SHARE:

USMCA見直し交渉始まる、トランプ関税と貿易赤字が焦点


USMCAは1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)を改定する形で、トランプ米大統領の主導により締結された。
米国・カナダ・メキシコの国旗(AP通信)

米国、メキシコ、カナダの3カ国による自由貿易協定の見直し交渉が3月16日に始まり、北米経済の将来を左右する難航必至の協議となる見通しだ。2020年に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の6年ごとの見直し規定に基づくもので、3国間の年間約1兆6000億ドル規模の貿易を支える枠組みの存続が焦点となる。

USMCAは1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)を改定する形で、トランプ(Donald Trump)米大統領の主導により締結された。協定は自動車や農産物、エネルギー、デジタル製品など幅広い分野の関税を撤廃し、北米のサプライチェーンを統合する役割を果たしてきた。電子商取引に関する関税禁止など、デジタル経済に対応した規定も盛り込まれている。

今回の協議は定期的な見直し手続きとして行われるが、各国の利害が大きく対立しており、交渉は容易ではないとみられている。米側はメキシコ経由で中国製品が流入するのを防ぐための原産地規則の強化や、米国内での生産拡大につながる制度変更を求める構えだ。また、米国の農家がカナダ市場によりアクセスしやすくするため、カナダの保護的な乳製品市場の開放も要求している。

一方、メキシコとカナダは協定の枠組み自体を維持することを最優先課題としている。両国は米国経済への依存度が高く、協定が崩れれば輸出産業に大きな打撃となるためだ。特にメキシコは自動車や電子機器など製造業の輸出の多くを米国市場に頼っており、過度な規則強化や関税措置の拡大には強く反対する姿勢を示している。

交渉を難しくしている要因の一つが米国の関税政策である。トランプ政権は2025年以降、カナダ・メキシコからの一部輸入品に高関税を課し、両国はUSMCAの精神に反すると反発している。トラックには25%、鉄鋼やアルミニウムなどには50%の関税が課されるなど、北米の自由貿易体制に緊張が生じている。

また、米国の対メキシコ貿易赤字の拡大も政治問題となっている。米国は中国からの輸入を減らす一方で、製造拠点をメキシコに移す企業が増えたことで、対メキシコの貿易赤字は記録的水準に達した。トランプ氏はこれを是正する必要があると主張し、協定の大幅修正や場合によっては離脱も辞さない姿勢を示している。

USMCAは6年ごとに見直しを行い、各国が延長に合意すれば継続できる仕組みとなっている。ただし、いずれかの国が6か月前に通告すれば離脱も可能で、その場合は北米の貿易体制が大きく揺らぐ恐れがある。

米国の農業団体や企業の多くは協定の維持を望んでいる。米国は年間約310億ドルの農産物をメキシコへ、約280億ドルをカナダへ輸出し、関税撤廃による恩恵は大きいからだ。北米経済が高度に統合されている現在、協定の行方は企業の投資判断やサプライチェーンにも大きく影響するとみられている。

今回の見直し交渉は単なる条文修正にとどまらず、北米の経済連携の方向性を決める重要な節目となる。米国の強硬姿勢とカナダ、メキシコの防衛的な立場が交錯する中、3カ国がどのような妥協点を見いだせるかが注目されている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします