コラム:中国の不動産不況2026、低迷続く
市場指標は依然として弱含みであり、内需・投資・価格にわたる低迷が継続する見込みである。
.jpg)
2026年初頭において、中国の不動産市場は依然として低迷し、景気全体の重荷となっている。中国国家統計局や国際的な金融機関のデータによると、近年続く住宅販売の低迷、不動産投資の縮小、価格の下落が2026年に入っても改善が限定的であり、内需回復の鍵となる不動産セクターの回復が遅れている。中国経済全体は輸出や政府支出に支えられ一定の成長を維持しているが、不動産関連の指標は依然として弱い状態だ。
中国の不動産市場
中国の不動産市場は過去数十年で経済成長の中心的役割を果たしてきた。住居および商業不動産取引は雇用、建設業、地方政府歳入に直接的な影響を与え、市場の活性化は経済全体の成長機会と見なされてきた。しかし、2020年以降の金融規制強化、デベロッパーの過剰債務抑制政策、および人口動態の変化により、不動産市場は構造的な調整を迫られている。
主な状況と見通し
中国の不動産市場は「調整局面」に入っており、在庫処理が進む段階にあるとの見方が強い。2026年以降も販売面積や投資額の減少は続く見込みだが、在庫の縮小や期待回復が見られれば、長期的には安定化に向かう可能性も指摘されている。一方で需要不足、人口減少などの構造的なマイナス要因は引き続き市場に重しとして残る。
市場指標の継続的な悪化
多くの主要指標が悪化したままである。2025年の不動産投資および販売面積は前年に比べて大幅に減少し、その傾向は2026年にも続くとの予測がある。中国不動産市場最大の独立系調査機関であるChina Index Academy(CIA)の予測では、2026年の新築住宅販売面積は前年比約6.2%減少、不動産投資は約11%減少すると見込まれている。また、2025年の実際の不動産投資・販売面積も大きく低下した。
販売と投資の減少
2025年の新築住宅販売面積の減少は12.9%前後、不動産投資も二桁台の減少となる非常に弱い状況だった。販売面積の減少と合わせて土地取得・開発投資も極端に低迷し、不動産セクター全体の収益性が損なわれている。弱い所得見通しや失業懸念、高在庫が購買意欲を抑制し、小都市を中心に市場細分化が進行している。
価格の下落
住宅価格は主要都市でも継続して下落している。多くの都市で価格が前年割れとなっており、70都市指数でもマイナスの下落が観察されている。格差は都市階層間で顕著であり、一部の大都市圏では底堅い動きが見られるものの、中小都市では下落圧力がより強い。UBSインベストメント・バンクの分析では、2026年の住宅価格は5〜10%下落し、2027年も低迷が続くと予想されている。
格差の拡大
価格下落の進行と市場の分断は格差を拡大させている。大都市圏では人口集中と雇用機会により価格下落が比較的軽微である一方、人口流出が続く地方都市では供給過剰と経済基盤の弱さから価格下落が深刻化している。この格差は不動産投資の回復を困難にしている。
構造的な要因
中国の不動産低迷は、一時的な景気後退ではなく構造的な要因による側面が強い。代表的なものとして、人口減少・高齢化による住宅需要の低下、所得成長の鈍化、投機需要の減少、不動産ローン条件の引き締めが挙げられる。これらは政策支援が行われても短期間で解決しにくい長期要因である。
需要の減退
人口減少や都市化の鈍化は長期的な住宅需要低迷をもたらしている。若年人口の減少により新規住宅需要の伸びが限定的となり、中古住宅市場も在庫過多の状況が続く。こうした需要構造の変化は、住宅市場の再活性化を困難にしている。
デベロッパーの苦境
恒大集団をはじめとする大手デベロッパーは債務負担に苦しんでいる。複数の企業がデフォルトや資金繰り悪化のリスクに直面しており、プロジェクトの中断や再編が相次いでいる。このような金融面・信用面での脆弱性は、不動産市場全体への信頼低下を引き起こしている。
経済全体への影響
不動産市場の低迷は中国経済全体に波及している。建設・素材・金融など多くの産業が不動産セクターと密接に関連しており、その停滞はGDP成長率を押し下げる要因となる。不動産投資の低迷は固定資産投資全体を減速させており、内需の弱さが顕在化している。
GDP成長の重荷
2025年のGDPは5%成長を維持したものの、内需指標は弱含んだ。2026年の成長率予想は4.8%前後と上昇余地に乏しく、不動産セクターの弱体化が成長率を下押しする要因となる可能性が指摘されている。慎重な景気刺激策の実施が検討されるが、効果は限定的となる見込みである。
金融リスク
不動産市場の弱さは金融セクターにもリスクをもたらしている。貸出残高の伸び悩み、住宅ローン需要の低下、債務不履行リスクの増加は金融機関の収益性を圧迫する。信用供給が滞ることは経済全体の資金循環にも悪影響を与える可能性がある。
政府の対応
中国政府は不動産市場の安定化に向けて複数の政策対応を講じている。住宅ローン金利の引き下げ、頭金比率緩和、未完成住宅プロジェクトへの支援拡大、地方政府による支援リスト運用などが実施されている。しかしながら、根本的な市場回復には至っていない。
追加支援策の検討
政策当局は追加的な景気刺激策を段階的に実施する方向で調整中とされるが、大規模な財政支出や金融緩和は慎重な姿勢が見られる。より恒久的な需要喚起策として、中古住宅市場活性化、住宅供給構造の調整、人口政策の見直しなどの構造政策が検討される可能性がある。
2026年の予測
2026年においても不動産市場の低迷は継続すると予想される。販売面積・投資の減少、価格下落というトレンドは続き、中期的な回復には時間を要する見通しである。一方で、在庫処理の進展や施策効果により、底打ち感の兆しが出る可能性も指摘されている。
今後の展望
中国不動産市場の今後は、需給バランスの回復、人口統計の改善、金融政策・財政政策の方向性に依存する。短期的には価格安定化支援策が求められる一方、長期的には経済構造の転換と持続可能な都市化政策の構築が不可欠である。
まとめ
本稿では、中国不動産不況の現状、背景、影響、政策対応、今後の展望について整理した。市場指標は依然として弱含みであり、内需・投資・価格にわたる低迷が継続する見込みである。構造的な要因を抱える中国不動産市場の回復は短期的には困難であり、多角的な政策対応が引き続き求められている。
参考・引用リスト
Reuters: China December new home prices fall again; annual decline (2026/01)
Reuters: China 2025 new bank loans lowest in seven years (2026/01)
Reuters: China GDP grows 5% in 2025 (2026/01)
Reuters: China GDP 26-year growth forecast ~4.8% (2026/01)
China Index Academy forecast: new real estate sold -6.2% and investments -11% (2026 forecast)
Reuters poll / Fitch commentary on real estate investment shrink -11.0% forecast
UBS forecast on housing price decline 5-10% in 2026
大和総研・調査資料(不動産不況経緯)
NNA ASIA記事(不動産市場在庫処理観点)
IMF解説(不動産依存とリスク)
IR Universe: 不動産開発投資減少動向(2025)
追記:不動産不況と地方政府の債務問題の関係
中国の不動産不況と地方政府の債務問題は深く結びついている。地方政府は長年にわたり不動産関連の収益に依存してきた。特に土地使用権の売却収入は、地方政府予算にとって主要な財源であり、インフラ整備や社会サービスの財源として活用されてきた。しかし、不動産市場の低迷に伴い、土地売却収入が減少したことで、地方政府の財政基盤は重大な圧力にさらされている。この収入減少は、地方政府融資平台(Local Government Financing Vehicles:LGFV)の負債残高を増大させ、財政リスクとして表面化している。LGFVは、インフラ投資や開発融資のために地方政府が設立した特別目的法人であり、銀行や信託会社からの借入れを通じて資金調達している。しかし、土地売却収入の減少による返済能力低下でLGFVの信用リスクが高まり、地方政府の債務問題が顕在化している。
実際、政府は「隠れ債務」と呼ばれるLGFV債務の一部を地方政府債務に切り替える措置を進めており、2024〜2028年にかけて約10兆元規模の債務処理を行う計画が進行中である。このような債務再編は、地方政府の直接的な債務負担を増加させると同時に、財政余力をさらに圧迫しうる構造となっている。こうした流れは、不動産市場低迷による負のスパイラルが地方財政リスクを高める典型的な例であり、地方政府の信用力と公共サービス提供能力に対する懸念を強めている。
政府による在庫買い取り策の進捗状況
中国政府は不動産市場の重荷となっている売れ残り住宅(在庫)の買い取り策を政策選択肢の一つとして検討してきた。具体的には、中央政府が地方政府に対して数百万戸規模の売れ残り住宅の買い取りを促す案が報じられている。この政策は、不動産在庫の「デッドウェイト」を減らし、開発会社の資金繰り改善と住宅市場の需給バランス修正を狙ったものである。しかし、実際の進捗は地域ごとにばらつきがあり、全国的な導入・実行には至っていない。また、財源や評価方法、買い取り後の処理方針など複数の運用上の課題も存在している。中央政府は地方政府に対して買い取り政策の実施を促す一方で、財政面の支援や融資条件の緩和を通じた環境整備も同時に進めているものの、これらが大規模な効果を発揮するかは依然として不透明である。政策が本格稼働するには、地方政府の財政力や実施能力の向上、買い取り後の活用計画の明確化といった条件整備が必要である。
大手企業の破綻が中国経済に与えた影響
中国の不動産市場では、大手開発会社の債務不履行・破綻が継続的に発生している。代表的な事例として、かつて中国二大デベロッパーの一角を占めた中国恒大集団(Evergrande)は過剰な借入による経営危機から清算を経て上場廃止となった。また、その後も碧桂園(Country Garden)などがデフォルトに追い込まれ、市場全体の信頼性を低下させてきた。最近では、国有資本を背景とする万科企業(Vanke)が資金繰り悪化からデフォルト寸前に陥る事例も報じられた。これら破綻・危機的状況は、開発プロジェクトの遅延・中断を生み、関連する建設業、資材メーカー、金融機関に波及した。特に銀行や影の銀行(シャドーバンキング)は、不良債権の増加と収益圧迫という形でリスクを抱え込んでいる。
大手企業の破綻は、国内外の投資家心理に悪影響を与え、株式市場や信用市場にも波紋を広げる要因となっている。住宅市場自体への需要減退を加速させ、消費者の住宅購入の慎重姿勢を強める一因ともなっている。このような大手企業の信用不安は、不動産セクターの深刻な調整局面が単なる需給変動ではなく構造的問題であることを示している。市場関係者の間では、こうした破綻の連鎖は金融システム全体の健全性に影を落とすリスクがあり、政策当局が慎重かつ包括的な対応を迫られているとの指摘がある。
以下では、2026年1月19日時点で中国国家統計局が発表した「2025年通年の実質GDP成長率5.0%」の信頼性評価と、中国経済の実態を多面的に整理した分析を示す。論点は①公式データの内容、②国内経済指標との整合性、③外部・独立系評価、④統計手法と潜在的バイアス、⑤実態と体感のギャップ、⑥総合評価という構成で述べる。
主要な中国2025年GDP成長に関する報道・分析(公式と独立見解)
1.公式発表の内容と背景
中国国家統計局は2025年通年の実質GDP成長率が前年比で5.0%だったと発表した。第1四半期から4四半期にかけて、5.4% → 5.2% → 4.8% → 4.5%という順でやや鈍化したものの、通年で政府目標の「5%前後」を達成したとしている。
この「5%成長」には不動産開発投資の大幅減少(2025年は約-17.2%)や固定資産投資全体の減少(-3.8%)といった構造的弱さが内包されているにも関わらず、工業生産や輸出の持ち直しによって数値が支えられたとされる。
2.主要経済指標との整合性
正式統計によると、2025年の成長には次のような特徴が見られる:
輸出・製造業の寄与比率が相対的に高い:輸出はグローバル需要の一部回復により成長への寄与が大きく、輸出増が外需による押し上げ要因となった。
内需が弱い:小売売上高や消費支出は伸び悩み、社会的な消費の弱さが顕著になっている。
固定資産投資の停滞:投資部門、特に不動産とインフラ投資の弱さがGDP全体の成長率を押し下げている。
このように、総合成長率5.0%の背後には極めて不均衡な成長構造がある。
3.外部機関・独立系の評価
政府統計と外部評価には差異がある:
国際機関の推計:国際通貨基金(IMF)は中国の2025年成長率を5.0%前後と見込んでいるとの見解が報じられており、公式数値と概ね一致しているという評価もある。
独立系調査の批判:一部研究機関(例:Rhodium Group)の分析では、電力消費や高頻度指標から推計すると、実質成長率は公表値を大きく下回る可能性(2~3%台)があると指摘されている。
これは、公式統計がGDP統計の計算や産業分類の更新で使用するデータや調整が、実際の活動を過大評価する可能性があるという見方に基づく。
4.統計手法と潜在的バイアス
中国のGDP統計には独自の特徴と批判点がある:
業界構成と地方報告のばらつき:GDP統計は地方政府からの報告に大きく依存するため、統計信頼性の地域差や報告インセンティブの歪みが指摘される。
生産側・支出側のズレ:生産アプローチと支出アプローチの不一致があり、特にサービス業活動や小規模企業の活動が過少評価または過大評価される可能性がある。
先行・遅行指標の衝突:消費、投資、雇用など実体経済指標が必ずしも「5%成長」を裏付けない動きを示すことがある。
こうした手法上の特性が、「公式値」と「実態感」のギャップ形成に寄与している可能性が存在する。
5.実態と体感のギャップ
多くのアナリストや経済関係者は、中国経済の「体感」と公式統計の乖離について言及している:
消費者の間では、実生活での経済活動や所得実感が成長率を反映していないとの指摘がある。特に若年層の失業率や不動産市場の低迷が消費心理に影響している。
統計指標では成長が維持されているものの、多くのセクターで活動が弱く、GDP総合値の伸びが全体の良好な実態を反映していない可能性が懸念される。
この「体感とのズレ」は、統計値が総体経済のヘッドラインを示す一方で、現場の景況感を包括的に捉え切れていないことを示唆している。
6.総合評価
公式発表された実質GDP成長率5.0%には一定の信頼性があるものの、慎重な解釈が必要である。
公式データは大枠では国際機関の推計とも一致し、経済規模の成長を示している点で評価できる。
しかし、消費・投資・不動産市場の低迷、四半期ベースの鈍化、構造的問題の存在は、単純な5.0%成長の達成とは異なる内実を示している。
統計手法や地方報告の質など、統計の裏付けを検証する必要があり、独立系指標との交差検証が重要である。
要するに「5%成長」というヘッドラインは達成されているが、成長の中身・質・構造的な均衡性については依然として疑問とリスクが存在すると評価できる。
