メキシコ大統領、キューバへの石油輸送を擁護、米国の圧力続く中
シェインバウム氏は定例会見で、キューバに石油を供給する判断について、「人道的・商業的な正当性がある」と述べた。
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メキシコのシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は30日、キューバへの石油供給について、「主権国家としての権利だ」と改めて擁護する姿勢を示した。シェインバウム氏がこの問題に言及したのは、米国がこれまで圧力を強めてきた中で、メキシコの政策と外交的立場が改めて注目される状況となっているためだ。
シェインバウム氏は定例会見で、キューバに石油を供給する判断について、「人道的・商業的な正当性がある」と述べた。具体的な輸送時期や量については明言しなかったが、国営石油会社ぺメックス(PEMEX)からキューバ側の企業、例えばホテルなどの民間事業者が燃料購入に関心を示していると説明した。これについては、複数の民間企業が購入を希望しているとの報道もある。
この発言は米国との間で緊張が高まる中で出された。トランプ政権はこの数カ月、キューバへの石油供給に対し強硬な姿勢を取ってきた。1月にはベネズエラのマドゥロ(Nicolas Maduro)前大統領を軍事作戦で排除した後、キューバへの最大の供給源だったベネズエラからの石油供給が停止された。米国は他国がキューバに石油を送った場合、関税を課す可能性を示唆している。これに対し、メキシコは供給停止や見直しを検討したとの報道もあったが、シェインバウム政権はそれを「主権的判断」として強調してきた。
昨年末から続く燃料供給問題により、キューバでは深刻なエネルギー危機が進行中だ。米国による事実上の石油封鎖はキューバの電力供給や公共サービスに大打撃を与え、停電や物資不足が常態化している。こうした状況を踏まえ、米国は対ロシア制裁の対象であるタンカーによる燃料輸送を一時的に容認するなど、一部柔軟な対応も見られるが、基本的な政策は変わっていないとみられる。
メキシコ政府の立場は、外交的にも微妙なバランスを求められている。キューバとの歴史的・地域的な関係を維持しつつ、米国との経済的・政治的関係も重要であるため、石油供給を巡る決定は単なる商取引以上の意味を持つ。シェインバウム氏は「人道支援の枠組みで判断する」と述べ、国際法や主権に基づく行動だと強調した。
一方で、米側は政策の根本的な変更を否定している。ホワイトハウス報道官はロシア船籍タンカーの例外的な受け入れについて、「人道的理由によるケースごとの判断」であり、制裁方針そのものに変更はないと説明した。これにより、国際社会の間ではキューバ問題をめぐる外交的緊張が続いている。
シェインバウム氏による今回の表明は、米国の圧力を受けつつも独立した外交判断を維持する姿勢として評価できる。キューバ国内のエネルギー不足が深刻化する中、人道的支援と主権の行使をどう両立させるかが今後の課題となる。メキシコ政府が実際に燃料供給を進めるかは、今後の外交交渉や地域情勢によって左右される可能性がある。シェインバウム政権の対応はラテンアメリカにおけるエネルギー安全保障と地政学的バランスを巡る新たな焦点となっている。
