆卵かけ玄米
・海苔
・緑茶

昼食
・サバ缶(水煮)+サラダ
・全粒粉クラッカー

夕食
・白身魚のホイル焼き
・ほうれん草ソテー
・わかめスープ


金曜日

朝食
・ヨーグルト+はちみつ少量+ナッツ
・バナナ

昼食
・チキンと豆のサラダ
・雑穀パン

夕食
・サンマの塩焼き
・大根おろし
・玄米


土曜日

朝食
・オートミール
・ベリー類
・緑茶

昼食
・刺身定食(マグロ、サーモン)
・ご飯は小盛り

夕食
・野菜中心の鍋(豆腐、きのこ、白菜)


日曜日

朝食
・和食(玄米、納豆、味噌汁)

昼食
・外食可(揚げ物は避ける)

夕食
・軽め(スープ+サラダ)


運動プログラム例(血流改善を目的とした構成)

基本方針

血液をサラサラに保つ運動は、継続可能な有酸素運動+補助的ストレッチが基本となる。過度な無酸素運動は一時的に血液粘度を上げる可能性があるため注意する。


週間運動モデル(一般成人向け)

有酸素運動(週5日)

  • ウォーキング:30〜45分

    • 目安心拍数:最大心拍数の50〜65%

  • または軽いジョギング、サイクリング

→ 毛細血管血流増加、HDL増加、インスリン感受性改善


ストレッチ(毎日)


・首回り、肩甲骨、股関節を中心に5〜10分


・下半身(ふくらはぎ、太もも、腰)中心に10分

→ 静脈還流促進、冷え・むくみ改善


補助的筋トレ(週2〜3日)

  • スクワット(自重)10回×2

  • プランク30秒×2

  • かかと上げ20回

→ 下肢筋ポンプ機能向上により血流改善


血液検査項目の解説(血液サラサラの指標)

血液がサラサラかどうかは主観では判断できない。以下の血液検査項目が重要となる。


脂質関連

LDLコレステロール
・高値:動脈硬化リスク上昇
・目標:120mg/dL未満(一般)

HDLコレステロール
・低値:血流悪化
・目標:40mg/dL以上

中性脂肪(TG)
・高値:血液粘度上昇
・目標:150mg/dL未満


糖代謝関連

空腹時血糖
・高値:血液の糖化、粘性増加

HbA1c
・慢性的血糖状態を反映
・6.0%未満が望ましい


炎症・血液粘性関連

CRP(高感度)
・慢性炎症の指標
・動脈硬化との関連が強い

ヘマトクリット値
・高値:血液濃縮
・脱水時に上昇しやすい


凝固系(必要に応じて)

PT-INR / APTT
・抗凝固状態の評価
・薬剤使用者では重要

Dダイマー
・血栓形成・溶解の指標


総合的考察

食事・運動・検査を組み合わせて初めて「血液サラサラ」は実体を持つ。
特定食品やサプリメントだけに依存するのではなく、生活全体を調整することが最重要である。


実践のポイントまとめ
  • 毎日水を意識的に飲む

  • 魚・納豆・野菜を「頻度」で考える

  • 座りっぱなしを避ける

  • 数値(血液検査)で客観評価する


最終まとめ

血液サラサラは一過性の健康ブームではなく、循環器疾患・脳血管疾患を遠ざけるための基盤戦略である。
科学的根拠に基づいた食事、運動、生活管理を積み重ねることで、血流は確実に改善し、長期的な健康寿命の延伸につながる。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします