▽ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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国連は1日、中米ハイチのギャング暴力が激化し、今年1~3月末の間の確認できているだけで1600人以上が殺害され、数十万人が住居を失い、最大20万人が隣国ドミニカに逃れたと明らかにした。
それによると、死亡が確認された1617人のうち、800人以上がギャングの構成員とされる。
特に首都ポルトープランスとその周辺地域ではギャング間抗争が激化し、警察と軍も全く介入できずにいる。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県では「グラン・グリフ」とみられるギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
一連の暴力とギャング間抗争により100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。
国連は報告書の中で「ギャング暴力、自警団との衝突、治安部隊による作戦で580人が負傷した」と述べているが、実際の死傷者数はこれをはるかに上回ると推定されている。
地元の人権団体やNGOは1万人以上が死亡または行方不明になっていると報告している。
国連のハイチ代表は4月28日、国際社会に対し、ハイチの状況は急速に悪化し、飢餓のリスクが劇的に高まっていると警告。ポルトープランスの大統領府や暫定大統領評議会が拠点を置く国会議事堂が陥落すれば、取り返しのつかない事態になると述べた。
国際的な努力にもかかわらず、国連安全保障理事会が承認したケニア主導の支援ミッションはこれまでのところ暴力を食い止めることができていない。
このミッションは2500人の警察官と軍兵士で構成されるはずだったが、現在、6カ国から約1000人の警察官しか派遣されておらず、深刻な人員不足に陥っている。
米国やカナダは支援ミッションを平和維持部隊に格上げするよう求めているが、中国とロシアが難色を示している。
トランプ米政権は先週、ヴィヴ・アンサムとグラン・グリフを外国テロ組織に指定する旨を連邦議会に通知した。