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コラム:アメリカ建国250年、新型コロナウイルス

新型コロナウイルスは米国社会に甚大な被害をもたらし、公衆衛生システム、社会構造、国際協調のあり方を問い直す契機となった。
2022年5月18日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、バイデン大統領(White House/ABCニュース)
現状(2026年1月時点)

2026年1月時点において、米国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とその変異株と共存する状況が続いている。2020年1月に最初の感染例が確認されて以降、パンデミックとしてのピークは過ぎたものの、季節性インフルエンザと同様に継続的な流行が観察され、毎年数千〜数万人規模の死亡が報告されている。

また、2026年1月22日に米国は世界保健機関(WHO)からの正式な脱退を完了した。これにより従来の国際的な感染症監視や協調措置から距離を置き、独自の保健戦略や他国・機関との二国間協力へとシフトしている。

本稿はコロナウイルスの米国における歴史とその影響、対応、課題を包括的に整理する。


新型コロナウイルスとは

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、コロナウイルス科に属するウイルスで、2019年12月に中国湖北省武漢市で初めて確認された。ウイルスは呼吸器系を中心に感染を拡大させ、軽度〜重度の呼吸器症状を引き起こす。世界保健機関(WHO)は2020年1月30日に国際的な公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言し、3月11日にパンデミック(世界的な流行)と認定した。

SARS-CoV-2は、従来の風邪コロナウイルスと比べて高い感染性を持ち、無症状感染者や前症状期感染者を介した拡散が大きな特徴である。また、インフルエンザと同様に季節的な流行パターンを示すだけでなく、空気感染や接触感染など複数の感染経路があるとされる。

感染症学的には、コロナウイルスの流行は、過去のパンデミックと比較して現代の移動性・都市化・医療体制との相互作用の中で特異な影響を及ぼした。


感染拡大と初期対応(2020年)

初確認: 2020年1月21日

米国で最初にコロナウイルス感染が確認されたのは2020年1月21日であり、ワシントン州で中国・武漢からの渡航者に関連する症例であった。この初期症例は国境を越えたウイルス拡散の最初の確認例とされ、その後、国内各地で症例が報告され始めた。

当初は検査能力や情報収集が限定的であり、数例の症例検出から急速な地域内感染という展開が見られた。

拡大

2020年初頭に米国での感染が確認されると、3月以降は全米各地で感染者数と死亡者数が急増した。大都市圏や人口密集地域では集団感染事例が頻発し、病院の負荷や医療資源の不足という形で公衆衛生上の危機が表面化した。

累計感染者数および死者数は、パンデミックの進行とともに増加し、2022年までには数千万人規模の感染と多数の死者が報告されている。

トランプ政権が国家非常事態を宣言

2020年3月、当時のトランプ政権はコロナウイルスの急速な拡大を受けて国家非常事態を宣言した。これにより、連邦政府・州政府という二層的な体制の中で複数の政策決定が行われ、ロックダウンや移動制限、国境管理などが部分的に導入された。

しかし、州ごとの対応は統一されず、ロックダウンの強制力や適用範囲には大きなばらつきが生じた。いくつかの州では厳格な社会的距離措置がとられた一方、別の州では経済活動を優先し規制緩和が早期に進んだ。

対策と混乱

米国のコロナウイルス対策は、検査体制の拡充、病院への資源配分、個人防護具(PPE)の確保といった側面で初期に混乱が生じた。検査の遅れや不足が感染の広がりを見えにくくし、感染経路の追跡や隔離措置の有効性も影響を受けた。

また、政治的な分断が感染症対策と結びつき、マスク着用やワクチン接種の是非が社会的・政治的な議論の対象となった。

ロックダウンやマスク着用を巡る対応

多くの州や都市は2020年春以降、飲食店や非必須事業者への営業制限、学校・大学の閉鎖といったロックダウン措置を実施した。これらの措置は感染拡大の抑制に一定の効果をもたらす一方で、経済活動の停滞や失業増加などの社会的コストを引き起こした。

マスク着用についても多くの保健専門家が推奨したが、政治的立場や個人の自由の観点から異なる受容が生じ、統一的な実施が困難であった。


パンデミックの激化と教訓(2021年–2024年)

被害の甚大さ

パンデミックが進行する中で、米国におけるコロナウイルスの累計感染者数と累計死者数は世界でも突出した数値に達した。報告によると、累計感染者数は1億人規模、累計死者数も120万人を超えるに至った。

こうした規模は米国内外の公衆衛生・社会・経済システムに深刻な影響を及ぼし、特に高齢者や基礎疾患を持つ集団での死亡率が高く、その社会的影響は顕著であった。

パンデミックの死者数は、米国史上の他の大規模感染症や戦争犠牲者数と比較されるほどの深刻なものとなった。

累計感染者数1億人超、死者数120万人超

CDCや統計サイトのデータに基づくと、米国におけるコロナウイルスの累計感染者数は1億件を超え、累計死者数は120万人超と報告されている。これは公式な報告数であり、実際の感染・死亡数は過少報告や報告遅延の影響を含む可能性があるが、いずれにせよ甚大な規模の影響であった。

この数値はCDCの統計や世界的なコロナ統計データベースに基づくものであり、米国国内の死者数の多さは公衆衛生政策、感染制御の難しさ、社会的・経済的要因の複合的な影響を反映している。

ワクチンと対策の変化

2020年末から2021年にかけて、mRNAワクチンなどコロナワクチンが急速に開発・承認され、接種キャンペーンが全国的に展開された。ワクチンは感染の予防効果と重症化・死亡の抑制効果に寄与し、パンデミックの動態を変える大きな転換点となった。

ワクチン接種率は年齢層や地域によって異なり、接種率の低い地域では感染再拡大のリスクが高いことが示された。加えてブースター接種や変異株への対応が継続的な課題となった。

ワクチンと治療薬の導入は、入院率や重症化率の低下に寄与したが、ワクチン拒否や誤情報の広がりが対策の効果を低減させる要因ともなった。


起源を巡る対立と国際体制からの離脱(2025年–2026年)

起源調査の激化

コロナウイルスの起源は国際的にも大きな論争の対象であった。ウイルスが自然発生したのか研究所からの逸脱によるものかという議論は、科学界だけでなく政治的な対立の文脈でも扱われた。

米国の複数の情報機関は低い確信度ながら研究所由来説を支持する評価を行ったとされ、他国やWHOとの間で起源調査への協力と透明性を巡る摩擦が続いた。

これらの議論は国際保健ガバナンスの信頼性と透明性への懸念を生み、米国国内外で感染症対策のあり方そのものが問われる契機となった。

WHOからの正式脱退(2026年1月22日)

2026年1月22日、第2次トランプは長年所属してきた世界保健機関(WHO)から正式に脱退した。脱退はコロナウイルスの対応を巡る見解の相違や、同機関に対する批判が背景にあるとしている。

この脱退は米国が国際的な感染症監視・協調から距離を置く象徴的な出来事であり、国際的な公衆衛生体制への影響が懸念されている。脱退を受けて一部の州政府や機関は独自に国際保健ネットワークへの参加を模索する動きを見せている。

独自の保健戦略

WHO脱退後、米国連邦政府は独自の保健戦略による感染症対応と他国との二国間協力を進める方針を打ち出している。また、国内保健インフラの強化や新たな感染症への備えとして研究投資やサーベイランス体制強化が掲げられている。


2026年現在の状況

2026年時点では、コロナウイルスは完全な収束には至っていないものの、パンデミックとしての大流行期は過ぎ、季節性の呼吸器疾患として扱われる段階に移行している見解が示される。

専門家はコロナウイルスをはじめとする感染症に対して継続的な監視とワクチン・治療法の改善、情報公開の強化の必要性を指摘している。また、次のパンデミックへの備えとして、公衆衛生インフラの再構築が重要な課題になっている。


新たな変異株

コロナウイルスは変異を続けており、流行中に複数の変異株が出現した。これらは感染性・病原性の点で差異を示し、ワクチンの効果や公衆衛生対策への影響を及ぼしている。

変異株の監視は依然として科学者や保健機関にとって重要な課題であり、ゲノム解析やサーベイランスの強化が求められている。


社会の分断

コロナウイルス対応を巡って米国内では社会的・政治的な分断が深刻化した。マスク着用やワクチン接種といった公衆衛生措置が政策論争と結びつき、信頼の危機や誤情報が感染対策の効率を低下させる結果となった。

これらの課題は公衆衛生コミュニケーションの在り方や、科学的根拠に基づく政策決定の重要性を再評価する契機となった。


まとめ

本稿では、米国のコロナウイルスの歴史とその社会的・政治的影響、対策の変遷を整理した。新型コロナウイルスは米国社会に甚大な被害をもたらし、公衆衛生システム、社会構造、国際協調のあり方を問い直す契機となった。

累計感染者数や死亡者数の多さ、ワクチン展開とその課題、国際機関からの離脱と独自戦略の模索は今後の感染症対応の基本的教訓となる。特に科学的知見と政策決定との乖離、社会的信頼の重要性は今回のパンデミックから得られた主要な教訓の一部である。


参考・引用リスト

  • 米国がWHOから正式に脱退したことに関する報道(Washington Post / Time / AP News
  • COVID-19起源の議論に関するCIA評価
  • COVID-19死者数比較や影響に関する報道
  • 米国におけるCOVID-19累計感染者数・死者数(Worldometers統計)
  • CDCや統計データ(COVID-19 surveillance)
  • 累積統計と動向(Our World in Data)
  • WHO声明(米国脱退へのWHOの見解)
  • COVID-19感染推計に関するモデル研究(arXiv)

追記:第1次トランプ政権とバイデン政権の対応比較

危機認識と初動対応の差異

第1次トランプ政権(2017–2021年)とバイデン政権(2021–2025年)におけるコロナウイルス対応の最大の差異は、感染症を国家的危機としてどのように位置づけたかという「危機認識」にある。

第1次トランプ政権では、パンデミック初期においてウイルスの脅威が過小評価される傾向が強く、インフルエンザとの比較や「自然に収束する」という発言が繰り返された。この姿勢は市場や国民の不安を抑制する意図があったとされる一方、感染拡大に対する初動の遅れを招いたとの評価が専門家の間で多い。

これに対し、バイデン政権は発足直後からコロナウイルスを国家安全保障および公衆衛生上の最重要課題と位置づけ、連邦政府主導での対応を強化した。大統領直属のコロナウイルス対策チームを再編し、科学的助言を政策判断の中心に据える姿勢を明確にした点が特徴である。

連邦政府と州政府の関係

第1次トランプ政権下では、感染症対策は「州の権限」に委ねられるべきであるとの連邦主義的立場が強調され、マスク着用義務やロックダウンの実施は州政府の裁量に大きく依存した。この結果、州ごとに対策の強度とタイミングが大きく異なり、感染制御に地域差が生じた。

バイデン政権では、州政府の権限を尊重しつつも、連邦政府が統一的な指針を示す形で介入する傾向が強まった。連邦施設や航空機内でのマスク義務、連邦資金を活用した検査・ワクチン配布の強化などがその例である。

ワクチン政策の違い

ワクチン開発そのものは第1次トランプ政権下の「オペレーション・ワープ・スピード」により急速に進展した。これは科学技術政策としては一定の成果を上げたと評価される。一方で、接種の推奨やワクチンの安全性に関する一貫したメッセージは不足していたと指摘される。

バイデン政権は、ワクチン接種をパンデミック収束の中核政策と位置づけ、連邦職員や一部民間労働者への接種義務化を打ち出した。しかし、この強制的側面は訴訟や政治的反発を招き、社会的分断をさらに可視化させる結果ともなった。


コロナウイルスが米国にもたらしたもの

公衆衛生体制への影響

コロナウイルスは米国の公衆衛生体制の脆弱性を浮き彫りにした。医療保険制度が雇用と密接に結びついている構造は、失業増加と同時に医療アクセスの不安定化を招いた。また、地域間・人種間・所得階層間の健康格差が、感染率や死亡率の差として顕在化した。

同時に、mRNAワクチン技術の実用化や遠隔医療の普及など、医療技術面での革新も加速した点は、パンデミックがもたらした正負両面の遺産といえる。

経済と労働観の変化

ロックダウンと感染拡大は、リモートワークの急速な普及、サービス産業の再編、労働者の価値観の変化を引き起こした。特に「エッセンシャルワーカー」という概念が社会的に共有され、低賃金労働の重要性が再認識された一方で、待遇改善が十分に進んだとは言い難い。

また、パンデミック期の大規模な財政支出は短期的には経済を下支えしたが、インフレ圧力や財政赤字拡大という形で中長期的課題を残した。


対策を巡る政府への不信感

情報発信の一貫性欠如

コロナウイルス対応において、連邦政府・州政府・専門機関のメッセージが一致しなかったことは、政府全体への信頼低下を招いた。マスク着用の推奨方針やワクチンの有効性に関する説明が時期によって変化したことは、科学的知見の更新という側面を持つ一方、国民には「方針が揺れている」「真実が隠されている」という印象を与えた。

特にソーシャルメディア上で誤情報が急速に拡散し、公式情報と陰謀論が同列に消費される状況が生まれたことは、政府の情報統制力の限界を示した。

専門家への信頼と政治化

公衆衛生専門家や科学者が政治的論争の中心に置かれたことも、政府不信を助長した要因である。科学的助言が政策決定に反映される過程が透明でなかった場合、専門家自身が「政治的立場を持つ存在」として認識されるようになった。

この結果、科学的事実そのものが支持政党によって評価されるという現象が生じ、科学と政治の境界が曖昧化した。


国民間の政治的対立

感染症対策のイデオロギー化

コロナウイルス対策は、単なる公衆衛生の問題から、自由と統制、個人権利と公共の安全を巡るイデオロギー対立へと転化した。マスク着用やワクチン接種は、医学的判断であると同時に政治的シンボルとして扱われ、支持政党や政治的アイデンティティを示す行為となった。

この現象は、共和党支持層と民主党支持層の間で顕著な行動差として表れ、感染率や死亡率にも影響を与えたとする研究が存在する。

分断の固定化と長期的影響

パンデミック期に強化された政治的分断は、一時的な現象にとどまらず、その後の選挙や政策議論にも影響を及ぼした。政府の感染症対応に対する評価は、政権支持・不支持の枠組みで語られることが多くなり、合意形成が困難になった。

この分断は、将来の公衆衛生危機においても迅速かつ統一的な対応を阻害する潜在的リスクとして指摘されている。


追記まとめ

第1次トランプ政権とバイデン政権のコロナウイルス対応の違いは、危機認識、科学の扱い方、連邦政府の関与の度合いに明確に表れた。一方で、両政権を通じて共通していた課題は、政治的分断の中で国民的合意を形成する困難さであった。

コロナウイルスは米国に甚大な人的被害をもたらしただけでなく、政府への信頼、科学と政治の関係、民主主義社会における危機対応のあり方を根底から問い直す出来事であった。この経験は、次なるパンデミックへの備えにおいて、単なる医療技術の問題ではなく、社会的信頼と政治的統合の重要性を示す歴史的教訓として位置づけられる。


統計データから見る米国のコロナウイルスの特徴

感染者数・死亡者数の推移

米国におけるコロナウイルスの累計感染者数は2024年末時点で公式報告ベースでも1億人を超え、死者数は120万人を超過した。人口約3億3千万人の国において、国民の約3人に1人が感染を経験した計算となる。

死亡率(人口10万人当たり死亡数)で見ると、米国は先進国の中でも高水準に位置し、パンデミック初期から2022年にかけては特に高齢者層での死亡が顕著であった。一方、2022年以降はワクチン接種と自然免疫の蓄積により致死率は大きく低下したが、絶対数としての死亡は継続して発生した。

年齢・人種・所得階層による格差

統計的分析により、コロナウイルスの影響は均等ではなかったことが明確になっている。
・高齢者(65歳以上)
・基礎疾患保有者
・低所得層
・医療アクセスの限定された地域
・アフリカ系・ヒスパニック系住民

これらの集団では感染率・重症化率・死亡率がいずれも高かった。これは個人要因ではなく、構造的な医療格差・居住環境・労働形態の違いによるものと分析されている。

医療システムへの負荷

ICU占有率、人工呼吸器使用率、医療従事者の離職率などの指標から、コロナウイルスは米国医療システムに長期的な疲弊をもたらしたことが分かる。特に地方部や民間病院依存度の高い地域では、医療崩壊に近い状況が複数回発生した。


日本との比較

感染者数・死亡者数の比較

日本のコロナウイルス累計感染者数は、人口比で見た場合、米国と同様に高水準に達した時期もあったが、累計死者数は米国と比較して著しく低い水準にとどまった。

人口10万人当たりの死亡数では、米国は日本の数倍から十倍近い値を示した時期があり、この差は国際的にも注目された。

政策対応の違い

日本と米国の差異は以下の点に集約される。

  1. 法制度と強制力
    日本は法的強制力の弱い「要請」中心の対策を採用した一方、米国は州によって強制力の強いロックダウンや義務化を実施した。

  2. 社会的同調圧力と行動様式
    日本ではマスク着用が文化的に受容されやすく、政治的対立の象徴になりにくかった。米国ではマスクが政治的シンボル化した。

  3. 医療制度
    日本の国民皆保険制度は、感染時の受診・入院の心理的・経済的障壁を下げた。一方、米国では保険未加入や高額医療費への懸念が受診遅延を招いた可能性がある。

政治的分断の影響

日本ではコロナウイルス対策が政党支持の分断軸になりにくかったのに対し、米国では感染症対策そのものが政治的立場を示す争点となった。この差は、結果として国民行動の一貫性に影響し、統計上の死亡差として現れた可能性が指摘されている。


新たなパンデミックの可能性

次のパンデミックは「起こるか」ではなく「いつ起こるか」

感染症専門家の間では、新たなパンデミックの発生は不可避であり、問題は時期と規模であるとの認識が共有されている。
その背景には以下の要因が存在する。

・地球規模の人の移動
・都市化と人口密集
・野生動物との接触増加
・気候変動
・抗菌薬耐性の拡大

コロナウイルスは例外的事象ではなく、今後繰り返される感染症危機の一形態であると位置づけられている。

想定される新興感染症のタイプ

将来のパンデミック候補としては以下が挙げられる。

・新型インフルエンザ
・コロナウイルス系新変異株
・動物由来ウイルス(人獣共通感染症)
・抗菌薬耐性細菌による大規模流行

特に呼吸器感染症は拡散速度が速く、コロナウイルスと同様に社会機能を短期間で麻痺させる可能性が高い。

米国が直面する課題

米国は次のパンデミックにおいて以下の課題を抱える。

・政治的分断による迅速な合意形成の困難さ
・連邦制による対応のばらつき
・政府・専門家への信頼低下
・国際協調体制から距離を置くリスク

WHO脱退後の米国は、情報共有や早期警戒システムへのアクセスに制約が生じる可能性があり、独自体制の実効性が問われる。

日本との将来比較の視点

日本は制度的には公衆衛生インフラと国民皆保険を維持しているが、高齢化と医療人材不足という構造的課題を抱える。
一方、米国は技術革新力と研究開発力に優れるが、社会的信頼と統合の脆弱性が最大のリスクとなる。


総括

統計データは、コロナウイルスが米国社会に与えた影響の深刻さを数量的に裏付けている。日本との比較からは、医療制度、社会文化、政治的分断の有無が感染症の帰結に大きく影響することが明らかとなる。

そして最も重要な点は、コロナウイルスが「過去の災害」ではなく、「将来への警告」であるという事実である。
次なるパンデミックは、医学の問題であると同時に、社会の信頼構造、政治の成熟度、国際協調の成否を試す試金石となる。


米国・日本・欧州三極比較

三極の基本構造

コロナウイルス対応を比較する上で、米国・日本・欧州(主にEU加盟国)は、それぞれ異なる政治体制・社会構造・公衆衛生文化を持つ「三極モデル」として整理できる。

項目米国日本欧州(EU)
政治体制連邦制・強い政治的分断中央集権的・官僚主導国家主権+超国家機構
医療制度民間保険中心国民皆保険公的医療中心
感染対策州ごとに不統一要請中心国家主導の強制力
社会反応政治化・対立同調圧力制度順守
感染・死亡の帰結比較

人口10万人当たり死亡数で見ると、米国は三極の中で最も高い水準を示した。一方、日本は最も低い水準にとどまり、欧州は国ごとの差が大きい中間的な結果となった。

欧州では、イタリア・スペイン・英国などで初期に医療崩壊が発生したが、国民医療制度と政府主導の強制措置により、その後の波では死亡率を抑制した国も多い。

米国は医療技術と研究力で優位に立ちながら、社会的統合の欠如が最終的な被害規模を拡大させた点が特徴である。

政治文化の影響

日本では感染症対策が政治的争点になりにくく、欧州では国家権限として受容されやすかった。一方、米国では公衆衛生措置が「政治的忠誠」を示す行動として機能し、科学的判断が政治的立場によって評価される構造が形成された。

この違いは、感染症対策が「制度の問題」である以前に「社会文化の問題」であることを示している。


パンデミック対応の成功・失敗要因モデル化

コロナウイルス対応の成否は、以下の四要素の相互作用としてモデル化できる。

  1. 政治的統合度

  2. 公衆衛生インフラ

  3. 社会的信頼

  4. 科学と政策の接続

成功モデル

成功に近い国・地域では、以下の条件が同時に成立していた。

・政治的対立が感染症対策に持ち込まれにくい
・医療アクセスが普遍的
・政府・専門家への信頼が高い
・科学的助言が迅速に政策へ反映される

日本、北欧諸国、アジアの一部地域はこのモデルに近い。

失敗モデル

失敗に近いケースでは、以下の特徴が見られた。

・公衆衛生措置が政治的象徴となる
・情報発信が一貫しない
・専門家が政治論争の対象になる
・個人の自由と公共の利益が二項対立化する

米国はこの失敗モデルの典型例として分析されることが多い。

米国の特殊性

米国の問題は「能力不足」ではなく「統合不足」にある。
科学、医療、資金、技術のいずれも世界最高水準でありながら、社会的信頼と政治的合意形成が機能しなかった点が、結果を大きく左右した。


コロナウイルスを米国史(戦争・恐慌)と比較する

犠牲者数という観点

コロナウイルスによる米国の死者数は、以下の歴史的出来事と比較される。

出来事米国の死者数
南北戦争約62万人
第一次世界大戦約11万人
第二次世界大戦約40万人
1918年スペイン風邪約67万人
COVID-19120万人超

コロナウイルスは、単一事象として米国史上最大級の人的被害をもたらした出来事である。

戦争との比較

戦争は「外敵」による明確な脅威であり、国民統合が促進されやすい。一方、コロナウイルスは「見えない敵」であり、責任の所在が曖昧で、社会内部の対立を顕在化させた。

第二次世界大戦時の米国は、配給制や動員を国民が受け入れたが、コロナウイルスではマスクやワクチンですら統一的に受容されなかった。この差は、国家と国民の関係性の変化を示している。

大恐慌との比較

大恐慌(1929年)は経済的ショックであり、ニューディール政策によって政府の役割が拡大した。コロナウイルスも同様に、政府による大規模財政支出と介入を正当化した点で共通する。

しかし、大恐慌が政府への信頼回復につながったのに対し、コロナウイルスは政府不信と分断を拡大させた。この違いは、現代社会における情報環境と政治文化の変質を反映している。

歴史的意味

コロナウイルスは、戦争でも恐慌でもないが、両者に匹敵する歴史的転換点である。それは単なる感染症危機ではなく、
・民主主義の統治能力
・科学と政治の関係
・社会的信頼の脆弱性
を同時に露呈させた出来事であった。


最後に

三極比較は、パンデミック対応の成否が医療技術や経済力だけで決まらないことを示している。成功を左右したのは、社会的信頼と政治的統合であった。

コロナウイルスは米国史において、戦争や大恐慌と並ぶ「国家の試練」として位置づけられる。だが、その最大の特徴は、敵が外部ではなく、社会内部の分断を通じて被害が拡大した点にある。

この教訓は、次なるパンデミックにおいて、医療対策以上に「社会の統合力」が決定的であることを示している。
コロナウイルスは終わりつつあるが、その歴史的意味は、まだ完結していない。


新型コロナウイルス(COVID-19)に関するトランプ大統領の国家非常事態宣言

Proclamation 9994, issued on March 13, 2020, formally declares that the outbreak of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) constitutes a national emergency in the United States.

The proclamation states that COVID-19 has spread rapidly throughout the country and presents an unprecedented threat to the nation’s healthcare system. It emphasizes that the virus poses a serious risk to public health and safety and requires a coordinated response by the federal government in partnership with state, local, tribal, and territorial authorities.

Invoking the authority granted by the National Emergencies Act (50 U.S.C. 1601 et seq.) and Section 501(b) of the Robert T. Stafford Disaster Relief and Emergency Assistance Act, the President declares that a national emergency exists nationwide. This declaration authorizes the Secretary of Homeland Security, acting through the Federal Emergency Management Agency (FEMA), to provide federal assistance to support emergency protective measures.

The proclamation further authorizes the Secretary of Health and Human Services to exercise discretion in waiving or modifying certain statutory and regulatory requirements under Section 1135 of the Social Security Act. These waivers are intended to ensure that sufficient healthcare services are available to meet the needs of individuals affected by COVID-19 and to allow healthcare providers to respond more flexibly to the emergency.

The document concludes by stating that the declaration is intended to provide maximum flexibility to the federal government to combat the spread of COVID-19 and mitigate its impacts, and that it shall take effect immediately.


和訳

大統領布告第9994号は、2020年3月13日に発出され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が、米国において国家非常事態に該当することを正式に宣言するものである。

布告では、COVID-19が全米に急速に拡大しており、医療制度に前例のない脅威を与えていると述べられている。また、このウイルスが公衆の健康と安全に深刻な危険をもたらしており、連邦政府が州政府、地方政府、部族政府、準州政府と連携して対応する必要があることが強調されている。

大統領は、国家非常事態法(National Emergencies Act)およびロバート・T・スタッフォード災害救援・緊急支援法第501条(b) に基づく権限を行使し、全米規模で国家非常事態が存在すると宣言する。この宣言により、国土安全保障長官は、連邦緊急事態管理庁(FEMA)を通じて、緊急防護措置を支援するための連邦支援を提供する権限を付与される。

さらに布告は、保健福祉長官に対し、社会保障法第1135条に基づき、一定の法令および規制要件を免除または修正する裁量権を認めている。これらの措置は、COVID-19の影響を受ける人々に十分な医療サービスを提供し、医療機関が緊急事態に柔軟に対応できるようにすることを目的としている。

布告の結びでは、この国家非常事態宣言が、COVID-19の拡大を抑制し、その影響を軽減するために、連邦政府に最大限の柔軟性を与えることを目的としており、即時に効力を発することが明記されている。

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