SHARE:

米海軍が2隻の麻薬密輸船を攻撃、5人殺害 東太平洋

米南方軍は声明で、両船が麻薬ルートとされる海域を航行していたとしており、攻撃は国際水域で行われたとしている。
米海軍の空母打撃群(Getty Images)

米軍は18日、東太平洋上の公海で2隻の麻薬密輸船を攻撃し、乗組員とみられる5人を殺害したと発表した。

米南方軍は声明で、両船が麻薬ルートとされる海域を航行していたとしており、攻撃は国際水域で行われたとしている。米軍側の人員に負傷者は出なかったとされる。

声明によると、今回の作戦はヘグセス(Pete Hegseth)国防長官の指示で行われたとされ、1隻目で3人、2隻目では2人が死亡した。いずれも「麻薬テロリスト」と断定しているものの、当局が各船舶の関与を裏付ける具体的な証拠を公表することはなく、映像として公開されたのは高速航行中の船が爆発する場面のみである。

この攻撃は9月以降に米軍がカリブ海や東太平洋で実施している一連の船舶攻撃の一環とされ、これまでに確認されているだけで28回以上の攻撃が実施され、少なくとも104人が死亡している。これらの作戦では米軍の攻撃が国際法上の正当性を欠くとの批判が国内外で強まっている。

トランプ(Donald Trump)大統領はこの作戦を、麻薬密輸組織に対する「武力紛争」とみなす立場をとっており、米国への麻薬流入を阻止し治安を守るために必要な措置だと主張している。

またトランプ氏は同様の作戦を継続しつつ制裁対象のベネズエラに対する軍事的・経済的圧力を強化しており、カリブ海域での海軍展開や制裁対象タンカーの封鎖などを進めている。これらの動きに対しては、中南米諸国や国際人権団体から懸念の声が上がっている。

一方で、トランプ政権のこうした海上攻撃に対し、連邦議会内でも批判や調査を求める動きが続いている。民主党や一部の専門家は、米軍が公海上での攻撃に際し十分な法的根拠を示していないと指摘し、憲法上の戦争権限の問題や国際法との整合性が問われている。また、船舶の乗組員が本当に麻薬密輸に関与していたのかについても具体的な証拠が示されておらず、透明性の不足を懸念する声が強い。

米軍によるこの種の攻撃は、国際社会が抱える複雑な安全保障と麻薬取引阻止の課題を浮き彫りにしている。米国内では支持者が麻薬流入対策として評価する一方で、法的・倫理的な問題を指摘する批判が根強い。国際的には、米国が国際法と主権国家の権利をどのように調和させつつ麻薬取引を抑制していくのかが、今後の外交・安全保障政策の焦点となる可能性がある。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします