パナマ政府「ベネズエラ石油タンカーが海事規則を無視」米国の取り締まり続く
米沿岸警備隊は先週末、カリブ海のベネズエラ沖でこのタンカーを拿捕し、積載していたベネズエラ産原油を調査目的で押収したと発表した。
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パナマ政府は22日、米国沿岸警備隊が先週国際水域で拿捕(だほ)したベネズエラ関連の石油タンカーについて、同船が海上での規則に違反していたと明らかにした。
外務省は声明で、このタンカーがベネズエラを離れる際に船舶識別装置(トランスポンダー)を切断し、海上交通の監視規定を順守していなかったと指摘。こうした行為は国際海事規則に反するとの認識を示し、今後パナマ船籍からの登録抹消などの措置が検討され得るとした。
米沿岸警備隊は先週末、カリブ海のベネズエラ沖でこのタンカーを拿捕し、積載していたベネズエラ産原油を調査目的で押収したと発表した。
このタンカーはパナマ船籍で、積荷は中国向けと見られていたが、米政府による制裁対象リストには載っていなかった。同タンカーはトランスポンダーを停止して位置情報の発信を止めたとされ、こうした隠蔽行為が米国側の行動の一因になったとみられている。
パナマ当局によると、タンカーの行為は国際海事機関(IMO)が定める海上安全規定や識別義務に反しており、他国や海上交通の安全を損なう可能性があるという。パナマは戦後、船舶登録を積極的に受け入れてきたが、旗国としての責任を強調し、類似の事案を防ぐための規制強化を示唆してきた。
外務省は具体的な措置内容には触れなかったものの、タンカーに関する調査を進め、必要に応じて登録取消しや罰則適用も視野に入れる考えを示した。
トランプ政権はベネズエラ産原油輸送に対する規制を強化しており、制裁対象タンカーの阻止や拿捕を実施している。これには米政府が「全面封鎖」と位置づける政策の一環として、制裁対象の石油輸送を阻止し、マドゥロ政権への圧力を強める狙いがあるとされる。タンカーへの対応はこの方針の中で複雑な法的・外交的問題を浮き彫りにしている。
ベネズエラ政府はこれまでの措置に対し強く反発しており、国際法違反だとして米国を非難している。マドゥロ政権は国連安全保障理事会などを通じた抗議を検討する意向を示しており、今回の拿捕についても同様の立場を取る可能性がある。中国も米国の行動を国際法違反として批判し、ベネズエラ支援の立場を明確にした。
国際海運関係者はこのような事案が発生した背景について、ベネズエラ周辺での制裁回避や船籍の悪用があると指摘する。船舶がトランスポンダーを切断する行為は海上の安全管理に深刻なリスクをもたらし、他国の軍事介入や阻止行動を誘発する可能性があるとして、法的枠組みの明確化や監視体制の強化を求める声も上がっている。
パナマ政府の今回の声明は、国際海事規則遵守の重要性を強調し、船籍国としての責任を果たす姿勢を示すものとなった。今後もベネズエラ関連の原油輸送を巡る米国との対立が続く中で、海上安全や国際法をめぐる議論は続くことが予想される。
