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コラム:衆議院選2026、憲法改正どうなる、課題山積

2026年2月8日の衆議院選挙において、憲法改正は主要な争点の一つとして位置付けられている。
高市総理(AP通信)

2026年2月8日に投開票される衆議院議員選挙は、通常の政権選択の枠を超えて、日本国憲法の改正問題が主要な政策論点の一つとして浮上している。自民党を中心とする改憲推進勢力は、憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の新設などを具体的な改正項目として掲げており、選挙を「国民的議論の場」と位置付けている。これに対し、野党側は現行憲法の基本理念を尊重する立場から改正に慎重または反対する立場を明確にしている。

政局面では、自民党と日本維新の会が強い支持を維持しており、複数の世論調査では与党勢力が衆議院で安定多数、さらには3分の2議席の確保可能性も指摘されている。このような選挙情勢下で、憲法改正の是非が有権者の判断材料となっている。


憲法改正議論

日本国憲法は1947年に施行されて以来、一度も条文改正がなされていない。憲法改正の実現には、国会で各議院の総議員の3分の2以上の賛成による発議と国民投票における過半数の賛成が必要とされる。与党内では自民党を中心に改正の実現に向けた議論が進められてきたが、野党側の合意形成が困難なため実際の発議には高いハードルがあるとされる。

改憲論議は、戦後日本の安全保障環境の変化や災害・パンデミック時の国家機能のあり方などを背景に活性化している。安倍晋三元首相の時代から一貫して提示されてきた改憲4項目(自衛隊明記、緊急事態条項、合区解消・地方公共団体、教育充実)などが、今日までの党内論点整理の基盤となっている。


憲法改正をめぐる主な争点

憲法改正論議における主要な争点は多岐にわたるが、本論では選挙戦で特に焦点となっている以下のテーマについて検討する。


憲法9条への自衛隊明記

日本国憲法第9条は、戦争放棄(第1項)と戦力不保持・交戦権の否認(第2項)を規定している。この条文の下で、1954年に成立した自衛隊は違憲との論争が長年にわたり続いてきた。自民党は、現実の自衛隊の存在と憲法との関係を明確にするため、9条への自衛隊明記を提案している。具体的には、9条第2項を維持した上で、自衛隊を新たに「9条の2」などとして明記し、保持と統制の条項を盛り込む案が党内の条文素案として整理されている。

自衛隊明記の是非については、安全保障環境の厳しさを背景に支持がある一方で、条文の変化が平和主義の実効性や集団的自衛権の行使への解釈拡大につながる可能性を懸念する声も根強い。野党側、とりわけ立憲民主党は、現行9条を残したままの自衛隊明記案に対して、人権制約や戦争放棄の理念への影響を指摘し反対している。


緊急事態条項の創設

緊急事態条項は、戦争・大規模災害・パンデミック時における政府の権限と責務を憲法上明確化するものであり、2020年代の新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に議論が再燃している。既存の法律で対応可能な部分はあるものの、安定した国家機能維持の観点から憲法への明記を求める意見が自民党内外で根強い。

これに対して、立憲民主党などは、緊急事態条項が人権制約や政府権限の過度な集中を招く危険を懸念し、現状の法律体系の整備を優先すべきとする立場を取っている。また人権保護の観点から新条項の必要性を問うべきとの主張もある。


解散権の制限

憲法第7条に定められる内閣の衆議院解散権は、日本の政治システムにおける重要な権限である。近年、解散の恣意性が政治的な論争となっており、一部の野党は解散権行使の条件や手続きの明文化を求めている。彼らは解散による政治的混乱を避け、民主的正当性と国民意思の尊重を両立させるべきだと主張している。

与党側は、解散権は国民主権を実現する重要な手段であり、憲法上の制約を設けるべきではないとの立場を維持している。


改憲推進派

自由民主党

自由民主党は長年、日本国憲法の改正を党是とし、戦後憲法の欠点とされる安全保障・統治機構の限界を改正で克服することを主張している。2024年に公表した選挙公約でも、自衛隊明記・緊急事態対応・合区解消・教育充実の4項目を主要テーマとして掲げ、憲法改正論議の深化と国民投票実施を掲げている。

自民党内でも具体的な条文案整理が進められており、実務的な検討を行うワーキングチームによって選挙困難事態条項などの具体案の方向性が報告されている。


日本維新の会

日本維新の会は制度改革と効率的な政治運営を重視する立場から、憲法改正に前向きである。自民党と同様に自衛隊明記や緊急事態条項について積極的な議論を支持するが、党独自の視点から細部の制度設計や行政機能強化を主張している。与党の連立パートナーとして改憲議論を推進している面もあるが、解散権の取り扱いなどで自民党と異なる意見を示す場合もある。


慎重・中間派

中道改革連合(立憲+公明)

中道改革連合は、立憲民主党と公明党を中心とする中道勢力の連合であり、憲法改正については慎重姿勢を共有している。基本的人権の尊重や平和主義を重視し、改憲議論そのものを深める必要は認めるものの、具体的な条文改正については議論時間を十分確保すべきとの立場を取っている。


立憲民主党

立憲民主党は、憲法論議を進めるが改正に対しては慎重であり、特に9条や緊急事態条項の改正には反対の立場を堅持している。現行の憲法理念を尊重しつつ、国民投票の公平性を確保する必要性や国民的合意形成の重要性を強調している。具体的には、解散権制限や国会機能強化などの項目について議論を提案するが、改正による人権や民主主義への影響を懸念している。


改憲反対派

社会民主党・日本共産党

社会民主党や日本共産党など左派政党は、憲法改正に対して一貫して反対している。特に平和主義を規定する第9条の改正には強い反対姿勢を示し、憲法の平和・人権・民主主義を守るべきだと訴えている。また、緊急事態条項については政府権限の拡大を警戒する立場から反対している。


選挙の結果と改憲のゆくえ

2026年衆議院選挙の直前の世論調査では、自民党と日本維新の会を中心とする改憲推進勢力が衆議院で安定多数を確保する可能性があるとの見方が示されている。しかし、国会で憲法改正を発議するためには衆参両院で3分の2以上の賛成が必要であり、野党勢力との協調が不可欠である。現状では野党側の大きな協力は得られていないため、実際の改憲発議には依然として高いハードルが存在するとの指摘がある。


今後の展望

今後の憲法改正議論は、国会内の論争に限らず、国民的な議論の深化と実質的な合意形成が求められる。憲法改正は単なる政治的スローガンではなく、日本の安全保障・統治機構・人権保障を巡る国民的な選択である。改正推進派と慎重派・反対派との間で、具体的な条文案や解釈に関する実証的議論が必要である。

特に自衛隊明記や緊急事態条項の具体的内容については、専門家による条文案提示や比較憲法的視点からの検証が重要となる。また国民投票の公平性と情報提供の在り方についても制度的検討が不可欠である。


まとめ

2026年2月8日の衆議院選挙において、憲法改正は主要な争点の一つとして位置付けられている。自民党・維新など改憲推進派は安全保障・統治機構の近代化を訴え、9条への自衛隊明記や緊急事態条項の新設を掲げている。他方で、立憲民主党を中心とする慎重派・反対派は平和主義の堅持や人権保障への懸念を理由に改正に慎重な姿勢を取っている。選挙の結果次第で現状の勢力構成が変動する可能性はあるものの、国会発議に必要な合意形成には依然として難題が横たわっている。


参考・引用リスト

  1. Reuters「Japan PM Takaichi’s party poised for landslide victory, poll shows」

  2. Reuters「Japan PM Takaichi's party seen gaining lower house majority in election, Nikkei poll shows」

  3. 自由民主党公式サイト「政権公約2024」

  4. 自由民主党 憲法改正実現本部議論取りまとめ資料

  5. 立憲民主党 政策集2024『憲法』」

  6. TBS NEWS DIG「衆院憲法審査会での緊急事態条項・国民投票法論議」

  7. nippon.com「ポスト安倍時代における憲法改正議論」


追記:高市政権(自民・維新)は3分の2以上の議席を確保できるか

2026年2月8日投開票の衆議院選挙に向けて、複数の世論調査・情勢分析が改憲勢力(自民党・日本維新の会)が衆議院で3分の2以上の議席(310議席以上)を確保する可能性が高いことを示唆している。朝日新聞の中盤調査では、自民党単独で単独過半数を大きく上回る勢いで、日本維新の会と合わせると300議席を超える見通しが強調されている。さらに与党全体では310議席ラインに迫るか到達するという分析も報じられている。これが実現する場合、憲法改正に必要な国会発議の議席要件(衆参両院の3分の2)に近づくあるいは達成する可能性があるとして注目されている。

ただし、こうした予測には一定の不確実性が伴うという指摘も存在する。複数メディアの予測では、自民党単独の勢いは強いものの、比例区・小選挙区の票分散や候補者個別の競合、支持率の変動などにより議席数が予測よりも低くなる可能性も指摘されている。中には自民・維新連合であっても過半数ギリギリという予測を示す分析もあり、最終的な3分の2確保の見込みは断定的ではないとの評価もある。

以上を総合すると、現時点の情勢では自民・維新連合が衆議院で過半数を確保する可能性は高いが、3分の2以上の議席確保については予測に幅があり、確実とは言い難いというのが中間評価である。仮に3分の2に達した場合、憲法改正発議の要件は衆議院側でクリアされるが、参議院での勢力との関係も合議体として重要になる。


憲法改正議論が進まない理由

憲法改正議論が国政の重要課題として提起されながらも、実際に議論が前に進まない背景には複数の構造的・政治的要因がある。これらを整理する。

① 国会内の合意形成困難

憲法改正は、議会の過半数(各院3分の2以上)の賛成が不可欠であるが、自民党内ですら条文案について統一した合意形成が十分になされていない現状がある。改憲賛成派内でも自衛隊明記の範囲や緊急事態条項の具体内容について意見が分かれ、共通の条文素案すらまとまっていないという指摘もある。例えば「改正起草委員会」設置を求める声がある一方、反対派がそこに参加しないため、「入り口」にすら入れないまま議論が停滞しているという分析がある。

② 立法手続き上のハードル

憲法発議には一般の法律制定以上に高い手続的要件が課せられている。すなわち、衆参両院で3分の2以上の賛成という高いハードルに加え、国民投票での過半数賛成が必要である。国民投票の実施自体にも法律的・実務的な準備が必要であり、この準備不足が議論を先延ばしにする要因となってきたという歴史的分析もある。

③ 政治的リスクと優先課題

政治学的な分析は、日本の政党政治における課題の多くが憲法改正よりも経済・社会政策に集中していることを指摘している。国政選挙における有権者の関心事が景気・雇用・社会保障に偏重する中、憲法改正論議は「中長期的政策」として後回しにされがちである。これは政党間でも共通認識となっており、結果として議論が深化しない構造的要因となっているとの分析がある。

④ 野党の立場と戦略

野党側は憲法改正問題に対し慎重または反対の立場であるため、国会内での発議賛成勢力が十分な大きさに達していないという政治的現実がある。特に立憲民主党など主要野党が単独では憲法改正に賛成する時点での協調が成立せず、結果として議論が平行線をたどっている。一部野党は憲法論議そのものを深化させるべきとの立場を取るが、実際の条文提案段階には至っていない。


有権者の反応

憲法改正をめぐる有権者の反応は一様ではなく、多層的な構造を示している。

① 世論調査に見る支持・不支持

複数の世論調査では、憲法改正そのものに対する関心は高いものの、具体的な条文案に対する国民の明確な支持は分かれているという傾向が示されている。例えば自衛隊明記や緊急事態条項の項目ごとに支持率が変動し、全体として改正賛成が上回るケースと慎重意見が上回るケースが調査によって交錯する。これにより、政党が一枚岩で「改正を優先する」と訴えることの困難さが浮き彫りになっている。

② 無党派層の関心と懐疑

無党派層や若年層の有権者の間では、従来の安全保障論議や統治機構の改正議論に対する関心が相対的に低く、生活・経済関連政策を優先する傾向があるという分析もある。これは、憲法改正を中心政策に据える政党が有権者の広い支持を即座に得ることが難しい構造的原因となっている。

③ 世論の断片化

SNSやメディア上での意見表出が分析された研究では、政治課題に対する世論は単純な二極化ではなくテーマごとの分裂的な反応を示す。政治的立場や話題に応じて支持・不支持が大きく変わるため、憲法改正に対しても一貫した国民的合意が形成されにくい傾向が指摘されている。このような世論の断片化は、特に政策の優先順位や条文の解釈に関する議論に影響している。


追記まとめ

高市政権(自民・維新連立)は2026年衆議院選挙で議席を大幅に伸ばし、衆議院で3分の2に迫る、あるいは達成する可能性を有している。一方で、憲法改正議論そのものが進まない理由としては、国会内の合意形成の困難さ、手続的ハードルの高さ、政治的優先課題の相違、野党との連携の欠如など複数の構造的要素がある。有権者の反応も単純な支持・不支持の二分ではなく、関心の分散とテーマごとの反応の多様性が見られるため、憲法改正議論を国民的合意へ導くには依然として高い壁が存在する。

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