◎今回の地震で崩壊した家屋は7,000戸以上、ひび割れ等の被害を受けた家屋は約5,000戸にのぼり、推定30,000人が住居を失ったと伝えられている。
ハイチの政府当局は17日、西部地域で発生した地震の死亡者は1,900人を超え、救助活動は大雨の影響で難航していると述べた。
地震は8月14日の午前8時30分頃(現地時間)に発生した。アメリカ地質調査所(USGS)によると、震源は首都ポルトープランスから西におよそ125キロ離れた地点で、震源の深さは10キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.2と推定されている。
カリブ海を西進していた熱帯低気圧はハイチを含むカリブ海諸国に大雨をもたらした。気象当局によると、地震で最も深刻な被害を受けた南西部沿岸の町レ・カイの降水量は400mm近くに達する可能性があるという。
市民保護局は17日遅くの声明で、これまでに1,941人の死亡を確認し、約9,900人が負傷したと発表した。行方不明者の数は明らかにされていないが、地元メディアは多数と報じた。またAP通信によると、多くの負傷者が医療援助の到着を待っているという。
西半球で最も貧しい国のひとつであるハイチは、コロナウイルス、ギャングの暴力、貧困、そして7月のジョブネル・モイーズ大統領暗殺以降の混乱に悩まされ、今回の地震と大雨で国民の忍耐力は限界に達した。
崩壊したアパートから3歳の少女の遺体を引っ張りだした消防士は頭を抱え、涙を流しながら遺体をシーツで覆った。
死亡した少女とその家族を知っているという隣人のジョセフ・ボイヤー氏はAP通信の取材に対し、「父親と母親は病院に搬送され無事だが、子供3人は全員死亡した」と語った。
レ・カイの近くの町で活動しているボランティア消防士の男性は、「遺体を運び出す前に警察の立ち合いを受けなければならない」と述べ、遺体を放置し現場を離れた。
倒壊したビルの前には怒り狂う大勢の男たちが集まり、「政府の助けを何日も待っている」と憤慨した。ある男性はABCニュースのジャーナリストに、「マスコミ関係者はいっぱいいるが、政府関係者は1人もいない」と不満を表明した。
ハイチ市民保護局のジェリー・チャンドラー局長は、支援が遅れていることを認めた。
チャンドラー局長は17日、「大雨の影響で地震の評価作業を一時停止しなければならなかった」と述べ、「人々は攻撃的になっている」と懸念を表明した。
人権NGOセーブ・ザ・チルドレンのハイチ支部マネジャーであるカール・ヘンリー・プチ・フレール氏は、孤児になった子供や、お腹を空かせている子供がたくさんいると現場の窮状を訴えた。「子供たちはお腹を空かせて泣いています。子供たちは私に食べ物をねだりますが、物資はまだ手元に届いていません」
フレール氏は子供たちに人目に付きやすい屋外にとどまり、水分補給を怠らないよう促した。「支部の物資は非常に限られており、食料、水、医療物資、避難所、全てが足りません。被災者、特に脆弱な子供は助けを必要としています...」
米国国際開発庁(USAID)の人道支援局のサラ・チャールズ氏は声明で、16日に熱帯低気圧が接近したため災害対応チームの活動を停止せざるを得なかったが、チームは17日に現地入りし地震の評価と支援活動を再開したと述べた。
またチャールズ氏は記者団に、「今回の地震の死亡者数が2010年の地震の規模になるとは予想していない」と語った。
一方、米軍の南部司令部は、ホンジュラスからハイチに軍用ヘリ8機を向かわせており、まもなく米沿岸警備隊とUSAIDチームを支援できると声明を発表した。声明によると、被災地の航空写真は沿岸警備隊のヘリコプター2機と米海軍のP-8ポセイドン航空機がすでに撮影したという。
アメリカのジェイク・サリバン安全保障問題担当補佐官は17日、「ハイチの地震の緊急対応に必要な支援を届ける努力は継続される」と述べた。
国連のステファン・ドゥジャリック報道官は17日の記者会見で、「必要な物資を届けるために800万ドルを提供した」と述べた。また、国連は支援活動で主導的な役割を果たしているが、「その責任は政府が負っている」と強調した。
熱帯低気圧はジャマイカとキューバ南東部に向かう前にハイチ南西部をゆっくりと通過し、被災地に大雨をもたらした。予報官によると、低気圧はメキシコの手前でハリケーンになる可能性があるという。
今回の地震で崩壊した家屋は7,000戸以上、ひび割れ等の被害を受けた家屋は約5,000戸にのぼり、推定30,000人が住居を失ったと伝えられている。
2010年1月に首都ポルトープランスで発生したハイチ地震(M7.0)では推定30万人が死亡した考えられているが、正確な死亡者数は不明。地震により、推定100万人が住居を失い、数十万人が飢餓に直面し、町は荒廃し、大統領官邸を含むほとんどの建物が崩壊した。