コラム:だるさ、スタミナ切れ、乾燥肌、体調不良の原因
「だるさ・スタミナ切れ・乾燥肌」は単独ではなく複数の機構が関与する不定愁訴であり、栄養・ホルモン・自律神経など多面的評価が必要である。
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現状(2026年2月時点)
2026年現在、社会全体で「だるさ」「スタミナ切れ」「乾燥肌」といった“不定愁訴(なんとなく不調)”を訴える例が増加している。その背景には生活習慣の変化、食事の偏り、慢性的なストレス、環境因子(冬季低温・暖房等)といった外的・内的ストレスが複雑に絡み合っている可能性が指摘されている。また高齢化社会の進展に伴い、栄養吸収・代謝効率の低下が併発するケースも増えてきている。これらの症状は単一の病態を指し示すものではなく、複数の生理機能や栄養状態の不均衡が複合的に影響していると考えられる。
「だるさ、スタミナ切れ、乾燥肌」が同時に現れたら…
これらの症状が同時に現れる場合には、単なる“季節性疲労”や“睡眠不足”として片付けず、体内の恒常性(ホメオスタシス)の崩れが疑われる。だるさとスタミナ切れはエネルギー代謝不全や血液・ホルモン運搬機能の低下を、乾燥肌は皮膚バリア機能の低下や栄養素欠乏を反映する可能性がある。特に栄養素や内分泌・自律神経系が影響する複合的メカニズムを念頭に置く必要がある。
栄養素の欠乏(隠れ栄養失調)
栄養素は体内でエネルギー供給、酵素反応、細胞構造の構築、免疫機能やホルモン合成に関わる。これらは体外からの摂取に完全に依存している。現代の食生活では、エネルギー源(糖質・脂質)に偏り、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素が不足しやすい傾向が指摘されている(例:日本人の食事調査等)
栄養素の欠乏が進行すると、エネルギー代謝の効率が低下し、疲労感・倦怠感・肌の乾燥などの症状が現れる。皮膚や粘膜は栄養不良の早期サインとなることがあり、専門的な皮膚医学のレビューでも栄養欠乏に関連した皮膚症状が報告されている(高齢者など栄養不良のリスク群に多い)
鉄分不足(かくれ貧血)
鉄は主にヘモグロビンの構成要素として酸素運搬能力を担う。鉄不足は鉄欠乏性貧血を引き起こし、この状態では酸素供給効率の低下 → 組織の代謝低下 → だるさ・スタミナ切れが生じる。加えて、鉄不足に伴う“隠れ栄養失調”(血清フェリチン低値)は、肌荒れや乾燥を伴うことがあると報告されている(NHKガッテン等の報道でも解説)。また鉄は皮膚細胞のターンオーバーにも関与している可能性があり、皮膚バリアの維持にも影響を与える。
ビタミンB群不足
ビタミンB群はエネルギー代謝(糖質・脂質・タンパク質)に関与する補酵素として機能する。特にビタミンB₁は炭水化物からのエネルギー産生を補助し、不足すると“エネルギー変換効率の低下”によりだるさや疲労感が増強するとされる。また他のB群(B₂・B₆・B₁₂)は皮膚や粘膜の健康維持に寄与するため、その欠乏は乾燥肌・口内炎・神経症状(B₁₂欠乏による悪性貧血・神経障害)などを引き起こす可能性がある(栄養ガイドラインの基本概念)。
亜鉛不足
亜鉛は300種類を超える酵素・タンパク質と関わる必須微量元素であり、DNA合成・免疫機能・皮膚細胞機能に重要な役割を持つ。亜鉛欠乏は皮膚の乾燥・粗さ、脱毛、免疫低下、味覚異常などの症状と関連することが国際的な研究で示されている(乾燥皮膚や皮膚症状が特徴)。
また高齢者では欠乏が比較的多く、体力低下や免疫能低下とも関連しているとの報告がある。さらに亜鉛補充により皮膚の保水性や筋機能が改善する方向性の研究も報告されている。
甲状腺機能の低下(橋本病など)
甲状腺はT₃・T₄などのホルモンを産生し、身体の基礎代謝率(BMR)を調節する。甲状腺機能低下症は、ホルモン不足により代謝全般が低下し、慢性的な疲労感・寒がり・体重増加・便秘・乾燥肌などの症状を呈することが医療機関の解説で広く認識されている(橋本病を含む)。
甲状腺疾患は自身免疫性の原因(例:橋本病)で起こることも多く、他の自律神経・ホルモン系と密接に関連している。
主な症状
だるさ・疲労感
エネルギー代謝の低下、酸素運搬能力の不全(鉄欠乏)、ホルモンバランスの異常、栄養欠乏、糖尿病など内分泌系の変化まで多様な原因がある。不調が数週間以上続く場合は、単なる“疲労”として扱わず医療的評価が推奨される。特に倦怠感は多疾患に共通の症状であるため、総合的な評価が必要である(成人病予防協会等)。
スタミナ切れ
持久力や作業耐性の低下は、エネルギー供給・利用の低下(例:ビタミンB群不足・甲状腺機能低下・糖代謝異常)によって説明される。また亜鉛欠乏などが筋機能に影響するとの報告もある。
乾燥肌
皮膚は栄養状態・ホルモン状態を反映する臓器であり、ビタミンA・B群・亜鉛などが欠乏するとバリア機能の低下・乾燥・皮膚炎傾向が見られるとの知見がある。皮膚症状は早期に栄養不全に気づかせる“サイン”としても重要である。
自律神経の乱れと脱水
交感神経・副交感神経のバランスが乱れると、睡眠の質の低下、循環機能の不安定、エネルギー調整機能の障害が生じ、慢性的な疲労状態につながることが知られている(内分泌関連医学の一般知識)。またストレスや生活リズムの乱れはホルモン分泌パターンを乱し、疲労感を増強する。
慢性的な脱水
慢性的な水分不足は循環機能・代謝・体温調節に影響し、スタミナ低下や集中力低下を誘発する。冬季乾燥期や活動時の発汗・水分摂取不足は脱水のリスクを高める。
改善へのヒント
栄養バランス
炭水化物中心の食事に偏らず、タンパク質、ビタミン(B群・A・D・E)、ミネラル(鉄・亜鉛)をバランスよく摂取することが基本である。特にビタミンB群はエネルギー代謝の補酵素として重要であるとされる。
医療検査
血液検査による鉄(フェリチン含む)、甲状腺ホルモン、ビタミンD・B₁₂、亜鉛などの評価は、隠れた栄養欠乏や内分泌異常の発見に有効である。必要に応じて専門医の診断を受ける。
生活習慣
規則正しい生活、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理は自律神経の調整やホルモンバランス維持に寄与する。
今後の展望
今後の研究では、栄養とホルモン・免疫・代謝機能の統合的評価がさらに進展すると期待される。特に未診断の微量栄養素欠乏や自律神経機能評価の新しい方法が開発されれば、不調の早期発見・個別化医療につながる。臨床研究では、栄養介入やホルモン補正がどのように症状改善に寄与するかのエビデンスを高める必要がある。
まとめ
「だるさ・スタミナ切れ・乾燥肌」は単独ではなく複数の機構が関与する不定愁訴であり、栄養・ホルモン・自律神経など多面的評価が必要である。
鉄分、ビタミンB群、亜鉛は細胞機能・代謝・皮膚健康に不可欠であり、その欠乏はこれらの症状を惹起する可能性がある。
甲状腺機能低下は代謝全般に影響し、疲労感・皮膚乾燥などを呈することがある。
生活習慣の改善と必要に応じた医療評価が症状改善の鍵となる。
参考・引用リスト
栄養・ミネラル基本知識(国立循環器病研究センター)
Zinc: an undervalued microelement in research and treatment, PMC総説(亜鉛欠乏と皮膚症状)
Cutaneous Signs of Nutritional Deficiencies(皮膚症状と栄養欠乏)
栄養欠乏に関連した皮膚変化とビタミン・ミネラル役割(栄養ガイドライン)
鉄分不足と体調不良:「ガッテン」(NHK)関連解説(鉄分欠乏とだるさ・乾燥肌)
東大阪市クリニックレター(冬の栄養不足と疲労・肌荒れ)
甲状腺の不調とだるさ・乾燥肌等の症状(臨床解説)
成人病予防協会(だるさ・内分泌関連)解説
追記:各栄養素・検査データの具体的な数値基準
鉄(Fe)・フェリチン
鉄欠乏の評価において、ヘモグロビン値のみでは不十分であり、体内貯蔵鉄を反映するフェリチン値の測定が重要である。
ヘモグロビン(Hb)
成人男性:約13.0 g/dL以上
成人女性:約12.0 g/dL以上
※これを下回ると「貧血」と診断されることが多い
フェリチン
明確な鉄欠乏:20 ng/mL未満
潜在性鉄欠乏(かくれ貧血):20~50 ng/mL
望ましいとされる範囲:50~100 ng/mL以上(諸説あり)
臨床的には、フェリチンが30 ng/mL未満でも、倦怠感・集中力低下・皮膚乾燥を訴える症例が多く報告されている。特に月経のある女性、ダイエット中の若年層、運動量の多い人では注意が必要である。
ビタミンB群
ビタミンB₁(チアミン)
血中濃度(全血チアミン)
基準値:20~50 ng/mL前後
欠乏域:20 ng/mL未満
ビタミンB₁は糖質代謝の要であり、白米・精製糖質中心の食事では消費量が増大する。慢性的な不足は、だるさ、易疲労感、集中力低下を引き起こす。
ビタミンB₁₂
血清B₁₂
基準値:180~900 pg/mL
欠乏疑い:200 pg/mL未満
境界域:200~300 pg/mL
B₁₂欠乏は、貧血症状がなくても神経症状・慢性疲労・皮膚乾燥を呈する場合があり、見逃されやすい。
亜鉛(Zn)
血清亜鉛
基準値:80~130 μg/dL
軽度欠乏:60~80 μg/dL
明確な欠乏:60 μg/dL未満
亜鉛は日内変動があり、空腹時採血が望ましい。慢性的な亜鉛不足は、乾燥肌、脱毛、味覚異常、免疫低下、スタミナ低下と関連する。
甲状腺機能(TSH・FT4)
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
一般的基準値:0.5~4.5 μIU/mL
機能低下疑い:4.5 μIU/mL以上
潜在性低下症:TSH高値+FT4正常範囲
FT4(遊離サイロキシン)
基準値:0.9~1.7 ng/dL前後
TSHが基準範囲内でも、上限付近(3.0~4.5)でだるさ・寒がり・乾燥肌を訴える症例は少なくなく、臨床的判断が求められる。
食生活の重要性
エネルギーと栄養素の「質」の問題
現代の食生活では、カロリー摂取量が十分であっても、微量栄養素が慢性的に不足する「質的栄養失調」が問題となっている。
糖質中心食(パン・麺類・菓子類)
超加工食品への依存
動物性タンパク質・魚介類の摂取不足
これらの食習慣は、鉄・亜鉛・ビタミンB群不足を招きやすく、結果としてだるさやスタミナ切れ、皮膚バリア低下につながる。
タンパク質摂取の重要性
タンパク質は筋肉・皮膚・酵素・ホルモンの材料であり、体重1kgあたり1.0~1.2g程度の摂取が一般的に推奨される。ダイエット中や高齢者ではこれを下回りやすく、筋力低下・基礎代謝低下を招く。
睡眠時間と質の重要性
睡眠不足とホルモン
慢性的な睡眠不足は以下の生理機能に影響する。
成長ホルモン分泌低下(組織修復・皮膚再生の低下)
コルチゾール過剰(慢性疲労・皮膚乾燥)
自律神経バランスの破綻
成人では6時間未満の睡眠が続く状態で、疲労感・集中力低下・免疫機能低下のリスクが上昇すると報告されている。
睡眠の「量」だけでなく「質」
就寝時刻の不規則化
就寝前の強い光刺激(スマートフォン等)
深夜の飲食
これらは睡眠の質を低下させ、翌日のスタミナ切れや倦怠感につながる。
特定のライフスタイル別分析
ダイエット中の場合
ダイエット中は以下のリスクが高まる。
摂取カロリー制限による栄養密度低下
鉄・亜鉛・B群不足
甲状腺ホルモン低下(過度な低エネルギー状態)
特に女性では、「体重は減ったが、だるさ・乾燥肌・抜け毛が増えた」という経過が典型的である。
多忙・長時間労働の場合
食事の欠食・簡略化
慢性的睡眠不足
交感神経優位状態の持続
これにより、エネルギー代謝効率が低下し、スタミナ切れや慢性疲労が蓄積する。さらにストレスホルモンの影響で皮膚血流が低下し、乾燥肌が助長される。
運動量が多い場合
運動習慣は健康に寄与するが、栄養補給が不十分な場合には逆効果となる。
発汗による亜鉛・鉄の喪失
エネルギー不足による疲労蓄積
回復不足による自律神経疲弊
「運動しているのに疲れやすい」状態は、栄養不足のサインであることが多い。
追記まとめ
だるさ・スタミナ切れ・乾燥肌は、検査値が「基準内」であっても最適域を外れている場合に出現しうる
フェリチン、亜鉛、ビタミンB群、甲状腺機能は特に重要な評価項目である
食生活の質、十分な睡眠、ライフスタイルの負荷が症状を修飾する
ダイエット・多忙・過度な運動は、栄養と回復のバランスを崩しやすい
これらを踏まえると、体調不良の改善には「症状」ではなく数値・生活背景・時間軸を含めた包括的評価が不可欠であると言える。
どの検査を医療機関で依頼すべきか
基本方針
「だるさ・スタミナ切れ・乾燥肌」が慢性的に同時出現している場合、単一項目の検査では不十分であり、以下の三層構造での検査設計が合理的である。
全身状態のスクリーニング
栄養・代謝状態の評価
内分泌・自律神経関連の評価
① 全身状態のスクリーニング検査(必須)
まず依頼すべき基本検査は以下である。
血算(CBC)
ヘモグロビン
赤血球数
MCV・MCH
→ 貧血の有無・タイプ判別
炎症反応
CRP
→ 慢性炎症・感染症の除外
肝機能
AST・ALT・ALP・γ-GTP
→ 代謝・解毒能の評価
腎機能
BUN・クレアチニン
→ 脱水や慢性疲労の背景評価
これらは、症状の背景に重篤な疾患が潜んでいないかを除外する目的で不可欠である。
② 栄養・代謝評価として依頼すべき検査
鉄関連
フェリチン(必須)
血清鉄
TIBC / UIBC(可能であれば)
理由:
ヘモグロビンが正常でも、フェリチン低値による「潜在性鉄欠乏」が非常に多いためである。
ビタミン関連
ビタミンB₁₂
葉酸
(可能であれば)ビタミンD
特にB₁₂は、疲労・皮膚症状・神経症状が出ても血算が正常なケースが存在するため、見逃されやすい。
ミネラル関連
血清亜鉛
(状況により)マグネシウム
亜鉛は皮膚・免疫・筋機能と密接に関係し、慢性的な不足が体調不良として現れやすい。
③ 内分泌・ホルモン関連検査
TSH
FT4
(必要に応じて)FT3
抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体(橋本病疑い時)
甲状腺機能低下症は、検査をしなければ診断に至らない代表的疾患であり、症状が非特異的であるため積極的評価が重要である。
数値が「境界域」だった場合の考え方
基準値=健康ではない
臨床医学における基準値は、「統計的正常範囲」であり、個人にとっての最適値ではない。
したがって以下の原則が重要となる。
症状があるかどうか
数値がどの方向に偏っているか
複数項目が同時に境界域でないか
経時的変化(過去との比較)
フェリチン境界域の解釈
20~50 ng/mLは「正常下限~潜在欠乏域」
倦怠感・乾燥肌・集中力低下がある場合
→ 機能的鉄不足として扱う余地がある
特に女性・成長期・運動量が多い人では、症状重視での判断が求められる。
甲状腺TSH境界域の解釈
TSH 3.0~4.5 μIU/mL
FT4正常
この状態は「潜在性甲状腺機能低下症」に該当する可能性があり、
寒がり
慢性疲労
乾燥肌
抑うつ傾向
がある場合、経過観察+生活介入、または専門医紹介が推奨される。
亜鉛境界域の解釈
70~80 μg/dL
皮膚症状やスタミナ切れがある場合、不足方向への傾きとして評価する。
血清亜鉛は変動しやすいため、症状と食生活の評価を必ず併用する。
セルフケアと医療介入の線引き
セルフケアで対応可能な領域
以下の条件をすべて満たす場合、まずセルフケア中心の介入が妥当である。
検査値が重度異常ではない
体重減少・発熱・激しい動悸などの警告症状がない
症状が生活改善で変動する
発症から比較的短期間(数週間~数か月)
セルフケアの柱は以下である。
栄養密度の高い食事
十分なタンパク質摂取
睡眠時間の確保(7時間前後)
過度なダイエット・運動の是正
医療介入が必要なサイン
以下のいずれかに該当する場合、医療介入が必要である。
フェリチン20 ng/mL未満
TSH明らかな高値または抗体陽性
ビタミンB₁₂欠乏域
症状が半年以上持続・悪化
日常生活や就労に支障が出ている
この場合、サプリメント自己判断ではなく、医師管理下での治療が望ましい。
境界域における現実的アプローチ
境界域の多くは「治療か経過観察か」の二択ではなく、
生活介入
栄養補充(医師監修)
定期的再検査
という段階的介入モデルが合理的である。
最後に
「だるさ・スタミナ切れ・乾燥肌」は、検査項目の選択と解釈が極めて重要
境界域は「問題なし」ではなく「未完成な異常」である
セルフケアと医療介入は対立概念ではなく連続体である
数値・症状・生活背景を統合して判断する視点が不可欠
これらを理解することで、体調不良は「我慢するもの」から「構造的に改善できるもの」へと位置づけが変わる。
