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コラム:人類は火星に居住拠点を築けるか

人類が火星に恒久的な居住拠点を築くことは、現在の科学技術ロードマップと国際的な政治・経済的意思が整えば実現可能だ。
火星のイメージ(Getty Images)
現状(2025年12月時点)

2025年末時点で、無人探査・技術実証は着実に進展している。火星表面での放射線測定はNASAのCuriosity(RAD)によって表面での平均線量が約0.6–0.7 mSv/日であると報告されており、これは年間ベースで約200–300 mSv/年に相当する。航行期間中の宇宙船内での被曝はさらに高く、往復を含む有人ミッション設計では放射線被曝対策が重要な制約要因である。
大気は薄く(表面圧力は約6 mbar程度)、主にCO₂(約95%)で構成され、気温は赤道付近の日中で0℃近傍になることもある一方、極域や夜間では−100℃超の極低温に達する。これにより人間活動と居住モジュールの設計は地球とは大きく異なる。
資源利用面では、パーサヴィアランス(Perseverance)上のMOXIEが火星大気から酸素を生成する技術実証に成功し、ISRU(現地資源利用)の可能性を示した。MOXIE実験は短時間で数グラム程度の酸素生成を繰り返し、スケールアップの道筋を与えている。
また、リモートセンシングや地表掘削の研究から、極域や中緯度の地下に相当量の水氷が存在することが示されている。最近の学術研究では氷床や凍結地下水の体積・分布に関する定量的推定が更新されており、将来の水資源確保の基礎になりうる。
地球上での政策・資金面では、NASAのアルテミス計画など月面での「生きる技術」開発が火星有人計画の技術的準備や国際協力の枠組みとして位置づけられている。だが有人火星計画の総費用は大きく、過去の評価では数百億〜数千億ドルに上る見積もりが示されている。

人類は火星に居住拠点を築けるか(総論)

結論を先に述べると、「技術的には可能性が高いが、実現には多くの未解決課題と巨額の資源投入が必要であり、短期的(十年単位)には限定的な、長期的(数十年〜世代)には恒久的/自給的な居住拠点が理論的に実現可能である」という評価になる。理由は以下の通りだ。無人での探査・技術実証(ISRU、放射線測定、環境観測)は既に成功例や有望な研究があり、これらを拡大・組合せすることで基礎要素は揃いつつある。一方で、放射線・低温・薄い大気・物資輸送・生理的影響・経済負担といった複合的な壁が残るため、実用的な「持続可能で安全な」居住地を作るにはさらなる研究・開発・運用の最適化が必須である。

目的と現状

火星居住の目的は多様である。科学(地球外生命の痕跡、地質学研究)、技術(ISRU・長期有人運用のノウハウ獲得)、経済(資源採掘や新産業)、人類の長期的生存戦略(種の分散)などだ。現状では無人探査が優先され、人間を送る段階ではまず短期滞在型の有人ミッションが先行し、その後回復可能な供給チェーンと現地生産(食料・酸素・推進剤など)を確立して段階的に滞在期間を延ばす設計が現実的である。MOXIEの成功は酸素(と推進剤酸化剤)を現地で作る道筋を示したが、量産レベル・長期運用・電源確保の課題は残る。

課題(概観)

主要課題は以下に集約できる。

  1. 過酷な自然環境(真空・薄い大気・極端温度)

  2. 致命的な放射線レベルと宇宙線(GCR・太陽粒子)

  3. 水・食料の現地調達(ISRUと農業)

  4. 長距離輸送とそのコスト/補給依存性

  5. 生命維持システム(LSS)の信頼性と冗長性

  6. 重力に関連する生理影響(0.38gの未知領域)

  7. 建設・素材・インフラ(居住モジュール、発電、通信)

  8. 社会・経済的持続可能性と心理的問題(孤立・閉所・モラル)

以下、主要項目を個別に詳述する。

過酷な自然環境

火星表面は地球大気の1%以下の圧力(約6 mbar)であり、宇宙服・居住モジュールは地球並みの圧力を内部に保持する必要がある。昼夜での温度変動が非常に大きく、材質や断熱・熱制御システムの設計負荷が高い。薄い大気はマイクロ隕石や塵嵐(global dust storms)を通して表面機器を摩耗・埋没させるリスクがある。これらは機械的・熱的・運用上の複合的負担を増やす。

致命的な放射線レベル、宇宙線

火星は地球のような強い磁気圏を持たないため、銀河宇宙線(GCR)と太陽起源の粒子線(SPE)に対する防護が十分でない。RAD観測に基づくと表面での平均的な被曝は約0.6–0.7 mSv/日、航行中はこれより高い値になることが観測されている。長期滞在と往復移動を合わせると被曝総量は職業的許容値や発がんリスク評価の観点で重大な問題になるため、シェルター、遮蔽材、運用(太陽嵐時の避難)等の多層防御が必須である。

極端な低温と薄すぎる大気、真空と微小隕石

上述の通り温度差と低圧は機器の稼働温度帯や電池・流体の管理に制約を与える。加えて微小隕石(マイクロメテオロイド)は長期間の露出で被覆材を損傷し、空気漏れや電気系の故障を引き起こす可能性がある。これに対する設計冗長性と保守能力を現地で確保することが重要である。

水と食料の現地調達(ISRU)

水は居住・飲料・農業・燃料生産(酸素と結合する場合)で不可欠であり、地下氷や凍結層からの掘削・融解・浄化システムが必須になる。観測では地下氷は存在すると示唆されており、これが大規模に利用可能なら居住地の自給率を大きく改善する。酸素・燃料についてはMOXIE実証のようにCO₂から酸素を作る術があるが、これを居住規模にスケールするには電力・耐久性の向上が必要だ。

長距離輸送と精神的ストレス

地球—火星間の移動は軌道配置に依存し、最短でも数か月(片道約6–9か月)が必要である。往復と滞在を含めると宇宙旅行期間は長く、閉鎖空間での心理的ストレス(孤立・閉塞感・対人摩擦)が深刻化する。通信遅延(最大で約22分往復遅延)も相互作用や遠隔支援の難易度を上げる。これらは乗組員選抜、訓練、心理サポート体制、運用設計に反映させる必要がある。

技術的・インフラの課題

居住モジュール、発電(太陽光・原子力)、熱制御、廃棄物処理、空気再生、農業設備、通信リレー等を現地に設置する必要がある。特に電力はISRU・生活用・通信の基盤であり、砂嵐時でも稼働する設計(原子炉や充電池の組合せ)が有力な候補である。建設には地上発注・自律型建設ロボット・3Dプリンティングといった技術が重要で、材料は現地材料(レゴリス、氷)を活用する方が打上げコストを削減できる。

生命維持システム(LSS)

空気再生(CO₂除去・酸素供給)、水再生、廃棄物循環、温湿度管理を高い信頼性で維持することが必要である。ISSのLSSは閉鎖系の先端例だが、火星環境は補給の制約が大きく、システムの冗長性・修復性・現地補修資材の調達がより重要になる。

重力の影響

火星の表面重力は地球の約0.38gであり、これが長期に人体に与える影響は不確定である。微小重力(0g)での骨・筋の喪失や循環系の問題は明らかだが、部分重力下での生理的応答(骨密度保持、心血管系の適応、妊娠・発育への影響など)は十分に確立されていない。人工重力(回転式施設)や厳格な運動プログラムは対処策として研究・試験が進められているが、実用化には大型装置や消費資源のトレードオフ評価が必要だ。人工重力に関する基礎研究は進んでおり、回転式遠心機の短期実験では筋骨格の保護効果が示されているが、長期的実験での立証が不足している。

物資の現地生産(ISRU)

ISRUは居住可能性の鍵であり、酸素生成(MOXIE)、水の採掘・精製、燃料(CO₂+H₂からのメタン合成など)といった技術が対象になる。MOXIEは概念実証に成功したが、実用的な工場規模にスケールアップするには電力供給、耐久性、資源抽出効率の向上が必要だ。現地の砂や氷を原料とした3Dプリント建材や金属抽出は研究段階にあり、将来的な大量建設に寄与する可能性がある。

通信の確保

地球-火星間の通信遅延(片道最大約11–22分)は即時遠隔操作を制約し、自律性の高いシステムと事前計画が重要になる。火星軌道上の中継衛星ネットワークと地上局の拡張によりデータ帯域は改善されるが、緊急時の即応支援は基本的に現地の判断に依存する運用設計が必須だ。

経済的・社会的課題、コスト

有人火星計画の費用は巨額であり、過去の推定では数百億〜数千億ドル(ある報告では数千億ドル規模の推計もある)に至る。これだけの資金を国家・国際コンソーシアム・民間資本でどう分配し、長期的な経済モデル(資源採掘、観光、研究など)で回収可能性を示すかが課題だ。単純な科学ミッションだけでは費用対効果が低く、民間の関与や新しい産業モデルが不可欠である。

持続可能性と自給自足、心理的な影響

外部補給に全面依存する体制は長期的に脆弱であるため、地元での食料生産(植物工場、閉鎖型アグリシステム)、水再生、資材生産が必須だ。心理的には狭小空間・隔離・地球からの距離による疎外感が継続的ストレス源となる。したがって、人間中心の居住設計、社会制度(交替帰還、精神衛生プログラム、娯楽・コミュニティ活動)が必要である。

克服への取り組み(技術・運用)

以下の取り組みが必要不可欠である。
・放射線対策:地下シェルターやレゴリス(現地土壌)遮蔽、水や氷を遮蔽物に利用、被曝モニタリングと太陽嵐警報による避難手順の確立。RAD測定で得られた実地データに基づく線量低減設計が進む。
・ISRUスケールアップ:MOXIEの成果を基に、電力源と組合せた酸素・燃料生産設備の開発。地表や地下資源(水氷)からの抽出技術。
・地下洞窟の利用:ラバ(溶岩管)など自然の洞窟を利用することで放射線・温度変動・隕石リスクを低減できる。探査ローバーや地震観測で洞窟の存在と安全性を確認する必要がある。
・植物工場と閉鎖生態系:LED栽培・水耕栽培・微生物利用で食料と酸素の再生を高効率化する。ISS実験や地上の閉鎖型試験が基礎データを供給する。
・特殊エアロックと素材開発:簡易修理可能なエアロック、多層の断熱・遮蔽材、高耐久性のシーラントなどの素材開発が進む。
・人工重力研究:遠心式短時間人工重力や長期回転施設の試験で部分重力問題を評価し、運用に反映させる研究が進む。

火星資源の活用(具体例)

・水氷採掘:掘削→融解→浄化で生活用水や酸素・水素の原料とする。学術研究は氷の体積評価を続けており、将来の主要資源候補である。
・CO₂と大気の利用:MOXIEのような電解・電気化学プロセスで酸素を得る。CO₂からメタン合成(Sabatiér反応等)で推進剤を作る計画が検討されている。
・レゴリスの建材:3Dプリンティングで現地材料からシェルターや防護壁を形成する研究が進む。これは打ち上げ費用を大幅に削減する。

地下洞窟の利用

溶岩管などの自然洞窟は放射線遮蔽、温度安定化、隕石防護の面で魅力的であり、居住モジュールや貯蔵施設を洞窟内に置くことで初期の遮蔽問題を大幅に軽減できる。ただし、洞窟の安定性、アクセス、内部環境(塵、放射性生成物)等の詳しい評価が必要である。

火星水氷の採掘

水氷採掘は最も有望なISRUであり、掘削技術(低温掘削、昇温・蒸発回収、圧力制御)と電力供給が鍵となる。研究では極域のみならず中緯度帯でも浅層氷が存在する可能性が示されているため、基地立地に応じて最適化された採掘法を選択することが重要だ。

植物工場

LEDを用いた水耕・養液栽培や微生物系の利用で食料供給を部分的に現地化する研究が進む。火星塵(レゴリス)は植物栽培にはそのまま使えないが、改良・洗浄・添加物で利用可能となる可能性がある。閉鎖系の効率化(CO₂ループ、廃水循環)が持続可能性を左右する。

特殊なエアロックシステム、素材開発

頻繁な出入りに耐える多層エアロック、自己修復性のシール材やレゴリスベースの補修材、断熱・遮蔽と一体化した外壁素材などの研究が重要になる。現地での修理・再製造(オンサイト製作)は運用コストとリスクを低減する。

厳格な運動プログラムと人工重力施設の研究

微小重力での筋骨格低下を防ぐための運動はISSでの主要対策であるが、部分重力下(0.38g)がどの程度の保護を提供するかは不明である。短期の遠心式人工重力は有効性を示すデータがあるが、長期・常時運用のコストや居住性とのトレードオフを評価する必要がある。

アルテミス計画(現状と意義)

NASAのアルテミス計画は月面での持続的活動を通じて火星有人探査へ技術と運用の教訓を得るための段階的アプローチである。月でのLSS、ISRU、長期滞在技術は火星計画への橋渡しとなり、国際協力と商業パートナーシップを強化している。したがって、アルテミスは火星居住実現の間接的だが重要な一歩である。

今後の展望(技術ロードマップ的視点)
  1. 次段階は「短期有人ミッション+大規模ISRU実証」:まずは数名〜数十名規模で限定的滞在し、MOXIEのスケールアップ、水氷採掘、初期発電システム、通信中継を実用化する。

  2. 中期は「半自給的基地」:食料・水・酸素の部分的現地生産を実現し、地球からの補給を減らす。居住モジュールはレゴリスと3Dプリントで建設し、地下洞窟利用も導入する。

  3. 長期は「持続可能な社会」:人口を増やし、産業(資源採掘、研究、観光)を開始する段階。ただし、この段階は数十年〜世代のスパンを要する。
    これらの段階は技術実証・経済モデル・倫理的判断(生殖、環境影響、所有権)を伴う。

まとめ(要点)

・技術的基盤は既に存在し、無人技術実証(MOXIE、RADなど)が火星居住の可能性を示している。
・最大の障壁は放射線、長距離輸送コスト、重力に関する不確実性、心理的・社会的持続可能性である。これらは単一の技術ではなく、運用・政策・財源配分を含む総合的対策が必要だ。
・ISRU、地下洞窟利用、人工重力研究、閉鎖型生態系の高度化は火星居住を実現可能にする主要技術である。

今後の展望

人類が火星に恒久的な居住拠点を築くことは、現在の科学技術ロードマップと国際的な政治・経済的意思が整えば実現可能だ。しかしそれは「技術的実現可能性」だけで決まる問題ではなく「コスト、倫理、持続可能性、社会的合意」が絡む総合課題である。短期的には限定的で支援依存の居住(前哨基地)が現実的であり、長期的にはISRUと自給自足を核とした持続可能な共同体形成を目指す段階的戦略が最も現実的である。最終的には、科学的好奇心と人類の長期的リスク分散という動機が、この壮大な挑戦を推進し続けるだろう。


参考(主な出典)
・RAD(Curiosity)の火星表面放射線測定。SwRI / DLRの報告。
・MOXIE(酸素生成)に関するNASAの技術実証報告。
・火星大気・気候の総説とデータ。
・火星水氷分布に関する近年の研究(2024年等)。
・有人火星計画の費用見積もりや政策的評価(過去のNASA報告等)。
・人工重力・部分重力の生理学的研究レビュー。


以下では、火星への居住および比較対象としての半永久的な月面基地の設置・維持について、目的・規模・技術成熟度の違いによる典型的シナリオ別の費用試算を整理する。数値は2025年時点で公開されている政府機関(主にNASA)、国際研究機関、宇宙経済分析の推計を基にしたオーダー評価(概算)であり、±数十%以上の不確実性を含む。


1.試算の前提条件

まず前提を明確にする。

・通貨:米ドル(USD)
・物価水準:2025年時点
・打上げ費用
 - 大型ロケット(再使用型):2,000~5,000 USD/kg(LEO換算)
 - 月・火星輸送はこれに数倍~十数倍の係数
・期間区分
 - 初期建設期(~10年)
 - 運用期(年間維持費)

費用は以下のカテゴリに分解する。
① 開発費(R&D、試験、地上実証)
② 打上げ・輸送費
③ 建設・設置費(居住・電力・通信)
④ 運用費(人員、補給、保守)
⑤ 更新・拡張費

2. 月面基地:典型的シナリオ別試算

シナリオL-1:小規模・科学拠点型(月面前哨基地)

概要
・滞在人数:4~6名
・滞在形態:交代制(半年~1年)
・目的:科学観測、技術実証(ISRU、LSS)
・アルテミス計画の延長線上

初期建設費(10年累計)
・開発費:200~300億
・輸送費:150~250億
・建設・設置:100~150億

👉 合計:450~700億

年間運用費
・補給・人員輸送:30~50億
・保守・更新:10~20億

👉 年間:40~70億

シナリオL-2:半永久的・準自給型月面基地

概要
・滞在人数:10~30名
・ISRUによる水・酸素の部分自給
・原子力+太陽光発電
・継続居住(交代制)

初期建設費(15年)
・開発費:400~600億
・輸送費:300~500億
・建設・インフラ:300~400億

👉 合計:1,000~1,500億

年間運用費
・補給(削減後):20~40億
・人員・保守:20~30億

👉 年間:40~70億

※月は距離が近いため、火星よりも運用費が抑えられるのが最大の特徴。

3. 火星居住:典型的シナリオ別試算

シナリオM-1:短期有人火星ミッション(前哨基地)

概要
・滞在人数:4~6名
・滞在期間:500~600日
・居住は限定的、完全補給依存
・恒久基地ではない

総費用(1回の計画)
・開発費:400~600億
・輸送・打上げ:300~500億
・着陸・居住モジュール:200~300億

👉 合計:900~1,400億

※これは「1回限り」の費用であり、再利用性は低い

シナリオM-2:小規模・恒常的火星基地(半自給)

概要
・滞在人数:10~20名
・交代制だが常時有人
・水氷採掘、酸素生成、限定的食料生産
・地下またはレゴリス遮蔽基地

初期建設費(20年)
・開発費:800~1,200億
・輸送費:700~1,000億
・建設・ISRU設備:500~800億

👉 合計:2,000~3,000億

年間運用費
・補給(2年に1回):50~80億
・保守・人員:30~50億

👉 年間:80~130億

シナリオM-3:持続可能・自給型火星コロニー(長期)

概要
・滞在人数:100人規模
・食料・水・酸素・建材の大部分を現地生産
・複数拠点、産業活動あり
・事実上の「惑星定住」

初期建設費(30~40年)
・開発費:1,500~2,500億
・輸送・艦隊整備:2,000~3,000億
・都市・産業インフラ:1,500~2,000億

👉 合計:5,000~7,500億

年間運用費(安定後)
・補給・更新:50~100億
・社会・医療・教育含む運営:50~100億

👉 年間:100~200億

※これは国家単独では困難で、国際連合体+民間資本前提となる。

4. 月と火星の費用構造比較

項目月面基地火星基地
初期費用数百~1,500億2,000~7,500億
運用費低~中
補給頻度高(数日~週)低(2年周期)
技術難易度極めて高
心理的リスク
政治的実現性中~低

5. 総合評価

月面基地は「費用対効果」「技術実証」「政治的合意」の点で現実的であり、半永久基地は1,000億ドル規模で実現可能な範囲にある。
火星居住は科学的・文明史的意義は極めて大きいが、恒常的基地でも最低2,000億ドル級、自給型社会では数兆ドル級国家プロジェクトとなる。
・したがって合理的ロードマップは、
 月 → 月での半永久基地 → 火星前哨 → 火星定住
という段階的投資である。

結論として、火星居住は「技術的夢」ではなく「経済と政治の問題」であり、実現可否は資金調達モデルと国際協調にかかっている。

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