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安価な合成薬物が街に溢れるキューバ、教会と政府に助けを求める若者たち


首都ハバナの精神科病院では数十人の患者が輪になって手をつなぎ、体内の毒素から解放されることを祈る集団療法が行われている。
2026年3月11日/キューバ、首都ハバナの医療機関(AP通信)

キューバで安価な合成薬物の流通が急増し、若者の薬物使用が社会問題となっている。深刻化する経済危機を背景に、依存に苦しむ若者や家族が政府の医療機関や教会の支援を求めるケースが増えている。

首都ハバナの精神科病院では数十人の患者が輪になって手をつなぎ、体内の毒素から解放されることを祈る集団療法が行われている。ここでは約90日間の解毒プログラムが実施され、その後リハビリ治療に進む。患者の多くは20代から30代で、薬物依存からの回復を目指して治療を受けている。

キューバでは長年、薬物問題は比較的小さいと考えられてきた。しかし近年は経済危機の深刻化や生活必需品の不足、さらに安価な合成薬物の出回りによって状況が急速に変化した。公園や街角では若者が路上で眠り込んだり、ふらつきながら歩いたりする姿が見られるようになり、社会に衝撃を与えている。

特に問題となっているのは「キミコ(químico)」と呼ばれる薬物で、合成カンナビノイドにさまざまな化学物質を混ぜた危険な混合物である。紙に薬物を染み込ませて小さく切り分け、「パペリートス(小さな紙)」と呼ばれる形で販売される。1回分は約250キューバペソ、米ドル換算でおよそ50セントと非常に安く、パンやソーダよりも安価で手に入るため若者の間で急速に広がった。

共産党はこの問題に対応するため、2025年に国家薬物観測機関(National Drug Observatory)を設立し、薬物の拡散状況や健康への影響を調査している。ハバナの救急外来では薬物関連の患者数が2024年の467人から2025年には886人に倍増し、医療機関の負担が増している。

キューバは厳格な「薬物ゼロ」政策を採用しており、密売には終身刑が科される可能性がある。当局によると、合成薬物の原料の多くは米国から流入しているとされ、過去1年間だけでも46種類の新しい化学組成が確認された。2024年から2025年にかけては、11カ国からの密輸を含む72件の薬物持ち込みが摘発されたという。

一方、問題の拡大は国家の医療体制だけでは対応しきれない面もあり、宗教団体の役割も大きくなっている。福音派バプテスト系教会「アルカンス・ビクトリア・キューバ」では依存症の若者やその家族を対象にカウンセリングや支援活動を行い、昨年は約50人が治療や相談を受けた。

子どもが薬物依存になった家族の多くは、政府の医療機関と教会の両方に助けを求めている。ある母親は教師の娘と自動車整備士の息子が薬物に手を出したことに戸惑いながら、「ただ祈るしかない」と語る。急速に広がる合成薬物の問題は、社会主義国家キューバにおいても新たな課題として深刻さを増している。

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