SHARE:

キューバの観光業衰退、米国の制裁とベネズエラ原油停止が重荷に

首都ハバナではクラシックカーのドライバーや露天の売り手ら地元住民が観光客の減少を肌で感じている。
2026年1月27日/キューバ、首都ハバナの通り(AP通信)

キューバで観光産業が急激に落ち込み、同国経済が深刻な危機に直面している。かつて年間約30億ドル規模の収入を得ていた観光業は、コロナ後の回復途上にありながら、訪問者数が大幅に減少している。2025年1月から11月までの観光客は約230万人にとどまり、2018年の480万人や2019年の420万人を大きく下回った。これにより観光関連の収入や雇用が縮小し、経済全体に重い影を落としている。

首都ハバナではクラシックカーのドライバーや露天の売り手ら地元住民が観光客の減少を肌で感じている。AP通信の取材に応じたタクシー運転手は、かつて朝から夜まで客を乗せて稼いでいたが、最近はなかなか仕事が見つからない現状を「厳しい」と語る。昼頃に観光客が車の前で写真を撮るものの、すぐに去ってしまい、商売につながらないという。

観光の落ち込みは複数の要因が絡んでいる。新型コロナ前の水準に回復していないことに加え、経済制裁やインフラ問題が観光意欲をそいでいる。水や電力の供給が不安定で、停電やごみの放置が頻発するなど都市機能が滞る様子は、観光地としての魅力を低下させているとの指摘がある。また、米国による制裁が観光収入に打撃を与え、2024年3月から25年2月までの1年間で約80億ドルの収入を失ったとされる。

さらに、キューバが長年頼りにしてきたベネズエラからの原油供給が事実上途絶していることも経済に重くのしかかっている。ベネズエラの原油は同国の電力や燃料供給の重要な柱であったが、米国の制裁や国際的な緊張の高まりで輸送が大幅に減少した。このため電力不足が深刻化し、広範な停電や燃料不足が観光業と地域経済を直撃している。

観光業の衰退は小規模事業者や労働者に深刻な影響を与えている。露天で揚げ菓子を売る男性は、かつて1日に150袋を売っていたが、現在は50袋に満たず、一日中働いても売れ残る日があると語る。4人の子どもを抱える生活は厳しく、「日々の生活のために働いている」と辛い胸の内を明かす。

観光地であるハバナの海岸通りや飲食店街も客足が遠のき、テーブルクロスが風に揺れる光景が見られるだけだ。一部の観光バス運転手は、以前は数台で満員だった観光バスも現在は空席が目立つと語る。観光産業の後退は関連産業全体の収益減少につながっており、経済の底入れ時期は見通せない。

一方で、訪れる観光客の中にはキューバの歴史や文化、住民のたくましさを評価する声もあるものの、経済・社会情勢が観光業の回復を阻んでいる現実は否めない。観光産業はキューバ経済の重要な基盤であるだけに、制裁緩和やインフラ改善、エネルギー供給の安定化などが今後の再生に向けた鍵となると指摘されている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします