ハイチ暫定大統領評議会が新議長選出、ギャング戦争続く中

ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2024年2月25日/ハイチ、首都ポルトープランスの通り(AP通信)

中米ハイチの暫定大統領評議会が新しい議長を選出し、ギャングとの戦いを終わらせると誓った。

サン・シル(Laurent Saint-Cyr)議長は記者会見で、ハイチを支援してくれた国内外のすべての関係者、治安部隊、民間企業に謝意を表した。

またサン・シル氏は「安全保障が最優先である」と強調。国家警察と軍にギャング掃討作戦を強化する求めた。

さらに、国際社会に対しても、国連支援ミッションにより多くの要員を投入し、よりよい訓練、支援、武器を提供するよう呼びかけた。

サン・シル氏は地元の保険会社でキャリアをスタートさせ、インターネット企業を立ち上げたビジネスマンである。

サン・シル氏の演説から数時間後、首都ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」のリーダーである元警察官の通称「バーベキュー」ことシェリジエ(Jimmy "Barbecue" Cherizier)が声明を出し、その直後、市内で銃撃戦が勃発した。

シェリジエはSNSに投稿した動画で、ギャングがポルトープランスの議会事務所に向かうと表明。市民に対し、街頭パレードに参加するよう呼びかけた。

「ハイチの皆さん、自分たちを守り、私たちに力をかしてください。この国を解放するための戦いだ...」

国連支援ミッションを率いるケニア国家警察は声明で、「24時間体制のパトロールと、特定の地域や重要なインフラ周辺での部隊の増強により、ギャングによる攻撃を阻止した」と述べた。死傷者の情報はない。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ヴィヴ・アンサムと対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は24年10月~25年6月までの間に、ギャング暴力により全国で少なくとも4864人が死亡、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると報告している。

ポルトープランスの大統領府周辺ではサン・シル氏の支持者と反対派が衝突し、警察が割って入った。ケガ人や逮捕者の情報はない。

国連は7日に公表した報告書の中で、ハイチ国連支援ミッション(MSS)が当初予定していた要員2500人のうち991人が現地で活動し、必要な年間予算8億ドルのわずか14%、約1億1200万ドルしか集まっていないと明らかにした。

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