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コラム:子供のスマホ、どうしてる?課題と今後の展望

子供にスマホを持たせることには防犯や緊急連絡、学習・コミュニケーションなど明確な利点がある一方で、依存、有害情報、個人情報流出といったデメリットも存在する。
スマートフォンで動画を見る子供(Getty Images)

近年、児童・生徒のスマートフォン(スマホ)所持・利用は急速に広がっている。総務省や関係機関の調査でも、インターネット利用に用いる機器としてスマホの割合が極めて高く、小学生高学年から中学生・高校生にかけて子供専用端末が主流になっている。調査では、インターネット利用をする青少年のうち、スマートフォン利用率が9割近くに達するなど、スマホが子供の情報接触の主要ツールになっている実態が示されている。

別の市場調査でも、5〜17歳の子供の約半数がスマホを所有しており、12歳前後で所有率が大きく上がる傾向があることが報告されている。自治体や学校によるICT環境整備も進み、家庭でのスマホ利用は生活基盤の一部になりつつある。

子供にスマートフォンを持たせる主な理由
  1. 防犯・安全確保:子供が外出中にトラブルや迷子になった際、保護者が連絡を取れることは最重要の理由だ。

  2. 緊急時の連絡手段:災害や事故発生時に子供と連絡を取り合い、迅速に行動を指示できる利点がある。

  3. 居場所の把握:GPS等で子供の位置を把握できることで登下校や習い事の送迎管理が容易になる。

  4. 塾や習い事の連絡:習い事・塾側からの連絡(急な休講・振替連絡、振込案内等)を受け取るために必要になることがある。

  5. コミュニケーション・友人とのやり取り:友人関係の構築や情報交換は学齢期の発達にとって重要であり、SNSやメッセージアプリはその手段になっている。

  6. 家族との連絡:家族内での連絡や写真・連絡事項の共有がしやすくなる。

  7. 学習・情報収集:調べ学習やオンライン教材の利用、辞書アプリや学習アプリを通じて学習の補助が可能になる。

  8. ITリテラシーの向上:デジタル社会で必要な基礎技能(検索、情報の取捨選択、アプリ操作など)を身につけるための端末になる。

  9. 子供本人の要望・流行(「みんなが持っている」):同年代が持つことへの社会的圧力や、趣味・娯楽の共有が理由になることが多い。

以上が保護者がスマホを許可する典型的な理由であり、複合的に判断されることが多い。

防犯・安全対策

スマホを与える際の防犯・安全対策は技術的対処とルールづくりの両輪で行うべきだ。技術面ではフィルタリング(有害サイトブロック)、利用時間制限、位置情報機能や家族向け見守りアプリの導入、アプリのインストール管理(保護者承認)などが有効だ。文部科学省や関係機関は端末利用時の健康配慮や安全教育の教材を出しており、家庭と学校で共通ルールを作ることを推奨している。具体的には画面の見過ぎ防止、夜間の利用制限、SNSの公開範囲設定、個人情報(氏名・住所・通学路等)の安易な投稿禁止などである。

また、保護者側は端末の設定だけで安心せず、「使用契約(家族ルール)」を子供と書面化しておくと効果的だ。ルールに違反した場合の対応や、トラブル時の相談窓口をあらかじめ示しておくことで子供の行動をガイドできる。

緊急時の連絡手段

災害時や事故発生時、通話やSMS、メッセージアプリは最短で情報をやり取りする手段になる。携帯回線が混雑する場合に備え、テキスト中心の手段(SMSや災害用伝言板)、および家族間での集合場所や集合方法の事前協議も必要だ。スマホに事前に緊急連絡先を登録し、操作方法を教えておくことが重要だ。

居場所の把握

GPSや位置情報共有アプリで子供の居場所を把握することは登下校の安全管理に役立つ。だが常時監視は子供のプライバシーや自立性に関わるため、使い方や範囲を家族で合意しておくべきだ。位置把握は「安全確認」のためのツールであり、信頼関係を損なわない使い方が求められる。

塾や習い事の連絡

塾・習い事では欠席連絡や教材配布、振替授業の案内をスマホで行うケースが多い。送迎やスケジュール調整をスムーズにする意味で保護者にとって利便性が高い。

コミュニケーション:友人とのやり取り、家族との連絡

スマホは友人関係の維持・構築に強く関与する。メッセージやSNSを通じたやり取りは社会性の発達につながる面もあるが、一方でいじめ(オンラインいじめ)や誤情報の拡散、トラブルの温床にもなりうる。家族間では写真・動画の共有や日常連絡が効率化される。

学習・情報収集、学習ツールの活用

スマホは辞書、計算機、電子書籍、教育アプリ、オンライン授業など学習用途に多様に使える。学校の学習支援や家庭での予習復習、調べ学習の補助ツールとして機能する。学校側の1人1台端末政策やデジタル教科書の普及も、家庭のスマホやタブレットの教育利用を後押ししている。文部科学省のリーフレットでは端末利用時の健康配慮と教育活用の両立が示されている。

ITリテラシーの向上

早い段階でネットやデジタルツールに触れることは、情報検索や基礎的な操作能力、情報の批判的読み取り(フェイクの見分け方など)を身につける機会になる。だが、単に端末を与えるだけでは能力は育たないため、家庭や学校での指導(情報モラル教育)が不可欠だ。

子供の要望:「みんなが持っている」、娯楽

同年代が持っているから自分も欲しいという社会的圧力は強い。特にSNSやゲームなどの娯楽要素は子供にとって大きな魅力で、親が完全に禁止すると逆に秘密裏に使うリスクがある。ルールと説明を伴った合意形成が重要だ。

デメリット
  1. 依存・長時間利用による学習時間や睡眠の阻害。

  2. ネットいじめや有害情報への接触。

  3. 個人情報流出や詐欺被害のリスク。

  4. 比較・承認欲求の増幅による精神的影響。

  5. 過度の監視による信頼関係の悪化。

これらのデメリットは技術的対処と教育で軽減可能だが、ゼロにはできない点を保護者は受け止めるべきだ。実際に調査でも若年層の利用時間や有害情報接触、メンタルヘルスの問題が課題として挙げられている。

スマホデビューの年齢

複数の調査では、スマホ所有開始年齢は10歳〜12歳前後という報告が多い。近年のデータでは10.4歳や10.6歳といった平均値が示され、低年齢化は一定程度進んだが、下げ止まりの傾向もある。学年が上がるほど所有率は高まるという傾向が継続している。保護者はこの統計を参考にしつつ、子供の成熟度・家庭環境で判断する必要がある。

スマホがなくても生きていける?

技術的にはスマホがなくても生活は可能だが、情報アクセスや緊急連絡、学習上の便宜、コミュニティ参加という観点で不利になる場面は増えている。特に都市部や学校・塾・習い事での連絡手段がスマホ中心になっている場合、持たないことで情報の受け取りにタイムラグが生じる可能性がある。

課題
  1. 家庭内ルールの標準化と継続的な実効性の担保。

  2. 学校・自治体・事業者の連携による未成年保護(フィルタリング、年齢確認の徹底など)。

  3. デジタルデバイド(経済的理由で端末や通信環境を整えられない家庭への支援)。

  4. 子供の心理的影響(依存、承認欲求、比較文化)への支援と相談窓口の充実。

  5. プライバシーと安全のバランス(位置情報や監視の使い方)。これらは社会全体で取り組むべき構造的課題である。調査データは問題の存在を示しており、政策的な対応が必要だ。

今後の展望
  1. 教育現場でのデジタル活用が進む一方、校内使用ルールの明確化(授業中は一律オフ等)や海外で見られるような校内全面禁止の議論も注目される。

  2. 技術面では未成年向けの利用制限機能やAIを活用した有害コンテンツ検知・フィルタリングが高度化する可能性が高い。

  3. 家庭と学校が連携した情報モラル教育や心理的ケアの強化が進むと予想される。

  4. 行政や通信事業者による低廉な見守りサービス、学習支援サービスの普及で、安心・安全な利用と教育的利用の両立が図られる方向に動く可能性がある。

実務的な提言(保護者・学校向け)
  1. 所持を許可するか否かの判断基準を「年齢」だけでなく「責任感」「規範意識」「学習と生活の影響」など複数基準で決める。

  2. 家族ルールを紙に書いて合意し、定期的に見直す。例:利用時間、SNSの設定、課金のルール、写真の扱い、位置情報のルールなど。

  3. 技術的設定(フィルタリング、利用時間制限、アプリ管理、位置情報共有の範囲)を実施しつつ、なぜその設定をするのか子供と対話する。

  4. トラブルが起きたときの相談先(学校、警察、消費者ホットライン、民間相談窓口)を明示しておく。

  5. 学校・自治体のガイドラインや公的な啓発資料を活用する。文部科学省の端末利用に関する教材等は実践的である。

まとめ

子供にスマホを持たせることには防犯や緊急連絡、学習・コミュニケーションなど明確な利点がある一方で、依存、有害情報、個人情報流出といったデメリットも存在する。調査データはスマホ所持の広がりと平均的な導入年齢を示しており、現実的な対応が必要であることを裏付けている。スマホの有無は単なる所有の問題ではなく、子供の成長や家庭・学校の教育方針、技術的対策を総合的に勘案して判断すべき事項である。家庭内でのルール化、学校との連携、公的ガイドラインの活用を通じて、安心・安全な利用と子供の自立を両立させることが最も望ましい結論である。

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