◎チアパス州の複数の地域では世界最大の麻薬組織「シナロア・カルテル」や同国№2の「ハリスコ新世代」などが1年以上前から支配権を争っている。
メキシコ南部チアパス州の麻薬カルテルが支配する地域の住民600人近くが隣国グアテマラに避難した問題について、カトリック教会の指導者たちは24日、中央政府に対し、避難者に必要な支援を提供し、地元民を人間の盾として利用するカルテルから地域社会を守るよう訴えた。
タパチュラ教区のカトリック指導者らは24日付けの書簡で、「多くの市民がメキシコ側で発生した暴力により避難を余儀なくされている」と指摘。政府に対応を急ぐよう求めた。
チアパス州の複数の地域では世界最大の麻薬組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」や同国№2の「ハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」などが1年以上前から支配権を争っている。
両カルテルは麻薬、移民、銃の密輸ルートをめぐって争っているものとみられる。
グアテマラのアレバロ(Bernardo Arévalo)大統領は24日、抗争に巻き込まれたメキシコ人を保護するため、関係自治体と連絡を取り合っていると明らかにしていた。
AP通信によると、抗争とそれに伴う食料不足により、チアパス州の子供、女性、高齢者など、少なくとも580人がグアテマラに逃れたという。
メキシコ外務省はこの問題に関するコメントを出していない。
カトリック指導者らは書簡の中で、「長い間政府から無視されてきたコミュニティは今、カルテルの人質となり、脅迫され、金の支払いを求められ、応じなければ家族もろとも皆殺しにすると脅されている」と非難した。
また指導者らは「この脅迫や暴力により、地元民はなけなしの金でカルテルが管理する商品を高値で購入させられ、脅され、脅され、7月20~22日の抗争では人間の盾になれと強要された」と述べた。
中央政府は昨年9月、カルテルがグアテマラ国境に近いいくつかの町で電力を遮断したと報告。カルテルは送電線を修理するために現地入りした電力会社の職員を脅し、この地域から撤退するよう命じたとされる。政府はこの地域に陸軍を派遣している。
メキシコはシリアやアフガンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつであり、麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人、それに巻き込まれて行方不明になった人は10万人以上と推定されている。