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コラム:風俗スカウトグループ「ナチュラル」のリーダー逮捕

2026年1月26日、東京都暴力団排除条例違反の疑いで、「ナチュラル」トップの小畑寛昭容疑者(40)が鹿児島県奄美大島で逮捕された。
日本最大級の風俗スカウトグループ「ナチュラル」の小畑寛昭 容疑者(警視庁)
現状(2026年1月時点)

2026年1月、東京都警視庁は国内最大規模の風俗スカウト組織「ナチュラル」のトップである小畑寛昭(おばた・ひろあき、40歳)容疑者を、東京都暴力団排除条例違反の疑いで逮捕した。これにより、これまで捜査で全容が不透明だったナチュラルの実態把握と、全国的な捜査の進展が期待される状況となっている。今回の逮捕は、風俗スカウトグループが抱える「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」としての危険性と、暴力団との関係性が改めて社会的課題として浮上した事案である。

同時に、同事件をめぐっては警察内部から組織情報を漏洩したとされる現職警察官の逮捕や、捜査・管理体制の課題についても専門家から強い批判が出ており、公共の安全と性産業領域における法的対応のあり方が検討されている。


風俗スカウトグループ「ナチュラル」とは

「ナチュラル」は、主に東京・新宿歌舞伎町や渋谷など繁華街で女性をスカウトし、性風俗店への紹介・あっせんを行う風俗スカウトグループである。所属スカウトマンは全国で活動し、その数は1,500人以上とされている。これらのメンバーは、店舗側からの「紹介料」や「キックバック」を受け取るなどして、違法な収益を得てきたとみられている。

このようなスカウト行為は、職業安定法や暴力団排除条例、スカウト行為を特定の地域で禁止する行政規制に抵触することが多く、警察は長年違法行為として取り締まりを進めてきた。しかし、グループが「匿名・流動型犯罪集団(トクリュウ)」の形態をとっていたため、摘発や全容解明は困難を極めていた。

「トクリュウ」としての位置付け

「ナチュラル」は、警察庁・警視庁によると、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる“トクリュウ”に分類される。この種のグループは、構成員の同一性が固定されず、ネットワークが流動的でありながら、多数のメンバーを抱えることで、違法な収益の獲得と分配を行う特徴がある。

ナチュラルは組織として内部アプリを持ち、スカウト員の活動管理やコミュニケーションを図っていたという情報が捜査過程で明らかになっている。このような「疑似企業」の業務管理構造が存在することは、単純な違法スカウトを超えた「組織犯罪」との評価につながっている。


小畑寛昭(おばた・ひろあき、40歳)容疑者逮捕

小畑寛昭容疑者は、ナチュラルのトップとして内部で「会長」「チェアマン」と呼ばれていた人物である。年齢は40歳、実質的な組織運営の中心に立ち、メンバーの統制や収益管理、外部交渉などを指揮していたとみられる。長年逃走していたことから、警視庁は指名手配・公開手配を行い、その捜査は全国的規模で継続していた。

逮捕容疑

今回の逮捕の根拠となる罪名は、東京都暴力団排除条例違反の疑いである。具体的には、2023年7月24日に東京都渋谷区の繁華街で、女性をスカウトする活動を暴力団に容認してもらう代わりに、同組織関係者(指定暴力団系組幹部)に現金60万円を支払った疑いが持たれている。このような現金の授受は、俗に「みかじめ料」として暴力団の関与を許容し、グループの活動地での営業を維持するためのものとされている。


逮捕日時・場所:2026年1月26日 鹿児島県・奄美大島

小畑容疑者は、2026年1月26日夜、鹿児島県の奄美大島で逮捕された。東京から1,000キロ以上離れたこの地点に潜伏していた理由について、関係者の証言では「警察から逃れ、所在を隠すため」との見方が強い。

逮捕時、小畑容疑者は髪やひげを伸ばし、メガネで変装していたと報道されている。また、身柄確保直前に若干抵抗のそぶりを示したものの、逮捕状が示された際には「自分は小畑寛昭である」と名乗ったという。


容疑:東京都暴力団排除条例違反の疑い

東京都暴力団排除条例は、暴力団の関与を排除し、組織犯罪の温床となる不正利益供与やみかじめ料などの授受を禁止するものである。この条例は、暴力団が支配力を強めないように、企業・団体・個人に対して暴力団関係者との金銭授受の禁止義務を課している。

今回の逮捕は、ナチュラルが暴力団関係者に金銭を支払ったことが条例に抵触すると判断されたためであり、単なる違法な風俗紹介行為そのものよりも、組織犯罪として暴力団との関連性を重視しての立件である。


逃亡状況

小畑容疑者は、2025年1月に逮捕状が取得されて以降、所在不明となっていた。その後、警視庁は全国公開手配を行い、防犯カメラ映像や似顔絵の公開、情報提供の呼びかけを実施していた。公開手配から5日以内に、匿名情報により奄美大島での所在が判明し、これが逮捕につながった。

この逃亡期間中、小畑容疑者は変装や移動、潜伏を行っていたとみられている。警察内部からの情報漏洩問題も指摘され、捜査関係者の中には、特定の捜査情報が外部に伝わっていた可能性についての調査が行われていた。


「ナチュラル」の実態

組織規模

捜査当局によると、ナチュラルは全国で約1,500人以上のメンバーを抱えており、年間の違法紹介収益は40億円台後半から50億円台前半に達すると推定されている。複数の報道では2022年の収益が44億〜45億円に上るとの推計も出ており、スカウトグループとしては国内最大級であるとの評価が一般的である。

匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)

「ナチュラル」は、同じメンバーが常に固定される一般的な犯罪組織とは異なり、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の性質を持つ。メンバーの出入りが比較的自由であり、内部での上下関係や固定的な階層が緩やかであるにもかかわらず、警察や外部者の目を巧妙に逃れながら違法行為を継続した。

このような特色は、捜査を困難にし、組織全体の実態把握と摘発を難しくしてきた。

収益

ナチュラルの収益は、スカウトした女性を性風俗店等に紹介し、店舗側から手数料・紹介料を徴収することで得られたとみられる。その総額は年間40億円以上に達すると推定され、商業ベースでみても巨大な規模である。

この収益の一部が暴力団に流れていた可能性も指摘されており、警視庁は今後の資金の流れについても調査を継続する意向を示している。

隠蔽工作と管理システム

捜査関係者の話では、ナチュラルは独自の管理アプリを内部で運用し、スカウト員のステータスや活動状況、コミュニケーションを統括していたとされる。このアプリは「ウイルス」と警察を表現するなど、警察への警戒心を煽る仕組みも内包していたという。

ネットワーク管理は、いくつかの部署に分かれており、活動の効率化と匿名性を担保していた可能性が高い。このような内部統制システムの存在は、単なるスカウト行為の延長ではなく、組織的・構造的な違法活動として評価される重要な要素である。

暴力団とのつながり

警視庁は、ナチュラルが暴力団排除条例違反の疑いで立件されるに至った背景に、暴力団関係者との金銭授受があることを重視している。みかじめ料としての金銭授受は、暴力団の営業支配や縄張り意識を容認する行為とみなされ、条例違反の根拠となった。

また、暴力団との接点は単なる対価の授受にとどまらず、緩やかな関係構築や利益供与の面でも存在していた可能性がある。


今後の展望

今回の逮捕は、ナチュラルの全容解明に向けた大きな一歩であると評価されるが、組織の残存勢力、資金流れ、関連人物の摘発など、解明すべき課題は多い。警視庁は、今回の逮捕を契機として、関連の摘発および組織犯罪対策を強化する意向を示している。

また、専門家の間では、風俗スカウトビジネスの合法と違法の境界線についての議論や、性産業全体への規制枠組みの見直し、被害者保護の強化についての提言が活発化している。


まとめ

2026年1月26日、東京都暴力団排除条例違反の疑いで、「ナチュラル」トップの小畑寛昭容疑者(40)が鹿児島県奄美大島で逮捕された。この逮捕は、東京警視庁が長年追っていた公開手配の成果であり、全国的な風俗スカウト組織の違法性と暴力団関与の可能性を示す重要な事件である。

ナチュラルは、約1,500人規模の匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)として、全国の繁華街で女性をスカウトし、性風俗店へのあっせんで年間数十億円規模の違法収益を得ていたとされる。今回の逮捕を契機に、組織犯罪対策の強化と風俗スカウトビジネスに対する社会的・法的検討が求められている。


参考・引用リスト

  1. 警視庁、ナチュラル会長逮捕報道 — Jiji Press/Nippon.com(2026年1月27日報道)

  2. 奄美大島での逮捕詳細報道 — TV朝日ニュースほか(2026年1月27日)

  3. 公開手配と組織収益についての報道 — TV朝日ほか(2026年1月21日)

  4. 共同通信公開手配報道 — NEWSjp(2026年1月21日)

  5. 組織のトクリュウ性など概説 — The Japan Times(2025年4月)

  6. 警察官の情報漏洩事件(ナチュラル関連) — Tokyo Reporter(2025年12月)


追記:トクリュウの取り締まりの難しさ

1. 組織概念の曖昧性と法制度の限界

匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)は、従来の「暴力団」や「犯罪組織」と異なり、明確な組織名、固定的な構成員、恒常的な指揮命令系統を持たない点に最大の特徴がある。このため、日本の刑事法制が前提としてきた「組織犯罪」の定義と整合しにくい構造を有している。

暴力団対策法や各自治体の暴力団排除条例は、指定暴力団という明確な対象を前提として設計されており、構成員の同定や組織性の立証が可能であることが前提条件となっている。一方、トクリュウは「個々の犯罪行為の集合体」として存在するため、捜査側が組織性を立証する際に高度な間接証拠の積み重ねを必要とする。

結果として、トクリュウに対する摘発は、詐欺、恐喝、職業安定法違反、条例違反などの個別犯罪ごとの断片的な立件にとどまりやすく、全体構造を一気に解体する法的手段が乏しいという問題が生じている。


2. 匿名性・流動性による捜査の分断

トクリュウの第二の特徴は、構成員の匿名性と流動性である。多くの場合、構成員は本名を明かさず、SNSや暗号化アプリ上のハンドルネームで接触する。さらに、上下関係は緩やかであり、一定期間活動した後に自然消滅する者も少なくない。

この構造は、捜査において以下の困難をもたらす。

  • 上位者と下位者の関係性の立証が困難

  • 共謀関係の証明に時間を要する

  • 一部構成員を検挙しても、全体への影響が限定的

特に、現場で検挙されるのは末端実行者であることが多く、彼らが全体像を把握していないケースも多いため、供述による上位組織の特定が難航する。


3. デジタル技術の高度利用

近年のトクリュウは、デジタル技術を積極的に利用している。専用アプリ、クラウド管理、暗号化通信、仮想通貨、電子決済などが組み合わされ、物理的な証拠が残りにくい構造が形成されている。

ナチュラルにおいても、内部管理アプリによる業務管理や情報共有が行われていたとされ、これは企業型犯罪組織に近い性質を示している。このようなデジタル依存型犯罪は、従来の尾行や張り込みを中心とした捜査手法との相性が悪く、解析・証拠化に専門的技術と時間を要する。


トクリュウの弱点

トクリュウは一見すると把握困難で強固な存在に見えるが、構造上の弱点も内包している。

1. 中核的人物への依存

匿名性と流動性を特徴とする一方で、多くのトクリュウには実質的な中核人物(コア)が存在する。資金の分配、ルールの設定、外部との交渉などを担う人物が存在し、その人物が不在になると組織は急速に不安定化する。

ナチュラルにおける小畑寛昭容疑者は、まさにこの中核に該当する存在であり、彼の逮捕は単なる一構成員の検挙ではなく、組織の意思決定機能への打撃を意味する。


2. 内部結束の脆弱性

トクリュウは、暴力団のような血縁・地縁・義理関係による強固な結束を持たない。そのため、金銭的利益が失われたり、リスクが増大した場合、構成員は比較的容易に離脱する。

捜査圧力の強化、リーダーの逮捕、資金流通の遮断は、組織の求心力を急激に低下させる要因となる。特に、末端構成員にとっては「割に合わない」と判断されれば、組織から距離を取る動機となる。


3. 金融・通信インフラへの依存

トクリュウは、匿名性を保つために複雑な資金移動や通信手段を用いるが、それ自体が弱点ともなる。金融機関のマネーロンダリング対策、通信事業者のログ保存義務、プラットフォーム側の規制強化が進めば、活動は制約を受けやすい。

近年は、警察と金融機関、IT企業との連携が進んでおり、資金の流れを起点とした捜査がトクリュウ対策の重要な突破口となりつつある。


ナチュラルの今後についての分析

1. 組織としての弱体化と分裂の可能性

小畑容疑者の逮捕により、ナチュラルは統率力の低下と内部混乱に直面する可能性が高い。中核的人物を失ったことで、残存幹部間の主導権争いや、地域単位での分裂が生じることが想定される。

特に、トクリュウの性質上、組織を守るための「忠誠心」よりも、個々の利害が優先されやすく、自然解体的な縮小が進む可能性がある。


2. 別名義・派生グループへの転化

一方で、ナチュラルが完全に消滅するとは限らず、別名義のグループや小規模ユニットへの再編という形で存続する可能性もある。これは、トクリュウに共通する適応戦略であり、過去の詐欺グループや闇バイト型犯罪でも確認されてきた現象である。

この場合、表面的にはナチュラルは消滅しても、人的ネットワークやノウハウは水面下で引き継がれることになる。


3. 捜査当局の戦略転換への影響

今回の事件は、警察にとっても重要な教訓をもたらす。すなわち、トクリュウ対策は「現場検挙の積み重ね」だけでなく、

  • 中核人物の特定

  • 資金の流れの遮断

  • デジタル証拠の解析

  • 行政・民間との横断的連携

を組み合わせた構造的アプローチが不可欠であることを明確にした。

ナチュラル事件は、今後のトクリュウ対策のモデルケースとして位置づけられる可能性が高い。


追記まとめ

匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)は、従来型の組織犯罪対策をすり抜ける構造を持つため、取り締まりは極めて困難である。しかし、その一方で、中核人物への依存、内部結束の脆弱性、インフラ依存という明確な弱点も存在する。

ナチュラルのトップである小畑寛昭容疑者の逮捕は、これらの弱点を突いた象徴的事例であり、組織の今後に大きな影響を与えると考えられる。今後、ナチュラルが弱体化・分裂・再編のいずれの道を辿るにせよ、本件は日本におけるトクリュウ対策の転換点として、長期的に検証されるべき事案である。

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