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メキシコ南部で移民デモ、書類審査の遅れに抗議


参加者の多くは中南米やカリブ諸国出身で、とりわけキューバからの移民が目立つ。
2026年3月25日/メキシコ、南部チアパス州、移民らによる抗議デモ行進(AP通信)

メキシコ南部で25日、移民らによる抗議デモが発生し、数百人規模の集団が長期化する手続きの遅れに抗議した。出発地となったのはグアテマラ国境に近い南部チアパス州タパチュラで、約500人の移民が25日から北へ向けて歩き始めた。彼らは庇護申請の処理を待つ間に就労が認められない現状を訴え、より仕事の機会がある地域への移動許可を求めている。

参加者の多くは中南米やカリブ諸国出身で、とりわけキューバからの移民が目立つ。米国の移民政策変更の影響で国外退去となり、メキシコに滞留するケースが増えている。タパチュラは長年、米国を目指す移民の中継地として機能してきたが、近年は手続きの遅延や規制強化により、多くの移民が足止めされる状況が続いている。

行進に参加したキューバ出身の男性はAP通信の取材に対し、「書類がなければ何もできない。まるで囚人のようだ」と語り、生活の行き詰まりを訴えた。多くの移民は母国に家族を残しており、収入を得られないことが深刻な問題となっている。申請の遅れにより合法的な就労ができず、生活手段を失うケースも少なくない。

今回の行進は従来の「キャラバン」とは性格が異なり、米国を目指す長距離移動ではなく、メキシコ国内での就労機会を求める点が特徴である。近年は米国の国境管理強化により、北上を断念してメキシコ国内での滞在を選択する移民が増えている。その結果、南部地域に滞留する人々が増加し、行政手続きの遅れや収容能力の限界が顕在化している。

行進の様子は国家警備隊や移民当局、地元警察によって監視されたが、当局が強制的に阻止する動きは見られなかった。一方で、移民支援団体は、無料であるはずの書類発行に高額な費用が請求されるなど、不正や搾取の問題が広がっていると指摘している。また、南部国境の警備強化が移民のリスクを高めているとの批判もある。

さらに、移民を取り巻く厳しい環境は他の事件からも浮き彫りになっている。東部ベラクルス州ではトラックの荷台に閉じ込められた229人の移民が発見される事案も発生し、危険な密輸や人身取引の実態が問題視されている。

こうした中、メキシコ政府は南部諸州で移民の労働参加を促進する新たな取り組みを発表したが、現場レベルでの改善には時間がかかるとみられる。移民の増加と制度の不備が重なることで、タパチュラは事実上の「滞留地点」となっており、多くの人々が不安定な状態に置かれている。

今回の抗議行動は単なる一時的な不満の表出ではなく、制度的な遅延や国際的な移民政策の影響が複合的に生み出した問題を象徴している。移民たちが求めているのは移動の自由だけでなく、最低限の生活手段と尊厳であり、その実現にはメキシコ国内の制度改革に加え、国際的な協調が不可欠となっている。

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