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コラム:がん対策の現状、一次予防から終末期ケアまで

日本のがん対策は多面的で複雑な政策課題であり、一次予防から終末期ケアまでの一貫した体系と、地域・世代を超えた公平な実施が求められる。
乳がんのイメージ(Getty Images)

日本では「がん」が長年にわたり主要な死因の一つであり、人口動態統計やがん登録データに基づく推計では、依然として年間のがん死亡者数は高水準にある。例えば2024年の人口動態統計の概数によると、がんによる死亡は約38万人で、全死亡の約24%を占めるという報告がある。部位別では男性は肺がん、女性は大腸がんや乳がん、子宮頸がんなどが主要な関心事になっている。罹患数は医療技術や検診普及の影響で変化しており、年齢構成の高齢化の影響も大きい。がんの5年生存率は治療進歩により向上しているが、部位や進行度によって差が大きく、早期発見・治療の重要性が強く指摘されている。これらの統計的事実は国立がん研究センターなどのがん情報サービスや公的統計でまとめられている。

がん対策の主な柱

がん対策は大きく分けて「がん予防」「がん検診・早期発見」「がん医療の質の向上と均てん化(治療とケア)」「研究開発の推進」「緩和ケア・終末期ケアの充実」「相談支援・情報提供」「社会的支援と共生」の複数の柱から成る。これらは相互に関連しており、一次予防による発症抑制、二次予防による早期発見、三次予防による生活の質(QOL)維持・再発予防が統合された一連の流れを形成する。政府や自治体、診療拠点病院、保健所、非営利団体、研究機関がそれぞれ役割を担い、地域特性を踏まえた連携が必要である。国内の政策文書もこれらを3本柱・複数分野で整理している。

がん予防と普及啓発

がん予防は生活習慣の改善(禁煙、節酒、食事、運動、適正体重維持)や感染症対策(肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス=HPV)などを通じて一次予防を図る取り組みである。普及啓発活動は、一般市民ががんリスクを理解し、生活習慣を見直す動機付けを高めることを目的とする。専門家の疫学データは、喫煙が肺がんをはじめ多くのがん部位の主要なリスク因子であり、禁煙対策がもっとも費用対効果の高いがん予防策であることを示している。また、HBV/HCVの対策やHPVワクチン接種の普及は肝がん・子宮頸がんの抑制に直結する。自治体や職域での健康教育、医療機関での啓発、マスメディアを用いたキャンペーン等が効果的である。

がん検診と早期発見

がん検診は早期発見と早期治療につながる重要な二次予防である。日本では胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなどが主要検診の対象になっており、国の推奨する「対策型がん検診」として体系化されている。近年の受診者数の推移を見ると、全体の受診者数に増減があり、部位別にばらつきがある。例えば近年は大腸がん検診や乳がん・子宮頸がんの受診者数が増加傾向にある一方、胃がん検診が減少する年度も見られる。検診受診率の地域差や年齢層差があり、均てん化・アクセス向上が課題になっている。検診の質(適切な検査法、追跡や精密検査への導線)を確保することが、検診の効果を高める要点である。

がん医療の質の向上と均てん化

がん治療は手術、放射線、薬物療法(分子標的薬、免疫療法など)、支持療法、リハビリテーションなど多面的な医療を必要とする。医療の質向上には診療ガイドラインの整備、診療連携拠点病院のネットワーク化、がん登録によるデータ解析とアウトカム評価、専門医・看護師・多職種チームの育成が重要になる。地域間で治療成績やアクセスに差が出ないようにすること(均てん化)には、遠隔診療や紹介・逆紹介のルール化、地域がん診療連携拠点病院の支援が有効である。生存率改善には標準化された診療と臨床試験への参加促進が貢献する。

研究開発の推進

基礎研究から臨床応用、トランスレーショナルリサーチ、薬剤・医療機器の開発まで、がん研究は多段階での支援が必要である。がんゲノム医療の進展により、個々の患者の腫瘍遺伝子情報を診療に活かす取り組みが進んでいる。国や研究機関は創薬支援、バイオマーカー探索、免疫療法の基盤研究、生活習慣と発がんの疫学研究などを推進しており、研究成果の臨床実装を加速する仕組みづくりが重要になる。研究開発の推進は新規治療の社会実装と費用対効果評価を伴う。

緩和ケアの充実

がんと診断された時点から緩和ケアを開始することが推奨されており、症状緩和のみならず心理社会的支援や意思決定支援を含む包括的ケアが重要である。現状では緩和ケアに関わる人材や体制が十分ではない地域が多く、専門家チームや緩和ケア病棟の不足、在宅緩和ケアの担い手不足が指摘されている。医療提供体制の整備、専門研修、在宅医療との連携、緩和ケアの早期導入を促す制度的支援が必要である。意識調査や厚生労働省の報告は、終末期医療・ケアに関する国民および医療者の意識や準備の重要性を示している。

相談支援と情報提供

がん患者や家族が適切な医療・社会資源にアクセスできるように、相談支援(医療相談、生活支援、就労支援、心理支援)と情報提供は不可欠である。がん相談支援センターや地域のワンストップ窓口、オンライン情報プラットフォームが整備されつつあるが、情報の質・信頼性、アクセスのしやすさ、言語・文化的配慮は継続的に改善する必要がある。患者主体の意思決定支援(インフォームド・コンセントやアドバンス・ケア・プランニング)の普及も重要である。

社会との共生

がん患者や生存者が差別や偏見なく社会で生活・労働・学び続けられる社会づくりが求められる。就労支援、通院と仕事の両立を支える制度、教育現場での支援、経済的負担を軽減する社会保障の整備、患者・家族の精神的負担軽減策などが含まれる。がんとの共生は医療だけでなく行政、企業、地域社会、教育機関、福祉が連携して取り組む課題である。基本的な方針は政府のがん対策推進基本計画にも明記されている。

がん対策推進基本計画

政府はがん対策を総合的に推進するため、定期的に「がん対策推進基本計画」を更新している。最新の基本計画では「誰一人取り残さないがん対策」を全体目標に掲げ、がん予防・がん医療・がんとの共生の三分野を重点に据え、科学的根拠に基づく介入、地域や世代を横断した施策、患者中心の医療・支援の実現、研究基盤の強化を明確にしている。計画は複数年単位での実行計画と連動し、目標指標の設定や進捗管理が行われる。

効果的な予防策(詳細)

以下に一次予防として有効性が高いとされる具体策を列挙し、根拠や実施上のポイントを述べる。

禁煙

喫煙は肺がんだけでなく口腔・咽頭・食道・膵臓・膀胱など多くのがんと関連する主要なリスク因子である。禁煙対策としては税制措置(タバコ税)、受動喫煙防止(屋内禁煙・公共空間での規制)、禁煙支援(保健指導、薬物療法、行動療法)、若年層への教育が効果的である。職場や医療機関での包括的禁煙支援プログラムが推奨される。

適度な飲酒(節酒)

エタノールは一部のがん(食道、肝臓、乳房、大腸など)に関連している。飲酒量を減らすことがリスク低減につながる。公衆衛生上の指針や啓発、アルコール依存の早期支援が重要である。

バランスの取れた食生活

野菜・果物の摂取、食塩の過剰摂取回避、加工肉や赤肉の摂取制限、適切なエネルギー量の維持はがんリスクに影響する。栄養教育、食環境の整備(学校給食、職場食堂の改善)、食品指導が予防に寄与する。

運動習慣

定期的な身体活動は大腸がんや乳がんなどのリスク低減と関連している。日常生活での活動量増加、運動プログラムの普及、都市設計(歩きやすいまちづくり)が継続的な行動変容を促す。

適正体重の維持

肥満は複数のがんリスク(乳がん(閉経後)、大腸がん、子宮体がん、膵がんなど)を高める。体重管理のための栄養・運動支援は重要である。

感染症対策

HBV/HCVのスクリーニングと治療、HPVワクチン接種は肝がんや子宮頸がんの発生を抑制する。ワクチン接種率向上や検査・治療アクセスの確保が鍵である。

定期的ながん検診の受診

定期検診は年齢・性別・既往症に応じた適切な検査を受けることで早期発見率を上げ、治療成績の改善につながる。検診制度の利用促進には、受診しやすい日時設定、職場検診や地域巡回、費用負担の軽減、啓発・受診勧奨の強化が不可欠である。検診後の精密検査へのスムーズな導線(フォローアップ)を整備することも重要である。

実務面での課題と対策

現場レベルでは地域格差、医療資源の偏在、緩和ケア人材の不足、検診受診率向上の難しさ、臨床試験参加者の確保、データ連携やがん登録の質向上など多様な課題がある。これらには以下のような対策が考えられる。

  • 地域連携強化と遠隔医療の導入でアクセス改善を図る。

  • 看護師・専門医育成プログラムや緩和ケア人材育成の拡充を行う。

  • 検診の質管理、データベース連携、がん登録の全国的整備でアウトカム評価を行う。

  • 患者の経済的負担軽減や就労支援を通じた社会参加促進を制度的に支える。

専門家データの活用

がん対策はエビデンスに基づく政策実施が重要であり、疫学データ(罹患率、死亡率、年齢調整率、部位別統計)、臨床アウトカム(5年生存率、治療成績)、公衆衛生データ(検診受診率、ワクチン接種率)を定期的に収集・分析することが不可欠である。国立がん研究センターや厚生労働省、学会・専門団体の報告書、学術論文を基盤に施策評価と改善を行う必要がある。

今後の展望

今後のがん対策は、個別化医療(プレシジョンメディシン)がさらに進展し、がんゲノム情報を用いた最適治療選択が広がることが期待される。同時に、公衆衛生的な観点では一次予防と検診の充実、社会資源を活用した在宅ケア・緩和ケアの強化、地域包括的な支援体制の整備が重要である。デジタル技術やAIを用いた診断支援、遠隔モニタリング、データ連携プラットフォームの整備が医療の質向上と均てん化に貢献する可能性がある。研究と臨床の連携、費用対効果に基づく導入判断、患者・市民参加の強化が今後の鍵になる。

まとめ

日本のがん対策は多面的で複雑な政策課題であり、一次予防から終末期ケアまでの一貫した体系と、地域・世代を超えた公平な実施が求められる。政府の基本計画や専門機関の統計・勧告を基に、禁煙や節酒、食生活・運動習慣の改善、感染症対策、定期検診受診の推進、医療体制の整備、緩和ケア・相談支援の強化を同時に進めることが、がんによる負担軽減に直結する。今後は個別化医療やデジタル化を活用しつつ、誰一人取り残さないがん対策の実現を目指すべきである。


参考文献・主要出典(本文で参照した公的資料・報告)

  • 国立がん研究センター がん情報サービス(統計・疫学データ)。

  • 厚生労働省「がん対策推進基本計画」(最新版)。

  • がん検診受診率に関する国立がん研究センターの集計ページ。

  • 公益財団法人日本対がん協会 等の統計まとめ(2024年死亡統計等の解説)。

  • 厚生労働省による緩和ケアや終末期医療に関する調査報告。


1) 部位別の最新罹患・死亡数(概要・要点)

(注:罹患は「推計(最新は2024年推計)」、死亡は「実測(最新は2023年の人口動態統計)」を用いている。数値は国立がん研究センター発表の最新統計に基づく。)

総数(推計/実測)

  • 2024年のがん罹患(推計)は約979,300件(男性558,300件、女性421,000件)である。

  • 2023年のがん死亡者数は382,504人である(男性221,360人、女性161,144人)。

部位別(上位)の構成(2024年罹患推計に基づく割合と推定件数)

国立がん研究センターの要約は男女別の上位部位とそれぞれの比率を示している。以下は比率と、推計総数に対する単純計算による推定件数(四捨五入)である。

  • 男性(総558,300件、上位割合)

    • 前立腺:16% → 約89,328件。

    • 結腸・直腸(大腸):15% → 約83,745件。

    • 肺:15% → 約83,745件。

    • 胃:14% → 約78,162件。

    • 肝:4% → 約22,332件。

  • 女性(総421,000件、上位割合)

    • 乳房:22% → 約92,620件。

    • 結腸・直腸(大腸):16% → 約67,360件。

    • 肺:10% → 約42,100件。

    • 胃:9% → 約37,890件。

    • 子宮(子宮体部・頸部を含む区分で表示されることがある):7%(子宮単独の比率) → 約29,470件。

死亡数の主要部位(2023年の傾向)

  • 2023年の死亡では、肺がんは男女合計で上位にあり、部位別の死亡数上位は一般に「肺」「大腸」「胃」「膵」「肝」などが並ぶ(年度により順位や比率に小幅の変動がある)。詳細な部位別死亡数は年次報告に掲載されている。

解説・インプリケーション
罹患数では前立腺(男性)や乳がん(女性)の割合が高く、死亡で比重が大きいのは肺がんなど予後不良の部位である。罹患-死亡バランスは部位ごとで大きく異なるため、対策(検診・予防・診療の重点化)は部位特性に応じて設計する必要がある。


2) 年齢階級別の罹患率(概観・傾向)

(出典:国立がん研究センターの年齢階級別罹患データ/罹患率表)

全体傾向

  • がんの罹患率は年齢と強く関連し、若年層(概ね40歳未満)ではがん発生は相対的に少ないが、中年以降に急増する。特に65歳以上で罹患数・罹患率が顕著に高くなる。年齢調整罹患率や粗罹患率は年齢階級ごとに大きく差がある。

年齢階級別の特徴(代表的観点)

  • 0–19歳、20–39歳:小児・AYA世代のがんが含まれ、部位としてはリンパ系・白血病・骨肉腫・妊娠関連の特殊がんなどの比率が相対的に高い。全体に占める割合は小さいが、診療体制は小児・AYA専門の配慮が必要である。

  • 40–64歳:乳がん・大腸がん・子宮頸がんなどの罹患が増える年代で、検診(40歳台からの検診推奨)が効果を発揮しうる世代である。

  • 65歳以上:前立腺がん・肺がん・胃がんなど高齢者でのがんが多数を占める。高齢化社会ではこの年齢帯の罹患数増加ががん総数増の主要因である。

数値表を使った詳細(必要時の対応)

  • 国立がん研究センターは「部位別年齢階級別がん罹患率(2019年または2020年)」等の細かいテーブルを公開しており、年齢階級(例:0–19、20–39、40–49、50–59、60–69、70–79、80+ 等)の各罹患数・粗罹患率・年齢調整罹患率が取得可能である。

解説・実務的含意
年齢別の発生パターンは検診対象年齢設定や予防介入(たとえば40歳台の乳がん検診推奨、若年層のHPVワクチン接種促進、高齢者に対する包括的ケア整備)に直結する。年齢構成の変化(高齢化)が罹患数の増加要因である点を重視すべきである。


3) 都道府県別の検診受診率(概要・データ入手先・傾向)

(注:ここで示すのは「国民生活基礎調査による推計受診率(2007〜2022など)」と「市区町村が行う住民検診の実施状況(2015〜2023年度)」の双方の公表データである。国立がん研究センターが都道府県別に整形したExcelファイルを公開している。)

要点・入手先

  • 国立がん研究センターは「がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)」として都道府県別の受診率(2007・2010・2013・2016・2019・2022年など)を公開している。該当Excelは同サイトのダウンロードページから取得できる(ファイル名例:Pref_Cancer_Screening_Rate(2007_2022).xlsx)。

  • また、住民検診の実施状況(市区町村が行う検診の受診者数等)は厚生労働省の地域保健・健康増進事業報告にまとめられており、国立がん研究センターは「全国がん検診実施状況データブック」等で都道府県別指標を整理している。

全国的傾向(2022データの要旨)

  • 国(目標)としては「がん対策推進基本計画(第4期)」で各種検診受診率60%以上を目標とする個別数値が掲げられているが、実際の受診率は部位や地域、年代で大きく差がある。全体では目標を下回る都道府県が多いのが実情である。

  • 検診種別ごとに受診率のばらつきがあり、たとえば乳がん検診・子宮頸がん検診の受診率や大腸がん検診の受診率は都道府県によって差が大きい。地域差は検診制度(市区町村実施 vs 事業所検診の割合)、受診勧奨の仕組み、医療資源・アクセス、人口構造や住民の健康リテラシーに影響される。

結論
都道府県別データは公表されており(国立がん研究センターのダウンロードExcel参照)、地域間格差の存在が明瞭である。政策的には受診率向上のための地域別ターゲット施策(職場検診活用、巡回検診、費用助成、広報強化など)が求められる。


4) 緩和ケア人材数と必要推定(現状と課題)

(出典:日本緩和医療学会、日本ホスピス緩和ケア協会、厚生労働省の医療施設調査・白書、関連論文)

現状(登録専門医・チーム・病棟の件数)

  • 日本緩和医療学会の資料によると、専門医(緩和ケア専門医)は公表値で2023年4月時点で約335名であるという報告がある(学会の専門医数は増加傾向にあるが、専門家側の要請数に対して不足傾向が続く)。

  • 緩和ケア病棟(PCU)の数や緩和ケアチームの設備は増加してきているが、全国に散在しており地域偏在が存在する。例えば緩和ケア病棟は数百施設(400〜460程度のレンジという報告がある)で、緩和ケア病棟入院料の届出をした施設・病床数の年次推移は公益団体などで公表されている。

  • 2023年の医療施設(病院)調査では、一般病院の多数で「緩和ケアチーム(正式)」を持たない施設が依然として多く、全体の約80%超の病院に緩和ケアチームがない旨の集計が示されている(施設調査の集計参照)

必要推定(指標や定性的な評価)

  • 厚生労働省や関連学会のガイドラインには「緩和ケア病棟・在宅で一定の看取り実績がある施設には常勤の専任医師が必要」などの記載があり、1病棟当たりの必要スタッフ構成(常勤医、専任看護師、理学療法士や薬剤師等の多職種)に関する基準や推奨が示されている。これら基準に照らすと、現在の専門医・専門看護師等の配置は全国需要を満たすには不足しているとの指摘が多い。

  • 学術論文やレビューは、専門家(スペシャリスト)と一般臨床医(ジェネラリスト)の役割分担を含めた人材育成と、専門家が不在の地域で質の高い緩和ケアを提供するための「オンライン共診」「テレ緩和ケア」「ジェネラリスト支援の教育」等を必要とする旨を示している。地域偏在の是正と在宅緩和ケア支援の強化が重要である。

目安(定量的必要推定の試算例・考え方)

  • 定量的な「必要人材数」は、(1)緩和ケアを必要とするがん患者数の推計、(2)1人当たりの年間平均ケア時間(入院・外来・在宅含む)、(3)1名の専門家(医師・看護師)が対応可能な患者数・勤務負荷、(4)拠点・地域カバレッジ基準、を用いて算定する。政府・学会の公開資料でこの種の試算が明示されていることは少ないため、具体的な数値を示すには前記パラメータを明示してモデル化する必要がある。国の医療・介護白書や地域保健報告、がん登録の死亡位置データを組み合わせれば、地域ごとの必要推定は算出可能である。

結論

  • 緩和ケア専門医の絶対数は数百名レベルであり、全国のがん死亡者数・緩和ニーズを考慮すると不足が強く指摘されている。

  • 必要推定を精密に示すためには「地域別・病棟/在宅別のケア需要」「1人当たりの稼働能力」「多職種の協働モデル」を明示した上で試算を行う必要がある。既知の対策としては専門家育成の強化、テレメディシン/オンライン共診、ジェネラリスト支援教育、在宅ケア基盤の整備である。


参考データ・出典(主要)

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「CANCER STATISTICS IN JAPAN 2024/2025」および「最新がん統計」ページ(罹患推計・部位別比率・年齢階級別資料等)。

  2. 国立がん研究センター がん検診データダウンロード(Pref_Cancer_Screening_Rate(2007_2022).xlsx 等:都道府県別受診率データ)。

  3. 厚生労働省 地域保健・健康増進事業報告の概況(がん検診受診者数等の実数)。

  4. 日本緩和医療学会関連資料(専門医数などの学会発表資料)。

  5. 厚生労働省「医療施設(静態・動態)調査」や白書等(緩和ケアチームの有無、病院側の体制に関する集計)。

  6. 学術論文・レビュー(緩和ケアの地域偏在・提供モデル等)。

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