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トランプ政権、米国内で運行するメキシコ人列車乗務員に制限課す

運輸省傘下の連邦鉄道局(FRA)はユニオン・パシフィックやカナディアン・パシフィック・カンザスシティーなどの鉄道各社に書簡を送付し、検査で指摘された問題点を是正するよう通知した。
メキシコと米国の国境付近、貨物列車(Getty Images)

米国政府は19日、メキシコから米国内に入って運行する鉄道乗務員に対して新たな制限を課す方針を表明した。これは国境を越えた鉄道運行に関わる安全性の懸念を受けた対応であり、特に言語能力と安全手続きの順守に焦点を当てた内容となっている。

運輸省傘下の連邦鉄道局(FRA)はユニオン・パシフィックやカナディアン・パシフィック・カンザスシティーなどの鉄道各社に書簡を送付し、検査で指摘された問題点を是正するよう通知した。この検査ではメキシコから入国した乗務員が安全関連の通告を理解したり、検査官と英語で適切にコミュニケーションを取ることに困難を示す場面があったという。

新たな規則では、メキシコから来た乗務員は米国側の国境から最大16キロまでしか運行できないこととされ、これを超える運行が認められなくなる。また、適切な認証を受けていない乗務員は税関ポイントで運行を停止しなければならない。さらに、通訳を介する場合、その通訳者自身が安全規制に基づいた認証を受けている必要があると明示された。

FRAは声明で、鉄道運行に関連する書類や無線通信が英語で行われることが一般的であり、乗務員が安全に業務を遂行するためには英語な理解とコミュニケーション能力が不可欠であると説明した。このため、英語能力の確認や運行前の認証は安全基準の徹底に向けた重要なステップであると強調している。

この措置は、米国とメキシコを結ぶ鉄道輸送の現場で長年指摘されてきた「言語バリア」や安全管理の課題に対処する狙いがある。トランプ政権は過去にも国境や貿易に関連するさまざまな規制強化を打ち出しており、今回の措置もその一環と受け止められている。特に鉄道は国際物流において重要な役割を果たしており、メキシコからの貨物輸送が盛んなだけに、運行上の安全性確保は双方の経済活動にも影響を与える可能性がある。

鉄道業界からは、今回の規制が安全性向上に資するとの評価とともに、実務面での調整や追加的な負担が生じるとの懸念も出ている。英語能力の証明や乗務員認証の手続きには時間とコストがかかるため、鉄道各社は対応策を検討している。米国内での運行距離が制限されることについても、効率的な運行計画の再構築が求められる。

一方、メキシコ側の鉄道業界や労働団体は今回の措置に関して公式なコメントを出していないものの、国際輸送に関わる労働者の権利や待遇への影響を懸念する声が今後出てくる可能性がある。特に国境を越えた乗務員の日常的な業務に支障が出るとの見方もある。

今回の規制は即時発効の方向で進められており、米国とメキシコを結ぶ鉄道ネットワーク全体の運行や安全管理体制にどのような影響を及ぼすかが今後の焦点となる。また、両国間の経済関係や貿易協定にも影響を与える可能性があり、関係当局による引き続きの調整が求められることになる。

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