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コラム:高市政権2026、内政の課題にどう挑む?

2026年初頭時点において、高市政権の内政は複合的な課題群に直面している。財政構造の持続可能性と経済成長の両立、物価高への対応、人口減少下での社会保障と外国人政策、成長戦略の具体化、そして政治的基盤の安定化と選挙戦略が主要テーマである。
市総理(AP通信)

2025年10月、高市内閣(第104代)が発足した。自由民主党(自民)と日本維新の会による連立政権であり、自民党単独では衆議院・参議院いずれも多数を占めない少数与党体制(衆議院は過半数確保:2026年1月時点)となっている。これは、長年にわたって続いた自民・公明連立政権の崩壊を受けて初めて構築された連立であり、維新の政治的影響力が内政運営で強まっている背景がある。

国内の最大の政策課題として、高市政権は「国民生活の安定」と「持続可能な経済成長力の回復」という二重の焦点を掲げつつ、財政運営のあり方、物価高騰への対応、人口減少下の社会保障制の維持など多岐にわたる内政課題に直面している。加えて、政権支持率の動向と国会運営に大きな影響を与える解散総選挙のタイミング判断が政治的な最大テーマとなっており、それは政策実行力を左右する要素になっている。


内政の課題(総論)

高市政権の内政は、同政権が掲げる「責任ある積極財政」の路線のもとで、経済成長と財政再建の両立という矛盾する目標の達成を軸に据えている。高市総理は所信表明でこれを強調し、「強い経済」を実現するために財政を戦略的に活用する姿勢を示している。

しかしながら、政策実行の現場では以下のような根本的な課題が浮かび上がっている。

  1. 国内景気・物価動向:デフレ脱却を目指す中、物価の安定と実質賃金の引き上げが重要な課題であり、政策対応の精緻さが問われている。

  2. 財政再建:国債残高の大幅な積み上がりと社会保障費の増加という構造的な財政負担をどう抑えるかは引き続き大きな課題である。

  3. 政治基盤の安定:衆議院において過半数が確保できない少数与党体制下での国会運営は、政策実行力を左右する。

  4. 人口減少・社会保障:少子高齢化が進展する中、社会保障制度の持続可能性と労働力確保策としての外国人政策の設計が求められている。

  5. 成長戦略と安全保障:経済安全保障やデジタル・半導体戦略など成長分野への投資と、安全保障ニーズとの統合が内政課題となっている。

これらの課題は単独では解消できず、各分野を横断する総合的な政策設計と実行が不可欠である。


財政再建と経済再生の両立

日本は長年にわたり、財政赤字と巨額の債務残高を抱えてきた。国の債務残高はGDP比で200%を大きく超える水準にあり、主要先進国でも極めて高い負担となっている。この状況下で2026年度予算案が122兆3092億円という過去最大規模で閣議決定されたことは、財政運営のあり方に大きな注目を集めている。

高市政権はこの膨張予算の中で、成長投資や物価高対策を目指す一方、税収増による財源確保と、新規国債発行の抑制を試みており、公債依存度は24.2%と1998年以来の低水準まで下げる見込みである。

しかし、専門家からは高い財政支出と経済成長の効果の関係について慎重な分析が提示されている。例えば、野村総合研究所は、規模の大きな積極財政は市場の金利や為替に影響し、円安や長期金利上昇を通じて物価高を助長する側面があり、注意深いバランスが必要だと指摘している。


「責任ある積極財政」

高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、単なる財政支出の拡大ではなく、戦略的投資と経済成長を結びつけることを目標とする考え方である。所信表明演説でもこの方針が強調され、「経済あっての財政」を基本原則とした政策路線が提示されている。

この路線は、物価高対策や「危機管理投資」(AI、半導体など17分野を対象)といった成長投資を重視する一方で、財政規律の維持を両立させることを狙いとしている。

その一方で、批判も存在する。野党からは、財政支出の拡大が必ずしも経済成長につながるとは限らないとの意見が出されており、総合的な評価は政策効果の検証を待つ必要があるとの見方が示されている。


過去最大の予算規模と国債残高

2026年度予算案では社会保障費、物価高対策、国防費など多岐にわたる支出が増加している。特に、防衛関係費が初めて9兆円台へと増加しており、安全保障分野への投資が財政配分の大きな柱となっている。

一方で、国債の利払費と償還費は過去最高水準に達し、総支出の約四分の一を占めるとの指摘がなされている。これは支出構造の硬直化を示すものであり、債務運営負担の重さが財政運営の現実的な制約となっている。


金利上昇リスクと財政運営

日本銀行が金融政策の正常化に向かい政策金利を引き上げる中、長期金利の上昇が進んでいる。この金利上昇は、国債の利払費負担を増加させ、政府の財政負担をさらに重くする可能性がある。例えば、10年物国債の利回りは1990年代以来の高水準に達する局面も観測されている。

この状況下で、政府がどのように市場の信認を維持しながら財政政策を維持するかは内政の重要な焦点であり、経済政策と金融政策との調整が不可欠である。


物価高騰対策

高市政権は物価高対策を最優先課題として掲げ、総合経済対策を策定している。これには生活の安全保障、減税措置、補助金・給付金などの直接的手当てが含まれる。

総合経済対策の柱として、生活コストの上昇を抑える支援と成長投資による持続的な経済基盤の構築が挙げられており、国民からの期待は高い。

ただし、経済界や専門家からは、補助金や減税が物価上昇期待を助長するリスクや、需要側への対応だけでは供給面の課題を解決しにくいとの分析も示されており、対策の継続的な見直しが求められている。


重要政策の具体化と実行

成長戦略の具体化は、高市政権内での重要政策の一つである。AI・半導体・量子技術・バイオなどの戦略的投資分野への集中投資を通じて、将来の産業競争力強化が図られている。

ただし、具体的な支援体制の設計、税制支援、規制改革の進捗など、政策実行に際しては官民連携や制度設計の詳細な基盤整備が不可欠である。


外国人政策

高市政権は外国人労働者・高度人材の受け入れに関して政策を検討している。違法行為への毅然とした対応や制度の見直しを掲げつつ、基本方針を取りまとめる方針である。

人口減少が続く日本にとって、労働力確保と社会統合の視点から外国人政策の設計は経済面でも社会制度面でも急務である。しかし、政策の具体化と実行可能性は依然として議論が必要とされる。


経済安全保障と成長戦略

日本経済は国際競争が激化する中で、サプライチェーン強化や産業競争力向上が求められている。高市政権は「経済安全保障」や「危機管理投資」という観点から、AI・半導体など重要分野への投資を推進しており、経団連もイノベーションや科学技術立国の推進を要望している。

これと同時に、外的ショックや地政学的リスクへの経済的耐性を高めることも内政課題として重要である。


エネルギー政策

エネルギー政策は、経済と安全保障の双方に大きな影響を与える分野である。政府は脱炭素投資やエネルギー供給体制の強化を継続すると共に、再生可能エネルギーの普及と原子力政策を巡る議論も進めている。一方で、再生可能エネルギー規制や供給安定性の問題など、制度調整課題も存在する。


政権運営と解散総選挙の判断

2026年の国内政治最大の焦点は、高市総理が解散総選挙をいつ判断するかである。高い内閣支持率を背景に、「年内解散」が党内外で取り沙汰されており、特に衆議院における議席確保の観点からタイミングが重要視される。

解散判断は内政課題の実行力を左右する要素であり、選挙戦略と政策実行の両立を視野に入れた政治判断が求められている。


少数与党と国会論戦

自民・維新連立は衆参両院で確固たる多数を占めているわけではなく、野党からの厳しい論戦が予想される。このため、重要政策の国会成立に向けて党内調整や野党との折衝が不可欠である。


衆議院解散のタイミング

衆議院解散は与党にとってリスクとチャンスの両面を持つ。高い支持率は追い風となる可能性があるものの、物価高対策や財政負担に対する国民の評価が変化する場合、選挙リスクも高まる。


党内からは早期解散を求める声も

与党内には、現行の高い支持率を背景に早期解散を求める声があり、これは政策実行力を強化するための戦略的判断として位置付けられている。しかし、これに対しては慎重論も根強く、タイミングを巡る党内での議論が継続している。


今後の展望

高市政権の内政は、財政再建と経済再生の狭間で舵を取る必要があり、物価高対策や社会保障制度改革と合わせて外国人政策や成長戦略、安全保障と経済政策の統合が重要になる。国民生活の安定と将来の国力強化を両立させる政策体系の構築が今後の最大の課題である。


まとめ

2026年初頭時点において、高市政権の内政は複合的な課題群に直面している。財政構造の持続可能性と経済成長の両立、物価高への対応、人口減少下での社会保障と外国人政策、成長戦略の具体化、そして政治的基盤の安定化と選挙戦略が主要テーマである。これらは単独では解決し得ない相互依存性を持ち、総合的かつ長期的な政策体系が必要である。


参考・引用リスト

  • 高市政権の閣僚会議・成長戦略と外国人政策(テレビ朝日)

  • 物価高対策・総合経済対策(自由民主党

  • 補正予算と減税(自由民主党)

  • 所信表明の「責任ある積極財政」(自由民主党)

  • 経団連による成長戦略提言(経団連)

  • 2026年度予算案閣議決定(毎日新聞)

  • 予算規模・債務依存度(ロイター)

  • 初のプライマリーバランス黒字化可能性(Business Times)

  • 解散タイミングに関する政治情勢(nippon.com)


以下は、高市政権における「外国人政策」「経済安全保障と成長戦略」「エネルギー政策」の現状と課題を体系的に整理した説明である。2026年1月時点の情勢を踏まえ、政策の方向性・実行状況・内在する構造的課題を明確化している。


1. 外国人政策:現状と課題

1-1 現状:政策の枠組みと方向性

高市政権は就任以来、外国人政策を国家的な内政課題として位置付け、関係閣僚会議を設置して議論を進めている。2025年11月には「外国人政策の関係閣僚会議」が初会合を開かれ、受け入れ方針の方向性を年初に示す方針を総理自身が表明したことが報じられている。これは政府が労働力不足や人口減少という構造的課題に対応する一方で、社会秩序と安全保障の視点から制度設計を見直す意図があることを示唆している。

また、閣僚会議の討議では、違法行為や制度悪用への対応、土地取得規制の強化、司令塔機能の整備などが議題に挙げられており、制度管理とルール整備が政策の中心になっている。これらは自民党と維新の連立合意書にも反映されている。

1-2 課題:方向性の曖昧さと社会統合

政策の現状からは、次のような複数の課題が見える。

① 受け入れ目的と戸籍・永住管理のバランス
政府は外国人受け入れを主として労働力補完・高度人材確保のためと位置付けているが、制度の厳格化(永住・帰化審査の強化など)が同時に進んでいる。これによって、実務面での矛盾や外国人住民の社会統合への不安が生じる可能性がある。

② 社会的信頼と排除主義との緊張関係
政策の強化は一部で「秩序の優先」や規制強化として受け止められる一方、社会の一体性や共生をめぐる議論が不足しているとの指摘がある。過度な管理強化は外国人コミュニティの孤立や、社会的不信を強めるリスクをはらむ。

③ 労働力不足・人口減少への対応の不十分さ
少子高齢化と人口減少が進む日本では、単に管理を強化するだけでは労働市場の構造的課題は解消されず、社会保障維持と労働力確保の両面で総合的な戦略が必要である。

1-3 課題要約

高市政権の外国人政策は、制度管理と安全保障重視の色彩が強いが、受け入れ目的の明確化・社会統合政策の体系化・労働市場構造への統合的な対応が今後の核心的課題となる。


2. 経済安全保障と成長戦略:現状と課題

2-1 現状:成長戦略の枠組みと政策座標

高市政権は発足直後、「日本成長戦略本部」を設置し、来夏をめどに成長戦略の策定を進めている。この本部では、AIや半導体、航空宇宙、資源・エネルギー安全保障、サイバーセキュリティ等を危機管理投資・成長投資の重点分野として検討している。

これら17分野は、グローバルな競争と地政学的リスクを背景に、日本経済の競争優位性の強化と供給力確保を狙いとしている。政策の背後には「強い経済の実現」という基本命題があり、政府予算や税制支援策と連動する形で具体化が模索されている。

2-2 課題:実行力と総合政策設計

① 産業政策と市場原理の調整
成長戦略は民間投資の誘発を狙っているが、政府主導の重点分野選定と市場の自律的資源配分とのバランスが政策評価での焦点になる。具体的には、官主導の支援が企業の競争力強化につながるかは、制度設計の精緻さに依存する。

② 経済安全保障の優先順位の明確化
経済安全保障は単なる安全保障の経済的側面だけでなく、サプライチェーンの強靭化、資源・エネルギー確保、デジタルインフラ保護など多面的な政策課題を含む。これらを単一戦略として統合し、国内外の経済リスクに備える制度化が必要になる。

③ 民間資本の誘導と社会的対立
成長戦略は経済効率と安全保障要件を同時に追求するため、規制緩和と安全管理の矛盾が生じやすく、企業側と政策当局との間の調整が不可欠となる。

2-3 課題要約

経済安全保障と成長戦略は、高市政権の重要政策中枢であるが、産業政策の市場との整合性、制度統合の深度、安全保障と経済成長の両立が実行上の中核的課題である。


3. エネルギー政策:現状と課題

3-1 現状:GX(グリーントランスフォーメーション)戦略と政策展開

高市政権はエネルギー戦略を経済安全保障政策と連関させつつ、GX(Green Transformation)戦略の推進を打ち出している。GXでは再生可能エネルギーの導入や資源循環、次世代技術の育成といった方向性が掲げられている。政府は戦略的投資として、資源・エネルギー安全保障分野を成長戦略の重点分野に位置付けている。

政府の投資方針には、次世代太陽電池や燃料転換技術への支援、エネルギー供給の多様化が含まれ、経済成長と環境政策の同時達成を目指す。

3-2 課題:政策設計と利害調整

① 再生可能エネルギーの規制・承認プロセス
地域の景観や環境保護との調整、規制緩和と安全性確保のバランスが難しく、再生可能エネルギーの拡大には制度的ボトルネックが存在する。

② GX戦略の実効性と財政負担
GX投資は長期的視点が求められる一方、短期的財政負担の増加と投資回収の不確実性が企業投資の意欲を左右する。産業界・経済界が成長戦略としての投資環境整備を訴えている一方で、政策の方向性や財政配分の優先順位については慎重な検討が必要である。

③ 再生可能と伝統的エネルギーの調整
国民生活・産業基盤の安定性を確保するためには、再生可能エネルギーへの転換のみならず、原子力・化石燃料との現実的なバランス政策が不可欠である。これについては国民合意形成も課題となる。

3-3 課題要約

エネルギー政策は、経済成長・環境政策・安全保障という三つの異なる政策目標を統合する必要があり、制度面での調整と実行力の強化が今後の大きな政策課題となる。


4. 総括

高市政権の外国人政策、経済安全保障と成長戦略、エネルギー政策は、日本が直面する構造的課題――人口減少、国際競争の激化、脱炭素と産業基盤の再編――に対応するための重要な柱である。これらは単独では機能せず、互いに政策目標を支え合う統合的な政策体系の構築が求められている。政策の現状には方向性の明示や制度設計の進展が見られる一方、社会的統合、実行力、安全保障とのバランスといった内在的な課題が残る。これらに対する対応は、政権の持続性と政策評価にも直接的に影響するものと考えられる。

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