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コラム:韓国で「ドバイもちもちクッキー」ブーム

「ドバイもちもちクッキー」は、2025年末〜2026年初頭にかけて韓国で急速に人気化した新しい食文化現象である。
ドバイもちもちクッキーのイメージ(Getty Images)
現状(2026年2月時点)

2026年初頭、韓国では「ドバイもちもちクッキー(韓国語で Dujjonku と通称される)」が爆発的な人気を博している。ソウルを中心に専門店やカフェで販売され、開店前から行列が長く続き、限定数の販売分が即時完売する現象が広範に観測されている。例えばある店舗では120個のクッキーがオープンから30分以内に完売し、若年層を中心に消費が急拡大している。

この動向は単なるローカルムーブメントに留まらず、コンビニエンスストアやチェーンカフェ、一般飲食店にまで波及しているばかりか、都市全域で関連商品が登場し、リアルタイム在庫マップが開発されるほど社会的注目度が高まっている。さらにこのトレンドは日本や中東(ドバイ)にも広がりつつあるとの報告もある。


ドバイもちもちクッキーとは

「ドバイもちもちクッキー」は伝統的な「クッキー」とは異なり、食感や構造に新たな革新性を持つ菓子である。その名称は、中東・特にドバイで人気を博した「ドバイチョコレート」という高級デザートの流行に由来し、韓国の若い職人たちが独自に再解釈し発展させた。

具体的には、外側はマシュマロやココアでコーティングされた柔らかい層で包み、内部にはピスタチオクリームやカダイフ(細い中東のパイ生地)を混ぜ込んだ濃厚なフィリングが詰められている。この構造により「外はもちもち、中はザクザク」という新しい食感が生まれている。


Z世代を中心に爆発的なブーム

このクッキーの流行はZ世代(おおよそ1990年代後期〜2010年代前半生まれ)を中心に起こり、SNSプラットフォーム上で急速に口コミが拡散した。インフルエンサーやK-POPアイドルによる投稿、その視覚的インパクトがバズを生み、瞬く間に人気が全国へ波及した。ハッシュタグ投稿数は数万件に達し、関連商品の販売数・検索数が前月比で大幅に増加したというデータも存在する。

この流行は情報化社会の典型例として捉えられ、味覚・食感だけでなく、消費者心理として「SNS映え」、「トレンド追随欲求」、「仲間内での共有体験」が影響しているとの分析が複数の専門家から示されている。


「ドバイチョコレート」を韓国独自の感性で再解釈

本ブームの直接的な契機となったのは、中東・ドバイ発祥の「ドバイチョコレート」ムーブメントである。同デザートはチョコレート、ピスタチオクリーム、シャレッドペイストリー(カダイフ)を組み合わせたもので、2024〜2025年にかけてSNSを起点に世界的に注目を集めた歴史がある。

韓国ではこの「ドバイチョコレート」の構成素材や味覚の要素を取り入れつつ、よりソーシャルメディア映えする形で再構築したのが「ドバイもちもちクッキー」である。これは「異国感」と「新奇性」を同時に感じさせる戦略的なネーミングと位置付けられている。


「ドバイもちもちクッキー」の正体

外側

外側はマシュマロやココアを混ぜた生地で、クッキーとしては異例の柔らかさと弾力性を持つ。この層は食べた瞬間に「もちもち」とした食感を生み、従来のクッキーのカリッとした食感とのコントラストを際立たせるものである。

内側

内側にはピスタチオクリームとカダイフが組み合わされたフィリングが詰まっている。このフィリングは濃厚でリッチな味わいを持ち、外側のやわらかさと合わさることで独自の口腔内体験を生む。

仕上げ

仕上げとしてカカオパウダーや粉糖が振りかけられ、見た目の美しさと香りを強調する。これらは視覚的・嗅覚的アピールを高め、SNSでの映え効果を増幅させる役割も担っている。


熱狂的人気の要因分析

「テクスチャー(食感)」の黄金比

「ドバイもちもちクッキー」の成功要因の一つは食感にある。「外はもち、中はしっとり・もちもち」と評されるこの食感は、異なる質感が口内で交差することで高度な満足感を与える仕組みになっている。一般的なクッキーよりも噛み応えがありながら重たさを感じさせないバランスが、消費者に新鮮な体験を提供している。

この食感は専門的には「多層食感融合モデル」と呼ばれ、異なる硬度・粘性の素材を組合わせることで、消費者の口腔内に複層的な刺激を生じさせ、評価を向上させることが知られている。

「視覚的・聴覚的映え」の最大化

SNSでの評判を分析すると、断面を切った際の「引き伸びる糸状の形状」や、カメラ映えするビジュアルが流行拡散の原動力になっている。特に短尺動画プラットフォームでは、断面の「引っ張りシーン」が視覚的注目を集め、映像としての完成度が高いコンテンツとなっている。

視覚的インパクトが消費者の感覚評価に寄与することは、多様な食トレンド研究でも指摘されており、本クッキーの人気拡大において重要な役割を果たしていると推測される。

「希少性」と「代替欲求」の充足

供給量が限定的で、売り切れが日常的に発生する状況が、希少性価値を高めている。消費者は「手に入れられない可能性」によって購買意欲が喚起され、また売り切れ情報を基にしたリアルタイム消費行動が活発化している。これは行動経済学の「FOMO(Fear Of Missing Out; 欠如恐怖)」現象としても説明可能であり、トレンド追随性を強化する要因となっている。


本家ドバイチョコレートは入手困難で非常に高価

元来のドバイチョコレートは、限られた地域で販売され高価であるため、一般消費者の手に届きにくかった。しかしSNSを介してその存在が世界的に知られるようになり、韓国の消費者はこれを模倣・拡張して独自の菓子文化へと昇華させた。この文脈は「トレンドのローカライズ現象」として食文化研究に位置付けられる。


世界への波及可能性と課題

既に「ドバイチョコレート」自体が世界的トレンドとなっているため、その派生形としてのクッキーは他地域でも受け入れられる土壌がある。欧米・アジア・中東のカフェ文化圏では異文化融合デザートに対する関心が高く、SNS上でも類似トレンドが散見される。

K-コンテンツの拡散力

韓国発の消費文化が世界的に波及した過去事例(K-POP、韓流ドラマ、K-フードなど)も追い風となる。韓国のデザートトレンドが海外の若年層に受容される基盤は存在し、翻訳コンテンツやインフルエンサーの活動が地域横断的流行を促進する可能性が高い。

懸念される課題:原料の供給不足

報道によれば、主要素材であるカダイフやピスタチオの供給が逼迫し、価格上昇・欠品が発生している。この供給側リスクは、量産化・安定供給を目指す国際マーケット展開における制約となる可能性がある。

トレンドの短命化

過去のSNS起点トレンドは数ヶ月〜1年単位で消長する傾向が強い。食トレンド研究でも「短期集中型の流行」が一般的であり、定着化には相応の戦略が必要とされる。

高カロリーへの懸念

消費者健康志向の高まりや、糖質・脂質に対する意識が強まる中で、高カロリー菓子の流行は逆風を受ける可能性がある。また一部の消費者からは味や価値に対する批判も存在し、支持層の減衰が予想される。


今後の展望

中長期的に見れば、「ドバイもちもちクッキー」は一過性のブームに留まらない可能性を有する。特に商品開発・マーケティング戦略が進化し、さまざまなバリエーション商品や健康志向版の展開が進めば、グローバルデザート市場における新たなカテゴリを形成することも理論的には充分に考えられる。


まとめ

「ドバイもちもちクッキー」は、2025年末〜2026年初頭にかけて韓国で急速に人気化した新しい食文化現象である。その成功は、独自の食感構造、視覚的訴求、SNSの拡散力、消費者心理の作用など多岐にわたる要因によって支えられている。世界への波及には素材供給・トレンド耐久性・健康志向対応といった課題があるが、一方で既存のグローバル食トレンドやK-コンテンツ普及力を背景に、持続的な発展の余地は存在する。


参考・引用リスト

  1. “Dubai Chewy Cookie Craze Exports Korean Dessert Back to Dubai,” Seoul Economic Daily, 2026.02.01.

  2. “Dubai Chocolate Chewy Cookies: Dessert Inspired By Dubai Chocolate Goes Viral In South Korea,” Gulf News, 2026.01.19.

  3. “As Dubai chewy cookie craze continues, Food Ministry warns of safety risks,” Korea JoongAng Daily, 2026.01.17.

  4. “How a Dubai Dessert Trend Took Over Korea’s Cafés and Retail Market,” KoreaTravelPost, 2026.

  5. “Is Dubai Chocolate the Next Pumpkin Spice?” Wall Street Journal, 2025.07.26.


追記:韓国が得意とする「食感のハイブリッド化」と「SNS最適化」

韓国のスイーツ文化においては、「多層的な食感(食感のハイブリッド化)」が極めて重要な価値要素となっている。これは従来の単一的な食感ではなく、複数の対照的な食感を組み合わせることで、口腔内の刺激を強化し、消費体験を拡張する戦略である。たとえば、韓国で一般的なパンや菓子には「もちもち」「ふわふわ」「サクサク」といった食感が組合わされる傾向があり、ドバイもちもちクッキーでも外側のもちもち感と内部のカダイフ由来のサクサク感という対照的な食感の融合が人気を生んでいることが報じられている。

これは韓国内で過去に成功した食品トレンドでも見られる特徴であり、食感の多層性自体が体験価値としてSNS映えしやすいという評価がある。たとえば韓国語では「쫀득(jjondeuk)」という表現自体が「もちもち・噛みごたえのある食感」を示し、消費者心理に訴求しやすいマーケティングワードとして機能している。

SNS最適化

「ドバイもちもちクッキー」は、その構造・素材感・断面のビジュアルがSNSの短尺動画に非常に適しているとされる。具体的には、断面から見える層状の素材、引き伸ばす際の糸引き感、カダイフのサクサク音(ASMR的効果)が短尺動画プラットフォームで高い視聴維持率を生む要素となっており、韓国ではこの「SNS最適化」が爆発的な普及を促進する主要な要因となった。

研究的には、SNS上での視覚・聴覚刺激が消費者の好奇心を喚起し、リアルタイムで共有されることでトレンドが加速するという現象は、情報社会における食トレンド形成の典型例とされる。このため、単純に味だけでなく「映える瞬間」を含んだ商品設計が、韓国発スイーツの一定成功要因となっている。


2026年を通じて「韓国発のグローバル・トレンド」として定着する可能性

日本での展開状況

2026年初旬時点で、「ドバイもちもちクッキー」は日本でも徐々に広がりを見せている。東京・新大久保の韓国カフェやスイーツ店を中心に販売が始まり、若年層を中心に注目されている。たとえば「OKUDO CAFE」では2026年1月から販売が開始され、チョコレート・抹茶などフレーバー展開が行われ、SNSでの訴求も進んでいる。

また日本国内では、まだ全国的な定着には至っていないものの、エリア限定ながら認知拡大が進行中であり、SNS上での投稿・動画が増加している。このことは、日本市場が韓国トレンドを受容しやすい構造を持ち、比較的短期間で流行が広がる可能性を示唆している。

しかしながら、韓国国内のような行列や完売現象が全国レベルで発生しているという報告は現時点では限定的である。これは日本における食文化や消費心理が韓国とは異なる流通・消費環境にあることを反映している。

グローバル定着の可能性

日本国内展開は、韓国発スイーツが地域トレンドとして浸透しつつあることを示す一例と評価できる。日本が韓国のポップカルチャーや食トレンドの一部を受容してきた歴史(K-POP、韓国カフェ文化、韓国グルメの流入など)があること、さらにはSNSを介したトレンドの国境横断的拡散という社会現象を鑑みれば、「ドバイもちもちクッキー」が日本を含むアジア圏で2026年内に一定の認知を確立する可能性は高い。

国際的な注目も高まっており、一部報道では「Dubaiでも販売が開始された」という事例もあり、トレンドが原産地域から逆輸入的に再流通していることが確認されている。


宅で再現するためのトレンドレシピ

以下は、家庭で「ドバイもちもちクッキー」に近い食感・味を再現するためのトレンドレシピの概略(実験的手法)である。SNS投稿や動画レシピの情報を基に構成したもので、家庭でも比較的再現しやすい。

必要な材料(4〜6個分)

  • 大粒マシュマロ:200g(生地のもちもち感を担保)

  • ピスタチオペースト:80g(濃厚な味わい)

  • カダイフまたは代用として細く裂いたフィロペイストリー:80〜100g(サクサク食感)

  • ホワイトチョコレート:50g(フィリングの甘みバランス)

  • ココアパウダー:適量(仕上げ用)

  • バター:10g(カダイフを炒める用)

  • 粉糖・抹茶パウダー:オプション(見た目向上用)

調理手順(自宅版)

  1. カダイフの下準備:中火でバターを溶かし、カダイフを軽く炒めて香ばしさを引き出す。冷ましておく。

  2. フィリングの合わせ:ピスタチオペーストと溶かしたホワイトチョコレートを混ぜ、均一な濃厚クリームにする。

  3. 生地作り:大粒マシュマロを耐熱ボウルに入れ、弱火で溶かしながら温める。流動性が出たら火を止める。

  4. 包み込み:溶けマシュマロを手早く丸め、内部にピスタチオクリームとカダイフを包み込む。

  5. 形整えと仕上げ:包んだ球状を整え、冷蔵庫で形を落ち着かせる。固まったら表面にココアパウダー(または粉糖・抹茶)をまぶす。

  6. SNS映えの演出:半分にカットした断面を撮影すると、層状の素材感と引き伸ばし可能な食感がビジュアル的に訴求しやすい。

これはあくまで家庭向けの簡易レシピであり、実店舗のプロ仕様と比べて食感・味は異なるものの、トレンド体験の再現は可能である。参考として、複数の動画レシピや投稿が家庭再現を試みている点も確認されている。


追記まとめ

韓国内で爆発的に流行した「ドバイもちもちクッキー」は、食感のハイブリッド化とSNS最適化というトレンド設計により急速に人気を獲得した。日本でも韓国トレンドに敏感な一部エリアを中心に展開が進んでおり、SNS上での認知拡大が進行中である。宅での再現は可能であり、家庭での“体験型スイーツ”として人気を誘引する余地がある。

世界的な定着にはまだ課題があるものの、日本でも新たな食感体験として受容されつつあるという現状が認められる。


参考・引用(追記分)

  • Japanese Consumers Join 'Dubai Chewy Cookie' Craze Sweeping Korea, Seoul Economic Daily, 2026.01.19.

  • 韓国でドバイチョコが再燃。人気爆発中の「ドバイもちクッキー」が新大久保に登場, macaroni, 2026.01.16.

  • 'Dubai Chewy Cookie' Craze Exports Korean Dessert Back to Dubai, Seoul Economic Daily, 2026.02.01.

  • Dubai Chewy Cookie (두바이 쫀득쿠키): What It Is, Why It’s Everywhere, and How the Trend Took Off, The Seoul Stop.

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