メキシコ政府、自動車・製造業の輸入品に関税賦課へ
メキシコと中国の貿易関係は21世紀に入って急速に拡大、両国にとって戦略的な経済パートナーシップとなっている。
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メキシコ政府は9日、貿易不均衡の是正を目的に、自動車や製造業など一部分野の輸入品に関税を課す法案を国会に提出する方針であると明らかにした。
レルマ(Carlos Lerma)財務次官は記者会見で、「この措置により、新たに700億ペソ(約5.54兆円)の税収が生まれる」と語った。
またレルマ氏は「財務省は一部セクターの貿易不均衡に焦点を当てた法案を議会に提出する」と述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。
そして、「これらは全て、国際条約の枠組み内で行われる」と強調した。
アマドール(Edgar Amador)大蔵公債相(財務相)も声明を出し、「新たな関税はメキシコが現在貿易協定を結んでいない国々に適用される」と明らかにした。
シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は以前、中国に対する新たな関税を検討していると発言していた。
トランプ政権はラテンアメリカ諸国に対し、中国との関係を制限するよう圧力をかけてきた。
これには、中国製品がメキシコなどのラテンアメリカ諸国を経由した米市場に流れることを防ぐ措置が含まれている。
メキシコはすでに、自動車、電子商取引、衣料品、靴、一部の工業製品など、中国製品にさまざまな関税を課している。
メキシコと中国の貿易関係は21世紀に入って急速に拡大、両国にとって戦略的な経済パートナーシップとなっている。
中国は世界第二位の経済大国であり、メキシコにとっては米国に次ぐ重要な貿易相手国である。特に製造業や電子機器、自動車部品、機械設備などの輸入が中国から急増しており、メキシコ国内の消費者向け製品や産業用資材の供給に大きな役割を果たしている。
一方で、メキシコから中国への輸出は、鉱物資源、原油、農産物、自動車部品などが中心である。中国側の需要の拡大がメキシコの輸出拡大を促し、経済成長に寄与している。
しかし、両国の貿易は構造的に不均衡であり、中国からの輸入が輸出を大幅に上回る傾向が続いている。この貿易赤字は、メキシコ国内の製造業者に価格競争圧力をもたらし、一部産業では国内生産の縮小や雇用の低下といった課題を生んでいる。
さらに、メキシコと中国の貿易関係は地理的な距離と物流の制約も影響している。中国からの輸入は長距離輸送を伴うため、輸送コストや納期の問題が発生するが、近年の海上物流網の整備や港湾施設の拡張により、取引効率は改善されつつある。
また、米中貿易摩擦の影響もメキシコ経済に波及しており、米国市場を意識したサプライチェーン調整の一環として、中国製品を経由させる動きや、メキシコ国内での組み立てによる付加価値創出が進んでいる。
両国は自由貿易協定を直接締結していないものの、世界貿易機関(WTO)などの枠組みを通じた関係構築が行われている。また、中国は「一帯一路」構想に関連する投資やインフラプロジェクトをメキシコで展開しており、経済・貿易だけでなく投資面での関係強化も進行している。
メキシコと中国の貿易関係は輸入主導型の依存構造を抱えつつも、両国の経済成長に重要な役割を果たしている。
今後は貿易赤字の是正や国内産業の競争力強化、中国との投資協力の拡大、米国とのサプライチェーン調整とのバランスといった課題に取り組むことが求められる。これにより、持続可能かつ安定した貿易関係を構築することが可能となる。