メキシコの麻薬組織「シナロア・カルテル」について知っておくべきこと
シナロア・カルテルはメキシコ国内外での麻薬密売を主な活動とする世界最大級の犯罪組織であり、その影響力は広範囲に及ぶ。
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シナロア・カルテル(Cártel de Sinaloa)はメキシコ・シナロア州クリアカンを拠点とする世界最大級の麻薬密売組織であり、その影響力はメキシコ国内外に及ぶ。
現状
シナロア・カルテルはコカイン、メタンフェタミン、ヘロイン、フェンタニル、大麻、MDMAなどの違法薬物の密売を主な活動としており、米国、ヨーロッパ、アジアなどの市場に広がる密売ネットワークを構築している。その収益は年間数十億ドルに達するとされ、世界最大級の麻薬密売組織としての地位を確立している。
シナロア・カルテルは地下トンネル、海上輸送、汚職にまみれた国境職員などの方法を利用して、米国やその他の市場に麻薬を密輸している。また、戦略的な同盟関係、残忍な取締り戦術、特に主要な取引通路における地方自治体や法執行機関への浸透能力でも知られる。
2025年現在、シナロア・カルテルはメキシコで最も支配的な麻薬カルテルであり続けている。
歴史と経緯
1960年代後半:創設期
シナロア・カルテルの起源は1960年代後半に遡る。当時、シナロア州のペドロ・アビレス・ペレスが米国へのマリファナ密輸を主な活動として小規模な犯罪組織を設立した。彼は航空機を使用した密輸の先駆者として知られ、組織の基盤を築いた。
1980年代:グアダラハラ・カルテルとの関係
1980年代初頭、シナロア・カルテルは元メキシコ連邦警察のエージェントであり「ゴッド・ファーザー」と呼ばれたミゲル・アンヘル・フェリクス・ガジャルドによって設立されたグアダラハラ・カルテルと関係を持つようになった。ガジャルドはコロンビアのメデジン・カルテルとの交渉人としても知られ、メキシコの麻薬密売の中心的存在となった。
しかし、1989年にガジャルドが逮捕されると、メキシコの麻薬組織はシナロア・カルテルを含む複数の小規模な組織に分裂した。この分裂により、シナロア・カルテルは独立した組織としての活動を本格化させた。
1990年代〜2000年代:ホアキン・グスマンの台頭
1990年代から2000年代にかけて、シナロア・カルテルはホアキン・「エル・チャポ」・グスマンの指導の下で活動を拡大し、世界で最も強力かつ影響力のある犯罪組織の一つとしての地位を確立した。グスマンはティフアナ・カルテル、湾岸カルテル、後にハリスコ新世代カルテル(CJNG)といった対立グループやメキシコ連邦軍との暴力的抗争に大きく関与した。
シナロア・カルテルは麻薬のポートフォリオを多様化し、コカイン、メタンフェタミン、ヘロインの世界的取引の主要プレーヤーとなった。米国、ヨーロッパ、アジアにまたがる洗練された密売ネットワークを構築し、地下トンネル、海上輸送、汚職にまみれた国境職員などの方法を利用して、米国やその他の市場に麻薬を密輸した。
2010年代:内部抗争と指導者の逮捕
2016年、グスマンが逮捕され、米国で終身刑に服することとなった。その後、シナロア・カルテルは内部抗争や指導者の逮捕などの影響を受けつつも、依然として活動を続けている。
2023年には、グスマンの息子であるオビディオ・グスマン・ロペスが逮捕され、その後、カルテルの指導体制に変化が生じた。
問題点と影響
1. 暴力と治安の悪化
シナロア・カルテルはメキシコ国内での麻薬戦争において中心的な役割を果たしており、その活動は暴力の激化を招いている。カルテル間の抗争や法執行機関との衝突により、多くの市民が犠牲となり、治安が悪化している。
2. 腐敗と汚職
シナロア・カルテルは地方自治体や法執行機関への浸透能力を持ち、汚職を通じて活動を維持している。これにより、法の支配が損なわれ、社会全体の信頼が低下している。
3. 経済への影響
カルテルの活動は合法的な経済活動を圧迫し、地域経済の発展を阻害している。また、麻薬密売による収益はマネーロンダリングなどの手段を通じて経済に悪影響を及ぼしている。
4. 国際的な影響
シナロア・カルテルの活動はメキシコ国内だけでなく、米国やその他の国々にも影響を及ぼしている。麻薬の密輸や関連する犯罪活動は、国際的な治安問題としての側面を持つ。
結論
シナロア・カルテルはメキシコ国内外での麻薬密売を主な活動とする世界最大級の犯罪組織であり、その影響力は広範囲に及ぶ。その活動は、暴力、汚職、経済への悪影響、国際的な治安問題など、さまざまな問題を引き起こしている。今後、その活動を抑制し、社会の安定を図るためには、法の支配の強化、汚職の撲滅、国際的な協力など、多角的なアプローチが求められる。