◎麻薬カルテルは中央アメリカからメキシコ南部につながる密輸ルートの支配権をめぐって争っている。
メキシコ南部チアパス州で麻薬カルテルの縄張り争いが激化し、一部地域に続く道路が寸断された。オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領が25日の記者会見で明らかにした。
それによると、世界最大の麻薬組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」がいくつかの町で電力を遮断し、政府職員の立ち入りを禁じたという。
オブラドール氏は記者団に対し、「麻薬カルテルは中央アメリカからメキシコ南部につながる密輸ルートの支配権をめぐって争っている」と語った。
地元メディアによると、シナロア・カルテルの支配下に置かれた地域には中南米の移民を売り買いする人身売買組織の拠点もあるとみられる。
チアパス州のローマ・カトリック教区は24日、「重武装したカルテルの傭兵が一部地域の住民をリクルートしたり、土地や道路を不法占拠しており、食料などの輸送に深刻な影響が出ている」と懸念を表明した。
ソーシャルメディアで共有された動画には、シナロア・カルテルの傭兵とみられる武装兵を乗せたピックアップトラック約20台がチアパス州の集落とみられる場所に入るところが映っていた。
オブラドール氏によると、一部の住民はカルテルを歓迎しているという。
シナロア・カルテルは支配地域の住民に賄賂を渡すなどして、軍や警察のパトロールの情報を提供するよう呼びかけているようだ。
オブラドール氏はSNSで拡散した動画について、「一部の住民は明らかにカルテルを歓迎している」と述べ、その人々を「シナロア人」と呼んだ。
シナロア・カルテルは同国№2の麻薬カルテル「ハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」とこの地域の支配権を争っている。
チアパス州は過去数カ月、カルテルや武装ギャングによる虐殺、誘拐、銃撃戦、ドローン空爆の舞台となってきた。
8月には人身売買の主要ルートとして知られる郊外の集落近くでメキシコ人6人が手榴弾とライフルによる待ち伏せ攻撃を受け死亡した。犯人は捕まっておらず、警察が捜査を進めているものとみられる。