メキシコ大統領、CIAの麻薬戦争関与を報じたロイター記事に反論
CIAは米国の対外情報活動を担う主要な機関であり、国家安全保障のための情報収集と分析を専門とする組織である。
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メキシコのシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は12日、米中央情報局(CIA)がメキシコの麻薬戦争に深く関与していることを詳細に報じたロイターの調査報道について、「虚偽」と指摘した。
ロイターはシェインバウム氏が報道内容を誤って伝えているとし、記事の内容を支持すると表明した。
この記事は10日に発表され、CIAが長年メキシコで秘密作戦を展開し、同国で指名手配されている麻薬密売人の追跡を支援してきたと報じた。CIAはメキシコ陸軍と海軍の精鋭部隊と連携し、CIAから訓練、装備、監視支援、移動などの活動に対する資金援助を受けているようだ。
シェインバウム氏は定例会見でこの調査報道について問われ、麻薬カルテル対策において米墨両政府間で「情報面での協力と調整」があったことを認めたが、CIAについては具体的に言及しなかった。
しかしシェインバウム氏はロイター報道に記載されていない点について異議を唱え、「メキシコ軍の作戦にCIA工作員が参加しているというのは事実ではない。それは完全に虚偽だ」と述べた。
CIAはこの報道についてコメントしていない。
CIAは米国の対外情報活動を担う主要な機関であり、国家安全保障のための情報収集と分析を専門とする組織である。1947年の国家安全保障法によって創設され、大統領直属の独立機関として位置づけられている。本部はバージニア州ラングレーに置かれ、世界各地に支局や拠点を有している。
CIAの主な任務は三つに大別できる。第一に、海外における諜報活動を通じて国家安全保障に関わる情報を収集することである。これは人的情報を中心に行われ、スパイ活動、協力者のリクルート、盗聴、監視といった手段が含まれる。
第二に、収集した情報を分析し、大統領や国家安全保障会議に報告することである。CIAは政策決定者に必要な情報を提供する役割を担い、その分析は米国の外交・軍事政策に直結する。
第三に、秘密工作を実施することである。これは宣伝活動、選挙介入、軍事的支援、政権転覆工作などを含み、冷戦期には特に頻繁に行われた。
組織構造は長官を頂点とし、現在は国家情報長官(DNI)の下に置かれている。冷戦期にはソ連や共産圏への諜報活動が中心だったが、冷戦後はテロ対策、サイバー戦、拡散防止など任務が多様化している。特に2001年の同時多発テロ以降はテロ組織に対する情報収集と無人機による標的攻撃などで中心的役割を果たした。
CIAは秘密性の高い活動ゆえに、国内外で批判や議論を呼んできた。チリのアジェンデ政権転覆やイラン・モサデク政権打倒、冷戦下の中南米・中東介入などは、米国の対外政策とCIAのコバートオペレーションが直結していた事例である。また、拷問を伴う尋問や不正規拘禁といった人権侵害の問題も国際的に強く批判されている。一方で、CIAは冷戦の抑止や国際テロ対策において重要な役割を果たしてきたとの評価も存在する。
今日のCIAは人工知能やビッグデータを利用した情報分析、サイバー空間での諜報活動など、21世紀型の情報戦に対応するために組織改革を進めている。米国の国益を守るための「目」と「耳」として、そして時に「影の手」として、CIAは国際政治において大きな影響力を持ち続けている。