コラム：初詣、行く？行かない？混雑を回避する方法

初詣は日本における新年の代表的な風習であり，宗教的信仰と文化的慣行が融合した行事である。

現状（2025年12月時点）

日本において初詣は、新年の風物詩としてほぼ全国民的な慣習として定着している。2025年も年明けから多くの人々が神社・寺院へ足を運び，明治神宮や成田山新勝寺などの主要社寺には数百万人の参拝者が訪れている。特に三が日（1月1日〜3日）には極めて多くの参拝者が集中し、ニュースでも取り上げられる風景となっている。
近年では新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、分散参拝や三が日以降の参拝も一部見られる一方で、再び大規模な人出が戻りつつある。また、オンライン参拝等新たな参拝様式もわずかではあるが登場している。

初詣とは

初詣とは，日本の正月に年が明けてから初めて神社あるいは寺院に参拝し，その年の健康や幸福，無事を祈る風習である。「初めて詣でる」の意であり，伝統的には年明け早々に行われる。国や宗教法人の統計では，三が日を中心に多くの人々が初詣に出かけるという調査結果が示されている。

初詣の概要

初詣は宗教的な信仰に基づく行為であると同時に，文化的・社会的な年中行事としても日本社会に深く浸透している。神社（神道）・寺院（仏教）のいずれでも参拝可能であり，「八百万の神」信仰や神仏習合の歴史的背景を反映している。

初詣は信仰を持つ人だけでなく，無宗教を自認する人々にとっても新年の節目として重視され，国内における大規模な参拝行事として機能している。

時期

一般的に初詣は 1月1日〜3日（いわゆる三が日） に行うことがもっとも一般的である。ただし松の内（1月7日頃）までに行う場合も多く，また三が日を過ぎても参拝する人々は少なくない。調査では，松の内以降に参拝する人も一定数存在し，混雑回避や個人の都合に合わせた「ずらし参拝」が広まりつつある。

目的

初詣の目的は主に以下の通りである：

• 新年の幸福，安全，健康の祈願

• 旧年中の感謝と反省

• 家族や親族の幸福・繁栄

• 学業成就・商売繁盛・良縁祈願

宗教的な側面だけでなく，社会的・心理的区切りとしての意味も強い。

参拝先

代表的な参拝先としては東京都渋谷区の 明治神宮 や千葉県成田市の 成田山新勝寺，神奈川県川崎市の 川崎大師平間寺，京都府の 伏見稲荷大社 などが挙げられる。これらの社寺は毎年多くの参拝者数でランキング上位に名を連ねる。

起源と変遷

元々の形

初詣の原型は，中世以前の「年籠り（としごもり）」という習慣に見出される。「年籠り」とは大晦日の夜から元日の朝にかけて氏神や家の神のもとで祈願する風習であった。やがてこれが大晦日の除夜詣と元日の元日詣に分かれ，元日詣が後の初詣の形となったと考えられている。また，源頼朝が鶴岡若宮へ参詣したことが普及の契機とされる指摘もある。

恵方参り

旧来の日本では恵方（その年の吉方角）に詣でる風習もみられた。これが一般参拝と結びつくことで，現在の初詣へと変遷した側面がある。

現在の形

明治期以降，日本の鉄道網の発展と都市化が初詣の一般化を促進した。鉄道によって遠方の大社や大寺にも容易にアクセスできるようになったことで，初詣は地域的慣行から全国的な年中行事へと変貌を遂げた。

一般的な参拝方法

初詣における一般的な参拝手順は，神社・寺院ともに以下のような流れとなる。

1. 鳥居・山門をくぐる際に軽く一礼

2. 手水舎で手と口を清める

3. 賽銭を奉納

4. 拝礼（神社では二礼二拍手一礼，寺院では合掌一拝等）

5. 願意を述べる（心の中であるいは声に出して）

6. おみくじ・お守り・絵馬等の授与を受ける（任意）

神社と寺院では作法が異なる部分もあるが，基本的な心構えは変わらない。

神社の作法

神社参拝では「二礼二拍手一拝」が基本であり，参道の中央は神の通り道とされるため避けるのが礼儀とされる。また，鳥居をくぐる前に一礼することも一般的である。

お寺の作法

寺院参拝では合掌一礼が一般的である。線香を手向けたり，本堂前で手を合わせるなど，仏教的な作法に則る。神社と同様に清めの動作を重視するが，拍手は行わない。

お楽しみ

初詣には参拝以外にも以下の楽しみが伴うことが多い：

• おみくじを引く

• お守り・御札を受ける

• 絵馬に願い事を書く

• 屋台・露店で食べ物を楽しむ

これらは参拝者にとって初詣時の文化的付随体験となる。

近年の傾向

混雑回避と分散参拝

大都市の主要社寺における混雑を避けるために，松の内以降の参拝や夜間・早朝の「二年参り」も行われている。また，三が日を過ぎる「ずらし参拝」も広がり，政府や神社庁などが推奨する場合もある。

オンライン・郵送対応

コロナ禍の影響により，一部の神社ではオンライン参拝や郵送でのお守り・御札の授与が行われるようになった。ただし調査では，こうした新しい参拝様式を体験した人はまだ少数であるという結果もある。

初詣に行かないとどうなる？

文化的慣習としては重要視されるものの，初詣に行かないこと自体が不利益や災いを招くという科学的根拠は存在しない。 行かない場合でも人生の幸福や健康に直接的な影響があるわけではない。

以下のような「影響」や「感じ方」を気にする人

心理的・精神的な影響

初詣は新年の区切りをつける行為であるため，これを行うことで精神的なリセット感や安心感を得る人が多い。区切りがつかない感覚や「縁起」を気にする心理は日本文化に根深い。

人間関係や社会的な影響

初詣は家族・親族との交流機会としても機能する。複数人で行くことで人間関係の形成・強化に寄与する面もある。実際，調査では「家族や親戚と行く」という回答が最多である。

「行かない」ことのメリット

あえて行かない選択をする人も

• 混雑とストレスの回避

• 時間の節約

• 宗教的意義を感じないため

行かないことをポジティブな選択とする人々も存在する。

行かない場合の代替案

分散参拝

三が日を過ぎてからの分散参拝は近年推奨されている。

オンライン参拝

インターネットを介した祈念や祈祷サービスも一部存在するところから，物理的訪問が困難な場合の代替となり得る。

自宅で祈る

正月の祈願を自宅の神棚や仏壇で行う人も多く，これも一つの選択肢である。

「行かないとどうにかなる」ということはない

上述の通り，行かないこと自体が不利益を生じさせるとは限らない。

今後の展望

初詣は今後も日本の文化・社会行事として存続すると考えられる。都市化や人口構造の変化，宗教意識の多様化によってその形態は変化し得るが，個人の精神的区切りとしての意義や家族行事としての役割は依然として強い。さらにオンラインや分散参拝の選択肢が広がる可能性がある。

結論

初詣は日本における新年の代表的な風習であり，宗教的信仰と文化的慣行が融合した行事である。参拝の時期や方法，目的は多様であり，社会的に広く受け入れられている．「行かない選択」も個人の価値観に応じて有効であり，行く・行かないは個人の自由である。

参考・引用リスト

• 初詣・新しい参拝様式に関する調査（ゼネラルリサーチ株式会社）

• 初詣人気＆人出ランキング・歴史概要（JCCB）

• 初詣の作法と基礎知識（ルアンマガジン）

• 初詣時期と参拝行動に関する報道（FNN調査）

• 初詣と鉄道文化の変遷（NTTファシリティーズ）

追記：日本における初詣の歴史（詳細）

初詣の歴史は，日本の年中行事や宗教観の変遷と密接に関係している。中世以前の「年籠り」に端を発し，神仏習合の時代を経て，江戸時代には庶民の間で広く行われるようになった。
明治維新後の神道国教化政策や鉄道網の整備により，大規模な社寺参拝が可能となり，全国的な初詣文化が形成された。20世紀に入ると，都市化やマスメディアの発展によって，初詣は日本人の重要な年始行事として確立した。戦後には商業化と観光化が進み，多様な参拝先が人気を集めるようになった。
近年では社会構造の変化やコロナ禍の影響で分散参拝・オンライン参拝が注目され，伝統と現代性の融合が進んでいる。このように初詣は日本社会の変遷を映す鏡としての歴史的意義も有している。

以下に，日本の 初詣に関する統計データと社寺別参拝者数の詳細 を整理して示す。可能な限り信頼できる公開情報（主に複数のメディア報道や調査データ）を基にまとめている。なお，日本では 警察庁などの全国統計が初詣参拝者について詳細データを毎年公表しているわけではなく，特に 2010 年代以降は各寺社や自治体等による推計値が主となっている。

初詣参拝者数の統計データ（主要寺社）

■ 全国の初詣参拝者数（推計）

• 日本全国の寺社への 初詣参拝者総数（正月三が日＝1/1〜1/3） は，1970〜2000 年代の警察庁集計では およそ 8,000 万〜9,000 万人規模 前後で推移していた。たとえば 2005 年には約 89.66 百万人（約 8,966 万人） が全国の神社・仏閣を訪れたという報道がある。このうち，三が日のうちに参拝した数が計測されている．※ただし近年は統計公表が縮小されている。

■ 主要寺社の三が日参拝者数（代表的な例）

以下は各地の人気初詣スポットにおける 参拝者数の推計値（過去の報道・調査例） である。数値は年によって変動するが，複数データソースを基にしたおおよその目安としてまとめる。

※初詣人数は主に 三が日（1/1〜1/3） の推計値であり，年度・報道元・計測方法により数値が変動する。

■ 初詣参拝者数に関する傾向

✔ 明治神宮の特徴と規模

• 明治神宮 は東京の初詣で常に 全国トップクラスの参拝者数 を記録している。過去の警察庁発表などでは 約 3.1〜3.2 百万人 程度と報じられている。

• 人気の理由として，アクセスの良さ（東京中心部），歴史的・文化的知名度の高さが挙げられる。

✔ 関東圏の他の人気寺社

• 成田山新勝寺 は千葉県にあり，関東圏で常に上位の参拝者数を誇る。

• 川崎大師（平間寺） も関東で人気が高く，三が日で およそ 300 万人 近い参拝客が訪れるとされる。

✔ 近畿・西日本の人気スポット

• 住吉大社（大阪），神戸・生田神社（参拝者数中位），太宰府天満宮（九州）などが地域代表として上位ランク入りする。

• 京都・伏見稲荷大社は初詣でも毎年多くの人を集めている。

■ 初詣参拝者数の傾向と変動

✔ 年ごとの変動と影響

• 新型コロナ禍（2020〜2022 年頃）は主要寺社で大幅な人出減が観察された。例として 明治神宮や成田山新勝寺でも前年比で 50〜70% 減少 した期間があるとの報道もある。

• 近年は感染対策が緩和され，再び大規模参拝が戻りつつあるが，分散参拝や混雑回避の動きも見られる。

■ 初詣に関するデータ収集上の注意

• 日本では警察庁が初詣参拝者数の 全国統計としての公開 を行っていたのは 1970〜2000 年代にかけての比較的古い期間までであり，近年は詳細統計が継続的に公表されていない。

• 多くのデータは 各寺社や地方自治体等の推計値 や メディア集計 によるものであり，統計的な計測方法にはばらつきがある。

• とはいえ，人気スポット同士の比較や規模観を把握する指標としては有用である。

■ 表：主要初詣スポットの参拝者数（推計値まとめ）

※ 数字はあくまで「三が日」推計値．年度ごとに変動がある。

■ まとめ

1. 全国の初詣参拝者数は三が日の合計で 数千万人規模 に達していた時期があり，日本の正月行事として極めて多くの人々が訪れている。

2. 明治神宮・成田山新勝寺・川崎大師など 特定の大社寺は三が日で約 300 万人級の参拝者数 を記録する。

3. 近年はデータ公表方法が明確な統計から推計値中心へと変化しているが，人気スポット間の比較が可能である。