◎ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2022年7月21日/ハイチ、首都ポルトープランスの学校に開設された避難所(Ralph Tedy/ロイター通信)

国連の教育基金「Education Cannot Wait(ECW、教育を後回しにはできない)」は26日、ギャングの暴力に圧倒される中米ハイチの教育システムが崩壊し、多くの子供が学校に通えずにいると警告した。

EWCのシェリフ(Yasmine Sherif)事務局長は3日間の日程でハイチの首都プルトープランスを訪れ、7万5000人近くの子供を支援するために、250万ドルの助成金を拠出すると発表した。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは1年半ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。

ポルトープランスの80~90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

シェリフ氏は記者団に対し、「この国には助けが必要です」と訴えた。

またシェリフ氏はEWCの基金から、子供を持つ家族への現金給付、学校給食プログラムの再編に向けた支援、その他取り組みなどに250万ドルを拠出すると表明した。

シェリフ氏は避難所として利用されている市内の学校を訪問し、教師、校長、市民団体のメンバーなどと会談した。

シェリフ氏は米国やEU、フランスなどが連帯して、暴力の解消だけでなく、教育にも支援を提供してほしいと呼びかけた。

国連によると、ポルトープランスでは今年1~3月の間にギャング間抗争に巻き込まれて2500人以上が死亡したという。実際の死者数はもっと多いという専門家もいる。

この暴力により、ポルトープランスと周辺地域では少なくとも919校が閉鎖されたままである。国連によると、閉鎖により15万人以上の学生が影響を受けているという。

シェリフ氏は「教育が暴力を解決する一助になる」と指摘。「教育を充実させることで貧困や暴力のリスクが低下し、国に政治的安定をもたらし、信頼できる労働力を生み出すことができる」と強調した。

この暴力により、ハイチ全土で約58万人がホームレスとなり、その多くがその場しのぎのシェルターに押し寄せ、国連などの支援を受け、何とか生活している。

閉鎖された学校の大半が避難所となり、授業を維持している学校には他校の生徒が押し寄せている。

地元メディアによると、ポルトープランス中心部の中等学校は他の12校の生徒を受け入れているという。

シェリフ氏と面会した校長は記者団に対し、「この暴力がもたらしたコストはあまりに大きく、今後何年も国をむしばみ続ける恐れがある」と語った。

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