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コラム:「お菓子」をやめることで得られる健康効果

お菓子を控えるという食習慣の変化は、個人の健康寿命延伸・医療費削減・生活の質向上につながる可能性がある。特に日本では高齢化社会が進む中で、食習慣の改善が国民レベルの健康維持・医療費抑制策としてますます重要になってくる。
様々なお菓子(Getty Images)

日本のお菓子事情

日本では日常的に「お菓子」「間食」を楽しむ習慣が広く存在しており、たとえば厚生労働省のウェブサイトでも「お菓子や間食の取り入れ方」という項目があり、間食がお菓子含めて「喜びや楽しみ」を与えてくれるが、種類や量によっては体重増加など健康に悪影響を及ぼしかねない旨が述べられている。
さらに、最近の調査では、お菓子「も」“健康”化の流れがあり、「健康菓子」や「低糖質・素材重視のお菓子」などのニーズが高まっている。たとえば、2025年の調査によると、「素材系菓子」「栄養強化菓子」の摂取率が上がっており、健康を意識しておやつ・間食を選ぶ人が増えている。
国内では「超加工食品」(いわゆるジャンク菓子やスナック菓子、菓子パン等)を多く摂ると、肥満・糖尿病などのリスクが高まるという報告も日本の団体から出ている。
また、国内では「エネルギー(カロリー)」「栄養成分」表示に加え、間食としての菓子の位置づけを見直そうという動きもある。厚生労働省のページでは、「お菓子にどのくらいのエネルギーや栄養素が含まれているのかを知ること」「お菓子を含めた間食を上手に取り入れる」ことが推奨されている。
以上から、日本ではお菓子・間食は文化的・日常的に定着しており、かつ「健康を意識したお菓子選び」「控えめにする」ことへの関心が増えている状況にある。

こうした背景を踏ま、「お菓子をやめる(または大幅に減らす)」ことの効果を、以降のセクションで整理していく。


お菓子をやめる(控える)

ここでいう「お菓子をやめる」とは、必ずしも完全にゼロにすることだけを意味せず、普段から習慣的に摂取している菓子・スナック・間食菓子の量を大きく減らし、頻度を抑えることを意味する。例えば、「毎日お菓子を食べていた状態」から「週に数回程度、あるいはおやつとして果物・ナッツ類に切り替える」などの実践を含む。
お菓子を控えることがなぜ意味を持つかというと、お菓子には「高糖質・高脂質・高カロリー・栄養バランスが偏りやすい」「加工度が高い」「満腹感が得づらく、過剰摂取になりやすい」といった特徴があるためである。たとえば、「超加工食品」の摂取が高いと、食事全体の栄養バランスが悪化するという国内の実証分析もある。
また、砂糖(特に「自由糖」「添加糖」)の過剰摂取は、世界的にも健康リスクとして認められており、たとえば「糖:健康リスクと政策対応」では、砂糖の過剰摂取は虫歯、肥満、代謝症候群、炎症性疾患などに関連するとされている。
このため、お菓子を控えることで、身体・肌・体重・精神面など、さまざまな健康上のプラス作用が生まえ得る。以下ではその具体的な効果を順に説明する。


身体的な健康効果

まず、身体(体内・生理的)レベルで期待できる効果を整理する。
お菓子やスナック菓子を控えることで、身体的には以下のような変化・改善が起こる可能性がある。

・糖質・カロリー過多の抑制

お菓子類はしばしば「見た目よりエネルギーが高い」「砂糖・脂質が多め」「満足感は得づらく、続けて食べてしまう」という特徴を持つ。これを控えることで、単純に過剰エネルギー摂取(カロリーオーバー)を抑えられる。
国際的には、砂糖入り飲料を減らすことで体重増加の抑制に有効という報告が出ており、たとえば 世界保健機関(WHO)によるレビューでは、砂糖入り飲料の1日あたり1回分の増加が、成人において1年で0.12〜0.22kgの体重増加と関連するというデータが示されている。
また、砂糖を用いた製品を「リフォーミュレート(糖分を減らした)製品」に置き換えることで、糖分摂取の削減、体重のわずかな下降が報告されているメタ解析もある(例:糖分摂取量が -11.18% 減、体重が -1.04 kg 減という結果)。
よって、お菓子を控えるのは、過剰糖質・過剰カロリーを抑え、身体的な「余分なエネルギー貯蔵(脂肪蓄積)」のリスクを下げるという点で大きな意味がある。

・代謝・インスリン抵抗性・脂肪肝リスクの低下

糖質・砂糖を大量に摂取し続けると、インスリン抵抗性が高まる、脂肪肝(非アルコール性脂肪肝:NAFLD)などが進行するリスクがあるという報告がある。たとえば、米国のモデル研究では、添加砂糖摂取を20%減らすことで脂肪肝、2型糖尿病、冠動脈疾患などの発症が減少する可能性があると推計されている。
また、日本国内でもお菓子・スナック菓子・菓子パンなど「超加工食品」の過剰摂取が、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドロームのリスク上昇に関連するという報告が出ている。
このため、お菓子を控えることで、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)状態の発生を抑制し、脂肪肝・糖尿病・動脈硬化など、代謝系疾患のリスク低減につながる可能性がある。

・歯・口腔の健康維持

砂糖を大量かつ頻繁に摂ることで、虫歯・歯周病などの口腔トラブルのリスクが高まる。たとえば「砂糖:健康リスクと政策対応」では、砂糖の過剰摂取が歯のう蝕(虫歯)に関連するとされている。
したがって、お菓子(特に砂糖たっぷりのもの)を控えることによって、虫歯・歯の劣化・歯周病リスクの軽減という効果も期待できる。

総じて、身体的な健康という観点から、お菓子を控えることは「過剰糖質・過剰カロリー・加工度高め食品の摂取を減らす」という意味で、さまざまなプラスの変化をもたらす。


体重管理とダイエット効果

次に、体重管理(ダイエット)という観点から、お菓子を控えることの効果を整理する。
多くの場合、お菓子を習慣的に摂ることは体重増加・脂肪蓄積の原因となる可能性をはらんでおり、それを控えることで以下のような利点がある。

・カロリー摂取量の低下による体重減少傾向

前節でも述べた通り、お菓子には糖質・脂質・エネルギーが高めのものが多く、「あともう1つ」「ついつい食べてしまう」という形で“過剰に”摂取されることが珍しくない。こうした習慣を断ち、あるいは頻度・量を大幅に減らすことで、日常の余分なカロリー摂取を抑えることができる。
たとえば、砂糖入り飲料の摂取を減らすことで体重増加傾向を抑えられるというWHOの解説がある。
また、糖分摂取を減らした製品の活用(リフォーミュレート)によって体重が平均-1.04kg減少という報告もある。
これらから、菓子類の習慣的な摂取を控える(あるいは量を減らす)ことで、体重管理・ダイエットの観点から明確なメリットがある。

・脂肪(特に内臓脂肪)・ウエスト周りの改善

体重が減るだけでなく、特に内臓脂肪・ウエスト周りの脂肪が減ると、見た目の変化とともに健康リスクの低減にも寄与する。砂糖・高エネルギー飲食の継続的な摂取は、内臓脂肪蓄積・メタボリックシンドロームの素因となることが研究されており、加工食品・菓子類の過剰摂取が「身体活動・食事バランスが悪化している」集団で明確に認められている。
そのため、お菓子を控えることは、単に体重を減らすだけでなく、脂肪が「蓄積されにくい体質」に自らを整える側面もある。

・体重維持・リバウンド予防にもつながるベース作り

ダイエット目的で菓子を断ち切る・大幅に減らすという行動は、短期的な体重減少だけでなく、長期的に「お菓子=習慣」「間食=つい手が伸びる」という構造を見直すという点で、体重維持の土台を整える意味もある。言い換えれば、菓子を控える習慣をつけることは、体重が減った後にも“もとに戻らない仕組み”を整えるうえで役立つ。

以上の観点から、体重管理・ダイエットを目的とするならば、お菓子を控える・やめるという選択は極めて有効と言える。


肌の調子の改善

次に、美容・肌(スキンケア)という観点から、お菓子を控えることによる効果について整理する。多くの人にとって、お菓子の摂取は「疲れ」「朝起きたとき肌のくすみ」「顔の吹き出物増加」などとも結びつきやすい。以下、そのメカニズムと効果を整理する。

・過剰糖質・甘味による炎症性反応・肌トラブルの原因

砂糖・高糖質食品を頻繁に摂取することで、血糖値の急上昇・その後の下降、インスリン・炎症マーカーの上昇などが起こりうる。こうした代謝的ストレス・炎症傾向は、肌のターンオーバーの乱れ・ニキビ(吹き出物)・くすみ・弾力低下・コラーゲン劣化などと関連があるという報告もある。たとえば、「7 Benefits of Cutting Out Sugar」という海外記事では、砂糖を減らすことで肌の健康が改善し、吹き出物が減り、コラーゲン・エラスチン繊維の損傷が抑えられる可能性があるとされている。
そのため、お菓子を控えることで、肌にとって負荷となりうる「糖質過多→代謝・炎症ストレス」の連鎖を断つことができる。

・血糖値の乱高下が肌の水分バランス・ハリに影響

甘い物を食べると血糖値が急激に上がり、体内ではこれを抑えようとするためにインスリンが分泌され、続いて血糖値が下がる。こうした「上がって下がる」動きは、体内の水分移動・血流変化・むくみ・肌のくすみに影響を与える可能性がある。お菓子を控え、血糖値の安定を図れば、肌の水分保持力・ハリ・トーンが改善しやすい。
また、菓子を控えることで、よりビタミン・ミネラル・食物繊維を含む食品(例えば果物・ナッツ類・野菜)に意識が向きやすく、肌の健康を支える栄養素(例えばビタミンC・E・亜鉛等)も取りやすくなる。

・美肌・アンチエイジングの観点からも有利

肌の弾力や若々しさを左右するコラーゲン・エラスチン繊維は、糖化(糖とたんぱく質が結びついて変性を起こす)というダメージを受けやすい。高糖質習慣がこれを進行させるという指摘もあり、糖質を減らすことで「糖化ストレス」の軽減につながる可能性がある。海外では「砂糖を減らすことで肌老化を遅らせる」という観点の紹介もされている。
そのため、肌の調子を気にする人にとって、お菓子を控えることは美容・アンチエイジングの一手となり得る。

以上から、肌・美容目的でお菓子を控えることも十分なメリットがあるといえる。


むくみの軽減

次に「むくみ(浮腫)」という観点から、お菓子を控えることの効果を説明する。むくみは、体内の水分・ナトリウム・リンパ・血流・代謝など複数の要因で起こるが、お菓子を控えることで次のような改善が期待できる。

・糖質・塩分・加工度の高い菓子による水分貯留の抑制

お菓子類、特にスナック菓子・菓子パン・スイーツなどは、糖質・脂質だけでなく、場合によっては塩分・トランス脂肪・添加物が多めという特徴を持つ。これらが過剰に摂取されると、体が「余分なナトリウム・水分」を抱えやすくなり、むくみ(脚・顔・手など)を感じやすくなる。
お菓子を控えることで、こうした「余分なナトリウム・糖質・加工食品による水分滞留」要因を減らすことが出来る。

・血糖値の乱高下を抑えて水分代謝を整える

前述の通り、お菓子(砂糖)による血糖値の急上昇・下降は、体内水分の動き・インスリン・ナトリウム代謝・血管透過性などに影響を与える。インスリンが高まると腎臓でのナトリウム再吸収が高まりやすいという報告もあり(一般的な生理知識として)、これがむくみを招く一因となり得る。お菓子を控えて血糖値の安定を図ることは、結果としてむくみ軽減につながる。
また、水分をスムーズに排出・血流を整えるためには、余分な加工糖質・菓子類を控えるという土台作りが有効である。

・体重・脂肪量の減少がむくみ感を軽くする

むくみが「見た目の膨張感」「脚が重い」「顔がパンパン」という形で感じられている場合、体内の脂肪・余剰エネルギー・循環負荷が関係していることも多い。お菓子を控えて体重・脂肪量を減らすことで、むくみに伴う「余分な水分」の貯留リスクが下がり、脚・顔・手のむくみ感も軽減しやすい。

これらを総合すると、むくみを感じやすい人・「スイーツ食べすぎた翌日むくむ」という経験を持つ人にとって、お菓子を控えることはむくみ軽減のための一つの有効なアプローチとなる。


生活習慣病のリスク低減

続いて、より長期的・重大な観点として、生活習慣病(肥満・2型糖尿病・脂肪肝・心血管疾患など)のリスク低減という観点から、お菓子を控えることの意義を整理する。

・肥満・メタボリックシンドローム予防

お菓子を含む加工食品・スナック菓子・菓子パン・甘味飲料などを多く摂ることは、肥満・内臓脂肪蓄積・メタボリックシンドローム(高血圧・高血糖・脂質異常・内臓脂肪型肥満)を招く原因となる。日本の報告でも、超加工食品の多摂取が肥満・2型糖尿病・代謝障害リスクを高めるというものがある。
これに対して、お菓子・スナック菓子を控える/量を減らすという行為は、肥満・メタボ予防の観点で明らかにプラスである。

・2型糖尿病・脂肪肝(非アルコール性脂肪肝:NAFLD)・心血管疾患の予防

砂糖・添加糖を多く摂ることは、2型糖尿病・NAFLD・冠動脈疾患・脳卒中などのリスクを高める。先述の研究では、添加糖を20%削減することで、こうした疾患の発症が一定程度抑えられると推計されている。
また、糖質を加工食品から20%削減し、清涼飲料から40%削減することで、心血管疾患イベントを数百万件規模で防げるという米国の報道もある。
このように、お菓子を控えることは、生活習慣病リスクそのものを低減する予防的な食行動と位置づけられる。

・医療費・社会コストの軽減

さらに、長期的には、糖質過多・お菓子・加工食品多摂取による生活習慣病の増加は、医療費・社会保障コストの増大につながる。研究では、添加砂糖摂取削減によって、障害調整生命年(DALYs)の減少、医療費削減効果も推計されている。
ゆえに、お菓子を控えるという個人の行動は、本人の健康保持だけでなく、社会的・経済的なメリットも含んでいる。

これらを総合すると、「お菓子をやめる/控える」ことは、生活習慣病を予防し、長期的な健康寿命を支えるうえで重要な要素である。


精神的・その他の効果

ここまで主に身体・体重・肌・病気予防という観点で説明してきたが、お菓子を控えることには「精神的なまで含めた幅広い効果」も期待できる。以下に述べる。

精神的な安定

お菓子・甘いものを食べると、短時間で快楽・満足感を得られるが、その反動で血糖値が急降下したり、食後に眠気・だるさ・イライラを招いたりすることがある。例えば、甘いものを食べ過ぎた後に「なんだか疲れた」「集中力が切れた」「気分が沈んだ」という経験を持つ人は少なくない。
実際に、日本人労働者を対象とした縦断研究では、菓子の摂取量が多いことと「うつリスク」の関連が示されている。たとえば、甘いお菓子・クッキー・アイスクリーム等の過剰摂取が、うつ状態の発生可能性を高める可能性が報告されている。
このように、お菓子を控えることで、血糖・代謝の安定→身体の調子安定→精神・気分の浮き沈みが少なくなる、という好循環が生まれ得る。

集中力の向上

菓子・スナックを頻繁に摂ると、短期的には「糖分の急上昇」という刺激があるが、その後「急低下」という落とし穴もある。これが「眠気」「ぼーっとする」「集中力が切れる」「作業効率が落ちる」といった状態を招く可能性がある。
これに対して、お菓子を控えて食後の血糖変動を緩やかにすれば、脳・神経系への負荷を軽減でき、結果として「集中力・思考力・仕事効率」が向上しやすい。加えて、血糖値・インスリン・エネルギー供給が安定すれば、午前中・午後の“ダレ時間”を減らす助けにもなる。

節約効果

菓子を控えることには経済的なメリットもある。多くのお菓子は、少量であっても「高価」なスナック菓子・チョコレート・菓子パン・アイスクリームなどが含まれる。これを控えて、代替として例えば果物・ナッツ・手作り軽食に切り替えたり、間食そのものを減らしたりすれば、月々の「お菓子購入」出費が減る。
また、体重増加・生活習慣病予備群化によって将来の医療費・保健料が上がる可能性も考えれば、長期的な節約にもつながる。したがって、経済的観点からも「お菓子を控える」は合理的な選択である。

以上のように、精神・集中・経済といった側面も含めて、お菓子を控えることで得られる「付帯的効果」はかなり幅広い。


注意点

ただし、「お菓子を完全にやめる」「ゼロにする」ことには、注意や配慮が必要である。以下、主な注意点と対策を述べる。

・極端な制限の反動・ストレス負荷

お菓子を急に“ゼロ”に近い形で断つと、甘いものに慣れていた体・味覚・習慣から脱却する必要があり、初期には「甘いものを欲する」「気分が落ち着かない」「ストレス解消ができない」「疲れやすい」といった反応が起こる可能性がある。実際、海外では「砂糖をやめて30日後に起こる変化」として、そのような“離脱感”を報じる記事もある。
このため、極端なゼロ志向ではなく、「頻度・量を段階的に減らす」「代替食品を用意する」「習慣化を見直す」というアプローチが望ましい。

・栄養バランスを壊さないように

お菓子を控えるあまり、「何も食べない」「無理に空腹を我慢する」「食事の回数を極端に減らす」といった行為に走ると、かえって栄養不足・エネルギー不足・代謝低下などを招く可能性がある。お菓子を控えること自体が目的化せず、総合的な食事バランス(主食・副菜・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維)を保つことが重要である。厚生労働省も「お菓子と間食を含めた取り入れ方」を案内しており、単にお菓子を否定するのではなく「上手に取り入れる」ことを推奨している。
また、「甘いもの全てが悪」というわけでもなく、果物・ナッツ類・少量のチョコレート等、栄養価・満足度を考えた“間食選び”の余地もあるため、完全断という極端に走るよりは「質を変える・量を減らす」という視点を持つべきである。

・個人差・既存疾患の有無を考慮

糖尿病・既往症・体質・日常の活動量・年齢・性別などにより、「どこまでお菓子を控えることが意味を持つか」「どの程度控えるか」は個人差がある。したがって、極端な食事制限を行う前には、医師・管理栄養士に相談することが望ましい。食事内容・活動量・健康状態に即した調整が必要である。

・「お菓子=楽しみ」「コミュニケーションツール」という側面もある

前述のように、厚生労働省の説明にもあるように、お菓子・間食には「楽しみ」「コミュニケーションの場」という側面がある。完全に“お菓子禁止”とすると、家族・友人・職場での食事・歓談という場で“楽しみ”を失う可能性もあるため、あくまで「量・頻度をコントロールする」「質を変える」というバランスを意識すべきである。

以上、注意点も理解したうえで、「量を減らす・質を変える」という現実的なアプローチを取ることが、継続可能でかつ健康効果を発揮しやすい。


量を減らす・果物やナッツ類はどう?

では、実践的に「お菓子をやめる・控える」際の具体的な方向性および代替案(果物・ナッツ類等)を整理する。

・量を減らす、頻度を下げる

まず、「完全に食べない」にこだわらず、例えば以下のようなステップが有効である。

  • 毎日食べていたお菓子を「週に3回以内」に減らす。

  • 食べるとしても「1回あたり量を半分にする」「小袋サイズにする」。

  • 食べるタイミングを決めて「食後15分以内」「寝る前は避ける」などルールを設ける。
    このように“量・頻度”をコントロールすることで、習慣的な過剰摂取を防ぎつつ極端なストレスを回避できる。

・質を変える(より健康的な代替)

量を減らすと同時に、お菓子の「質」を見直すことがポイントである。具体的には、以下の代替案がある:

  • 果物(生またはカットされたもの)を間食に。砂糖添加されておらず、ビタミン・ミネラル・食物繊維も摂取できる。

  • 無塩・無糖または少量のナッツ類(アーモンド・くるみ・カシューナッツ等)を少量。満足感が出やすく、良質な脂質・たんぱく質を含む。

  • ダークチョコレート(カカオ70%以上)を少量。満足度を得つつ、砂糖量を抑える。

  • 手作り軽食(ヨーグルト+フルーツ、オートミール+ナッツなど)を取り入れる。
    これにより、「お菓子を我慢するだけ」という感覚ではなく、「より質の高い間食を選ぶ」というポジティブな選択肢が増える。
    ただし、果物・ナッツ類も摂り過ぎればカロリー過多・果糖過剰になるため、「少量・適度」を意識する必要がある。

・注意すべき点
  • 果物であっても「果糖」や「糖質」が含まれている。特にジュース・缶詰・ドライフルーツなどは糖質が高くなりがち。

  • ナッツ類もエネルギー(脂質・カロリー)が高いため、「少量(手のひら一握り・10~20g程度)」という量の意識が重要。

  • 「低糖質」「糖分ゼロ」のお菓子・スナックが必ずしも体に良いわけではない。代替甘味料・加工度・添加物の観点から議論もある。たとえば、人工甘味料・代替糖に関するレビューでは、体重制御・代謝に対して長期的な利点が十分裏付けられていないという報告もある。

  • 食事全体のバランスを崩さないように、「間食を変える」だけでなく「主食/副菜/たんぱく質」が適切に摂られているかを確認する。

このように、「量を減らし、質を変える」ことで、お菓子を控えることがより実践しやすく、かつ継続可能なものとなる。


今後の展望

最後に、将来的な視点・展望も含めて整理する。お菓子を控えること、あるいは「控えやすい環境」を整えるためには、個人だけでなく社会・産業・政策側の変化も鍵となる。

・個人レベルの習慣変容

お菓子を控えるという選択が継続されるためには、単なる「我慢」ではなく、「健康的な習慣」「喜びを伴う選択肢」として取り入れられることが望ましい。例えば、間食として果物やナッツを選ぶ、仲間・家族と“お菓子のないおしゃべりタイム”を設ける、週に1回だけ“ご褒美のお菓子”を楽しむルールを作る、など。
また、味覚を再教育し、甘味・菓子に対する「満足ハードル」を下げる(例えば甘味をゆっくり味わう、小さく切る、少量にする)と、控えるハードルが低くなる。
さらに、情報リテラシーとして、栄養表示・糖質・加工度をチェックできるようになることも重要である。厚生労働省のガイドでは、お菓子・間食を取り入れるにあたって栄養成分表示を活用することが推奨されている。

・産業・市場の動向

日本の菓子市場では、少子化・人口構造の変化の中で成長鈍化傾向がある一方、「健康菓子市場」が拡大しており、2024年には菓子市場全体約2兆9,208.9億円、健康菓子市場約3,557.7億円と報じられている。
このことから、菓子製造側も「低糖質」「素材の良さ」「添加物を少なく」「栄養強化」という方向にシフトしており、消費者としても「控える」というだけでなく“質の良いお菓子を選ぶ”という選択肢が増えてきている。
将来的には、食品表示制度の充実、加工度・糖質に関する社会的な啓発、学校・職場の間食環境の改善(“お菓子ばかり”から“果物・ナッツ中心”へ)などが期待される。

・政策・社会衛生の観点

砂糖・添加糖の過剰摂取が国民健康に及ぼす影響を考慮すると、政策的にも「菓子・スナック菓子・甘味飲料」の糖質削減や表示義務の強化、超加工食品の制限・警告などの議論が進んでいる。例えば、研究では添加砂糖を削減することで、数百万件の生活習慣病イベントを防げる可能性があると推計されている。
また、消費者・企業・政府が連携して「お菓子を控える・質を変える」ための環境整備(例:間食の選択肢を増やす、菓子の高糖質化を抑える、教育・啓発活動)を進めることが、今後の社会的展望として重要となる。

・個人・社会の両視点での健康寿命延伸

お菓子を控えるという食習慣の変化は、個人の健康寿命延伸・医療費削減・生活の質向上につながる可能性がある。特に日本では高齢化社会が進む中で、食習慣の改善が国民レベルの健康維持・医療費抑制策としてますます重要になってくる。
たとえば、お菓子を控えて2型糖尿病・脂肪肝・心血管疾患・肥満を予防できることは、将来的な介護・医療・働く能力維持という観点からも意味がある。

以上のように、今後は「お菓子をただ控える」だけでなく、「より良い間食・間食環境」「加工食品を含む菓子市場の変革」「社会制度・政策支援」の三者が相互に作用していくことが期待される。

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