「減量注射」が消費習慣を変える?企業の対応にも変化
減量注射を使う人々は空腹感が抑えられるため、従来の高カロリー食品や大量購入を減らし、より栄養価の高い食材や小分けパッケージへの支出が増加しているという報告がある。
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イギリスを中心に体重減少効果のある注射薬(いわゆる“減量注射”)が消費者の支出パターンを大きく変えつつある。これらは食欲を抑えるGLP-1受容体作動薬で、ある調査では2024年に約160万人が利用し、関心を寄せる人はさらに多いとされる。こうした薬が人気を集めるにつれ、単に健康面への影響だけでなく、消費行動や企業の対応にも変化が生じている。
まず、スーパーマーケットなどの食料品購入において、利用者の買い物内容が変わっている。減量注射を使う人々は空腹感が抑えられるため、従来の高カロリー食品や大量購入を減らし、より栄養価の高い食材や小分けパッケージへの支出が増加しているという報告がある。結果として週当たりの食料品費が減ったという利用者の声もある一方で、これ自体が節約につながっているわけではなく、注射の費用自体が掛かるとの指摘もある。
外食やテイクアウトの頻度も減少傾向にある。利用者の中には外食やピザ・チップスといった手軽な高カロリー食の購入を控えるようになったという声があり、外食産業各社もこうした変化を注視している。パン業チェーン「グレッグス」は、注射薬の利用が「少量志向」を促していると指摘している。また、「ザ・ファット・ダック」など一部の高級レストランでも、より健康志向で“マインドフルな”食体験を提供する新メニューが導入されている。
アルコール消費にも影響が出ている。市場調査会社のデータによると、GLP-1薬を使用している世帯ではアルコールの購入量が大幅に減少し、ノンアルコール飲料への関心が高まっている。イギリスでは低・ノンアルコールビールの消費が劇的に増加しており、健康志向の高まりと相まって、製造側にも変化が広がっている。
一方、急激な体重減少は衣料支出の増加を引き起こす例もある。長らくサイズが合っていた服が不要となり、利用者が新たな衣類を購入する必要に迫られるケースが複数報告されている。このため、従来の小売業にとってはファッション分野での需要増につながる可能性も指摘されている。また中古衣料プラットフォームの利用増加といった二次市場の活性化も期待されている。
さらに、減量注射利用者が健康全般への関心を高める傾向により、運動関連商品やフィットネスサービスへの支出も増える可能性があるという見方もある。専門家はこうした医療技術の普及が消費者行動全体に波及し、従来の大量消費型モデルから、健康・価値重視型の支出へと移行する契機になり得ると分析している。
ただし、これらの変化が長期的にどこまで続くか、また全体消費に与える純粋な経済効果はまだ不透明で、今後も注視が必要である。
