SHARE:

コラム:アフガニスタンにおける女性の人権状況、現状と課題

アフガニスタンにおける女性の人権状況はタリバン政権下で著しく悪化している。
2022年12月22日/アフガニスタン、首都カブールの閉鎖された中等学校、女子生徒たち(Ebrahim Noroozi/AP通信)

アフガニスタンにおける女性の人権状況は2021年8月のタリバンによる政権奪取以降、急速に悪化し、深刻な人道的危機を引き起こしている。


1. 教育の制限とその影響

タリバン暫定政権下では女子の教育は厳しく制限されている。2025年6月時点で、女子は小学校教育のみが許可されており、中等教育や高等教育へのアクセスはほぼ完全に遮断されている。UNウィメンの報告によると、アフガニスタンの若い女性の約8割が教育、就職、訓練から排除されており、これは世界で最も深刻なジェンダー格差の一つとされている。

教育の機会が奪われることは、女性の社会的・経済的自立を阻むだけでなく、国家の発展にも悪影響を及ぼす。教育を受けた女性は健康、経済、社会的な側面での改善に寄与することが知られており、その機会の喪失は広範な社会問題を引き起こしている。


2. 労働と経済活動への制限

タリバン政権は女性の労働参加を大幅に制限している。2022年12月には、国内および国際NGOでの女性の雇用が禁止され、2023年4月には国連機関で働くアフガニスタンの女性にも同様の制限が適用された。これにより、多くの女性が職を失い、経済的自立が困難となっている。

また、女性が経営する企業の多くは強制的に閉鎖され、女性の経済活動への参加は著しく制限されている。これらの措置は、女性の社会的地位を低下させるとともに、国家経済にも悪影響を及ぼしている。


3. 社会的自由と移動の制限

タリバン政権下では、女性の社会的自由も大きく制限されている。公共の場での服装や行動に厳しい規制が課され、ブルカ(全身を覆うイスラム教のベール)の着用が義務付けられるなど、女性の移動の自由も制約されている。これらの制限は、女性の人権を侵害するものであり、国際社会からの非難を招いている。


4. 健康とリプロダクティブ・ライツの制約

女性の健康、特にリプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)も深刻な影響を受けている。妊産婦の健康管理や避妊に関する情報・サービスへのアクセスが制限され、女性の健康リスクが高まっている。これにより、母子の健康状態が悪化し、死亡率の増加が懸念されている。


5. 人道的危機と国際的支援

アフガニスタンは紛争や自然災害、経済危機などの影響を受け、深刻な人道的危機に直面している。2024年には2370万人もの人々(うち52%が子ども)が生きるために緊急的な支援を必要とすると推定されている。特に女性や少女は、教育や健康サービスへのアクセスが制限され、支援の優先度が低くなりがちである。

国際社会はアフガニスタンの女性の人権回復に向けた支援を強化する必要がある。教育、健康、経済活動へのアクセスを保障することは、女性の人権を回復するための第一歩である。


結論

アフガニスタンにおける女性の人権状況はタリバン政権下で著しく悪化している。教育、労働、社会的自由、健康といった基本的な権利が制限され、女性の社会的地位は低下している。国際社会は、アフガニスタンの女性の人権回復に向けた支援を強化し、女性が平等に社会に参加できる環境を整備することが求められている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします