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コラム:二重価格、メリットと課題、社会的正当性を担保

二重価格(デュアル・プライシング) はオーバーツーリズム対策として、収益構造改善・混雑抑制・住民優遇といった複数の目的を持つ政策手段である。
会計のイメージ(Getty Images)
現状(2026年1月時点)

オーバーツーリズム(観光過密)は世界的な観光地に共通する課題である。観光客の急増によって人気スポットでは交通渋滞、自然環境の劣化、住民生活への影響、施設の老朽化・維持管理費用の増大などが顕在化している。この状況は日本でも例外ではなく、特に円安とコロナパンデミック後のインバウンド需要回復の影響で、国内の主要観光地に訪日外国人が集中し、地元住民の生活環境に負担が生じていることが報告されている。観光庁は2023年度補正予算で全国26の地域をモデル地域として選定し、混雑緩和などオーバーツーリズム対策に取り組んでいるが、施策は多岐に及んでいる。

このような中、観光政策の一環として「二重価格(Dual Pricing)」の導入が国内外で議論されるようになっている。歴史的・文化的施設の運営にかかるコストや、住民と観光客の料金差の在り方が政策的・社会的な関心事となっている。国内では訪日客向けの二重価格の認知率が上昇し、賛成意見が拡大する調査結果も得られている。


二重価格(デュアル・プライシング)とは

二重価格とは、同一の財・サービスに対して利用者の属性に応じて異なる価格を設定する制度である。観光分野においては一般に 「国内在住者(地元住民)」と「外国人観光客」ないし「域外者」 で価格差を設ける方式が該当する。海外では伝統的に観光資源の保護と地元住民のアクセス確保のため、世界遺産・博物館・国立公園などで制度化されている例が多い。

理念と目的

二重価格の制度設計には以下の主要な目的がある。

  1. 観光資源の維持管理費の確保
    文化財や自然環境の保存には多額の費用が必要であり、観光需要の高い時期や客層から追加収益を見込むことで施設運営の持続可能性を高める。

  2. 住民の負担軽減と利用機会の確保
    観光地に対する税金や住民サービスへの貢献を行っている住民と、短期滞在の旅行者を区別し、住民の利用機会を確保する配慮として機能する。

  3. 需要抑制と混雑緩和
    高額設定により短期的な観光需要の一部を抑制し、混雑のピークを緩和する手段として活用できる可能性がある。

  4. 観光収益の地域還元
    外国人観光客からの追加収益を、地域社会への還元やインフラ改善に充てる試みとして評価される。


日本ではインバウンド需要の増大と円安を背景に導入や検討進む

日本では円安や訪日外国人の回復でインバウンド需要が増大した。観光庁の統計によると、訪日外国人旅行者数はパンデミック前の水準を超える規模に回復しており、観光地への集中が課題となっている。こうした背景から、施設運営側や自治体が収益改善・混雑抑制の手段として二重価格を取り上げるケースが見られる。姫路市の姫路城では、国内居住者と市民以外で料金区分を設ける検討が進められているなど、実際の事例も確認される。

また、民間テーマパークや飲食業などでも、来場者属性に応じた価格設定やサービス設定が検討されるなど、商慣行としての二重価格の導入に関する議論が拡がっている。これらの動きは訪日観光客からの収益を確保しつつ、地元経済と施設運営の持続可能性を図る試みとして理解されている。


主な仕組みと目的

二重価格制度は、通常以下の要素で構成される。

  • 対象区分の定義: 国内在住者、地域住民、外国人観光客、域外からの来訪者など。

  • 認証方法: パスポートや居住証明書等による本人確認プロセスを設け、料金区分を適用。

  • 価格差: 住民価格・優遇価格を設定し、観光客価格を割増とする。

  • 運用プロセス: 購入時に属性を確認し、該当する価格を適用する仕組み。

これらを適用するためには、正確な認証システムと料金掲示の明確性が不可欠である。この点は後述する法的妥当性の確保や、料金差の説明責任と密接に関連する。

目的

前節で挙げた理念に加えて、具体的な政策目的として以下がある。

  • 文化施設・歴史的遺産の修復・保存費用の確保
    二重価格の収益を修復費や保全維持費に充てることにより、観光需要と保存ニーズのバランスを取る。2026年1月からルーヴル美術館が欧州経済領域(EEA)圏外の来館者に入館料を値上げする施策は、老朽化対応と警備・インフラ改善の財源確保を狙ったものとして発表されている。

  • 混雑・需要の集中緩和
    高額料金は一部の観光客の訪問意欲を調整し、混雑緩和やリピート率の管理に寄与する可能性がある。こうした価格弾力性に関する理論は観光経済学でも議論されているが、適正な価格差の設定には需要・供給の詳細な分析が求められる。


価格差の設定

価格差を設定する際には、料金レベルが観光需要に与える影響を考慮する必要がある。一般に、価格弾力性や消費者行動のモデル化が行われ、市場セグメントごとの支払い意思額を推定する手法が使われるが、観光分野では「収益最大化」と「混雑緩和」という二つの相反する目標のバランスを評価することが重要である。これは持続可能な観光管理の研究分野でも取り上げられており、複数の政策目標を統合するための数理モデルが開発されている。

また、海外の事例を見ると、インドのタージ・マハルやカンボジアのアンコール・ワットなどでは現地住民と外国人観光客の入場料差が大きく、その比率は10倍以上に達することもある。

日本での具体的な価格差設定は自治体や施設ごとの裁量によるが、合理性と透明性が求められる。一般に住民価格を抑える一方で、外国人価格は需給バランスや運営費用を反映した水準になることが多い。


財源の確保

観光施設の維持管理には多額の財源が必要である。特に世界的な人気を誇る施設ではインフラの老朽化やセキュリティ強化、バリアフリー対応等の費用が重くなる。ルーヴル美術館の例では非EEA訪問者向け料金を従来の22ユーロから32ユーロへと約45%引き上げることで、年間1500万〜2000万ユーロ規模の増収が見込まれている。これは施設のインフラ改善や老朽化対応に充てられる計画である。

日本でも二重価格導入による収益の一部を修復・保全費用や地域インフラ整備に充てることが期待されているが、具体的な制度設計や財源管理の透明性が求められる。国や自治体が関与する場合、収益配分の明確化と地元住民・観光客への説明責任が不可欠である。


需要の抑制

価格差による需要の抑制は、単に料金を引き上げるだけでなく、需要のピーク時間帯や混雑する季節に応じて変動料金を導入するダイナミック・プライシングと組み合わせることでも可能である。しかし、オーバーツーリズムの根本対策としては、観光動線の分散や観光客教育、リアルタイム混雑情報の提供と並行した総合的な施策が必要であり、単独で価格政策を据え置くことは効果を限定的にする可能性がある。


2026年の主な動向・事例

公共・文化施設

国際的な事例として、ルーヴル美術館では2026年1月14日から欧州経済領域(EEA)圏外の来館者に対して入館料を32ユーロに値上げする措置を発表している。この価格差はEU圏内居住者の料金据え置きと比較して約45%の引き上げであり、文化施設運営に必要な追加財源の確保が目的とされている。

このほか、パリ周辺の複数の文化施設でも外国人を対象とした割増料金が導入されており、920万ユーロの増収が見込まれているケースも報じられている。

自治体

国内では、兵庫県姫路市が姫路城の入城料について市民と市民以外の料金区分を導入する方針を打ち出している。市民は従来どおりの料金を据え置く一方、市民以外は2500円にするといった価格差を設ける方向で検討されている。

このほか、沖縄県の大型テーマパーク等でも国内居住者向け価格と外国人含む域外者向け価格を区別する取り組みが報じられている。


メリット
  1. 施設運営の持続可能性の向上
    追加収益により、文化財や施設の修復・保全に必要な資金が確保できるようになる。

  2. 住民優遇と地域共存の実現
    地元住民の利用機会を確保し、住民税等による貢献と公平性を図ることが可能になる。

  3. 観光需要の適正化
    価格弾力性を活用して混雑のピークを緩和し、観光地環境の持続可能性を高めることが期待できる。

  4. 地域経済の安定化
    外国人観光客から得られる収益を地域インフラやサービス向上に再投資することで、総体的な地域経済の活性化につながる可能性がある。

課題・リスク

二重価格制度は、属性による差別感を与える可能性がある。国内外の意見を集計した調査によると、二重価格制度の認知率は62%に達し、約7割が賛成するという一方で、「差別的な印象」を懸念する回答も一定割合存在することが示されている。

特に外国人観光客の視点では、価格差設定が不公平に感じられ、旅行体験に悪影響を与えるリスクがある。また、口コミやSNSを通じて不満が拡散すると、訪日意欲の低下につながる可能性も指摘されている。

国籍確認の手間

属性に基づいた料金設定は、購入時にパスポートや居住証明を確認する必要があるため、運用面でのコストや時間負担が増す。特に混雑時には購入待ち時間が長くなるなど、観光体験の質への影響が懸念される。

法的な妥当性(景品表示法など)の確保

商取引における価格差は、消費者契約や公正取引に関する法令(景品表示法等)との整合性を保つ必要がある。属性による価格差が不当表示とみなされるリスクや行政指導の対象となる懸念もあり、導入にあたっては法的整備と透明性が求められる。


今後の展望

オーバーツーリズム対策としての二重価格制度は、欧州やアジア各地で既に導入例があり、日本でもその有効性と実現可能性が検討されている。評価の焦点は、観光資源の保全と住民生活の保護、観光地のブランド価値維持といった多面的な政策目標をどのように両立させるかにある。

学術的にも、価格政策を含む複数の施策を統合することで持続可能な観光地管理モデルの構築が進められている。観光政策立案者は、価格差の社会的受容性、法的環境、需要動態分析など総合的なデータを用いて制度設計を行う必要がある。


まとめ

このように、二重価格(デュアル・プライシング) はオーバーツーリズム対策として、収益構造改善・混雑抑制・住民優遇といった複数の目的を持つ政策手段である。国内外の事例を見ると、価格差は文化・歴史施設の運営や観光需要の管理に寄与する面がある一方、差別感・運用コスト・法的リスク等の課題も存在する。

日本においては円安・インバウンド需要増大の文脈で導入や検討が進んでおり、姫路城やテーマパーク等の具体的事例が出現している。今後は透明性・公平性・持続可能性を担保する制度設計が求められ、学術的・社会的議論が深化する必要がある。


参考・引用リスト

  • 二重価格制度の認知率・賛否調査結果(株式会社ロイヤリティ マーケティング調査)

  • 観光施設における二重価格制度導入の是非(大和総研 報告)

  • 二重価格の海外事例一覧(国交省分科会資料)

  • ルーヴル美術館入館料値上げ(Tokyo Art Beat / Reuters

  • 国内外の議論・動向記事(Japan Forward 等)

  • 朝日新聞デジタルの社説等による観光二重価格の論点整理


追記:2026年の旅行トレンドと二重価格制度の位置づけ

2026年の旅行トレンド概観

2026年の世界的な旅行市場では、従来の「量」重視の旅行から、より「質」や「体験価値」を重視する傾向が強まっている。JTBの予測では、訪日外国人旅行者数は前年比ほぼ横ばいの約4,140万人と予測されながらも、消費額は前年を上回る見込みであり、滞在期間の長い欧米豪客の存在感が高まり、都市だけでなく地方観光へと訪問先が分散していく傾向が示されている。これは旅行者の「深い体験」を求めるトレンドと整合する。

一方、エクスペディア・グループが発表した「Unpack ’26」では、従来型の観光に加え、スポーツ観戦旅行、ホテルホッピング(滞在中に複数の宿泊先を楽しむ旅)など、多様な旅の目的形成が強まっている。これらは単なる名所巡りではなく、体験設計やローカル文化・歴史・ライフスタイルとの結びつきを求める傾向を示している。

IMJのインバウンドマーケティング研究でも、2026年は市場が「数」の成長段階から脱し、「質」の高い体験、サステナブル観光、地域密着型消費へのシフトがトレンドの中心になると指摘されている。具体的には富裕層市場の深化、地域独自の“コト消費”ニーズの増加、多言語・多文化対応の強化といった要素が挙げられている。

このようなトレンド変化は、観光施策のあり方にも影響を与える。特に二重価格制度の設計にも「単なる価格差」ではなく、旅行者に価値を感じてもらえる付加価値を組み込むことが求められるようになっている。単純な入場料の差額だけでは、現代の旅行者が求める体験価値を十分に刺激できない可能性が高く、また批判回避の観点からも工夫が必要となる。


単なる価格差ではない「付加価値付き二重価格」設計の意義

2026年の旅行者は、旅行目的を「体験」「学び」「文化交流」といった価値に置いている傾向が強まっている。単なる入場料や宿泊料の価格差は旅行者の心理的抵抗感を生みやすいが、付加価値を同時に提供する仕組みは、価格差を「選択的なサービスバリエーション」として正当化しやすくなる。

例えば、多言語ガイドサービス、特別展示・優先入場、地域の専門ガイドとの交流プログラム、限定視点でのツアーなど、文化的理解・体験の深化を図るパッケージサービスをセットにする設計が考えられる。これにより、価格差が単なる国籍差別ではなく、旅の「質的向上」に直結する価値として理解されやすくなる。

このアプローチは、サステナブル観光への関心と組み合わせるとさらに強化される。例えば、地元住民との交流プログラム、環境保全体験、地域独自の文化ワークショップといった付加価値を設けることで、旅行者には深い体験価値が提供されると同時に、地域側にも文化保存・持続可能性向上という利益が還元される。

外国人向け付加価値例

以下は、外国人旅行者向けに二重価格と組み合わせて提供できる付加価値の具体例である。

  1. 多言語対応サービス
    英語・中国語・スペイン語など複数言語による音声ガイド、インタラクティブ展示説明、QRコードで利用可能な多言語資料など。これにより情報アクセスの質が上がり、価格差が「情報価値の付加」として説明可能となる。

  2. 地域体験型パッケージ
    地元職人とのワークショップ、農村体験、郷土料理教室など、外国人観光客が現地文化を深く体感できるプログラム。

  3. 優先入場・専用ラウンジ等の快適サービス
    混雑緩和を目的とした優先入場時間帯設定、専用休憩スペース、多言語コンシェルジュ対応など。

  4. 地域ガイドとの交流ツアー
    観光資源の背景知識や歴史的背景を解説する専門ガイドツアーに参加できるようにすることで、単なる観光では得られない理解体験を提供する。

これらは単に価格を「上げる」だけでなく、旅行者が料金に見合う価値を実感できるようなパッケージ化された体験であり、2026年のトレンドが示す「本質的な旅行価値追求」とも整合する。


批判されにくい二重価格の設定方法

二重価格制度を批判されにくくするためには、価格差の正当性を明確に説明し、付加価値を透明かつ合理的に組み込む必要がある。以下に具体的な設計・運用の手法を整理する。

1. 透明性の確保と合理的根拠の提示

二重価格を設定する際には、価格差とそれが提供するサービス・価値の違いを明確に説明することが必須である。価格表に単に「外国人料金」と記すだけではなく、どのようなサービスや体験が含まれ、その対価としての価格差であるかを消費者に示す必要がある。これにより「不当な差別」ではなく「価値選択の提供」として理解されやすくなる。

例えば、美術館であれば「多言語対応ガイド」「特別解説映像」「限定展示アクセス」といった付加価値を併記することが挙げられる。消費者は「価格差=追加サービス対価」と認識することで、価格差への理解が進む。

2. 属性ではなくサービス選択肢の提示

伝統的な二重価格では居住地や国籍が価格区分の基準となるが、批判を抑える設計としては、「選択式のサービスパッケージ」方式が有効である。これは、顧客が希望する付加価値付きプランを選択する形態であり、「居住地」による差別ではなく、消費者の選択に応じた価格差となるため、公平性の観点から批判されにくい。

この方式では、例えば以下のように設定する。

  • 標準プラン(基本料金)

  • エクスペリエンスプラン(多言語ガイド・優先入場付き)

  • プレミアムプラン(限定イベント・専門家解説付き)

こうしたプラン設計は、顧客自身のニーズに基づく選択であり、「特定国民だけ高くする」と捉えられにくくなる。

3. 税・社会還元の仕組みと連動した価格設計

観光施策としては、二重価格による追加収益の一部が地域共生・環境保全・文化保存に再投資される仕組みを構築することが批判回避につながる。例えば、訪日シーンでは出国税(国際観光旅客税)財源を活用したオーバーツーリズム対策費用が政策として拡充されており、地域の受入体制強化等に充当される動きがある。

このように、追加収益や付加価値料金が地域の持続可能性向上や住民利益につながっていることを可視化・説明することが重要である。単なる収益目的との誤解を避け、社会的な正当性を担保する仕組みとなる。

4. 合意形成とステークホルダー・コミュニケーション

自治体・地域住民・観光事業者・旅行者団体等、複数のステークホルダーとの協議を通じて制度設計を進めることが批判の抑制に寄与する。透明な意見交換・説明会・情報公開を通じて、何のための価格差なのか、誰が利益を得るのか、どのように運用されるのかを示し、社会的合意形成を図る必要がある。


総括:旅行トレンドと価値基点の二重価格設計

2026年の旅行トレンドは、数量の成長から質の向上へとシフトし、多様化・体験価値の深化が求められている。これに伴い、観光施策としての二重価格制度も単なる価格差ではなく、旅行者にとっての価値提供と地域共生の両立を目指す設計へと進化するべきである。

付加価値(多言語対応・限定体験・優先サービス等)を組み込んだ二重価格は、価格差を単なるコスト増と捉えるのではなく、選択肢としての価値提示となるため、批判の抑制と満足度向上に寄与する。また、透明性と地域社会への還元を重視した価格設計は、社会的正当性を担保する上でも重要である。

このような「価値基点」での二重価格制度は、2026年の「質の高い観光ニーズ」に対応した有力な施策となり得る。


以下に、具体的事例やデータを用いた比較表およびカテゴリー別付加価値構成例を整理した。これは、先の説明で触れた「付加価値型二重価格制度」の設計・検討に資する内容であり、 実在事例データや調査結果をもとに明示している。


1. 二重価格制度・主要事例比較表(観光施設・文化遺産)

以下は世界各地における代表的な二重価格(Dual Pricing)制度の事例を 施設・対象、対象者区分、料金差、付加価値・備考 の観点で整理した表である(2025~2026年時点の公開データに基づく)。

施設・国・地域対象区分価格(現地通貨 / 円換算)料金差の目安付加価値・備考
タージ・マハル(インド)現地住民約50ルピー(約90円)標準入場価格※文化財維持費として設定
 外国人観光客約1,100ルピー(約2,000円)約22倍歴史遺産体験
アンコールワット(カンボジア)カンボジア人無料地元文化継承の観点
 外国人37ドル(約5,800円)〜遺跡保存・収益確保
ギザのピラミッド(エジプト)エジプト人約60ポンド(約180円)約11倍地元保護・普及
 外国人約700ポンド(約2,100円)観光維持費用
メトロポリタン美術館(米国)州内居住者等任意(最低0.01ドル)住民アクセス重視
 外国人等30ドル(約4,700円)追加サービス未明示
ルーブル美術館(仏)一部カテゴリー(EU圏在住若年等)割引/無料EU圏内居住に基づく
 一般訪問者約22ユーロ(約3,500円)施設運営・展示維持
ジャングリア沖縄(日本)国内居住者6,930円来場者向け基本体験
 訪日客8,800円約1.27倍多言語対応・案内等を進行
姫路城(日本・検討例)市民1,000円(現行)文化財維持・住民還元
 非居住者(検討)2,000〜3,000円2〜3倍維持管理・調整中

解説

  • 伝統的な世界遺産では、価格差が地域住民と外国人で 10倍〜20倍 という極めて大きな差異となるケースが存在する(タージ・マハル等)。

  • 先進国の美術館では「居住者向け割引」など柔軟な複数価格モデルを採用し、住民福祉と収益確保を両立している例もある。

  • 日本国内のテーマパーク事例では料金差に付加価値(多言語対応等)を担保する計画が見られる。


2. 二重価格の付加価値カテゴリー別構成例

二重価格を “付加価値付サービスの選択肢” として提示する際に活用できる構成例を、カテゴリー別に整理したモデル例を示す。これは「価格差=サービス選択価値」として説明可能な体系である。

付加価値カテゴリー①:言語・情報アクセス
付加価値サービス内容目的・価値
多言語ガイド音声英語・中国語・韓国語・スペイン語等の音声ガイド外国人にとって情報理解の質を高め、体験満足度を向上
多言語展示翻訳展示解説・案内標識を多数言語対応文化理解・滞在体験としての価値
デジタルAR案内ARを用いて歴史背景を伝える体験高付加価値体験として差別化
付加価値カテゴリー②:体験深化・参加型プログラム
付加価値サービス内容目的・価値
専門ガイドツアー歴史家・専門家との少人数ガイドツアー単なる見学を越えた深い学び
展示背後の文化体験地元工芸・伝統技能のワークショップ文化交流・体験価値の提供
夜間特別入場混雑時間を避けた特別アクセスプレミアム体験・快適性の向上
付加価値カテゴリー③:快適性・利便性向上
付加価値サービス内容目的・価値
優先入場行列を回避し効率的に入場可能時間価値を重視する旅行者向け
専用ラウンジ等多言語対応スタッフ常駐スペース外国人観光客の質問対応・休憩提供
統合観光アプリ連携旅程管理・周辺案内の統合サービス旅行体験の質的向上
付加価値カテゴリー④:地域共生・社会体験
付加価値サービス内容目的・価値
地元住民交流プログラム郷土料理・文化紹介の交流会地域理解の深化
環境保全参加型自然環境整備体験ツアー持続可能性教育と地域支援
寄付オプション付きチケット入場料の一部を地域基金に充当観光が地域再生に寄与

設計の考え方

  • 付加価値は 「サービスの多層化」による選択型料金体系 として提示することが重要である。

  • 単に「外国人価格」ではなく、顧客の 「体験価値選択の幅」 としてパッケージすることで合理性と納得感を高める。

  • 事前情報(サイト、パンフレット、アプリ等)で 明確な違いと目的を提示し説明責任を果たすこと が批判抑制に有効である。


3. 二重価格に関する意識・評価データ(参考)

以下のポイントは実際の調査結果であり、制度設計時に社会的受容性を検証する根拠データとして参考になる。

  • 二重価格の認知率62%、一般的な賛成割合は約69.5%と報告されており、いくつかの条件・環境下では受け入れられる余地を持つ。

  • 「文化施設」「自然保護区」で特に許容されやすいという傾向がある。

  • 同調査では「料金差の基準」「使用目的」を明確にすることが納得感につながるとの指摘が示されている。


4. 付加価値付き二重価格のメリットと設計のポイント

付加価値付き二重価格制度 は次のようなメリットと設計ポイントを持つ。

メリット(設計・運用面)

  • 納得感の向上
    単なる値上げではなく、「体験価値の選択肢」として価格が提示されるため、顧客の理解が得られやすい。

  • サービス差別化・ブランディング強化
    付加価値サービスのパッケージ化によって施設のブランド価値が高まり、リピート・口コミ評価が向上する可能性がある。

  • 住民理解の促進
    地元住民向けの優遇と付加価値を明確に区別することで、一般的な反発感や外国人差別という印象の緩和につながる。

設計のポイント

  • 明確な説明責任(コミュニケーション)
    価格差の合理的根拠と付加価値内容を透明化する。

  • 付加価値内容の具体化と差別化
    多言語対応、専門ガイド体験、時間帯限定サービスなど、明確な差異を可視化する。

  • 段階的選択肢の提供
    標準プランと複数の付加価値プランを組み合わせ、顧客が予算や目的に応じて自由に選べる体系にする。

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