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米領プエルトリコ知事、公的情報の公開を制限する法案に署名

この法案は政府の透明性を低下させ、住民や報道機関が行政文書にアクセスする権利を著しく制限する危険性があるとして、複数の市民団体やジャーナリストから強い反発を受けている。
米領プエルトリコ、首都サンファン、ゴンザレス知事(AP通信)

米領プエルトリコのゴンザレス(Jenniffer González)知事は14日、批判を浴びている公的情報へのアクセスを制限する法案に署名した。この法案は政府の透明性を低下させ、住民や報道機関が行政文書にアクセスする権利を著しく制限する危険性があるとして、複数の市民団体やジャーナリストから強い反発を受けている。

法律は現行の公的情報アクセス法を改正するもので、政府機関が情報請求に応じるまでの期間を大幅に延長することを認めている。具体的には、請求された文書が300ページ未満かつ過去3年以内に作成されたものであれば業務日20日以内に開示する義務が課されるが、これは従来の10日間から倍増した。また、300ページを超える文書や古い記録については最大1カ月+20日延長可能となり、情報公開までの待機期間が長期化する仕組みとなった。

さらに批判が強い点として、政府機関が自己判断で情報を機密扱いに指定できる条項が盛り込まれたことがある。この規定により、司法審査を経ずに公開を拒否できる余地が生じ、開示請求者のプライバシー保護に関する既存の規定が削除された。また、情報が複数の文書または機関にまたがっている場合、政府側は正当な理由なく請求を拒否し得る仕組みも導入された。これらの変更が透明性を大きく損なうとして批判が高まっている。

この法案の審議過程も論争を呼んだ。上院および下院では公聴会がほとんど行われず、実質的に1日の公聴会のみで可決されたという経緯がある。そのため、市民団体や報道関係者は十分な議論が欠けていると批判し、透明性を重視する民主主義の原則が損なわれたと強く懸念している。

報道機関や市民団体は声明で、本法案が情報公開の権利を損なうだけでなく、政府の説明責任を弱体化させると指摘。特に、法案が追加する手続き的障壁や官僚的負担が市民やジャーナリストの請求意欲をそぐ可能性を危惧している。報道の自由と政府へのチェック機能が脅かされるとの懸念が根強い。

批判側はまた、法案が既存の2019年法で定められていた情報提供フォーマット(ExcelやCSV形式)の提供義務を撤廃し、機械的・分析的なデータ利用を困難にする点も問題視している。この変更により、データの二次利用や研究、取材活動が著しく制限される可能性があるとしている。

一方、ゴンザレス氏は法案が政府内部の混乱や曖昧な規定を明確にするものだと説明している。ただし、具体的な透明性確保策については明言していない。批判側は今後、訴訟など法的対抗手段も辞さない構えであり、プエルトリコにおける情報公開を巡る議論は今後も続く見込みだ。

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