コラム:超加工食品の健康リスク、メンタルにも影響
超加工食品の摂取は、心血管疾患、がん、生活習慣病、精神健康、全死亡リスク等の健康アウトカムと一貫して関連が報告されている。
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現状(2026年2月時点)
近年、超加工食品(Ultra-Processed Foods: UPFs)の摂取が世界的に増加している。先進国を中心に、総エネルギー摂取の半分以上を超加工食品が占める国も少なくなく、食生活の質が低下していると報告される。2026年2月には、超加工食品の健康リスクが従来の栄養学的評価を超えて「煙草のような工業製品として規制すべき」との論説が発表されるなど、公衆衛生上の懸念が高まっている。
超加工食品に対する注目は、単なる栄養素の過不足だけでなく、生活習慣病、心血管疾患、がん、精神健康、認知機能など多面的なリスクとの関連が次々と示されている。これらのリスクは疫学的研究による関連性が中心だが、臨床介入やメカニズム研究も増えてきており、総合的な評価が進行中である。
超加工食品とは
超加工食品の定義は食品科学・栄養疫学において「NOVA」という分類システムで体系化されている。NOVAは食品を加工度合いで四つに分類する枠組みであり、NOVA4が超加工食品に相当する。このカテゴリーには工業的に加工された成分が多く含まれ、添加物(乳化剤、着色料、甘味料等)や高エネルギー・低栄養密度の食品が属する。具体例として、清涼飲料水、スナック菓子、インスタント食品、調理済みの冷凍食品、加工肉製品、菓子パンなどがある。
超加工食品は、原材料由来の栄養素が消失していることが多く、代わりに精製炭水化物・飽和脂肪・添加糖・食塩・化学添加物が多いことが一般的だ。また時に嗜好性を増す工夫がされており、満腹感を得にくい特徴がある。
主な疾患リスク
超加工食品の摂取と健康リスクとの関係は、疫学研究・メタ解析・大規模前向きコホート研究で多数報告されている。これらの研究は因果関係を証明するものではないが、多くの結果が一致してリスク上昇を示している。例えば、心血管疾患、がん、生活習慣病、精神健康や認知機能の低下など広範な疾患リスクとの関連性が報告されている。疫学的証拠は多国籍かつ大規模データに基づくものであり、健康リスクの幅広さが示されている。
生活習慣病・死亡リスク
大規模コホート研究において、超加工食品の摂取が全死亡リスクの上昇と関連することが示されている。例えば、BMJに掲載されたSUNコホート研究では、超加工食品の摂取量が多い群は全死亡リスクが約62%増加し、1食分増加ごとに全死亡リスクが約18%増加したと報告されている。
また、システマティックレビュー・メタ解析でも、超加工食品摂取が全死亡リスクおよび心血管疾患関連死亡の増加と関連しているという結果が示されている。10%摂取割合の増加に対して全死亡リスクが15%上昇するなどの用量反応関係が報告されている。
これらの結果は、食生活全体の質の低下に伴う慢性疾患リスクの増加を示唆している。また、死亡リスクに関して男女差や背景因子による変動もあるとされ、健康リスクの個別性も注目されている。
心血管疾患
心血管疾患との関連は多くの観察研究で検討されている。例えば、メタ解析では超加工食品の摂取が心血管疾患の発症・関連死亡リスクを31%以上上昇させることが示された。
更に米国の大規模コホート研究でも、最も多く超加工食品を摂取する群は心血管疾患死亡リスクが約1.5倍になるなど、心疾患との関連が示されている。
英国バイオバンクのデータに基づく研究でも、超加工食品の高摂取は、心血管疾患イベント(心筋梗塞・脳卒中等)および全死亡リスクと有意に関連していると報告されている。
これらは、超加工食品が血圧上昇、脂質異常、炎症反応亢進、インスリン抵抗性の助長など複数の病態を通じて心血管リスクを高める可能性を示唆している。
がん
がんとの関連についても疫学研究が進展している。複数の前向き研究で総死亡や疾患別死亡に関する分析が行われており、高い超加工食品摂取割合は総死亡およびがん死亡リスクの増加と関連するという傾向が示されている。
また、一部の研究では特定のがん(例:肺がん、乳がん)との関連を示唆する報告もあるが、これらは調整項目や研究デザインの違いにより一貫性が完全には確認されていないため、さらなる追試が必要である。
がんリスクの関連機序としては、慢性的な炎症、ホルモンバランスの乱れ、発がん性添加物の存在などが仮説として議論されている。
メンタル・認知機能
超加工食品と精神健康・認知機能に関する研究も活発になっている。2026年のスコーピングレビューでは、超加工食品の高摂取がうつ症状のリスク上昇と関連する可能性が報告されている。
メカニズムとしては、脂質組成の不均衡、オメガ-3脂肪酸の不足、神経伝達物質の変調、慢性炎症が関与する可能性が示唆されている。認知機能低下や認知症リスクについても初期成果があり、今後さらなる長期研究が必要である。
なぜリスクが高いのか
超加工食品が健康リスクを高めるとされる要因は多岐にわたる。以下に主要なメカニズムを整理する。
栄養バランスの偏り
超加工食品は、高エネルギー・高脂質・高糖・高塩であるにもかかわらず、食物繊維・ビタミン・ミネラルなどの必須栄養素が乏しいという一般的な特徴を持つ。このため、摂取カロリーが高くても栄養密度が低く、相対的栄養不良状態に陥る可能性がある。
さらに、超加工食品は高い血糖負荷を引き起こしやすく、体脂肪蓄積やインスリン抵抗性の助長につながる。これが肥満、2型糖尿病、脂質異常症など生活習慣病リスクを高める大きな要因になる。
腸内環境の悪化
腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は健康維持に重要な役割を果たすが、超加工食品は食物繊維が少なく、腸内善玉菌の増殖を阻害する可能性がある。また、添加物や人工甘味料は腸内環境を乱すと報告されている。このような腸内環境の乱れが、炎症反応、免疫機能の低下、代謝異常を介して疾患リスクを増加させる可能性がある。
依存性と過食
一部の研究者は、超加工食品が「依存性」を持つ可能性を指摘している。特に高い糖分・脂肪・食塩の組み合わせは、嗜好を強化し、満腹感を得にくく、過食につながりやすいという報告がある。これは超加工食品摂取がエネルギー過剰・体重増加を促進し、生活習慣病の危険因子となる要素と考えられている。
今後の展望
超加工食品と健康リスクの関連性に対する研究は今後も進展が期待される。現在の研究の多くは観察研究であり、因果関係の確立にはランダム化比較試験や介入研究が必要である。また、超加工食品の具体的な成分や加工プロセスの影響を詳細に評価する研究も求められている。
政策的アプローチとしては、食品表示の改善、栄養教育、加工食品の規制・課税政策などが議論されている。ある提言では、タバコ規制のように超加工食品の広告・マーケティング制限が必要とする意見も出ている。
また、食生活全体の質を改善するために、未加工・低加工食品の摂取を促進することが重要である。
まとめ
超加工食品の摂取は、心血管疾患、がん、生活習慣病、精神健康、全死亡リスク等の健康アウトカムと一貫して関連が報告されている。これらの関連は観察データに基づくものであるものの、重篤な疾患リスクとの関連性が広く示されていることは、公衆衛生上の重大な関心事である。超加工食品摂取が健康に及ぼす影響は、栄養バランスの偏り、腸内環境の乱れ、過食傾向など複数の機序が関与していると考えられる。
今後は、因果関係をより明確にする研究や、食品政策・教育介入による予防的アプローチが必要である。
参考・引用リスト
Consumption of ultra-processed foods raises the possibility of cardiovascular disease – Jiaxin You et al., Meta-analysis, Nutr Hosp (2025).
Ultra-Processed Foods May Be Associated With Adverse Health Outcomes, American College of Cardiology (2025).
Association of ultra-processed food consumption with cardiovascular mortality – Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial cohort study.
Association of ultra-processed food consumption with cardiovascular disease and all-cause mortality – UK Biobank.
Ultra-processed foods, plant and animal sources, and all-cause, cardiovascular, and cancer mortality – PubMed data.
Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review – The BMJ.
Associations between ultra-processed foods and all-cause mortality – SUN prospective cohort, BMJ.
Ultra processing and mental health scoping review, Frontiers in Nutrition (2026).
Ultra-processed foods should be treated more like cigarettes than food – public health commentary (2026).
追記:超加工食品が子供の健康に与える影響
身体的健康への影響
子供期は身体・代謝・神経系が発達途上にあり、食事の質が将来の健康を規定する重要な時期である。この段階で超加工食品の摂取割合が高い場合、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病リスクが早期から上昇することが多数の疫学研究で示されている。
特に問題となるのは、超加工食品が高エネルギー密度・高糖質・高脂質である一方、食物繊維や微量栄養素が不足している点である。成長期に必要な鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンDなどの不足は、骨密度形成不全、免疫機能低下、発育遅延と関連する。
また、子供の肥満は成人肥満へ移行しやすく、早期からのインスリン抵抗性や脂肪細胞数の増加は、生涯にわたる代謝疾患リスクを高める。超加工食品中心の食事は、単なる体重増加にとどまらず、将来の医療負担増大をもたらす構造的要因と考えられる。
腸内環境と免疫発達への影響
子供期は腸内細菌叢が形成・安定化する重要な時期である。超加工食品は食物繊維が乏しく、腸内細菌の多様性を低下させる可能性がある。腸内細菌の多様性低下は、免疫調節機能の未熟化やアレルギー疾患、自己免疫疾患リスクの上昇と関連する。
さらに、乳化剤や人工甘味料などの食品添加物が腸管バリア機能を障害し、軽度の慢性炎症を引き起こす可能性も指摘されている。これらは成長期の免疫系に長期的影響を及ぼす懸念がある。
超加工食品が子供のメンタル・行動に与える影響
情緒・行動問題との関連
近年、超加工食品の高摂取と、注意欠如・多動傾向、情緒不安定、衝動性の増加との関連が報告されている。これらの関連は因果関係が完全に確立されたものではないが、栄養素不足、血糖値の急激な変動、炎症反応の亢進などが関与している可能性が示唆されている。
特に精製糖質を多く含む食品は、血糖値の急上昇と急降下を引き起こし、集中力低下や気分変動を招きやすい。成長期の脳はエネルギー代謝の影響を受けやすく、不安定な血糖コントロールは行動調節機能に影響を及ぼす可能性がある。
うつ症状・不安との関連
子供・思春期においても、超加工食品の摂取量が多い群で抑うつ症状や不安傾向が高いという報告が増えている。これには、オメガ3脂肪酸やビタミンB群、マグネシウムなど、神経機能に重要な栄養素の不足が関与していると考えられる。
また、腸内環境の乱れを介した「腸脳相関」により、神経伝達物質合成や炎症性サイトカインが精神状態に影響を与える可能性も示唆されている。
超加工食品をやめられない理由
① 生物学的要因(依存性)
超加工食品は、糖・脂肪・塩分を高度に組み合わせた設計がなされており、報酬系を強く刺激する。これはドーパミン分泌を促し、「快」の感覚を反復的に求める行動を形成する。結果として、依存様行動や強い欲求が生じやすい。
この依存性は意思の弱さではなく、食品設計による生理的反応である点が重要である。
② 心理的要因(ストレス対処・情緒調整)
超加工食品は即時的な満足感を与えるため、ストレス、不安、孤独感への対処手段として使用されやすい。特に子供の場合、感情調整能力が未熟であり、甘味や脂質の多い食品が「安心材料」として機能することがある。
このパターンが習慣化すると、感情と食行動が強く結びつき、超加工食品から離れにくくなる。
③ 社会的・環境的要因
超加工食品は安価で入手しやすく、広告やキャラクター戦略により子供に強く訴求されている。家庭環境や学校周辺の食環境も、超加工食品へのアクセスを容易にしている。
忙しい家庭ほど調理時間の短縮が求められ、結果として超加工食品に依存しやすい構造が生まれる。
加工食品を断つ(減らす)ための実践的アプローチ
① 完全排除ではなく段階的削減
超加工食品を一気に排除すると反動が生じやすい。まずは摂取頻度を減らし、代替食品を増やす段階的アプローチが現実的である。
② 食環境の再設計
家庭内に超加工食品を常備しない、果物やナッツ、未加工食品を手に取りやすい場所に置くなど、意志力に頼らない環境設計が重要である。
③ 味覚の再教育
超加工食品に慣れた味覚は、自然食品を「味が薄い」と感じやすい。数週間から数か月かけて塩分・糖分を下げることで、味覚は再調整されることが示されている。
④ 子供への教育的アプローチ
禁止や強制ではなく、「なぜ体に影響するのか」を年齢に応じて説明し、選択権を尊重することが重要である。食育は長期的行動変容に寄与する。
追記まとめ
超加工食品は、子供の身体的健康、腸内環境、免疫発達、メンタルヘルス、行動特性に多面的な影響を及ぼす可能性がある。やめられない背景には、生物学的依存性、心理的要因、社会構造が複合的に絡んでいる。
したがって、個人の努力だけでなく、家庭、教育、社会環境を含めた多層的アプローチが必要である。特に子供期の食環境改善は、将来の健康格差を縮小するための重要な公衆衛生戦略と位置付けられる。
参考・引用リスト(追記分)
World Health Organization. Guideline: Healthy diet.
Monteiro CA et al. Ultra-processed foods, diet quality, and health.
BMJ Global Health. Ultra-processed food consumption and mental health.
Frontiers in Nutrition. Ultra-processed foods and childhood behavior.
American Academy of Pediatrics. Nutrition and child development.
Hall KD et al. Ultra-processed diets cause excess calorie intake.
Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. Gut microbiome and child health.
