◎サンサルバドルにこのようなフェンスが設置されたのは3カ所目。治安部隊はこれらの地域に潜伏するギャングを追跡している。
中米エルサルバドルの治安部隊が首都サンサルバドル郊外の地区を包囲した。ブケレ(Nayib Bukele)大統領が28日、明らかにした。
それによると、2000人以上の陸軍兵士と500人以上の警察官がこの地区を包囲し、セキュリティーフェンスを設置したという。
ブケレ氏はX(旧ツイッター)に声明を投稿。「ギャングの一団が潜伏している地域を包囲した。この地域にいるギャングを一人残らず排除するため、地域一帯にセキュリティーフェンスを設置した」と書き込んだ。
国防省によると、陸軍が数カ所に検問所を設置し、出入りする市民を監視しているという。
サンサルバドルにこのようなフェンスが設置されたのは3カ所目。治安部隊はこれらの地域に潜伏するギャングを追跡している。
ブケレ氏は3月に同様の命令を出した際、中米最大のギャング「マラ・サルバトルチャ(通称MS-13)」と「バリオ18」の残党を一掃すると述べていた。
ブケレ氏は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。
それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は8万人を超え、うち7000~8000人は証拠不十分で釈放されている。
非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。
また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。
ブケレ政権の掃討作戦により、国内のギャングはほぼ壊滅し、エルサルバドルは世界で最も危険な国から、中米で最も安全な国に豹変。昨年報告された殺人事件は214件で、2015年に記録した6600件の30分の1に激減した。
MS-13などのギャングは長い間、同国の広い範囲を支配し、殺人や強盗を繰り返してきた。
最新の世論調査によると、ブケレ氏と与党・新思想党(NI)の支持率は90%前後で推移している。