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トリニダード首相、米海兵隊の駐留認める、麻薬密輸対策の一環

パサードビセッサー氏は今週、海兵隊は完全に撤収したと述べていたが、実際には島の一つであるトバゴ島の空港でレーダー、滑走路、道路の改修作業に従事しているという。
カリブ海の島国トリニダード・トバゴ、パサードビセッサー首相(AP通信)

カリブ海の島国トリニダード・トバゴのパサードビセッサー(Kamla Persad-Bissessar)首相は28日、同国における米海兵隊の駐留について、これまでの発言を撤回し、現在も同国に滞在していることを認めた。

パサードビセッサー氏は今週、海兵隊は完全に撤収したと述べていたが、実際には島の一つであるトバゴ島の空港でレーダー、滑走路、道路の改修作業に従事しているという。

パサードビセッサー氏は記者団に対し、「米海兵隊は我々の領海および外部水域で麻薬密輸業者の活動を監視し、情報収集能力を向上させるために協力している」と語った。

ただし、どのようなレーダーが設置されるのか、新設なのか既存施設の改修なのかについては明らかにしていない。

この発言の背景には、トリニダードと米国との関係強化を巡る安全保障上の思惑がある。パサードビセッサー氏は26日、米軍制服組トップのケイン(Dan Caine)統合参謀本部議長と会談。トリニダードの基地を対ベネズエラ攻撃の拠点として提供するような依頼はなかったと強調した。

パサードビセッサー氏は記者会見で、「ベネズエラへの攻撃基地としての使用は要請されていない」と述べていた。

一方で、トバゴ島ではこの米軍の関与について地元から疑問と懸念の声が上がっている。地方政党の幹部らは、空港近辺で軍用のレーダー設備らしい機材が目撃されたことを挙げ、「政府はトバゴ住民に説明責任を果たすべきだ」と主張。中央政府が島側と相談なく米軍の活動を許可したことに強い不満を示している。

こうした動きは、米国によるカリブ海域での麻薬取締強化や、周辺国を巡る軍事拡張と軌を一にすると見られている。

最近では、近隣国でも米軍のレーダー設備設置や基地利用を巡る協議が持ち上がっており、トリニダードでの今回の事例は地域の安全保障情勢や主権問題を巡る議論を再燃させる可能性がある。

パサードビセッサー氏の発言変更は、国内外双方にとって重大な意味をもつ。政府は今回の協力を「麻薬密輸対策のための技術支援」と位置づけているが、透明性や地域の合意、国民への説明を巡る課題は消えていない。

今後、設置予定のレーダーの仕様や運用範囲、米軍の滞在期間などが明らかになるかが注目される。

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